2016NYY 「お前はすでに終わってる」

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04 /09 2016

情報によるとすっかりハーパーがヤンキースに入るのは既定路線とのことですが、【MLB】ヤンキースのB.ハーパー獲得は既定路線? 契約額は470億円規模か という記事が2016年2月5日にupされること一ヵ月半前になります。

「2018年 ハーパーをターゲットにヤンキースは動く!!」

2015年12月20日の記事において書いたように、ハーパー獲りを睨んでNYYは今オフ派手な動きをすることはないとした当ブログの予測は基本ほぼ想定通りであったということが言えます。<ジョージ・ウェイ(ジョージ・スタインブレナー流)>のように大号令を出してGMに裁量権がある程度与えられていた時代であれば、キャッシュマンGMが一人の重要なキーパーソンになってはきます。しかし<ハル・ウェイ(ハル・スタインブレナー流)>の時代にあっては、これまで指摘し続けてきたように予算管理を完全にコントロールしているのはハルであり、TOPの経営戦略的なターゲットが「ぜいたく税ライン」を切ることに絞り込まれている以上、もはやキャッシュマンの持つ働きというものは現時点においては極めて限定的です。

不気味な静けさを保っていたNYYについて、悪の帝国を司るキャッシュマンのことだからいつ何時、何をやる出すかわからないなどと指摘していた記事が如何に的外れであったかも明らかになりました。もはや悪の帝国というキャッチは2010年以前の時代遅れなものであり、あのオーナーが座っている限り、一定のリスクも織り込み済みなハーパーなどには大型の投資をしても、良くも悪くも冒険するチームではなくなったと考えるべきです。良く言えば真面目、悪く言えば遊びがなく実につまらない。それこそが<ハル・ウェイ(ハル・スタインブレナー流)>の最大の特徴であり、今日のスタメンなどにも全く華がないという特徴が見ることができます。7番セカンド、カノであったジョージの時代とは一線を画するべきです。

ここからが問題なのですが、この2015オフの静けさについて正しい動きであるとするライターが多い中で、当ブログは戦略的に明らかに間違っていると一貫して指摘しているわけですが、どちらが正しいのか最終的にはあと10年程度の時間があればそれは明らかになります。当ブログではジョージが死去した2010年を境として勝利の生産性は確実に落ちると結論しています。ベースボールというゲームは<運>という要素の比重が大きいために、未来について不確実なゲームではあり一回くらいWS制覇することはあっても、戦略が間違っていれば勝利の生産性は確実に落ちることになります。

ところで先日とても興味深い記事に「ソフトバンクの孫オーナーが金満野球の批判に反論!」があります。この記事を読んだ率直な感想は、孫正義というオーナーの描く戦いの構想はハル・スタインブレナーとは真逆であり、ソフトバンクの孫オーナーはほんとうの意味で実に戦略的であるこということでした。孫正義は言うまでもなくIT業界で一代で天下を取った男でもありますが、その戦略の原点は「孫子の兵法」にあると言われています。東洋のビルゲイツとも言われてその個人資産だけでも2兆円へ届かんとしており、ドナルド・トランプの資産を遥かに超えて東京ディズニーランドとディズニーシィーの両方を建設し、かつ40億ドルには満たないNYYそのものを購入してもまだ資金に余剰はあるという超金満ぶりです。

IT業界のみならずプロ野球に戦うフィールドは変わっても孫正義は天下を取ったように、領土を奪いあう命をかけた戦争に如何に勝ち生き残るのかという戦いの原理原則を示した<孫子の教え>は、資本主義における激しいシェア争いのみならず、野球の世界における戦いにおいても、共通する普遍的なルールがあることを示唆しています。

「ソフトバンクの孫オーナーが金満野球の批判に反論!」の肝となる部分には、孫正義が<チーム戦略>と<経営戦略>を巧妙にリンクさせ、正のスパイラルを形成し常勝かつ黒字を持続して具現させるべくその戦略構想が描かれています。それはかつて当ブログが是としてきた「ヤンキース帝国の黄昏」シリーズで繰り返し、ヤンキースが本来取るべき戦略であると主張してきたことと内容は基本一致しているものです。例えばMIAのローリアのように<チーム戦略>の目標である「優勝」は捨てて<経営戦略>の目標である「黒字化」をひたすら目指すという、そんなケチな真似を孫正義はしないということです。ローリアなどよりも、もっとスケールの大きな考え方を構想できる男です。

翻って孫正義という現代を代表する戦略家と二代目のハル・スタインブレナーがこれほど対極な姿勢を示しているのか、について考えてみるに、どうも重要なキーとなるものが<独占禁止法>ではないかと思うのです。孫正義が携帯事業やITといったマーケットで強力な競争相手とタイムベースで凌ぎを削って戦ってきたのに対して、MLBという業界はそもそも独占禁止法から唯一除外されているビジネスです。マーケットを独占できるが故に時間に関するコスト感覚を持たなくて済むならば、MLBの経営者として最大のコストは言うまでもなく、人件費となります。また人気に胡坐をかいて一定の売り上げを確保しようと思えば、超高額チケットを維持することになります。マーケットの独占が許され実質的なライバルがないために、そこそこ客が入れば値下げする必要性もありません。「売上」となる入場料は高く維持し、「コスト」であるペイロールを減らせば、NYYの黒字は大きくなります。しかし黒字を目指した結果、ヤンキースの観客動員は減少の一途であり、チームも弱くなるのは必然です。

更には独占禁止法から除外されていることは、チームの資産価値にしても大きな意味を持ちます。例えば潜在的にヤンキースのようなチームにはどこの州でもほしいというニーズは大きくあります。一方、供給が30チームと限られるわけですから、常に「需要>供給」となり、MLB機構の戦略がしっかりしてさえいれば、ワインを醸成するように黙ってチームを保有しているだけでその資産価値は時間とともにどんどん上昇してゆきます。

マーケットの競争に絶えず晒されている民間では、スピードこそが貴重な経営資源なのであり時間とはコストそのものです。ところがマーケットを独占することが許されているMLBというビジネスにおいては、(チームの順位は争っても)経営の観点からすれば激しい競争に晒されて会社の生き残りをかけた戦いなどすることも皆無であり、時間とはコストであるどころかチームを所有しているだけで勝手にチーム資産は上がり、結果スピードに対する意識は希薄となり、ハル・スタインブレナーに感じる独特の生温さを育んでゆくことになる。

ではもし孫正義がNYYのTOPに立ったら、どういうことをするでしょうか?

おそらくこういうことをするはずです。まず高額チケットを抜本的に見直し、平均10~20%オフの大胆な価格政策をぶち上げて、観客にハッと思わせて動員の減少に歯止めをかけることになります。東京ドームの巨人開幕戦などぎっしりとは対照的に今日の試合もヤンキーススタジアムの内野席は空席が目立っていました。5パーセント程度の値下げというようなケチな真似を孫正義はしません。大震災でも100億円の寄付をし、突然ヤフオクでも出品料金をゼロとしたように、戦力の逐次投入は最大の愚であることは百も承知であり、孫正義はまずハッとさせて関心を引き大きく集客しパイを大きくするところから始めます。多くの客が集まったところで、かつて値下げして減った利益を補填するべく、薄く広く多くのファンから回収するという段取りを踏みます。

更に収支のバランスを眺めてもまだ財政的にもNYYは余裕はあり、もちろん生え抜きも大事ですからドラフトの権利をうしなわないFAでの補強、もっと言えば優勝するためにプライスを確実にゲットするべく積極的投資をしペナント前からすでにファンが高揚するような方針を打ち出すことになります。

チケットが安くなり、プライスを獲得し本気で優勝を狙えるような体制を提示すれば、ファンはどういう動きを取るでしょうか。多くのファンに球場に足を運ぶようになり、その黒字を積極的にファンサービスのために戦力補強へ再投資をしチームが強くする。強くなれば、ファンはまた球場へ見に行きたくなるという黒字と強さの正のスパイラルが形成することをソフトバンクは実践してきたということです。この孫正義の戦略こそNYYも採るべき戦略であるということを当ブログでは繰り返し言ってきました。ソフトバンクの戦略は新人をも大事にするという意味では、<ジョージ・ウェイ(ジョージ・スタインブレナー流)>よりも更にステップアップされたものであるということもできます。

MLBの初心者の方が「NYYは悪の帝国と言われてきたが、なぜ2015オフにはほぼ全く動かなかったのか」という疑問について、「2015FAで一切動かなかったのも今NYYは新人を多く集め、チームの若返りを目指す過渡期にあり、2018オフにターゲットを合わせて戦略的に静観を決め込んでいるのであり基本正しい動きをしているのである」という解説も多く見かけます。しかしこれはほんとうの意味での解説にはなっていないのではないのか。このことについては、当ブログでははっきりと指摘しておきたいと思います。

尚、今回の記事の根底にあるリベラルアーツは、軍事の天才・ナポレオンとそのナポレオンを破ったプロイセンのクラウゼビッツにあります。

大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。