フライボールレボリューション、超攻撃革命を起こすアストロズの戦略を読み解け! その2

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07 /17 2017

フライボールレボリューション、超攻撃革命を起こすアストロズの戦略を読み解け! その1の つづきになります。

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第三は、exit velocity(打球速度)という視点です。ゴロでもなくフライでもないものはラインドライブとしてカテゴライズされます。

ラインドライブ  AVG 628 SLG 955 OPS 1583 BABIP 615 HR 595
フライ      AVG 211 SLG 676 OPS 887 BABIP 090 HR 2748
ゴロ       AVG 245 SLG 267 OPS 513 BABIP 245 HR 0

これを見ても明らかなように、HRはフライが断トツ1位ではあるが打撃において最も攻撃力の高い打球は、ラインドライブとなっています。exit velocity、打球速度が153km/h(95マイル)を超えると急激に本塁打を含む長打が増えるという報告がスタットキャストの分析でもあるように、当然、力のないフライはポテンヒット以外攻撃力としてはあまり価値はない。

正しくはまずフライありきではなく、大前提としてボールを強く叩き如何にexit velocity、打球速度を上げることができるかが最優先課題となっている。「打球角度25度のプラスマイナス10度がホームランゾーンであり故にフライを打ち上げろ」というフライボール理論も、バレルゾーンに包括されていることがわかります。バレルゾーン、打球速度が116マイルあれば打球角度が8度(ラインドライブ)~50度(高い放物線を描くフライ)までOKされている。バレルゾーンを意識する時、ライナーや高いフライであってもexit velocity、打球速度が確保されていれば問題ないことがわかります。

アストロズの強さの秘密 その戦略をセイバーメトリクス分析する 防御編

アストロズの強さの秘密 その戦略をセイバーメトリクス分析する 攻撃編

これは2年前の大方の予想を裏切って、スタートダッシュに成功したアストロズのについてセイバーメトリクス分析し考察したものです。

2017年最大の攻撃力を有するアストロズが、2015年の段階でフライボール革命をチームの攻撃戦略として、グラウンドボール革命を防御戦略として他よりもいち早く取り組んでいたチームであることを分析したものです。そんなアストロズのFB率が2015年においてはリーグ1位であったのに対して、2017年にはFB率もミドルレンジ(10位~20位)となっており、この他にもセイバーメトリクスで最先端を行っているレイズやドジャース、ボストンなどもすべて36.0%前後に密集しています。

ちなみにアストロズは防御において2015年同様ALリーグゴロ率1位を相も変わらずキープしています。グラウンドボールピッチャーを選び抜く眼や育てるコツのようなものをアストロズはスタットキャスト分析等を通して会得していると言えます。ちなみにパイレーツと基本同じ防御戦略をアストロズは採っているために、パイレーツ出身のモートンを2017年に獲得したのも極めて合点のいく話ではあります。

ところで先日もBSの番組でフライボール革命がフューチャーされておりましたがHOUのルーノウGMが余裕綽々でインタビューを答えているの見て、番組を見たみなさんはどう思われたでしょうか。その表情からすぐに私はピンときました。「フライボールレボリューションが最新トレンドだって?何を今更。そんなものは何年も前に我々は既に気づいていたことじゃないか。更なる分析が進み我々は次のステージへ入っているのである。」インタビューにも適当にあしらうかの様なルーノウの姿がはっきりと見て取れました。何かを隠し持っている雰囲気。すでに何年も前に当ブログでも分析した段階のままでアストロズのバッティング理論の進化がそこで止まっているとは到底考えられない。そこで更に私は考え続けることになります。

例えば全盛期のイチローをバレルゾーンでもって、打者としての力量を適正に測ることはできません。他の打者にとっては単なる非バレルゾーンにしか過ぎなくても、イチローにとってはヒットを量産できる金脈がバレルゾーンの他にこそ拡がっていたわけです。それがイチローのMLBで打者として生き残るための戦略そのものでもあった。アストロズが青木のような小柄なコンタクトヒッターに対してもKCのエスコバルで失敗したようなとにかくフライを打ち上げろという○○の一つ覚えのような打撃のアドバイスを送るような間抜けなチームであるとは到底思えない。

ハーパーの打撃アプローチは、得意な投手やカウントの浅い時はポイントを前に出してフライボールのフルスィングでホームラン狙いをするが、苦手な投手やカウントが悪くなるとポイントをやや後ろにしてミート中心に切り替えてなるべく粘り強く四球を狙ったり、あるいはシフトの逆をついて野手のいないところへ軽打しシングルを狙ったりします。こうでなければAVG・OBP・SLGを揃えることもできません。ハーパーのように賢く状況に応じて最善の攻撃アプローチをする。必ずしもフライありきではない。どうやら概ねこうした攻撃アプローチをチーム全体で取っているのが2017年アストロズだと言ってもいいでしょう。それは数字からもある程度明らかになっています。

「数多くフライを打ち上げ 30チーム中FB率1位 ・三振を恐れず 30チーム中三振数2位 ・ホームランを狙え 30チーム中HR数230本は2位 」という2015年のきめの粗い攻撃戦略を採用していたアストロズでしたが、明らかに攻撃アプローチを進化させており、2017年では30チーム中で最も本塁打の多い一方で、驚くべきことに三振が最も少ないチームこそが他ならぬルーノウ率いるアストロズなのです。

2017年アストロズ、ホームラン数30チーム第1位。三振数30チーム第30位。攻撃WAR30チーム第1位。

ちなみにブルワーズというチームはがアストロズについで2位の本塁打数を記録していますが、このブルワーズが三振数でメジャー全体1位を記録しています。ふつうはブルワーズのように本塁打が多ければ三振も多いものです。三振とホームランは一般に高い相関関係にある中で、もし三振の最も少ない打者がホームランを最も打っているとしたら、それこそまさしく打撃の革命だと言って過言はありません。それをチームレベルで実践しているのがアストロズであり、これまでの野球界の常識を完全にひっくり返してしまう超攻撃革命がルーノウ率いる2017年のアストロズというチームで静かに起きていると言ってもいい。

どうやらアストロズは投手の奪三振率が高い時代にあって、打者が三振をしないことにひとつの大きな価値であることを見出していることもわかります。だからこそメジャーでも2016年において3番目に三振しない打者であった青木を獲得したわけです。アストロズが2年も前に仕掛けていたフライボールレボリューションが最新トレンドって、ほんとうにそうなのでしょうか。

時代は常に動いているのであり、目新しさに飛びついてフライレボリューションにフォーカスし過ぎてはならず、いずれはフライレボリューションも過去の知性となる。歴史の中で現代に新たに登場したものを相対化して捉える複眼的な深い目を持たなければ、守備シフト同様にマスメディアやライターの垂れ流す情報に翻弄されることに必ずなります。

では、現代を相対化するだけの歴史的な深い目を持つとはどういうことか。

具体的に一例を挙げてみます。10年以上も前、スモールベースボールというと、時代遅れの日本の高校野球だろう的に高をくくられていた時代のことです。「打者の時代」でありビックボールを肯定する「マネーボール」いう枠を通しベースボールを眺めることをもって、時代の先端に躍り出たかのような錯覚をしている人たちが数多く存在していた時代でした。

そうした今から10年前以上も前、ほぼ誰も指摘しなかった二つのことを私は強調して話をしました。第一に歴史の法則を学ぶ限りそう遠くない将来、必ず「投手の時代」が訪れることになる。(そして2010年以降、一般にも「投手の時代」と言われるようになる。)もう一つは、セイバーメトリクスを内包したスタイルで「スモールベースボールが必ず復権する」ことになるとも言いました。旋風を巻き起こしたヨースト率いるKCの野球などはスモールベースボールを全面に押し出した野球そのものであり、2010年以降成功を収めたSFを率いるボウチーにしてもSTL率いたラルーサにしても、典型的なオールドスクールの監督です。

当時の空気感は今とは全く違っていて、そういうことを言っている人は私が知る限りほぼナッシングでした。ちなみに結果が出てから「そんなことは誰でもわかっていたこと」と高を括ることを後知恵バイアスといい、張本の十八番でもあります。張本に限らず野球の解説で極めて繰り返されることの多い、典型的なバイアスこそ後知恵バイアスです。

 野村IDの源流には「カージナル・ウェイ(カージナルス流)」がある

この記事を2010年頃わざわざ書いたのも、セイバーメトリクスかぶれの人に限って歴史に疎いと感じたからに他なりません。スモールに対する認識の軽薄な人が実に多かった。そして「投手の時代」「スモールベースボールの復権」といった状況も、ラビットボールの出現及び新たなフライボールレボリューションによって今また新展開を迎えています。

戦いにも原理原則があるように、歴史には運動法則があります。常に新しいものが現れた時、多くの人は真っ先に飛びつきがちですが、関心は払いつつも同時に歴史の中でどう位置付けるべきなのか、全体を俯瞰する眼が必要になります。

すなわちクローズアップとロングショットの二つの眼が必要になる。

結論 

フライボールレボリューションの考え方そのものは数年前から分析していたようにすでにあったものであり、決して最新理論などではない。なぜアストロズが三振が最も少ないにもかかわらずホームランを最も打てる最強の攻撃力を持つチームとなったのか。超攻撃革命を起こしているアストロズにこそフォーカスを当て、真の最新トレンドを読み解くべきである。

当ブログとしては引き続きアストロズの超攻撃革命について、仮説を出しては検証を重ねていくつもりです。何かが隠されていることだけは間違いない。

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大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

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写真は古代ギリシャの神殿。