ダルビッシュ全盛期のフォーム、ひとつの大きな特徴とは何か

ダルビッシュ
04 /05 2019

世界一の投手になる」と日本ハムファンの前で約束して渡米したダルビッシュ。2013年4月2日、ベストゲームとしてNHKで放映された完全未遂試合となるその映像の中には今よりも一回りほっそりしたダルビッシュの姿がマウンド上にあった。

昨日の試合のフォームと比較して、何が違うか観察してゆくと真っ先に気づくのが(肩甲骨周りの可動域が2013年の方が明らかに高いためなのか)テイクバックの際、楽に右肘が高く後ろまで引くことが可能となっていたのだっだ。肘がより後ろまで引けるということは、胸をそれだけ張ることが可能となり、自然リードする左手もそれだけ前方へ出すことが可能となる。また柔軟性があるならばボールをリリースする際の右肘もそれだけしなり、前方に出すことが可能となり、フォームが大きくなる。

更にこの肩甲骨周りの柔軟性は、体幹を通して股関節周りの柔軟性と連動しているために足の踏み出し、エクステンションにも数センチレベルで広く保つことが可能となることが推測される。

フォームにタメがあり、柔軟性があり、全体に体を大きく使えるためにボールを前で離すことも可能としていたのが、サイヤングに最接近したダルビッシュのフォームだったと言ってもいい。平たく言うと今とはフォームの躍動感が違うということになる。

体が大きくなりパワーが増えれば、当然の如く球速は1マイル程度は増えているというデータも2018年までは出ているが、PITCH F/Xのデータを客観的に比較する限り最大の武器であるスライダーの切れを失っては本末転倒も甚だしいと結論せざる得ない。

2013/4/24 LAA戦のスライダー
6回2失点ながら11K、個人的に最もしびれた投球を繰り広げたダルビッシュ
平均83.5マイル 水平方向の変化 10.07 垂直方向の変化 -0.77

2019/4/4 ATL戦のスライダー
連続KOされたダルビッシュ
平均83.9マイル 水平方向の変化 6.89 垂直方向の変化 1.75

言うまでもなくピッチングの目的とは打者を封じることであり、球速をアップさせることでもなければ、ましてボディビルダーのような肉体へ変質させることでもない。ここ2年の投手fWARでトップを争っているセールやデグロムの体つきをみても、優秀な投手に大きな筋肉は必ずしも必要でないことはわかる。

この際、体が一回り大きくなったのが原因なのかは括弧に入れて置いて、肉体改造にともなって明らかに変わった目につく事象を並べると以下3点になる。

フォームのバランスが悪く制球力が極端に落ちて、BBが急増している
PITCH F/Xのデータも見てもスライダーの切れが数段落ちて、Kが減っている
体がでかくなり過ぎて、投げるスタミナが明らかに落ちている

現在メジャー平均の奪三振率は9.00に限りなく8.95、四球率は3.57。メジャーの平均的な投手は5回を投げた時点でK5個BB2個のペースだと計算ができる。セイバーメトリクス的には投手の能力を端的に示す重要な指標として「K/BB」がある。通常このK/BBが2.00という数値さえ超えられなければスターターをMLBでまともに務めることは難しいが、ダルビッシュのK/BBがもはや問題外の0.55を記録している。現在でも規定投球回数に達している投手で1.00以下の投手は年間の162イニングベースでは2018年においても皆無である。

ちなみに唯一の強みであった4シームのベロシティも2019年ではキャリアローにまで落ち込んでいる。

結論

セイバーメトリクスはこのままではダルビッシュという投手の未来は暗澹たるものであることを示している。メジャー平均を遥かに下回るK/BB1.00すら超えないスタッツを記録するスターターにローテが務まることは通常ありえない。果たして崖っぷちに立たされているという認識がダルビッシュにあるだろうか。どれだけ優れた才能に恵まれていたとしても、「間違った方向で努力を積み重ねてゆくと、こうなる」という失敗例としてダルビッシュは将来取り上げられることになるかもしれない。

果たして手ごたえのあったというカットボールがスライダーと並んでダルビッシュの強力な武器になり、そこに活路を見出すことは可能なのか、引き続きダルビッシュの投球についてセイバー分析を試みていきたい。もともとメジャーでも一級のポテンシャルを持っていた投手であっただけに、復活が待たれる。


参考数値

2013/4/1 のスライダー 対HOU戦
ダルビッシュが完全未遂をした試合、キャリアハイを記録した最もサイヤングに近づいた年
平均84.3マイル 水平方向の変化 8.53 垂直方向の変化 -0.83

2017/10/17のスライダー 対CHC戦
NLCSで支配的な投球を繰り広げ、CHCがダルビッシュ獲得に乗り出す大きな契機となった試合
平均83.6マイル 水平方向の変化 9.06 垂直方向の変化 1.64

2019/3/30のスライダー 対TEX戦
キャリア最悪の試合
平均83.8マイル 水平方向の変化 5.69 垂直方向の変化 2.11


大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

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写真は古代ギリシャの神殿。