視聴率も下がり続ける チャップマン放出劇にみるヤンキースの現状

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07 /28 2016
チャップマンのトレード成立を受けてヤンキースのキャッシュマンGMは「2016のプレーオフ出場は諦めておらず、チーム再建にかじを切ったわけではない」と強調したと言われています。ヤンキースにはまだ後ろに二枚おり、今回のトレードそのものだけに視野を限定すれば、ヤンキースは勝ったとみなすことも可能です。呪いを解いたならばほんとうに勝ったのはエプスタイン率いるカブスである可能性は大いに残されているわけですが、MLB最高レベルのクローザーを放出しておきながら、決して売り手になったわけではないとGMが強調しなけれならないほんとうの理由とは、いったい何のか?

今更敢えて指摘するまでもなく、もしコンテンダーであることからヤンキースが完全に降りたと表明することは、TV視聴率の低下および観客動員の減少に一層の拍車がかかることを意味しており、利益がこれ以上減ることだけはどうしてもハル・スタインブレナーが避けたいからという以外の理由はありません。しかし勝ち目はほぼない以上、チャップマンをキープすればそれはそれでもったいないということで、実に中途半端な結論が出てきたというわけです。思い切って勝負することがどうしてもできない。これは現オーナーの能力そのものであり、必ず繰り返されることになります。戦略的撤退、どうせなら今年は見限って、再建を断行するという手も十分にありました。

そもそもチャップマンを手に入れた際に、当ブログではこの絶好の機会を大きく+に転じるためにも、プライスやセスペデス、マエケンに代表されるドラフト指名権を失わない選手獲得へ大々的に取り組まなければチャップマン獲得も意味は半減するという極めて単純な意見を書きました。

「チャップマンという強力な武器を手に入れたNYY」

ボスならそんなことを言われるまでもなくその程度の動きは当然入れますが、予測通りハル・スタインブレナーはボスと真逆であり黙ってやり過ごした。こうしたひとつひとつの判断が、観客動員から勝率にまで大きな影響を与えてゆくわけですが、では、なぜハル・スタインブレナーはやり過ごしたのか。

一般に流通している表向きの説明ははっきり言って全くのフェイクであり、ハル・スタインブレナーが一にも二にも単純に贅沢税回避をすることによって確実にコストダウンできる目先の数千万ドルが大事だったからに他なりません。真の戦略家ならば、コストカットよりもチャップマンという武器を梃にして更なる積極的に投資をし、堂々とコンテンダーとして地位をキープし、完全なる買い手で7月の時期を迎えて大きなリターンを狙うことに必ずなっていたはずです。

ちなみにTORは一試合あたり5000人も観客動員を昨年増やしましたが、今年もコンテンダーであり更に5000人増やしており2年前から10000人増、衰退するヤンキースの観客動員をついに抜く状況にあります。

選手へのサラリーを「コスト」として捉えて倹約に励むのか、それとも「投資」として捉えてより大きなキャピタルゲイン(チームの資産価値)やインカムゲイン(売り上げによる収益)をリターンとして狙うのか。これらも表裏一体であり支払うサラリーとしては同じものですが、必然的にコスト意識が強ければ縮小均衡になり、投資意識が強ければ拡大均衡となる。

ソフトバンクの孫正義を<戦の神>とも評しましたが、英半導体大手のARMを約3兆3000億円で買収するといった大勝負に出ました。スマホのCPUメーカーであり世界のシェア97%、プラットホームをがっちり抑え巨大な利益を目論むという孫正義、得意の戦略を打ち出しました。これから間違いなく世界は「IoT(モノのインターネット)」「AI(人工知能)」、「スマートロボット」へ社会は向かうわけですが、その際にハードが世界へ供給されるにあたってARM製のチップが必ずINされることになる。まさしく世界を舞台にした大戦略、これを一般にプラットホーム戦略と言います。結果はどうなるかはわかりません。当然リスクもあります。しかし勝負師・孫正義の面目躍如といったところです。リスクがなければ、そこには大きなチャンスもない。

投資により大きなリターンを目指すのではなく、贅沢税回避によるコストカットによって利益を狙うというハル・スタインブレナーの判断が果たしてほんとうにヤンキースにとって正しかったのかどうか。

率直に言って戦術レベルの今回の一トレードのみを切り取って、勝ったの負けたのというセンスが不思議でなりません。物事を俯瞰した時、事実として2016のヤンキースは観客動員は下がり、視聴率も下がり、チームは弱体化し数十年ぶりにヤンキースは売り手へ回ったわけです。チャップマンのトレードそのものに視野を限定させればヤンキースが得したようにも見えるが、一歩後ろへ下がって冷静に眺めたとき、ヤンキースが中途半端な売り手としてマーケットに登場してきたという自体、戦略的にはヤンキースが興行的にも優勝を狙うという意味においても完全に負けたことを意味しています。戦術レベルのチャップマンにまつわる一ディールだけに視野を限定させてはなりません。つまり他のスモールマーケットのチームなら売り手に回ってこのトレードで得をしたと喜ぶのならいざ知らず、ヤンキースという強豪としての伝統のあるチームが売り手にまわったと言う現実をこそまず直視するべきではないのか。

戦略と戦術の違いとは一体何か。

その違いを知りたければ、ヤンキースのハル・スタインブレナーとソフトバンクの孫正義の考え方の違いに迫れば一目瞭然となります。いずれアップする「戦略とは何か」という記事でこの点についても明らかにしていきます。

もしこのまま2015オフではFAでも何の補強もなく、それどころかフラッグディールにおいてもチャップマンをも欠いたこの戦力でPOに出たなら、不可能を可能にしたという意味でその監督は正真正銘の名将となる。アリーグ9番打者の平均OPSが650前後であるのに対してタシェアラ、AロッドのOPSいずれも600前後、共にWAR-1.0前後。チーム全体の攻撃WAR26位。この戦力でよくも貯金を作っていると言ったのは、NYYファンの名倉ですが全くその通りの数字となっています。ピタゴラス勝率から見れば、2016もこの戦力で貯金を4つもしており大善戦とみなすのが客観的なところです。しかも最初の数十試合はチャップマン抜きであったわけですから・・・。監督が普通の能力なら借金も0~5、ほんとうに無能なら借金が6~10あっても決しておかしくない戦力であることはセイバーメトリクス的にも明らかなことです。

優勝するために最も大事なことは何か?そう問われてミラクルメッツの指揮官であったギル・ホッジスは答えます。「優秀な選手が揃っていることだ」と。ヤンキースというチームの動きを洞察するにあたって、最大のキーマンであるハル・スタインブレナーの考えさえ抑えておればまず問題ありません。

この時期は事態の流動性は高いために予期せぬことが起こります。何かあればまた記事をアップします。


大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。