ダルビッシュの提言 ロースター26人になるのか 投手の健康問題

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11 /29 2016

ダルビッシュがトミー・ジョン手術を受けることが決定した際、2015年3月ネットの某所で書いたもののダイジェストをここに掲載します。ベースボールと野球に横たわっている投手の健康についてのお話です。一部加筆修正してありますが、コンテンツについては基本そのままです。

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奪三振王も獲得し、サイヤングポイントにおいて2位に入ったこともあるダルビッシュ有はMLBにおいては歌舞伎で言うところの千両役者 相撲で言う横綱大関レベルの投手です。(実際ダルビッシュが来年のFAでどういう契約を結ぶかでもそれは明らかになるでしょう。)ダルビッシュに限らず、看板スターであるエースが次から次へと欠場するMLBというショービジネスの<興業>というものがほんとうの意味で成立するのかどうか?そうした根本的な疑問が私にはあります。

結論からすると各チームに委ねるだけでなく、MLB機構自体がスーパーエリートクラスの投手の相次ぐ 戦線離脱に本格的にメスを入れるべき改革の時期に来たと考えます。

これまでの意見を見る限り、ほぼすべてが判で押したように<中四日>はメジャーの文化であり、それに適応してゆくのがメジャーの投手の宿命であるというものばかりです。(当時の雰囲気としてはダルビッシュの提言は現実的ではないという論調一色であったと言ってもいいでしょう。)しかし過去の歴史を紐解くと 1970年代くらいでしょうか、当時の常識は<中三日>でした。あるいはボールというものも 時代によって大きくその質は変わっています。ホームからマウンドまでの距離や高さなども時代の環境に応じて 変化し続けてきているのです。今ある<ボールの皮の質><マウンドの硬さ><中四日>という現代の常識が、これからも未来永劫変わらないものとして、MLBで継承され続けてゆくものなのかどうか?この点については改めて考えてみる価値があります。歴史的観点からすれば、「時代の流れに適応して絶えず変化するもの」と「時代の流れを越えて不変であり続けるもの」、その二種類にあらゆるものは篩いにかけられることになります。

肘の故障の原因は複合的なものによって構成されていますが、最大の要因のひとつはダルビッッシュも言うように、「投球間隔の短さ」及び「投球数の多さ」による投手への過負担にあります。それはスポーツ医学を紐解くまでもなく明らかなことです。更には「マウンドの硬さ」や「ボールのグリップ」、「スプリット スライダー系の多投」や「投げ込み」などが問題として挙げられます。

この問題は各投手の個別性が高いために、一般論として括るのが非常に困難でもありますが、それ故に実にさまざまな意見が飛び交っています。しかし気をつけなくてはならないことは、ある一側面をクローズアップしそれを拡大解釈して その見方を正しいと思い込むことの愚かさです。例えばスライダーの投げ込み過ぎこそが最大のネックとなっているというセンセーショナルな意見が先日も出ていましたが(当時そうしたコラムが出ていたのです)、そうした極論では駄目だということです。

メジャーでは投手の肘を消耗品として考える文化があり、甲子園という日本プロ野球の土台を成すこの野球文化を真っ向から否定する考え方が主流となっています。そして日本人がメジャーへ来てこれだけ故障するのは甲子園に大きな原因があるとしています。ところがアメリカの投手はハイスクール時代、日本の甲子園球児以上に強力な投球制限を受けているにもかかわらず、日本プロ野球でのみプレーし続けている元甲子園投手がトミージョン手術を受ける確率よりも、遥かに高い実に30パーセント強がトミー・ジョンの手術を受けています。ハイスクール時代に強力な投球制限を受けているアメリカの方が格段に手術率が低いのなら、甲子園時代の投げ込みが故障における根本的な原因であるという説にも大いに説得力はあります。しかしそうはなっていません。むしろアメリカほど制限していないにもかかわらず、ダルビッシュにしても田中にしても和田や藤川、松坂など、日本時代には何らの問題はありませんでした。日本プロ野球ではピンピンしていた日本人投手が、メジャーにいった途端、次々と手術送りとなっているわけです。(田中は回避)

つまりアメリカの環境の中にも日本人投手が次々と故障する要因は確実にあるのであり、甲子園と田中やダルビッッシュの故障を安易に結びつけるアメリカで見られる分析は余りに恣意的であるということです。登板間隔や球数だけでなくボールの質やマウンドの硬さも含めて総合的に故障率に影響を与えている要素を考える必要があります。

ではその中でもMLB機構が着手できるものには何があるのか。

肘・肩へ与える全体の負担感の多くは

投球間隔(質)×投球数(量)=最終的な投球数(全体)

で表現できます。中一日や中二日で100~120球を投げ続けさせれば中日の権藤のように、あっという間にぶっ壊れます。実験として同じ投手を中四日100球で投げ続けるのと中五日100球で投げ続けたのとでは比較すれば、年間での登板回数が違うため中四日の方が故障するリスクは当然高くなります。

これに対するMLB機構が講じることのできる一つの対策としては、中五日に移行すべくロースターの枠を26人にするか、あるいは日本のように週一回月曜を休みの日として設けるべく開幕日を前倒しにするのかいずれかが考えられます。おそらくスターター用にロースターの枠をもうひとつ設けるというのが現実的です。あるいはボールの皮をグリップの効く日本製にするだけでも肘への負担は軽減されます。(時がやや下ってグリップの効く日本球への変更も視野に入れているといったマンフレッドのコメントも以前にはあったのですが、気が付くと立ち消えになっていました。MLB機構がやろうと思えばできることなので是非着手して欲しいところです。)またマウンドも過去の歴史でいくらでも変わってきました。上半身主導を是正すべく下半身の粘りが効くようにマウンドの硬さを調整という方法もあります。

球種か?投球間隔か?球数か?マウンドか?ボールの質感か?

「あれかこれか」ではない。何かに絞り込んでゆくような袋小路に入ってゆく方向性ではなく、むしろ「あれもこれも」という発想を選択すべきです。投手の健康問題はあらゆる手段を講じてMLB機構が対策を打つだけの価値ある問題です。全方位的にあらゆる方向から包括的な予防対策が望まれています。甲子園の安楽のような起用法は言うまでもなくNGだとは考えています。投げ過ぎによって肘や肩に<過負担>になるのは問題です。しかしながらアメリカ偏重でメジャーのように<過保護>になり過ぎるのもまた問題なのではないか。というのも手術率の低いNPBでは20歳を超えて体が出来上がってくる頃から 投げ込みをある程度すると、逆に力感の抜けたフォームを体自体が自然に探すようになり、結果 投手生命を長くするという意見も日本のプロ野球には根強くあります。この考え方を無下に否定できるものではありません。なぜなら20年間も故障しらずで馬車馬のように投げ続けたライアン本人が自らのキャリアで証明したように投げ込みを肯定しているわけです。過保護でも 過負担でも、どちらに偏っても駄目なのであり、そのギリギリのバランスを見極めながら 包括的に対策を講じてゆくことが大事になります。

故障率データを見ても明らかですが、日本のピッチャーはアメリカと比べてトミー・ジョン手術を受ける選手が率として半分です。アメリカの方法が正しく 日本のやり方が間違っているとするこうした極端な考え方こそが正しい認識を退けている。なぜ日本でのみプレーし続けているプロ野球の元甲子園球児の方が手術の確率が低く、 なぜ 日本ではピンピンだった投手がメジャーに行った途端、手術確率が格段に上がるのか、そこにはアメリカMLBが取り組むべきヒントが間違いなくあります。

結論の一つとしてMLBの歴史を私が学んできた限り、今の<中四日>という常識はスポーツ医学の革命でも起こらない限り今後変更を余儀なくされ、おそらくいずれ<中五日>へメジャーも変わってゆくことになるでしょう。ベースボールと野球の狭間にも同じ競技でありながらマージナル(境界線)が存在しています。そのマージナルを跨ぐような広い視野を持つことこそが、この問題と向き合う時、必要となるはずです。

後記)

スターター6人制についてはその予兆らしきものは垣間見えるという程度であり、実際今のところは現在も5人で回しています。正直どうなるかはまだよくわかりません。ただボールの皮を日本製にし、ローテを6人制にするだけで故障率は格段に下がることだけは間違いありません。

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日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

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