田中そしてダルビッシュ、長いキャリアの中で運不運は必ず相殺される

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06 /09 2017

ダルビッシュ の2012年と2017年の成績です。

2012年 ERA 3.90 FIP 3.29 LOB率 70.5
2017年 ERA 3.18 FIP 4.11 LOB率 84.8

2012年のダルビッシュが如何に運に恵まれていなかったかを裏付ける数字となっているように、2017年ではその逆であり運に恵まれていることを示しています。すべての人がセイバーメトリクスに対する理解をしているわけでもないという前提にして、これから初心者向けの記事を書きます。

例えばコイントスをして表面の出たのが10回中7回であり、裏面が出たのが3回だったとします。さて、このコインの表面の出る実力は何%であることを意味しているのでしょうか。

もしコインの表面の出る実力が80%であればサンプルを増やせば増やすほど、80%の確率へ収束してゆくはずです。しかしもしも全くシンメトリーなコインならば、何百、何千と試行回数を繰り返せばやがて限りなく50%へ収束していくことになります。シンメトリーなコインの表面の出る実力は50%であることは小学生でも理解しています。しかし実力が50%であってもサンプルが小さく10回にしか過ぎないと、7回も表面が出ることもあれば2回しか表面が出ないこともある。

短期的なここ一か月のサンプルでもって導き出されたERAを重視するということは、たまたま10回中、7回表面が出たらシンメトリーなコインの表面の出る本質的な実力を70%と見なすことと同じです。しかしFIPを重視するということは、目先のERAに囚われずシンメトリーなコインの表面の出る確率を50%であると洞察することに相当します。

昨年前田がERA0.47のダッシュをかけた際、セイバーメトリクスについて詳しくない一部の日本人ファンがはサイヤングだともて囃しました。その際に、セイバーメトリクスのふつうの理解がある人の間ではxFIPが3.60前後であり前田のERAも最終的には3.00台半ばへ向かってゆくことになるだろうと結論していました。前田に限らず。DETへ大型契約で移籍したジマーマンなどは4月を5試合でERA0.55・5勝0敗という圧倒的なピッチングを展開。しかし徐々に調子を落とし始め最終的には19試合の登板で、ERA4.87・9勝7敗という成績に終わりました。これなどもFIPへ注視していれば問題なくある程度、予測可能だったと言ってもいいでしょう。

特にシーズン全体を占うに短期的なERAで評価することは間違いの元になることは前田やジマーマンの例からも明らかです。

前田健太はクワーズフィールドをやり過ごせるのか

シーズン序盤ではペナント全体を見据えた時には、ERAよりもFIPやxFIPの方が大事だというのは、コイントスの例でも示した統計学的な根拠に基づいて言っています。

さて、そこでダルビッシュの727イニングというサンプルですが終身のERAとFIPの数字を比較してみます。

ダルビッシュ終身  ERA 3.28 FIP 3.26 727イニング

どうでしょうか。ボラスマクラッケンの知見の偉大さを改めて証明することになっています。単年度では大きくばらついても見事なまでにダルビッシュの終身ERA-FIPも限りなく0へ近似しています。今年の運の良さもこれまでのダルビッシュのキャリアにおける不運の調整が効いていると見なすことは可能です。

ちなみに一昨年末の記事です。

被弾率の高い NYYエース田中の行く末

より抜粋です。

「結論として基本的にあらゆる投手のERAはFIPへ向かってサンプルが多くなればなるほど近似していきます。2015年現在の田中、年通算でERA3.16FIP3.55です。今年に限っては田中のERA3.51FIP3.99。このままいけばの話ですが、短期的な話はともかく、田中のERAが単年度において4.00台に突入し、近い将来マスメディアから叩かれまくる日が来ることを示しています。それはセイバーメトリクスが示している厳然たるルールであり、(一部の例外を除き)この法則から逃れることのできる投手は基本的にいません。」

ある意味の運不運の調整が田中の場合も2017年になって効いていると見なすことも可能です。

田中将大  終身  ERA 3.53 FIP 3.78 556イニング 

かなり調整が効いてきていますが、1000イニングにも到達する内にERAはFIPへ更に向かって、より近似してゆくことはまず間違いありません。

繰り返しますが、基本的にもしあらゆる投手のERAはFIPへ向かってサンプルが多くなればなるほど近似してゆく統計的な傾向が認められないならば、FIPという指標を重視しERAと比較する意義は全くないと言っていいです。たしかにERAとFIPが近似しない例外の投手がいることもたしかなことです。しかしその一部の例外に対してのみフォーカスし、よってFIPという指標の持つ価値を過小評価するのは余りに愚かなことです。基本的には下記の記事通りで間違いありません。

被弾率の高い NYYエース田中の行く末

MLBとは長いキャリアの中で運不運は必ず相殺され、実力がむき出しになる世界であることをセイバーメトリクスは物語っている。

黒田博樹  終身  ERA 3.45 FIP 3.61 1319イニング

黒田もまたE-Fは0.16に過ぎません。ただし黒田の場合は勝ち運には恵まれなかった。ERA3.45はリーグ平均ERAよりも0.5は少ないはずですが、リーグ平均ERAで勝率500相当であるにも関わららず、なぜか黒田は79勝79敗という通算成績であり、如何にランサポートを黒田が受けてこなかったかという証明にもなっています。打線からふつうの援護を受けて勝ち運を持っていれば、100勝は軽くオーバーしている黒田の通算ERAだと言えます。+ERAは実に117。優秀です。

野茂英雄  終身  ERA 4.23 FIP 4.24 1976イニング 

しかし+ERAという指標でも97に過ぎません。平均以下の防御率であったということ。123勝109敗野茂は勝ち運には恵まれていたという結論でいいでしょう。逆に言うと、勝敗と言うスタッツが如何に古典的であり、その投手の能力そのものを反映したものではないという証明ともなっている。

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