2017年大谷翔平、メジャー移籍問題の本質を戦略的観点から紐解く

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12 /13 2016

インターナショナルFA25歳未満ルールの戦略的な思惑について3つの側面から考えることによって、この問題をきっちりと頭の中で整理してゆくことを本稿の目的とします。

まずMLB機構のインターナショナルFA25歳未満ルールを掲げた戦略の目的としては、すでにおわかりのとおりJリーグのように絶えず入れ替え戦のあるような下部リーグをもたないメジャーリーグ(マイナーリーグはあくまでファームでありメジャーリーグとの入れ替えはない)では、スポーツマーケティングの基本でもある戦いのドラマ性を演出すべく<戦力均衡化を測る>ことが第一義に挙げられます。FAと完全ウェーバー制度のリンクや贅沢税の強化などの施策の延長線上にインターナショナルFA25歳未満ルールもあり、金持ちチームが有利になり過ぎないために契約金及びサラリーに強力な規制が課せられたということになります。このインターナショナルFA25歳未満ルールで利益を得るのは、メジャーの球団というよりもより正確にはミドルマーケット以下のチームが得をします。

なぜマンフレッドこのミドルマーケット以下のチームに対して厚遇するのか。

それは単にマーケティングに沿った戦力均衡化だけでなくコミッショナーの権力の基盤が75%オーナーからの信任によって成立しているからでもあります。もしインターナショナルFA25歳未満ルールがない場合、大谷獲得が現実味を帯びるのは30チームでもせいぜい25%以上の金持ちチームに限定されるはずです。7~8チームの上位金持ち球団の争奪戦になるのは道理です。マンフレッドの権力基盤を盤石にする上では戦略的にミドルマーケット以下に相当する75%のチームへ配慮した施策を打ち出すのはある意味当然とも言えます。これがマンフレッドがインターナショナルFA25歳未満ルールを打ち出した隠された戦略的な第二の目的でもあります。

そして第三の目的こそが最も重要になります。

今回のルールはドラフトの対象となる米国 カナダ プエルトリコの三か国以外の25才以下のプロスペクトに対しては、たとえ大谷であろうが基本マイナー契約の新人扱いを一律するということであり、不当に安いサラリーが抑えられてしまうことになります。このインターナショナルFA25歳未満ルールはインターナショナルドラフトの亜種として登場した制度であり、この制度の最終的な狙いとはずばりMLBを頂点とした世界中に点在するあらゆるベースボールのリーグを配下に据えるといった世界戦略の一端にあります。日本のプロ野球にとって独立リーグは実質ファームの役割を担っているように、このインターナショナルFA25歳未満ルールの本質にはMLBの傘下にNPBも将来的には据え置くことを狙いとした制度であることを見抜かなければなりません。

もしNPBとMLBが対等な立場であるならば、10年に一人の逸材と言ってもいい松坂に対する西武保有権が50億円超であったことからもわかるように、100年に一人の逸材と言っても過言ではない大谷に対する日本ハム保有権は年齢も加味して考えた時、少なく見積もっても70~80億円程度はあるはずです。更に大谷についても8年契約をベースで240~50億円前後のオファーがあってもおかしくはありません。本来、フリーであれば合計330億円前後の価値はある大谷のディールも、MLBが決定したこのルールによって総額も1/10程度に抑え込まれてしまうということになります。

手始めにポスティングフィーを上限2000万ドルとしたその実務の担当者は他ならぬマンフレッドでした。これが第一段階だったのです。そして今、第二段階のインターナショナル・FAで25歳未満というルールを作って大谷を新人扱いするという制度を成立させました。外堀はどんどん埋められているのであり、2021年のCBAにおいてインターナショナル・ドラフトをマンフレッドは本格的に実現させる腹積もりであることは知っておいてもいいでしょう。アングロサクソンの戦略性は数十年単位で物事を眺め、一歩づつ着実に推進させてゆくところに真の怖ろしさがあります。ほんとうに大谷翔平を安売りしてもいいものなのか。日本のプロ野球がじわりじわりと危機的な状況に追い詰められつつあるような気がしてなりません。


次にこのインターナショナルFA25歳未満ルールによってもたらさられる損失について眺めていきます。まずこのインターナショナルFA25歳未満ルールによって被害を被るのは中南米でベースボールアカデミーを無料で開講し、メジャーリーガーの卵を育て、その契約金の20~30%の報酬を得ることによって成り立っているドミニカなどの中南米の国々です。この改正案によって中南米のベースボールカルチャーを破壊してしまう点が第一の損失に挙げられます。アカデミーの収入が減れば自ずからドミニカ等のレベルも下がっていきます。それも織り込み済みで、MLB機構は中南米に直接乗り込んで養成所を開講し、コストカットを戦略的に実現しようと目論んでいるとも伝え聞きます。他国の文化もMLBの繁栄があれば破壊することも厭わず、力こそが正義だと言わんばかりの姿勢もMLB機構はどうやら持っているということです。実に怖ろしい組織です。

またベースボールで稼げるチャンスが縮小する今回のルール改定は、ボラスも言うようにベースボール以外のプロスポーツへ優秀な人材が流れる可能性があるということであり、ひいてはベースボール全体の衰退を招く怖れがあります。

更に言うならばスポーツマーケティングの基本として弱者を優遇する共産主義的な手法は正しいあり方ですが、それが行き過ぎるとき強者のやる気を削ぎ、リスクを取ってでも投資へ向かう意識からコスト削減によるチームの利益拡充主義へ傾きかねず、球界全体にダイナミズムが失われる可能性が出てきます。

以上まとめます

インターナショナルFA25歳未満ルールの戦略的な3つの狙い

1)戦力均衡化によるスポーツマーケティングの強化
2)マンフレッドの権力地固め
3)世界に点在するベースボールリーグを最終的にはMLBの傘下に収める世界戦略の一貫

インターナショナルFA25歳未満ルールの弊害

1)中南米を中心としたベースボール・カルチャーの破壊
2)金銭的な魅力が薄れるため、他のプロスポーツへ若いアスリートが流出する可能性
3)弱者優遇の手法も行き過ぎれば、強者の姿勢も守りに入り全体の発展阻害要因となる

複眼的かつ巨視的な視点がこの問題を眺める際には必要になってきます。少なくとも上に挙げた6つのポイントくらいは頭で整理して、この大谷2017年問題と向き合うべきではないでしょうか。どうも大谷がメジャーへ渡るのかどうかという点に問題が矮小化されている印象が否めません。そしておそらくそう考えているのは私だけではないはずです。

マンフレッドには十分警戒した方がいいというのが、戦略をテーマにしてきた当ブログの結論です。

大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。