なぜ日米問わずDH制のあるリーグが強いのか?

未分類
08 /12 2015
インターリーグの成績を見れば明らかですが、MLBではアリーグがパリーグ同様に安定して毎年勝ち越しをしています。

これまでは財政的に金満なチームがアリーグの東地区に偏在していたことがリーグの実力差を決定づけるひとつの大きな要素でした。FA制度によって人材はリーグ間を自由に横断し、金があるところへ優秀な人材が集まります。例えば日本でいうと大物FAであった落合や清原も含めて小笠原や和田などは元パリーグであり、すべてセリーグへ移動しました。またセリーグ内であっても経済格差によって広島の金本や新井は阪神へ、村田、広沢、ラミレスやクルーンなどの選手は巨人へ、ギャラードやウッズをはじめ横浜からは中日へよく人材が流れ込んでいきました。よって特にセリーグは財政力がそのまま順位に反映されて、AクラスとBクラスがしばらく固定されるという実につまらない時代が長く続きました。しかし最近ではパリーグにおいてはソフトバンクが、内川をゲットしているように巨人を抜いて2015日本最大の金満チームへのし上がり、MLBにあってもペイロールの1位の座をNYYから奪取したのがLADです。かつてのようなリーグ間の財政力の格差はなくなる傾向にあります。よって財政力がリーグ間の実力格差を物語る原因とは考えられません。


にもかかわらず、なぜアリーグがパリーグ同様、毎年勝ち越す傾向があるのかというと、やはりDH制の存在を抜きに語れません。


では日米問わずなぜDH制のあるリーグが強いのか?


複合的ないくつかの理由が挙げられます。


国富論を説いたアダムスミスは、有名なピン工場を例として生産性向上のカギとなるものとは単純化、専門化、分業化であると言いました。第一のキーポイントはこのアダムスミスが言う単純化、専門化、分業化です。例えば投手の先発完投型というスタイルから 近代ではセットアッパーからクローザーという分業制が確立されより戦略的にシステマティックな体制が近代MLBでは取られました。「強さを合理的に求め、勝利を数多く生産し観衆を喜ばせる」をもってプロというならば、まさにこの投手の分業制はMLBの歴史とって必然でした。例えば監督という存在も最初は選手兼任からはじまり、やがて監督は専任されるようになり、更には監督をサポートする形でコーチも投手コーチから打撃コーチ、走塁、守備コーチという形でどんどん細分化され、専門化、分業化が促進されてきました。こうしてサポート体制もより厚みを増し進化してきたのがMLBの歴史です。

このように単純化、専門化、分業化はMLBの進化の歴史を紐解くには欠くことのできないキーワードです。


そしてDH制がもたらしたものとは、他ならぬ単純化、専門化、分業化でした。アリーグにはナリーグにはいない<守備を一切考えない打者のスペシャリスト>と<攻撃を一切考えない投手のスペシャリスト>が出現したわけです。これによってDHの打者も投手も、自分のやるべき選手としての戦略的なターゲットを単純に絞り込めることができ、専門化、分業化がアリーグにおいてより先鋭化されていった。これはアリーグのレベルをアップさせるには大きな意味を持ちました。


一方、競争原理から眺めると、アリーグの投手から見れば9番で息の抜けるナリーグに比べて、DH制は厳しい環境であり絶えず己の能力を鍛え上げられます。たとえ同じ能力を持っている投手であっても、より厳しい環境で置かれた者の方がやがて10年20年と経過するとより厳しいリーグに属する方が実力が上がるのは道理です。投手にとって過酷なリーグはアリーグです。


アリーグの打者からすれば、DH制によってバッターボックスに立たなくていいアリーグの投手は無駄な交代をさせられる機会も少ないために、優秀な投手がそれだけ長いイニングをマウンドに立つことができます。またアリーグの投手はバッターボックスに立たないために、死球による報復もなくより大胆に攻められるという効果もあります。すなわちアリーグの方が、投手がより大胆でありながら同時にDH制があるために細心の注意を払いながら打線と対峙するようになると共に、イニングを長く投げられる環境にある。


打者にとってからすれば、優秀な投手が降板する要素が減じるアリーグの方がそれだけ厳しい環境と言うことができますし、また、ナリーグに比べて、タイトルを獲得する、あるいは 打率の10位以内にランクインするでもいいですが、アリーグの打者の方がDHがいる分、ナリーグの打者よりも競争原理が強く働きます。競争原理が強く働くリーグに所属する選手の方が強くなるのは当然です。


揺るぎない結論としては、DH制のもたらすさまざまな要因が複合的に作用してDHのあるアリーグの方がインターリーグの数字で明らかなように、パリーグ同様 実力があると認めざる得ないのです。同じレベルなら必ず、イーブンに収束してゆくはずですが、そうはなっていない。WSやオールスターの成績はサンプルが小さすぎて、実力差を推し量るには不適切です。


まとめ


リーグ間の実力格差を決定づける原因には3つある。


●財政力(人材は金のあるところに集まる)
●DH制がもたらす単純化、専門化、分業化(生産性向上のポイント)
●競争原理(より厳しい環境のリーグの実力が上がってゆく)


結論としては数字が物語るようにかつてはナリーグの方が1970年台前後は強く人気のある時代もあったが、やがてDH制がアリーグに導入されて逆転現象が生じ、現代ではアリーグがまだ優勢な時代ではある。今後は総合的に見て実力が拮抗する時代に入ると考えられるが、DH制のもたらす効用は日米問わず無視しがたいものがある。


尚、この記事は「パリーグだけではない!MLBの2015インターリーグ事情」の続編です。DH制導入の歴史を紐解くと、ジャッキー・ロビンソンまで話は遡るという話になっています。



大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。