なぜマリナーズは今、再建期に入らなければならないのか、その理由について明らかにする

戦略
12 /09 2018


2018年マリナーズは89勝でレギュラーシーズンの幕を閉じた。NL西地区のドジャースも91勝で地区優勝を手に入れている。およそPOに出るためには20個の貯金を作れば、なんとかなると考えもいいだろう。

ということは2018年マリナーズはあと2勝積み上げれば、PO圏内に突入することを一般には意味している。であるならば、2019年に勝負を仕掛けるべきだろうという結論に至っても、決しておかしくはない。にもかかわらず、2019年にマリナーズが再建期へ入らなければならない確かな理由がいくつかあるので、これから縷々述べたいと思う。

まず、ピタゴラス勝率から導かれるマリナーズの2018年の実力は77勝85敗だったことがわかっている。クローザー・ディアスの大車輪の活躍を見てもわかるように、僅差の試合を悉くものにしてきたのが、マリナーズだった。一点差の勝敗は36勝21敗であり、ALで最高の貯金15個をを稼ぎ出している。

つまり2018年のマリナーズは運も良く、投打の歯車がかみ合い、巡り合わせにもよって89勝できたと考えるのが常道であり、裏を返せば来年も今の戦力を維持できたとしても2019年にPO圏内に入ることは難しいことをこの数値は物語っている。

更に問題は、AL西地区がメジャーで最もレベルの高い地区となっている点にも触れておかなくてはならない。同地区同士が戦っても1勝1敗であり貯金の増減はないが、その地区全体の貯金が大きいということは他の地区のチームと戦って西地区のチームが数多く勝ち越していることを意味している。

西地区全体の貯金は5チーム全体で61個も積み上げており、東地区の25個を遥かに上回っている。最強の地区にマリナーズは現在属しているのである。また西地区には現在、最強のチームであるアストロズが戦力を維持したまま、ここ数年は栄華を極める勢いであることは誰もが認めるところだろう。OAKもまた97勝と底力がある。

加えて、マリナーズのファームは目ぼしい選手がほぼ皆無であり、プロスペクトTOP100には一人も入っていない状況にあった。(もっとも数々のトレードによって現在は、入ってきたプロスペクトがちらほら100位以内入りしている)

つまりプロスペクトというトレードの駒がないということは、2019年の夏場の肝心なフラッグディールにおいて、有力な戦力を前線を供給することが難しいことを意味している。地力も弱く、最強地区に属し、ロジスティックも脆弱であるという客観的な情勢を見た時、ここはアストロズが最盛期にムキになって立ち向かうのではなく、戦力をためて期が熟するのを待つことが戦略的にも最良であると判断するのが妥当なのである。更に付け加えるならばエース、キングの力が著しく衰え、WARがマイナスを記録し全くあてにならないことも再建期に踏み出したダメ押しの要素になったに違いない。

ディアスもおそらく生涯を通じてもキャリアハイを出した今だからこそ、高く売り抜けることが可能となる。ショートのセグラについては、たしかにセイバーメトリクス的にも素晴らしい選手であり、コスパも抜群ではあるが2018年の夏、マリナーズの内紛でもわかるようにドミニカンの間に不穏の空気を作り出した張本人こそがセグラであり、とても中心選手にはなりえないとの判断から放出に踏み切ったのだろう。

結論

89勝という実績。ディアスは油に乗り切っている。セグラも数字的には頼もしい、こうした表層的な部分的な要素だけを並べて見ても正しい分析はできない。置かれている西地区の勢力図や自軍の戦力分析、ロジスティック、クラブハウス内のケミストリーの問題など総合的に勘案していかなければ、おそらく正しい結論にたどり着くことはできない。

マリナーズは今こそ、再建期に入るべきである。

ドジャースがワールドシリーズで勝利するために必要なこととは何か

戦略
12 /03 2018


フライボール革命によってホームランを量産し、チームも勝利に導くという流行の戦略。セイバーメトリクスの分析をすれば、その典型はオークランドであり、ヤンキースであり、ドジャースであったと言っていいだろう。それは下記の数字を見ても明らかである。

本塁打数 30チーム中

1位 ヤンキース
2位 ドジャース
3位 オークランド

FB率

1位 オークランド
2位 ドジャース
4位 ヤンキース

特にドジャースではスタットキャストを使い、投球のボールの回転数から軌道を分析し、同時に打者のバッドスウィングの軌道も分析しマッチするタイプの打者をセレクトしつつ、たくさんのタイプの駒を集め、その投手に応じて戦略的に先発オーダーを決めているという。

ドジャースのデータ分析に基づいた攻撃戦略の確かさは、チームの野手WARでも30チーム1位を記録していることから、一定の成果を収めていると結論するのは妥当だろう。この攻撃戦略の根底には「1対1、打者VS投手」という個人競技としての野球の側面をクローズアップし、ラインナップに名を連ねた各打者が投手から高い攻撃力を発揮すれば最終的にチームの総攻撃力もアップするという試みである。

それとは対照的なのが、ボストンである。

JD・マルティネスは言う。

我々はすべてを空中に打って、サク越えを狙ったりはしない。(フライボール革命は)最近の打者に共通するミステークだと感じる」。このボストンの特徴は、投手を攻略する際に「1対1、打者VS投手」というシーンに単純に分割して攻撃を捉えるのではなくく、打線全体であらゆる手段、あらゆる打球種類を用いつつ状況に応じて投手を包囲し、攻略していこうとするスモールな全員野球にある。

個人的にはワールドシリーズ初戦、一回裏のボストンの攻撃が、そのスモールぶりをよく象徴していたように思う。

センター前ライナーでベッツが1塁に出る。ワールドシリーズが始まったばかり。じっくり腰を据えて様子を見ながらBOSは攻撃かと思いきや、一球目まさかの奇襲のスティールを決める。2番ベニンテンディーも息つく暇もなく次のボールをライト前へシングルヒット、ライト深めに守っていたプィーグが相変わらず、ベッツの走力も顧みることなく絶対に間にあわないホームへ山なりのダイレクトバックホーム、その隙にベニンテンディーは2塁へ。事前にプィーグはホーム返球を中継のセカンドに返さないとレポート済みであり、ベニンテンディーは百も承知。そして、ラインドライブ狙いのJDがセンター前シングルできっちりと2塁ランナーベニンテンディーをホームへ返す。

たったシングル3本だけで2点を取るのが2018年版ボストンの野球。フライボールは皆無の攻撃。まさしくここにあるのはJDも言う繋ぎの意識であり、相手の隙をつく奇襲であり、スモールベースボールそのものが映し出されたシーンであったと言っていい。プィーグがふつうにセカンドの中継地点へ返球していれば、この回は1点で終了であったに違いありません。

攻撃においてワンベースの進塁をどう推し進めるか、あるいは守備においてワンベースを如何に抑止するのか。そのワンプレーが最終的な勝利へ直結するというスモールな発想の有無が、最も鮮やかに浮かび上がった象徴的なワンシーン。シリーズの勝負はすでに1回の攻防で決まったとすら、一瞬考えたほどです。

一方、同点でマチャドが勝ち越しホームランかという当たりをしたシーンでは、打球は急速にラインドライブして、フェンスダイレクトに当たりとなった。当然、2塁へ進んでいると思いきやマチャドは一塁でストップ結果0点。2塁へ進んでいたらマチャドは勝ち越しのホームを踏んでいた可能性は大きく広がっていました。完全なるボーンヘッド。

繰り返し戦えばドジャースがボストンに勝つこともあるでしょう。しかしこうした細かいワンベースへの積み重ねを大事とするスモールなボストンとそうではなかったドジャースの体質の違いが明確に表れている以上、短期決戦を繰り返せば、ボストンがシリーズを制することが多くなることは確実な状況です。 ボストンの方が勝利の生産性が高くなるのは道理である

ドジャースがすべきことは、ボストンとのギャップをまず明確に規定するところを第一歩にしなければならない。

ボストンも2000年代ではデータ主義に大きく偏っていました。それは他のチームがセイバーメトリクスを柔軟に取り入れようとせずに、アナログな強い偏見によって素人に野球の何がわかるという態度であったからであり、いち早くセイバーメトリクスに取り組んだことが大きなボストンのアドバンテージになりました。やがて時代が進み、ボストンの成功を見るにつけ、すべてのチームがセイバーメトリクスを導入するに至りました。こうなると先行利益は急速に減少をします。

ここでデータ主義をさらに先鋭化させる取り組みもしつつ、同時にボストンは古い時代に置き去りされた感のあるスモールべースボールに今一度焦点を当てて、それを見事に現代に復活させることにより、勝利を収めたというのが2018年の現時点です。巷がデータ偏重のフライボールで賑わっている現代にあるからこそ、当ブログの歴史認識では必ずこうしたスモールへ回帰するチームが登場することを予想していました。スモールの中には一部、どうしても数では表現し得ない領域が蔵されている

セベリーノの投球の癖を見抜き、ALDSでヤンキースを打ち破ったその智慧の力を果たしてセイバーメトリクスでどう数値化するというのだろうか。

物事には「定量」と「定性」という二つの観点があります。「定量」とは数で表現されるものであり、ドジャースはWAR1位を見てもわかるようにすでにワールドシリーズに勝利するための定量的な戦力の条件を兼ね備えているとセイバーメトリクス的にも結論できます。

つまりドジャースの問題は定性的な部分にある可能性がきわめて高いのです

ここでボストンとドジャース、両者の違いを表す興味深い指標clutchを挙げておきます。文字通り、勝負強さを測る指標です。ともに高い攻撃力を持ってはいましたが実は2018年のワールドシリーズはメジャーでこのclutchという指標の最も高い1位のチームと最も低い30位のチームの戦いでもあったのです

すべてのチームが導入している現在、セイバーメトリクスは大数の法則を基づいている以上、短期決戦で決定的なファクターにはなり得ません。2010年代に入っても、ボウチー率いるジャイアンツやラルーサ率いるカーディナルスが優勝したのも、決して偶然ではない。トーリしかり、そこに共通するものとは、セイバーメトリクスに偏重しないオールドスークルの智慧です。

右方向へしぶとく流すジーターや、4番バーニーのたたきつけるゴロでの内野安打、ティノの意外性のある一発など個性豊かであった面々は懐かしく、clutchぶりは言うまでもなく相当に高かったヤンキース黄金期。一方、WSでもチャンスでフライアウトを繰り返し潰してきたドジャースを見ても、レギュラーシーズンがどのような攻撃をしてきたかは想像に難くなく、それがclutchというセイバーメトリクスの指標でもはっきり表れた格好だったのではないかと推測できるのです。

いずれにしても何度注意されようがプィーグの送球に代表されるような無駄な失点を献上している限り、ドジャースのワールドシリーズ制覇はなかなか覚束ない。仮についには勝利をしたとしても、相当に勝利の生産性としては低いものとなることが予測できます。

トールズという左の俊足が9回裏同点にレフト大飛球を放ち、野手がファンブルしボールは転々とグランドに転がったことがありました。誰もが余裕でトールズは3塁に到達しているかと思いきや、打球に見とれて歩いていたため2塁打になった。1死2塁。ロバーツ監督は唖然。次の打者が深い外野飛球で3塁へ行くものの、結果0点。その試合をドジャースは落とすことになる。

2018年のシーズン中の出来事です。同じことの繰り返しであり、だから接戦にドジャースは弱いのです。

結論

虚心坦懐にドジャースはボストンや過去の歴史から今一度、短期決戦における勝者としてのベースボールを研究するところから再スタートすべきだろう。特に短期決戦において状況にかかわらずフライボール一本の攻撃で果たして勝利の生産性は高まるのかどうか。そしてこの問いはドジャースのみならず、同時になぜオークランドはPOには弱いのかという問いにも行き着くことになる。

では、オークランドとドジャースと共通する敗因はいったい何だろうか。

オークランドがPOで敗退を繰り返すのは決して偶然ではないと、戦いの原理を探求する当ブログとしては改めて指摘しておきたい。2000年以降、オークランドは9回POに出場するものの、一度たりとてワールドシリーズの舞台に立ったことはないのは事実である。

メジャー選抜は2018年に侍japanに惨敗を喫した。メジャー選抜のメンバーは、フライボールに捕らわれないスモールな日本の畳みかける攻撃が新鮮に映ったという。それは決して単なる彼らのお世辞ではあるまい。なぜボストンはWSに強く直近の4回すべて勝利をし、なぜドジャースは短期決戦に勝負弱いのか。引き続き取り扱っていかねばならないテーマであると思っている。



大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。