忍び寄る衰退 ヤンキース帝国の黄昏

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11 /13 2015
みなさんは近年のヤンキースの歴史を振り返ってみた時、大きなターニングポイントは果たしていつだったとお考えでしょうか。


1990年代後半にヤンキースの黄金期ダイナスティを築いたCORE4の最後のジーターが引退した年であるという人もいるかもしれません。それも間違いではありません。しかし個人的に確信している一大ターニングポイントはジョージ・スタインブレナーの死去 2010年7月13日です。オーナーがハル・スタインブレナーという人物に切り替わってから大きくヤンキースの歴史は変わったと後世から言われるようになるだろうと、今からちょうど5年前、記事にしたことがあります。

現在MLBでチームの資産価値及び最大の利益を享受しているのはLADであると勘違いしている人も少なからずいそうですが、文句なしにNYYこそがMLB最高の金満です。フォーブスによればチームの資産価値NYY32億ドル、年間収入5億ドル。チームの資産価値LAD24億ドル、年間収入4億ドル。しかもヤンキースには年間収入5億ドルという左ポケットだけではなく右ポケットにはYESというケーブルテレビの年間収入2億ドルもあるわけです。LADはケーブルテレビを所有していません。ここに決定的な違いがあります。
ジョージ・スタインブレナーの手法には巷間言われているさまざまな問題点があったことも認めます。しかしながら「フリーエージェント制度の有効性を理解したMLBの歴史上、最初のオーナーであった」とは、マービン・ミラーのジョージ・スタインブレナーに対する人物評です。これについては実は私も全く同じ意見でした。(さすが慧眼の士マービン・ミラーであると唸らされました。)

Aロッドが出場停止になりカノを放出し、財政に余裕ができたので田中を獲得というのがハル・スタインブレナーの手法ですが、ジョージ・スタインブレナーの手法とはカノも田中もNYYで囲い込むものです。ジョージ・スタインブレナーの手法は贅沢税など眼中ありません。ペイロールにしても資金力で大きく引き離すLADの後塵を拝することはまずない。ジョージ・スタインブレナーなら2015にしても、マックス・シャーザーあたりを獲得してシーズンインしていたはずなのです。


「戦力の逐次投入は最大の愚である」とも言いますが、一進一退の<相対強者の路線>を突っ走っているのがハルに対して、波状攻撃をかけて金にものを言わせて巨大戦力で相手を倒す<絶対強者の路線>がジョージ・スタインブレナーです。近年、ファームを充実させて生え抜きを中心にしたチームモデルを確立させた強豪STLの手法も非常に高く評価されるべきものです。金がそこそこしかないのであれば優れたスカウティングや育成能力、緻密な戦略によってSTLのように強いチームにするという方針は全くありですが、すべてのチームがSTLへ右に倣えをする必要はありません。身の丈に応じた正しい戦略というものがあり、金がある以上ジョージ・スタインブレナーの手法もまたNYYにとっては正しいのです。

例えば今年の8月にNYYは2位のTORを大きく引き離していたためにハルは全く動きませんでした。結果論としてではなく、このハルの判断も完全に間違いです。WS制覇へ向けてより大胆に補強をすべきでした。相対強者でOK、何よりもコスト管理を大事とするハルの姿勢が透けて見えたシーンでした。POに出れることがゴールとなってしまっている。

これは2年前の記事の抜粋です。

「チームの収入もチーム資産も年々インフレによって右肩上がりであり、選手の年俸もインフレです。こうしたすべてがインフレ路線のトレンドの最中にあって、贅沢税回避という間違った方針を採用しているのがハルです。デフレ下においては<時間>とともに物価(人件費)は下がるのでなるべく、現金を物に変えずに現金を手元に置いておく戦略が正しいですが、インフレ下においては<時間>の経過にともなって物価(人件費)が上がってゆくので本当に価値あるものに対しては早めに投資するのが正しい戦略です。

(つまりこの当時では1WARが500万ドルですが、10年後の1WARは1000万ドルまで上昇している可能性もある。実際今年であっても800万ドルまで上昇しており、カノの年俸は、将来、今ほど負担感の強いものではない可能性が高い。昔は2000万ドルなんていうと超一流の証だったのに、今ではこんな選手でももらえると回想される可能性がかなり高いということ)


堅調なインフレという強力なトレンドの中では基本、強者は積極的な投資を行うべきであり、まるでデフレ下で行うべきハル・スタインブレナーのコストカットするという方針は戦略的には間違いであると言わざる得ません。特にハル・スタインブレナーというオーナーの力量が垣間見えたのが、カノという3000本も視野に入っている殿堂入りも可能な生え抜きの選手をSEAというローカルなミドルマーケットのチームにさらわれたシーンです。NYYの莫大な資産からすれば仮にカノが途中から不良化しようが全く問題なく財政的にも吸収できるというのが大きなポイントです。他のふつうのチームと同じようにカノの不良化を捉えていては大きな間違いです。戦略的な正しさとはあるチームにとっては非であることも、あるチームにとっては是となることもある。カノは戦力的にも将来のブランド戦略としても絶対に手放してはいけない選手でした。


もちろん今でもMLB全体で2位、ALリーグ最高のペイロールを維持している以上、相対強者ではありPOにも出るでしょうし、偶然優勝するなんてこともなくはないでしょう。それなりの強さを維持はするでしょうが、ハル・スタインブレナーの路線を見る限りかつての悪の帝国としての面影はすっかり失せ「ヤンキース帝国の黄昏」はその色彩をより一層増してゆくはずです。強豪というイメージはすっかり薄れてNYYはそれなりに強いチームというポジションが定着することになる。そしてあれだけジョージ・スタインブレナーを忌み嫌っていた一部のNYYファンも先代の偉大さを改めて後世において思い知るに違いありません。」

2013の夏頃においても贅沢税というヤンキースの身の丈からすれば、全く取るに足らない小さな障害の前に立ちすくんだハル・スタインブレナーの姿勢を評価するコラムも見たことがあります。しかしいささか大局観の欠ける記事であったという感想しか個人的には持ち得ませんでした。平たく言うとジョージ・スタインブレナーがオーナーだったなら贅沢税など軽く往なし、MLB全体ペイロール1位の地位を確保し、2015の開幕時にはカノもシャーザーも開幕スタメンに名を連ねているチームであった可能性が高いということです。そうであってこそNYY本来の姿です。しかし今のオーナーであってはオーナー自身がイノベーションしない限り、そんな力強い姿のNYYを見ることはまずありません。
時間こそ最大のコストであり、ブランドを形成することがNYYのTOPにとって何よりも大事である。こうした意識が決定的に欠如し金銭のコスト感覚を優先させているのが現オーナーです。スケールが先代と比べると小さ過ぎてどうにも未来に夢がない。現在 NYYのウィークポイントのひとつはポジション別セカンドのWARを見ても明らかです。2014 WAR0.0 2015 WAR-1.1となっています。


しかしほんとうのウィークポイントはカノが抜けたセカンドなどではなくNYYのオーナーのその姿勢、大局観、戦略的な思考力の欠如にあります。


大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。