フライボールはガチでもう古い!これからのメジャーのトレンドとなるアストロズの攻撃戦略を紐解く

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10 /16 2017
タイトルの「フライボールはもう古い」が決して誇張ではないことが、最後まで読んでもらえたらきっと理解してもらえるものと考えています

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初戦 ヤンキースは14Kであるのに対して、アストロズは5K、第二戦もヤンキースは13Kであるのに対して、アストロズは4Kでした。なかなか三振を喫しないアストロズの攻撃陣、次々と三振を奪うアストロズの投手陣。いずれも2017年のアストロズのチームの特徴が良く出た試合であったと言えます。

30チーム中、投手奪三振率K/9・9.91はメジャ―全体で2位。チーム平均で毎試合10個を奪う驚異の奪三振力。30位のレンジャーズはK/9・6.95と比べるとその奪三振力の凄さがよくわかるはずです。一方攻撃の三振率K%においても17.3はメジャー全体で1位の低さであり、本塁打数は238本でメジャー全体2位。241本のヤンキースに肉薄しています。

ヤンキーススタジアムのHRの出やすさは1.279とメジャー最高。ミニッツメイドはメジャー最高のピッチャーズパークでありかつHRの出やすさも1.009とメジャー平均の出やすさとなっているため、パークファクターも考慮した時、アストロズはメジャーで最も本塁打を放つチームであるということも十分可能です。(ミニッツはさすがメジャー最高のピッチャーズパークであるためか2戦ともスコアが2-1で決着しました。小宮山のヒッターズパークという言にはくれぐれも騙されないように)

例えば三振することも全く厭わないギャティスという右の長距離バッターがアストロズにいます。そのK率変化です。

2013 21.2%
2014 24.2%
2015 19.7%
2016 25.5%
2017 15.5%

2017年になってK率が15.5%へと激減していることが認められます。

アストロズのチームK率の推移

2013 25.5% 30位
2014 23.8% 29位
2015 22.9% 29位
2016 23.4% 26位
2017 17.3%  1位

チームの方針が2017年になってはっきり方向転換していることがわかります。メジャー攻撃力1位アストロズにいったい何が起きているのか。

では、次にフライボール革命を行っていた2015年のアストロズ打球方向。

PULL% 3位
CENT% 29位
OPPO% 28位

フライを引っ張ってスタンドへ叩き込めというメッセージがそこから読み取ることが可能です。

ところが2017年の打球方向

PULL% 11位
CENT% 15位
OPPO% 20位

センターを中心にした無理のない打撃であることも見て取れます。

投手にとっては奪三振こそが最もリスクの少ない最強の防御となるように、裏を返せば攻撃イベントにおいてはそもそもバッドにボールに当ててインフィールドに転がすことができなければ、ノーチャンスとなる。打者にとって三振を奪われないことは攻撃力の大前提でもありその基礎条件でもある。フライボールもそもそもボールにコンタクトができなくては何も始まらない。それは大型扇風機と化したジャッジを見ても明らかです。

イチローが外角低めへチェンジアップを投げられたとします。果たして無理やりフライを打ち上げホームランを狙うことがイチローの攻撃力を最大化することになるでしょうか。おそらくは左方向へ緩いゴロを放ち内野安打を量産することこそがイチローの攻撃力を最大化するはずです。あるいはラインドライブでレフト線を狙うのもありかもしれません。内角低めのファーストボールであれば、ライナーでのライト線を狙う、あるいはゴロで12塁間を抜くでもいいですが、コースが甘ければフライボールでスタンドを狙うのがOPSから見れば現実可能な最強の攻撃イベントとなる。

フライボールレボリューションを地で行くOAKの2017年FBはメジャー全体1位、唯一の41.1%と40超えで、本塁打数も234本と成果も出してはいます。しかしFB率が高ければBABIPも低くなり、シングルヒットIBはメジャー最小の790本となっており、フライボール革命が諸刃の剣であることがよくわかります。結果、オークランドの打率は24位となっています。ところがアストロズは三振が最も低くFB率がそこまで高くなく、フィールド90度を満遍なく使っているためにIBシングルヒットもメジャー全体4位であり、2Bもメジャー全体1位を記録し、あらゆるヒットを量産しているのです。アストロズの打率はメジャー全体1位なのですが、2017年のアスレティックスこそ、ちょうど2年前にフライボールレボリューションの最先端にいた2015年のアストロズの姿そのものでもあったということになります。

真の攻撃力とは果たして何なのか。

真の攻撃力がホームランの数だけを争っているならば、アスレティックスが実践している古き<フライボールレボリューション>で十分です。

ラインドライブ  AVG 628 SLG 955 OPS 1583 BABIP 615 HR 595
フライ      AVG 211 SLG 676 OPS 887 BABIP  90 HR 2748
ゴロ       AVG 245 SLG 267 OPS 513 BABIP 245 HR 0

ゴロのBABIPは245に対して、わずかフライのBABIPは90に過ぎないのも事実であり、投球の質によってはイチローのようにゴロを狙うことがセイバーメトリクス的にも攻撃においては最善の選択である可能性がある。状況に応じてある時はフライボールヒッターであったジェイソン・ジアンビーになり、ある時はグラウンドボールヒッターであったイチローにもなる。こうしたより戦略的な柔軟性を帯びた打撃スタイルをアストロズは選択していることが想定されるのです。

■2015年のアストロズの攻撃戦略を簡略化して書くならば典型的なフライボール攻撃

<三振もかまわない>とにかく<フライボール><引っ張り専門>で<ホームラン長打狙え>というものです。

分析記事

アストロズの強さの秘密 その戦略をセイバーメトリクス分析する 攻撃編

■2017年のアストロズの攻撃戦略を簡略化して書くと

<攻撃というイベントはボールにコンタクトし、インフィールドへ飛ばすところから始まる>
<ラインドライブ、フライボール、ゴロボール>のそれぞれの打球の特徴、良さを生かし
<引っ張り、センター返し、流し>とフィールド全体を使い
<内野安打からホームラン>まで

投じられるボールの質に応じて、あらゆる攻撃イベントをフル活用しようとするマルチ攻撃戦略。

つまり2015年のアストロズがアダム・ダンをモデルとするものであるならば、2017年のアストロズの理想モデルこそ、他ならぬホセ・アルトゥーベということになる。

アルトゥーベは三振もほとんどすることなく、引っ張っては3打席連続で豪快なホームランを放ったかと思えば、センター返しゴロ内野安打から盗塁、決勝ホームインするという八面六臂の活躍。2017年のアストロズの攻撃戦略において、フライボールレボリューションもオプションのひとつとして消化されているということになるのです。

ちなみにアストロズのコンタクト率81.2%はメジャー全体1位で唯一80超えとなっている。

すなわち「どれだけ三振したとしても一発で仕留めればいい」という日本のファンが口癖にするステレオタイプなメジャーの打撃文化を2015年版のアストロズは地で行ったとするならば、2017年版はそれを打ち壊し新たな創造性あふれる攻撃戦略をアストロズ率いるルーノウは打ち出しているということです。

セルベリーノの奪三振力は非常に高いものがありますが、ALCSにおいて対アストロズは4回で降板するまで、奪三振をいくつ奪っていたでしょうか。アストロズの戦略の重要なキーを握るスタッツがKであることを知る者としては当然チェックしながら見ていたのですが、見事にゼロでした。すべてアストロズの打球はインフィールドへ飛んでいました。それに対して、ヤンキースの攻撃はバットがくるくると空を切ることが多かったということになります。

つまりたしかに得点は2-1と僅差なのですが、得点可能性という意味では両者には遥かに大きな攻撃力の差が潜在していることを意味しています。セルベリーノのその試合のBABIPは0.083でした。BABIPがセルベリーノの平均レベルに戻るだけでアストロズは、一気に試合のけりをつける攻撃力を内在させていたということになります。

2014年当時スポナビにエントリーしていないので記事のリンクを張ることのできないのが残念ですが、フライボールレボリューションの原型はオークランドが2014年の夏場までぶっちぎりの地区優勝する勢いだった年に行われていたものであることも、すでに当ブログではセイバーメトリクスの分析を通じて掴んでいました。なぜセイバー分析をしたかというと、田中がデビューした年でもあり好調OAK戦に投げる際、ダルビッシュもOAK打線を極端に苦手にしていたということもあり、調子の良い打線の奥に秘められたものを読み解くために分析していたというわけです。

ビーンGMに<フライボール革命>についてどう思うかと訊ねたら、もし本音ベースで話してくれるならおそらく数年前からOAKでもチーム全体で取り組んでいると答えるはずです。そのフライボール路線を相も変わらず継続して今に至るOAKやTBとそこから更に理論を進化させてきたHOUがあり、センサーの鈍いチーム群が流行に乗って後からようやく追いついてきたというのが実相です。

タイトルの「フライボールはもう古い」というフレーズは決して誇張したものでもないのです

結論

<コンタクト・マルチ打撃革命>とも名付けたい最先端の打撃理論が、アストロズの内部において密かに構築されている。未だその全貌はシークレットであるが、このアストロズの攻撃戦略こそがおそらくこれからのメジャー全体の攻撃トレンドをリードしてゆくことになるだろう。



ここ最近、しょうもない記事を連発してきた当ブログでしたが、下記のふたつの記事はこれからのメジャーのトレンドを読み解く上において、何らかの気づきとなるようなヒントがあるものと自負しています。いずれジラルディの継投ではなく、攻撃の采配についても記事にします。

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大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

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写真は古代ギリシャの神殿。