野村IDの源流には「カージナル・ウェイ(カージナルス流)」がある 

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05 /16 2015

スモールベースボールというと、どうせ時代遅れの日本の高校野球だろう的に高をくくられていた時代、5年前にこの記事の大本は書いたものです。(一部加筆修正)実際、「マネーボール」いう枠を通しベースボールを眺めることを持って、時代の先端に躍り出たかのような錯覚をしている人たちが数多く存在していた時代でした。


その時スモールベースボールの歴史を俯瞰できるようにコンパクトにまとめた記事です。


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古くは1900年以前のジョン・マグローに起源を持つスモールベースボールですが、それらが成熟し、1950年から1960年ころドジャースがスモールベースボールを駆使し強いチームを作り優勝したのが歴史的なひとつの大きな節目となっています。いわゆる<ドジャース戦法>と言われるもので、このドジャース戦法を輸入しV9を達成したのが日本のプロ野球史上最高の監督とも言われる川上哲治でした。


近代プロ野球の父とも言える野村克也は当時、最先端をいっていた川上野球を大変リスペクトしその強さの秘密を研究していたわけですが、こうした中、野村に決定的に大きな影響を与えたのが1960年代後半に南海に入団したドン・ブレイザーでした。


この野村にカルチャーショックを与えたドン・ブレイザーこそはオールスターにも選出されたこともある元セントルイス・カージナルスの名二塁手であったのです。現代においてセイバーメトリクスが時代の先端であるように、1950年代の後半のNLでは「ドジャース戦法」こそがまさに時代の最先端であり、ブルックリン・ドジャースと凌ぎを削って戦っていた、セントルイス・カーディナルスも当然のように、このシンキングベースボールを取り入れて戦っていました。


歴史を俯瞰すれば、現在の「カージナル・ウェイ(カージナルス流)」の始まりも、大きな意味においてドン・ブレイザーがバリバリの現役であった1950年代後半において隆盛を極めた「ドジャース戦法」スモール・ベースボールに求められると言ってもいいです。


「チームを勝つために時には自己犠牲の精神も求め、個々の選手を攻守にわたって己の役割を全うし組織的な動きをもって良しとし同時に、シンキングすることによって状況判断力を高め、勝負強さを発揮する、いわゆるチームとしての意識が統一された緻密な全員野球」


こうしたシンキングベースボールの<レシピ>は、セントルイス・カージナルスの長い歴史と伝統の中で、味わい深いワインのように熟成され、過去の栄光と挫折の中より汲み上げられたその洗練されたノウハウは、今やSTLのメジャーからマイナーの最下層に至るまで隅々まで行き渡り、現代のSTLを強豪まで押し上げることになる「カージナル・ウェイ(カージナルス流)」として確立されていきます。


結局、野村克也という人の野球観に大きな影響を与えたものをさまざまな文献を読む限り、そのルーツを辿るならばドジャース戦法(スモールベースボール)ドンブレイザー(シンキングベースボール)、そして投手の癖を見抜いて球種を洞察するテッドウィリアムズの打撃理論、以上3点です。


野村IDの原点はすべてメジャーリーグにそのルーツがあります。


さて、この知将とも言われる野村克也とどこか似通ったものを感じさせる、抜け目のない野球を志向するメジャーリーグの監督にエンジェルスのマイク・ソーシアがいます。このマイク・ソーシアこそは、元ドジャースの名キャッチであり、スモール・ベースボールにおける歴史的継承者でもあります。彼こそは現役の時に徹底的にドジャース戦法を叩き込まれていた選手だったわけです。そのスモール・ベースボールのエッセンスがソーシアが指揮する現在のエンジェルスの野球の原点にあります。


更にこのマイク・ソーシアには門下生が現在3人います。


最も有名なのは元レイズのジョー・マドン監督です。レイズというチームもセイバーメトリクスとスモールボールを自在に組み合わせて、メジャー最難関のアリーグ東を何度も制覇しています。

あるいはソーシア門下生の元パドレスのバド・ブラック監督もスモール・ベースボールを駆使しています。ペトコという最大のピッチャーズパークを本拠地にしており 守備力と機動力を前面に出した戦いをしています。最優秀監督賞を受賞しました。

更にもう一人ソーシアの薫陶を受けたのがプレーオフにも進出した元ブルワーズの ロン・ローニック監督です。青木とブラウンのダブルスティールをノーアウトからしかけるなど、スモールなベースボールを得意とする監督です。

以上この3人の監督はソーシア門下生としても有名です。


他にもライアン社長自らがスモール・ベースボールへの原点回帰をスローガンとして掲げたようにテキサス・レンジャーズが挙げられます。チーム全体として極めてベースランニングの能力が高くスモールベースボールが骨の髄まで行き渡っているロン・ワシントン監督は奇襲も随所にみせてきます。このチームを派手な攻撃力に目を奪われて単なるビックボールと勘違いしているとしたら大きな間違いであって、スピードとパワーのコンボで、打者対投手という1対1の構図から投手を組織によって攻略しにかかってくるところにTEX打線の本質的な凄みがあります。

無論、セントルイス・カーディナルスを長年率いたトニー・ラルーサもスモール・ベースボールを駆使することで有名な監督です。もちろんデトロイトのような守備や機動力を多少目を瞑っても、派手な攻撃力によって勝ち抜こうというビックボールを採用しているチームもあります。 他にも元ドジャースの英雄カーク・ギブソン監督が指揮するダイヤモンド・バックスなどもスモールな要素は入っているチームであると言えるます。

他数えれば、想像する以上にメジャーでもパワーと同時にスモールなキメの細かい野球を志向しているチームは数多くあります。もしもメジャー=ビックボールという思い込みがあるとすれば、それは完全な固定概念でありビックとスモールをチーム事情によって適宜組み合わせながら、それぞれのチームカラーとして打ち出しているというのが実情です。

このように時代の影響を受けながら、スモール・ベースボールはMLBの歴史の中を連綿と生きながらえて今日に至っています。


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当時においてはまともにスモールベースボールの歴史も知らず、無暗にセイバーメトリクスを礼讃していた人たちというのがそこそこの比率でいました。そういう意味ではスモールへの知識や理解度はひとつのリトマス試験紙のような役割を果たしてくれました。

メジャーの歴史を俯瞰すると打者の時代が来た後は必ず投手の時代が来るように、ビックボールの時代の次には必ずスモールな時代が訪れます。これはひとつの歴史の法則です。

わずか数年前のことです。 今流行しているものだけを追いかけても、いずれそれもまた「過去の知性」となります。

過去に対して目を閉じる者は、未来に対して盲目である。



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大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

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写真は古代ギリシャの神殿。