強い者が勝つ!それが二つの呪いを解いたエプスタイン・スタイル

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10 /26 2016

今回はLADサイドではなく、中立な戦いの原理から眺めた時、CHCがどう見えるかという記事です。

今から3~4年くらい前になるでしょうか。

BOSの攻撃・BABIPと防御・被BABIPについて取り上げていた記事がありました。パークファクターからするとフェンウエイにはグリーンモンスターがあるために特に二塁打を中心としたヒットの出やすくメジャーでも屈指のBABIPが高い球場です。サンプルをきちんと採って調べるとBOSの攻撃・BABIPはリーグ1位であるに対して防御・被BABIPはリーグ平均レベルであり、BOSはとても運がいいと結ばれていたように記憶しています。

しかしBABIPの特性を知っていれば、そういう分析にはなりません。まず大前提としてサンプルが多ければ運不運は相殺される。つまりBOSの攻撃・BABIPと防御・被BABIPの格差を決定づけているものとは<運不運>などではなく「力」にこそあるのではないだろうかという仮説が出てきます。というのもBABIPが「運」そのものを表現している指標ではないからです。特に攻撃のBABIPは打者の能力をかなり反映する指標です。

もしBABIPが「運」そのものを表現しているならば、長い期間同じ球場でプレーしているBOSの<攻撃>BABIPと<防御>被BABIPのリーグにおける相対順位はほぼ一致してくるはずです。しかしそうはなっていない以上、BOSの投打における実力がBABIPの数値にも反映しているに違いないと判断し、パークファクターの影響も排除したチームの実力そのものを把握できる攻撃WARと投手WARを当ブログでは調べてみました。

するとその当時の直近10年間におけるBOSの攻撃WARは30チームで1位と投手WARは30チームで1位と出てきたわけです。(当時の投手fWARはFIPとパークファクターを考慮した実にあっさりしたもので、今のように守備力やBABIP、LOB率の影響を排除していませんでした。今のサイトで調べてもfWARはそれなりの変動があることのご注意ください。セイバーメトリクスの指標には算出式の進化とともに、数値も毎年、微妙に変化してゆくものがあります。そこが打率や本塁打、打点というような旧指標との大きな違いの一つです)

仮説通り、BOSの投打における実力がBABIPのはっきりとした格差をも生み出していたことが確認できました。

と同時にこんなことがすぐに理解されました。ルースの呪いを破るためにエプスタインはセイバーメトリクスを駆使しWAR1位と投打共にたたき出すことにより、勝つべくして勝つというスタイルを確立することによって、10年で三度ものWS制覇したチームの礎を築いたのだと。おそらくカブスの「ビリー・ゴートの呪い」を解くために、エプスタインはBOSと同じようなスタイルでやってくることはすぐに予想できました。すでに昨年に時点で地区3位であったものの投打を合わせた総合WARが30チームで1位であり、ターゲットであるワールドシリーズ制覇に向けて完全にロックオンされた状態であったと言えます。そしていよいよ総仕上げとして2016ゾブリスト・チャップマン・ヘイワード等の的確な補強をし満を持して現在に至った。

CHC2016投打の総合WAR30チームで1位。

勝つべくして勝つ。力で寄り切るスタイル。それがエプスタインのチーム作りにおける真骨頂でもあり、現代における最高の戦略家と言ってもいいでしょう。

たしかにマドンは素晴らしい監督ですが、勝利にとって監督以上に重要なのが、戦力のロジスティクスです。そう言っているのは魔術師と言われた三原脩であり、ミラクルメッツを演出したギル・ホッジスです。それは野村克也の監督99%説とは一線を画するものです。監督としてできることの限界をきちんとわきまえていないと、阪神の万年最下位という現実を突きつけられることにもなります。野村克也よりも三原脩の方を当ブログで評価しているのは、例えばこの客観性です。

千葉茂が近鉄の監督になる際にも、三原脩は「チームが優勝するために最も重要なのはオーナーの真剣に勝ちたいという姿勢である」とアドバイスを送っています。監督の力だけではどうにもならない部分があるのだと三原脩ははっきりと認識していました。

現代のMLBにおいてロジスティクスに最終責任を負っている者とは、言うまでもなくGMです。「ロジスティクスを整えれば、チームは勝つべくして勝つのだ」ということを何度も再現し証明してみせたエプスタインの手腕は見事という他ありません。再現性があるということはそこに何らかの技術が隠れているということでもある。




最後にちょっとした余談。投手の力量を測る上で、K/BBという指標はセイバーメトリクス的には極めて大事なものとなります。過去1900年以降でイニング数2000以上でソートをするとK/BB4.00を超える投手は3人しかいません。ちなみに、あれだけ制球力に優れたクリフ・リーや現代最強左腕のカーショウでもキャリアでは4.00を切っています。4.00を超えることの意味がここからもわかるはずです。

1位がシリング4.66、2位がペドロ4.30です。

両者の共通点が何かわかるでしょうか。

BOSのエプスタインが獲得した投手だということです。セイバーメトリクスにおいて歴史的な発見と言ってもいいDIPS(FIPはその一種)を提唱したぼボラス・マクラッケンをBOSはデータアナリストとして採用しましたが、BOSというチームはK/BBという指標の重要性についてかなりの早い段階で気づいていました。ちなみに上原のK/BBはブルペン枠でありながら7.91というもので、球史に残るレベルの高い数値をキャリアでも残しています。言うまでもなくこのボラス・マクラッケンこそがK/BBの重要性を最初に提唱した人です。

総合的な戦力を揃えることによって相手を寄り切るというスタイルのCHCと機動力や守備力を中心としたスモールなCLEにおけるワールドシリーズの戦い。それは「強い者が勝つ」という強者のCHCと「弱者は必ずしも負者ならず」という弱者のCLEの戦いとも言えます。いよいよ最終決戦が始まります。

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日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

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写真は古代ギリシャの神殿。