バリー・ボンズは必ず殿堂入りすることになる

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01 /21 2017

何事も明け透けに語ってしまう暴言王カート・シリングは、ラジオ番組で「現役時代にレッドソックスの トレーナーから禁止薬物を薦められた」と告白したことが過去に記事となったことがあります。あれだけPEDに身を染めたクレメンスにも手厳しい態度を見せてきたシリングのことです。シリングは良くも悪くも思ったことを口に出してしまう性分故に、率直であるからこそ、シリングの言葉に一定の信頼を持っています。

ところで2007年に報告されたミッチェルレポートなるものには、89名の中にボストンの現役選手は誰一人載っていませんでした。調査報告書を書いたのはボストンのフロントを務めたことのある元アメリカ合衆国上院議員のジョージ・J・ミッチェルであったことは周知の事実です。あまりに不自然な報告書であると言わざる得ない。ほんとうにボストンだけは他のチームとは違いステロイド汚染から絶対的にクリーンな場所であり続けたのだろうか。

ミッチェルとシリング、どちらを信用すべきなのか。

その答えは2009年にリークされた2003年の陽性反応リストが明らかにしています。2009年にリークされた2003年の非公開検査に陽性反応していた103名選手リストの中にボストンの選手は下記の8人がリストアップされています。

1.Nomar Garciaparra
2.Manny Ramirez
3.Johnny Damon
4.Trot Nixon
5.David Ortiz
6.Shea Hillenbrand
7.Derek Lowe
8.Pedro Martinez

全体の7.7%がボストンの選手によって占められているということになる。通常、平均的にばらけているならば30球団あるために、約3.3%。当ブログとしてはミッチェルレポートは明らかに記載されていなければならない選手の名前がオミットされているという意味で眉唾であると結論する。

ちなみに 2003年の非公開陽性反応リストにはバッジことI・ロドリゲスの名前は掲載されており、カンセコの暴露本にもはっきり名指しで掲載されているのはご承知の通りです。時系列で眺めると2005年のカンセコの暴露本で明かされていた事実を2009年にリークされたリストが図らずも裏付ける恰好となっているわけです。

アスレテックスでカンセコと同僚だったエースのデーブ・スチュアートは、暴露本「禁断の肉体改造」について「カンセコは多々問題のある人間だが、嘘つきではない」と言っている。2009年にリークされた陽性反応リストとカンセコが暴露本で名指しした選手はバッジに限らず、ジェイソン・ジアンビ、ラファエル・パルメイロ、フアン・ゴンザレスなどなぜか一致しています。ファクトベースでこの一致をどう受け止めるかは各人に委ねることにします。

もっとも検査の不備を指摘し一度は自らの罪を逃れることに成功したライアン・ブラウン同様に、バッジやペドロ、オルティースの一部のファンは2003年の陽性リストに名前があろうが殊更にその検査の不備を指摘し、それが黒であることを決定づけるものではないとして彼らを擁護しています。実際に白なのかもしれないし、それについてとやかくは言うつもりもない。なぜならば私にはそれを確かめる術もないからです。マスコミの追及の手も決して厳しいというほどでもない。

その一方で、同じく2003年のリストにあったソーサやボンズ、クレメンスは完全なるマスコミのスケープゴートになりその扱いは大きく異なっている。記者受けが良くなかった選手やあまりにド派手な記録を残した選手たちは、マスコミの標的となったということです。

では、次なる問題として実際どの程度、メジャーリーグ全体にPEDは蔓延していたのでしょうか。2003年の陽性反応リストに一定の瑕疵があったとしてもまさか、薬物使用者が最大で103名であったということはないはずです。1チームでメジャーのベンチ入り選手は開幕時の25名もいずれは怪我や不調などで入れ替わることなる。仮に1チーム平均33名の選手が一時であってもベンチに入るとすれば、メジャー全体では約1000名がフィールドでプレイすることになる。とすれば使用した選手の割合が約10%に過ぎないということになる。10%という数値を客観的に見る限り、汚染と言うほど事態は深刻ではないと判断するのが妥当である。

カンセコは暴露本でメジャーリーガーの約85%が薬物を使っているとも言っています。この数字そのものについては実際にカンセコが30チーム全体をすべてをカウントを調べて計算されたものではなく、あくまで自分が在籍していたチーム内の状況から帰納的に導き出した結論ではあるでしょう。もしカンセコの話を半分以下に聞くとしても、仮に30%のメジャーリーガーが薬物に手を出していたというならばざっと300名はいたと考えられます。

それに呼応するかのように薬物を使用していたが運良く検査を潜り抜けて、逃げ遂せた選手は軽く見積もっても100名以上はいつでもすぐに名前を挙げられると断言するジャーナリストがいるのは事実です。我々はこれらの情報をどう整合させ、現実をどう捉えるべきなのでしょうか。

カンセコはこうツィートしたとされています。

「どうしてバグウェルが殿堂入りできてマーク・マグワイアができないのか。こういうのは腹が立つ。禁止薬物使用者を殿堂入りさせたりさせなかったりする記者投票なんて偽善だ。マーク・マグワイア、サミー・ソーサ、ロジャー・クレメンス、ラファエル・パルメイロ。彼らが殿堂入りしていないなんてとんだ茶番だ。もちろん、バリー・ボンズだって殿堂入りしてしかるべき。バカにしているとしか思えない。本当に腹が立つ」

この意見の内容そのものについては括弧に入れるとして(当ブログではボンズは殿堂入りの資格は十分にあるがソーサやマグワイヤはNGという判断、理由はもちろんあるが今は省略)、カンセコは内実を知る現場にいた者としてジャーナリズムの正義とは如何に欺瞞に満ちたものであるのかに憤っており、十分に理解できる話ではあるのです。実際黒なのかはわかりませんが、このツィートを見る限り、カンセコはバグウェルが使用していたことを確信していることだけは事実です。

ちなみにボンズがPEDの威力に魅せられたのは、オールスターのクラブハウスでカンセコの凄まじい裸を目撃してからであると暴露本では書かれていました。ケン・カミニティが在籍したHOUでメジャーデビューを果たしたバグウェルですが、まさしくステロイド時代のただ中に身を置いていたのがバグウェルであり、なぜユニフォームがはち切れんばかりのボディビルダーのようにバグウェルは年々、筋骨隆々となったのか。

だから黒であると決めつけることもしません。ひょっとしたらバグウェルが特異な超筋肉体質だったのかもしれません。それに繰り返しますが私には黒を立証する手筈もありません。

いずれにしても現段階で殿堂入りした選手の中に、PEDを使用したことのある選手は皆無であると言い切れる人など誰一人としていない。だからこそ、深いジャーナリズムの精神というものがこの問題では要求されるのです。単純に白か黒かでしか物事を捉えられない者の言葉は時間の中で必ず敗れ去ってゆくことになります。

殿堂入り 私ならバリー・ボンズへ投票する ジャーナリズムの精神とは何か

この記事の冒頭に出てくるNHKで放送されたケン・バーンズの作品は2011年1/1に放送されており、記事自体は2012年頃、2016年にこのブログにアップする4年前に書いたものです。ひょっとしたら中にはネットでかつてその記事を見たことのある人が今もこの記事も読んでいるかもしれません。もちろん5年経った今の2017年であっても一貫して意見が変わることはありません。最近ではボンズやクレメンスらをあれだけメディアはバッシングしていたにもかかわらず、殿堂入りから遠ざかっているボンズとクレメンスへの評価に変化の兆しがあるとニューヨーク・タイムズは伝えています。

ちなみに

殿堂入り 私ならバリー・ボンズへ投票する ジャーナリズムの精神とは何か

の最後はこの一文で締めくくっています。

「時間というものはその対象との距離を適正に取らせる働きがあります。時間には人を冷静に立ち返らせる力があると言ってもいい。私の歴史観に基づいた直感ですが、おそらくボンズはいずれかの機会(ベテランズ委員会)において、必ず殿堂入りすることになります。」

クレメンス
2013 BBWAA (37.6%)
2014 BBWAA (35.4%)
2015 BBWAA (37.5%)
2016 BBWAA (45.2%)
2017 BBWAA (54.1%)

ボンズ
2013 BBWAA (36.2%)
2014 BBWAA (34.7%)
2015 BBWAA (36.8%)
2016 BBWAA (44.3%)
2017 BBWAA (53.8%)

しかしこの予言、逆の意味で外れる可能性が出てきました。ベテランズ委員会ではなく、まさかの記者投票で選出されるという可能性が出てきたということです。さすがに、ここまでは予測不可能であったことは正直に告白しておかなければなりません。2012年当時の空気感は今とは全く違いが私のような意見は極めて少数派であり、スポーツライターにせよ、多くのファンにせよ、ボンズ=悪であり、殿堂入りなど絶対にあり得ないという空気が支配的でした。その潮目が大きく変わりつつある2017年の投票結果と言ってもいいでしょう。たとえボンズに肯定的な記事であっても、「ジャスティスというものを打ち出すには、そこには必ず深いバランス感覚が要請されている」ことを真に意識したものはあまりありませんでした。

改めての結論

バリー・ボンズは必ず殿堂入りすることになる。



多数やスポーツライターの意見と反対の立場であった時、どちらの意見がほんとうに正しいのかを判定するのは、多数決や肩書ではなく<時間>であると言ってきました。このボンズの殿堂入りに対する判断もどちらが正しかったのか、いずれ必ず決着がつきます。

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