撤退戦略 最もGMの勇気が試される時 

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04 /14 2016

2015のSDはケンプ、アップトン、キンブレム、シールズという大補強を敢行して、PO進出に勝負をかけました。プレラーGMのその鮮やかな手腕に球界全体がどよめいたわけですが、結果チームは早々と失速しました。これをもってパドレスの戦略における大失敗と言っているのではありません。なぜなら戦略的な正しさが短期的に必ずしもそれにふさわしい結果を保証するものではないからです。それがベースボールというゲームの特性です。

プレラーGMの見せたチームつくりのプロセスそのものはみしろ見事であったと言ってもいいでしょう。問題は大補強への投資が失敗したことが明らかになったところで、プレアーは速やかに、撤退戦略へ完全にシフトしなければなりませんでした。しかし実際はグダグダ、フラフラと煮え切らず何も決断できずに7/31という日を迎えたのが現実でした。本来なら7/20頃からの仕事は期限までにアップトン、キンブレム、ベノワをなるべくどう高く売るのかという仕事へ全力を傾けなければならなかった。プレラーが撤退戦略の重要性を真の意味で知らなかったことの証明です。

ではなぜプレラーは撤退へ切り替えることができなかったのか?

それは行動経済学が株式投資において最も難しい決断のひとつが<損切り>であることを明らかにしたように、人には欲目というバイアスがどうしてもあるからです。「撤退こそ、リーダーが最も勇気を必要とする場面である」。そう孫正義という稀代の戦略家も言っています。退散することは自ら負けを認めることでもあり、決してカッコいいものでもありません。しかしプライドを圧し殺し、時には撤退も重要な戦略の一部であることを悟らなくてはならない。戦国の世において戦さで最も難しいのは殿(しんがり)であったように、まさに撤退戦略にこそリーダーの実力が真に示されることになります。第三者の目からすれば7月中旬にはSDの結果が見えていた以上、キンブレムはともかく特にアップトンについては、放出してプロスペクトを獲得すべきでした。

しかし当事者の立場になると、欲目というバイアスゆえに、いつかPO進出へ向けて反転するのではないかという甘い観測の元、ズルズルと決断を遅らせてしまったというところでしょう。もしあれだけの鮮やかな攻勢を仕掛けつつも、7月の下旬においてSDのGMプレアーが売り手へと戦略を完全に切り替えることができたならば、GMの能力としては超一級であると認定できます。撤退戦略こそスピードが命であり、リーダーとはたとえその事業に対して何千億円を投じても駄目だと判断したなら早く見切りすばやく撤退しなければならない。この撤退戦略がどれだけ難しいかを孫正義は繰り返し言っています。

ちなみに「戦力の逐次投入は最大の愚である」とも言うように、攻撃が得意なプレラーは2015に畳み掛けるように戦力をSDのできる範囲で最大限のパワーを集中させたと言ってもよく素晴らしい働きを見せましたが、その反対にもろに<戦力の逐次投入>をやってきたのがハル・スタインブレナーでした。2013のオフの大補強と喧伝されたシーンなどはその典型です。<戦力の逐次投入>をしてどこが大補強なのか個人的にはさっぱりわかりませんでした。プレラーの2015SDもハル・スタインブレナーの2014NYYも、結果は同じくPOにすら出れませんでした。しかし攻めにおいてプレアーは正しい姿勢そのものを示したと言えるが、2014NYYは十分であったとは到底言えません。

ではなぜ<戦力の逐次投入>をつい、ハル・スタインブレナーはしてしまうのか?

それは彼自身の生来の性質として、リスクをコントロールし回避したがる性向を持っているからであると踏んでいます。とにかく慎重派のハルはリスクをコントロールできなくては気がすまない。ハルにとってリスクとは基本、可能な限り避けるべきもの、忌むべきものです。しかしそれではあまりに平凡な対応なのであり、リスクの本質をもっと深く洞察しなければなりません。リスクの深奥にこそ、勝利の女神が微笑んでいる姿を見出すような者こそが、本当の勝負師というものであり、真の戦略家でもある。そうした勝負師としてのほんとうの深い目をハル・スタインブレナーは持っていないからこそ、<戦力の逐次投入>もふつうにする。

たしかにリスクを己のコントロール下に管理しようとすることは大事なことです。8割がたリスクとはコントロールすべき悪しきものであり排除すべきものですが、残りの2割のリスクの中には<飛躍する大いなるチャンス>が宿っています。ほんとうの戦略家というものは、悪しきリスクをコントロールしつつも、同時にむしろリスクがどこにいるんだとばかりに、それを求めハンターするくらいでなければなりません。もちろんリスクを求め勝負をかけたとしても、リスクがある以上結果負けることもあります。問題はこの負けた時、どれだけ撤退戦略を速やかに決断し実行し次に備えることができるのか、それが大事なのだと孫正義は言っています。

勝負に出て結果失敗した2015SDのプレラーをあざ笑うほど、愚かな下種もまたいないと言って良いでしょう。「大補強しても、成功するチームってなかなかいない。」こうした結果論でしか語れない浅薄なコメントだけは絶対に避けたいところです。誰も鉄板おすすめする若き才能溢れるブライス・ハーパーを獲得しに行くのもいいです。しかし、ガチガチのところだけを選びたがるというのも実は別のリスクを内包しているという視点は絶対に持っていなければならないものです。


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日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

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写真は古代ギリシャの神殿。