2019年ドジャースの緊縮路線、その動きの裏にある戦略のキーポイントとは何か

戦略
01 /15 2019



これまでLADからアウトした主な選手の成績

グランダル 24HR OPS815 WAR3.6
マチャド  13HR OPS825 WAR2.4(LAD時代のみ)
ケンプ   21HR OPS819 WAR1.8
プイグ   23HR OPS821 WAR1.8

ウッド    9勝7敗 WAR2.6

チームWAR0.0で162試合をフィニッシュした時、52勝分に相当するとセイバーメトリクスでは設計されている。つまりWAR40.0を確保することがPO進出ということを目標にした時、GMがなすべき仕事の一つの目安となる。92勝できればギリギリでワイルドカードには引っかかると考えてもよい。

さてこれまでのLADの動きをみるとWAR12.2もの大戦力が流出した一方、INした選手はBOSから投手ジョー・ケリーWAR0.7、TORから捕手マーティンWARにしてわずか0.6にとどまっている。つまりこれらの意味するところは、LADの大幅な戦力をダウンを意味している。このままシーズンへ入って確実にPOへ歩を進めることができる計算に目処が立ってるとは到底言えない。

特に印象的なCINとのトレードは、完全なる不良債権であるベイリー28Mを引き受けつつ更に7Mを上乗せして、手に入れたのはCINチーム7位のプロスペクトに過ぎなかった。一方、ケンプ、ウッド、プィグ(3人合計の負担額は43M前後)はWARを見る限り、1WAR=8Mと計算すれば彼らの成績を見てもわかるようにふつうの優良債権であり、CINでも十分にローテや野手の主力を担う戦力であるとセイバーメトリクス的には認定される。

大型不良債権をLADに引き取ってもらい、かつ失っても惜しくないプロスペクトを差し出し、そのリターンとして経済的なリスクもほぼ皆無と言っていい大きな戦力を手に入れたCINにとっては、ほぼ一方的に勝利と言ってもいいトレードである。

LADとCINのトレード、間違いなく持ち掛けたのはLADからであり、ケンプとプィグを放出すべく譲歩に譲歩を重ねてウッドもプラスしてまでも、なんとかトレードをまとめたと見るのが自然である。

では、なぜこのような補弱のトレードをLADは実施したのだろうか。

ケンプ、ウッドについては前々から指摘しているようにチームケミストリーを重視するフリードマンの姿勢がはっきり示されたと言える。あるいは2019年にはFB革命による戦略がBOSのスモールな全員野球に木っ端みじんにWSでやられた反省から、小技や俊敏さ、状況に応じたシンキングする力も求める野球へ質の転換をする意図もあるのかもしれない。

またチームの目指すべき野球の方向性だけでなく、同時に財政的なチーム事情もある。

MLBにはデッドサービスルール(負債に関するルール)がある。LADオーナーサイドは球団を購入する際に多額の負債を抱えており、それを返済するため収入とバランスする毎年の支出(主に選手へのペイロール)をある程度抑制する必要性をMLB機構から迫られている可能性がある。MLB史上初のペイロール3億ドルを突破したLADにとって惜しみない投資によってチーム強化によるファンサービスも大事ではあるが、長期的に安定したサービスを提供するには財政の健全化を機構側から求められており、投資への回収をすべく債務を減らすことを義務付けられている。

あるいはデッドサービスルールの適用ではなく、単純に投資の回収を求めるオーナー側の意向に沿って、利益を求めて今しばらく贅沢税ラインを意識した窮屈な動きをしているのかもしれない。

いずれにしても内部の諸事情により、大胆な勝負に出ることができない緊縮の状況下にLADは置かれており、戦略上最大のアドバンテージであった分厚いデプスを薄くし補弱路線をせざる得ない現状がある。

WAR12.2の流出は単純かつ控えめに見積もっても10勝分の戦力がなくなったとセイバーメトリクス的には言えるのであり、つまり2019年のLADは7年連続の地区優勝を目標とはしつつも、同時にリスク管理としてワイルドカードを現実的に視野に入れなければならない状況にあると言える。

ではどういう動きをLADはすべきなのか。

NL2018年96勝1位MIL、2位95勝CHC、3位92勝LAD、4位91勝COL、5位90勝ATL

ALの東地区では100勝を超えるチームが2つも出たのも、裏を返せばBALが115敗などという歴史的な大敗を喫したからに他ならない。NL最下位のMIAでも97敗に過ぎない。89勝したSEAなども通常の年であればPO進出に大いにチャンスはあったものの、2018年に限ってはワールドカード枠にもほぼノーチャンスでシーズンを終盤を迎えることになった。

それをNLに置き換えるならばLADの立場からすれば中地区のMIL及びCHCの独走を阻止し、混戦になる動きをするのが戦略的にも理にかなっていると言えるのである。つまりLADが最低目標としてPO進出を設定し、ペイロールと同時に戦力をLADがダウンを余儀なくさせられる状況にあるならば、95敗も喫した最下位争いを繰り広げるCINへの主力級3人の戦力拡充することによって、結果的にCHCやMILの勝利数をダウンさせる狙いがCIN有利のトレードの裏にはある。

結論

ケンプ、プィグ、ウッドの放出は、チームケミストリー改善及び動かすことがほぼ不可能な制約条件であるペイロールの削減のみならず、ワイルドカードまでも睨んだ時、自分の戦力を低下を梃にライバルとして最終的に立ちふさがるであろうCHCやMILの勝利を削ぐための布石として行われた極めて戦略的なトレードである。

ここにLADが大幅な譲歩をしてまでも、NL中地区最下位であったCINこそがそのトレード先でなければならなかった最大の理由もある。

単にCINとのトレードだけを切り取ってみれば、LADのLoseと言っても過言ではない。しかしその1ディールの動きだけで勝った負けたと評価してもフリードマンの戦略的思惑がどこにあるかを把握することは難しいに違いない。LADのチーム事情や自他の戦力分析も勘案し、一連の動きの奥に潜み貫かれたある理念を洞察した時、フリードマンの戦略眼というものが明らかになるのである。





菊池雄星、メジャー左スターター91.5マイル以上を投げる27歳以下はわずか9人しかいないというボラスの罠

セイバーメトリクス
01 /07 2019


スコット・ボラスは「菊池雄星、メジャー左スターター、91.5マイル以上を投げる27歳以下はわずか8人しかいない希少な存在である」ことをセールスポイントとして売り込みをしていたようです。

この数字を眺めてどう思われたでしょうか。菊池はメジャーでも速い投手に属すると思われた方がいても決しておかしくはありません。しかし率直に個人的なファーストインプレッションを申し上げるならば、ここには実に狡猾な数字のトリックがあるのではないかというものでした。

そこでこれから、調べた事実だけを淡々と列挙していきます。

まず、メジャー全体でも120回を到達している27歳の投手は全部で47人です。その中で左投手の割合は30パーセントであり、14名でした。


スネル 96.5
レイ   94.1
マッツ  94.0
ロドリゲス 93.7
ニューカム  93.4
ロンドーン  93.1
スアレス  92.5
ヒーニー 92.5

菊池 91.5

菊池は14名中9番目のスピードあり、実はメジャーの中で遅い部類に属することがわかります。

実際メジャー全体の27歳以下のスターター平均球速を調べると 93.8マイル。ブルペンの平均球速に至っては 94.8マイル。91.5マイルという数字の持つ菊池の現状が客観的にも明らかになってきたのではないでしょうか。

結論

データの切り取り方次第で、商品の魅力を最大限に引き出そうとするボラスの魔術に嵌らないだけのリテラシーがなければ、その認識はマスメディア(ライター)のレベルを超えることもできない

数字に対する感覚を研ぎ澄ますことが、セイバーメトリクスの分析の第一歩でもある。

大谷レベルのファーストボールを投げるスターターはメジャーにゴロゴロいるという説を日本ハム時代に当ブログが一蹴したのも同様であり、可能な限り数字を根拠にして雰囲気でモノを語ってはならない。2018年大谷レベルの球速を持ったスターターはメジャーでも片手で足りるものであり、数人レベルであったことがデータでも明らかになっている。





 

大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。