ボストン・レッドソックスの歴史を変えた最大のキーマンとは誰か?

戦略
11 /19 2018

「忍び寄る衰退 ヤンキース帝国の黄昏」

贅沢税に拘泥しあくまで<コスト>にフォーカスするハル・スタインブレナーの方針は戦略的に間違っており、それは勝利の生産性ではっきりと示されることになると繰り返し述べてきました。事実、2010年の7月10日ジョージ・スタイブレナーの逝去を境にヤンキースはワールドシリーズの舞台にすら一度も立てないばかりか、6年連続で地区優勝すらできない状況にあります

時間に関するコスト感覚がほとんど感じられないこのヤンキースと真逆の動きをしているチームこそが今年MLBペイロールで1位の座に躍り出たボストンレッドソックスです。「MLBにおいて戦略とは勝利の生産性を高めるための時間を制する技術である。」とも定義しましたが、21世紀に入って、ルースの呪いを2004年に解いてからというものボストンがワールドシリーズ制覇すること実に4回を記録し、極めて高い勝利の生産性を発揮しています。


2004 2007 セオ・エプスタインGM(2002~2011)

2013 ベン・チェリントン (2012~2014)

2018 デーブ・ドンブロウスキー (2015~2018)

21世紀(2002年)以降これまで3人のGMが登板し、すべてのGMが世界一を制覇しています。

どの優勝においてもこの大仕事を成すには様々なピースが数多く合わさって、はじめて成就するものです。今年に限れば大型契約を成功させる能力に長けたドンブロウスキーの存在も優れた働きをしましたが、実質的な攻撃におけるディレクター役を務めたコーラ監督の仕事ぶりは出色と言っていいでしょう。フライボールの最先端をいっていたアストロズからノウハウを直輸入しつつ、更にその先を行くための一手としてスモールベースボールをチームへ浸透させたその活躍は特筆すべきものがありました。MVPベッツや3冠王に手が届く位置にしたJDマルティネスの活躍その他の様々なスタッフ等の尽力もあって世界一という目標を達成した。

名将フランコ―ナ、マニ―とオルティスの強力ディオなどそうした過去4度の優勝は、各々のケースにおいて様々なピースが組み合わさり目標を成就したわけですが、あらゆるケースにおいて絶対に欠くことのなかった唯一無二のピースがひとつあります。そのピースこそボストンの歴史を変えた最大のキーマンでもある2002年に就任したション・ヘンリーオーナーです。ここに深い焦点を当てなくてはならない。

ボストンというチームは2002年に新オーナーが就任して以降、ルースの呪いを破った年を皮切りにチームが明らかに変わりました。

「<戦略の目的>と<制約条件>を明確に区別し、戦略家とは条件によって現実の動きを規定される人ではなく、条件を動かすことによって目的を達成しようとする人のことである。」

贅沢税という<制約条件>に目を奪われて、<戦略の目的>であるワールドシリーズ制覇を果たすということを二の次に考えるようなハル・スタインブレナーとはション・ヘンリーの発想が根本的に違う。ハル・スタインブレナーにはない物事をマクロで捉える力がション・ヘンリーには備わっています。贅沢税ラインを目の前にして大多数のチームが緊縮財政路線を取った中、ヘンリーはそこにチャンスを見出しまさに他のチームとは真逆の方針を採って贅沢税ラインなどおかまいなく、JDマルティネスを獲得したわけです

もし2018年ボストン率いるヘンリーと全く同じ状況にハル・スタインブレナーが置かれたら、どう動いたか。他も緊縮路線を取っているから、ここはうちも右に倣えで緊縮しようと判断をした可能性が極めて高い。というよりもほぼ間違いなく、贅沢税ラインを超える動きなどしなかったはずです。こうした間違った判断の繰り返しが現在のヤンキースの極めて低い勝利の生産性をもたらしています。

FA市場全体がこれといった動きをみせず他のチームが緊縮財政をしている中で、ヘンリーは贅沢税ラインを突破する動きを入れように、他のチームがフライボールの中にある価値を求めて空を見上げている中で、ゴロの中にある価値を見出しスモールベースボールを実践してみせる文化がボストンには備わっている。こうした他とは一味違うボストンの戦略性こそが、勝利を手繰り寄せているように私には見えるのです。そしてその一番のボストンにあるカルチャーの根っこには、ション・ヘンリーオーナーが座している。

ハル・スタインブレナーは勝てない理由を選手や監督のせいにするのではなく、勝利から遠ざかっている最大の原因を己の中に見出すべきです。

もしヘンリーがヤンキースのオーナーであれば、ワールドシリーズにかすりもしないシーズンをおくり続けることなどまずあり得ない。あるいはもし仮に2002年からハル・スタインブレナーがボストンのオーナーであったなら、ボストンはここまで勝利を積み重ねることができただろうか

優れたリーダーがいればそのチームを勝利へ導くことができる。戦いとは実にシンプルです。

ハル・スタインブレナーにオーナーになった直後の2009年は、ジョージ・スタインブレナーがまだ存命であり傀儡と言っても言い過ぎではなく明らかにボスの目を意識したチーム運営をしていました。サバシアやバーネット、テシェイラを獲得してハル・スタインブレナーは俺に任せろアピールをし、今では考えられないような超大型契約の連発であり、ここにあったのはまさしくジョージ流です。

ところがジョージ・スタインブレナーが地上から去った2010年以降は、ハル・スタインブレナーの器の大きさが透けて見えるような方針をヤンキースは取り始め、更に面白いのはこのケチケチ緊縮路線が日本のライターやファンには大変受けがいい点にあります。繰り返しますが、そしてその考えは基本的に完全に間違っています。

もし判断が正しければボストンにように必ず勝利という結果が出てくる。出ていないということはヤンキースのリーダーの何かが間違っていることを意味しています。ではなぜボストンは結果が出て、ヤンキースは結果がないのか?この両者を分かつ原因と結果を正しく分析しなければならない。

今年のヤンキースはどういう動きにでるのか。相変わらず贅沢税の前でブレーキをかけるのか。ただラインを超えるのではなく、必要とあらば大きく踏み越えることも辞さない姿勢を持つことができるのか。FA市場で大物が大量に出回る今年、オーナーとしての器が試される最大の年であると言っても過言はありません。

結論

ヤンキースの勝利の生産性が2010年を境に一気に下がったように、ボストンの勝利の生産性は2002年を境にメジャー最高を記録している。リーダーの能力が組織の命運を分ける。

帝国の復活なるか。2018年オフにヤンキースは大きなターニングポイントを迎えている。


大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。