7番セカンド カノのNYYには華があった 強者は時間を包囲せよ

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12 /24 2015
戦略とは勝利の生産性を高めるための時間を支配する技術である。そんな風に言うことも可能かもしれません。時間という観点からNYYを例にして戦略と勝利の生産性についてこれから少し話をしてみたいと思います。

2019年にターゲットを絞り込んで着々と<弱者の戦略>を推進させている(と思われる)ハル・スタインブレナーですが、なぜハル・スタインブレナーが取っているこの戦略を<弱者の戦略>というのかというと、例えばもしあなた自身がスモールマーケットのチームについての戦略立案をすることを考えればすぐにわかるはずです。KCやHOUなどのチームつくりが典型ですがプロスペクトを多数を抱え込む雌伏の時期を過ごし、来るべき勝負の時期に備えて財政力のダムを形成し、ここぞという勝負のポイントが来た時を見て一気にダムを決壊させて力を集中して投下する。これが弱者が取るべき戦略です。このターゲットとするべき時期を予め絞り込みをかけて力をためてここぞというポイントで集中投下するという、弱者の戦略をなぜか金満である強者のNYYが取ろうとしているわけです。

では時間軸から眺めた時、強者はどういう戦略を取るべきなのか?

弱者のようにターゲットとなる時期を絞り込むのではなく、全くその逆で強者は時間を包囲する戦略を取るべきなのです。すなわち満々たる財政力にものを言わせて、すべてのシーズンでWS制覇を本気で狙ってゆくというジョージの手法こそが強者の戦略になる。現実にジョージの時代は当たり前のようにPOに進出していました。ジーターをしてPOこそ本番でありレギュラーシーズンは練習試合とまで言わしめた程です。今となってはPOすらどうなのか若干、心もとない状況にあるのが現状です。ビックマーケットのチームが弱者の戦略を取ることは、それでももちろん勝つことも可能です。しかし「強者の戦略を取ることに比べて勝利の生産性(WS制覇できる確率)は明らかに落ちる可能性が高いですよ」ということを申し上げています。ちなみにこれはベースボールの知識で語っているのでもありません。その根拠としているものとはすべて戦略理論家であるランチェスターの法則にあります。

もう少し具体的に勝利の生産性について数字で述べてみます。

1980年代中盤から後半はオーナーらによるFA市場が全く機能していなかった共謀事件があったのと2地区制でもあり、比較するならばFAが普及しかつ現行の3地区制のワイルドカードが施行された以降で比較するのが環境的にも妥当でしょう。もっともハルの時代にはワイルドカードは2枚に増えているのでそういう意味ではハルNYYの方がPOへは進出しやすいはずです。更に言えば1994年はPOそのものがストで行われなかったためにそもそもWS制覇がノーチャンスでありました。

1994~2009 ボスの時代 PO進出 14回(地区優勝11回) WS進出(リーグ優勝) 7回 WS制覇 5回
2010~2015 ハルの時代   PO進出 4回(地区優勝2回)  WS進出(リーグ優勝) 0回 WS制覇 0回

カノを放出した際、あと20年もすればハルが採用している戦略が正しいのかどうかは数字でも明らかになるとした記事を書いたことがあります。今はまだハル・スタインブレナーの時代のデータが少ないのでなんとも言えません。ただ個人的に研究してきた限り、ハル・スタインブレナーの時代になって以降、戦略そのものが基本間違っているので勝利の生産性は確実に下がるとは結論しています。しかしハル・スタインブレナーがポイントを絞り込み勝負に出るであろう2019年以降でNYYが圧倒的な成績を残せば、私の予測も見事に覆されることになります。そしてその可能性もなくはありません。この辺は事態も流動的でありフェアーに見定めてゆく必要があります。

すべてのシーズンにおいてWS制覇を本気で狙うジョージ・スタインブレナーの手法を可能とするチームは現MLBにおいてはNYYやLADなど実に限られています。もし仮にスモールマーケットのチームがジョージ・スタインブレナーのように毎シーズン勝負で突っ込んだところで財政力が限られているため、すぐに息切れを起こし、弱者が毎シーズン全力で突っ込むことは逆説的に100年経っても一向に勝つことができなくなるという結果に必ずなります。やはり弱者は力を集中投下すべきターゲットを絞り込んで戦うことが正しい。ではビックマーケットのチームも同じように弱者の戦略を採用すべきなのでしょうか。

個人的にいろんな意見を読んでいて感じるのはベースボールの知識と戦略の知識は別物だということです。例えばシェルビー・ミラーを獲得した際にATLへ差し出した面子が豪華すぎるといったそのトレードのみの損得を見て反応も多数ありましたがこれはベースボールの知識が元になっています。しかしARIにとってスターターの整備は2016喫緊の課題であり、むしろここでトレードをしなければグリンキーへ投資した価値は半減してしまう以上、戦略レベルではこのトレードはトータルとして眺めた時、是となる可能性がある。トレードにおける戦術レベルの小さなエラーも戦略レベルにおいて大きく取り戻すことは可能であるという視点が大事になってきます。結果はどうなるかは神でさえ予測不可能であることは複雑系の科学によっても明らかですが、少なくともプロセスだけ切り取って見た時、ARIの選択がおかしいとは感じません。ランチェスターの法則を知っておくと、MLBの戦略家の動きというものの優劣がある程度見分けられるようになります。戦略の理論について知りたい方には最低限ランチェスターの法則を個人的におすすめしておきます。

 ベースボールの知識だけで戦略について学ぶことは不可能である。

2009年WS、NYY7番打者は誰であろう、カノでした。あのチームはほんとうに強く、文字通りスター軍団であり華もあった。当時はもうその前年にオーナーはハル・スタインブレナーに交代していたが、あのチームを作ったのは紛れもなくジョージ・スタインブレナーでした。カノとの契約でさえ躊躇した人物です。Aロッドに10年契約をハル・スタインブレナーが結べる度量があるはずもありません。あのAロッドの2007年からの契約を無謀であると決め付ける記者もよくいます。私はそもそも記者の意見が必ずしも正しいとは考えていません。たとえAロッドが薬物の事件に巻き込まれようともジョージ・スタインブレナーが2007年に下した判断そのものは正しく、一貫して支持するという姿勢は今もって全く変わりはありません。結果だけで判断することはしないつもりです。その考えを敷衍すればAロッド10年契約は正しい判断であったように10年契約を求めたカノの放出は大失策という結論にもなります。

戦いの原理に基づいて考えている以上、意見に一貫性を持たせてゆくつもりです。


参考記事

「もう一つのブラックソックス事件」マービン・ミラーの慧眼

NYYのペイロールは3億ドルへ増やすべきである 続・ヤンキース帝国の黄昏 

いずれ「戦略とは何か?」というテーマで一度書いてみたいと思います

大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

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写真は古代ギリシャの神殿。