大統領選で大敗北を喫したMLB天才セイバーメトリシャン、ネイト・シルバー

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11 /09 2016

かつてMLB関連のコラムニストであった季啓充さんが書いた「大統領選とセイバーメトリクス」というタイトルの記事があります。セイバーメトリクスの威力が選挙戦の予測において、瞠目すべき成果を上げているという論調の記事であったわけですが、今回はその真逆の記事を書きます。なぜネイト・シルバーの予測システムは今回の大統領選で大敗北を喫したのか、その理由を最後に記しておきます。

「田口壮の解説力 その奥深さを探る」

この記事ではセイバーメトリクスのプロジェクションを通して、野球というゲームの持つ予測可能性と予測不可能性について示しました。 最も肝となる部分を一部抜粋、加筆修正


「地区優勝した2014のオフに、サイヤングを受賞したマックス・シャーザーを獲得して満を持して2015のシーズンに臨んだWSHは、セイバーメトリクスのプロジェクションでも30チームで最もPOに出る確率が高いとされていました。同じく地区最下位に沈んだTEXは、2014のオフに大した補強もせず開幕直前に絶対エース・ダルビッシュをトミー・ジョンで欠いて、もはや勝ち目は全くなしという状態で2015のシーズンに入りました。

結果的にシャーザーまでも補強し万全の体勢であったWSHは負け、最下位でありながらダルビッシュまでも欠いたTEXが地区優勝を果たしました。まさしく「野球とは筋書きのないドラマ」であり、2015このようなTEXが地区優勝し、WSHがPOすら逃すという結果になることは誰ひとり予測できた者はいなかった。一方において、CHCはセイバーメトリクス的にも2016年においては優勝の大本命であったように、間違いなくセイバーメトリクスによるプロジェクションは一定の精度を持っておりベースボールとは数のスポーツというように、統計学に基づいた<予測可能性>を帯びたスポーツであるということが言えます。

このようにベースボールの奥深さというものは、未来への予測不可能性と予測可能性の狭間にたゆたっている点にこそある。一定のドラマ性と合理性の融合にこそ、ベースボールの妙味があると言ってもいい。」


MLBという場で統計学の手法を用いて「PECOTA」というプロジェクションシステムを最初に開発したのが、ネイト・シルバーというセイバーメトリシャンでした。BSのMLB番組でもセイバーメトリシャンのダベンポートさんが選手の成績予測などを披露していますが、その魁が、ネイト・シルバーであったというわけです。

この統計的な手法を分野を跨ぎベースボールから政治へと拡張展開し選挙の予測に応用し、ネイト・シルバーは2008年の大統領選では49州の結果を的中させ、2012年の大統領選では50州すべての結果を予測し、ネイト・シルバーは現代の予言者であると持ち上げられました。

さて2016年の大統領選におけるネイト・シルバーの予測は、日々刻々と変化するものの1年以上も前から終始一貫してクリントンが勝つとしていました。しかし完全に予測は外れシステムの大敗北となりました。日本の政治に関する識者に聞いても、ネイト・シルバーの予測通り8人いれば1人トランプ当選を主張する人がいればいいという感じでした。そんな中、明確にトランプが大統領になるだろうと一貫して主張していたのは日本では私が知る限りでは下記3人です。

藤井厳喜(国際政治学者)木村太郎(政治ジャーナリスト)馬渕睦夫(元ウクライナ大使)

マスコミや多くの識者の意見を鵜呑みにしてはならない、トランプ現象を正しく洞察すべきであると指摘していたのは下記2人。

有本香(ジャーナリスト) 三浦瑠麗(国際政治学者)

トランプにも多少の体重をかけながらも佐藤優のように結局はどっちが勝つかわからんという程度の両天秤はオミットしています。

では、なぜネイト・シルバーの予測システムは外れたのでしょうか。

木村太郎の言葉にすべてが集約されています。これは藤井厳喜も全く同じことを言っていました。

「日本の識者と言われる人は何をやっているかというと、ニューヨークタイムスとワシントンポストとCNN(通称クリントン・ニュース・ネットワーク)を見てそれで判断している。 だがその3つは全部ヒラリー支持。こんなにえげつなく攻撃するのかというぐらい、ヒラリーを支持してトランプをたたいている」

アメリカの大手メディアの大統領選における世論調査のデータの取り方が最初から、クリントンを勝たせようと恣意的にチョイスしていたことに少なくとも藤井氏と木村氏ははっきりと気づいていました。(馬渕睦夫はグローバリズム対ナショナリズム という世界の流れを鳥瞰するが如き分析力によってトランプが勝つと予言。こっちの方がある意味凄い。)しかしネイト・シルバーは政治学者でもなく、一データ分析家に過ぎなかった。トランプ下ろしを目論む大手メディアから出てきたその恣意的なデータを真っ当なものとして取り扱いコンピューターに打ち込むしかできなかったというわけです。というよりもデータにメディアバイアスがかかっていることくらいネイト・シルバーもわかっておりプロジェクションでも補正することくらい当然しているはずです。それがシルバーの想定するよりも遥かに大きなものであったことを洞察できなかったと言うべきでしょう。ちなみにこうしたネイト・シルバーや多数の識者がひっかかった大手メディアのデータ収集におけるバイアスを一般に選択バイアスと言います。

参考までに馬淵睦夫はイギリスのEU離脱についても、グローバリズムとナショナリズムの相剋という文脈から見事にEU離脱を的中させました。データ分析家のネイト・シルバーの予想は残留。ネイト・シルバーの2連敗です。

ビッグデータよりも本物の洞察力は勝つことがある。

この大統領選、分析力において解説者の真贋がはっきりと示された選挙でありました。日本の世論、識者の多数は明らかにクリントンが勝つと思い込んでいました。

最後に再掲になります。

当ブログの基本理念として、「リベラルアーツの力を信じる」というものがあります。リベラルとは自由、アーツとは技術の意。リベラルアーツとはあらゆる固定概念やバイアスから真に自由になるための知的な技術ですが、当ブログが格闘している真の敵とは外からの批判ではなく己の固定概念であり様々なるバイアスである。

民意を誘導しようとしてし切れなかった、マスメディアこそが今回の大統領選、最大の敗北者であるのかもしれません。

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