ワールドスポーツMLBについてレビューする 印象よりもファクトを重視すべきである

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07 /30 2017

下記はパークファクター2017年です。1位はコロラドのクワーズフィールドですが30位に改めて注目してください。

MLB Park Factors - Through July 26, 2017
RK PARK NAME RUNS HR H 2B 3B BB

1 Coors Field (Denver, Colorado) 1.323 1.274 1.166 1.140 2.716 1.004
2 Chase Field (Phoenix, Arizona) 1.207 1.315 1.063 1.231 1.219 1.094
3 Target Field (Minneapolis, Minnesota) 1.172 1.175 1.158 1.143 1.239 1.131
4 Yankee Stadium (New York, New York) 1.146 1.456 0.940 0.887 0.738 0.984
5 Globe Life Park in Arlington (Arlington, Texas) 1.124 1.097 1.086 1.160 1.004 1.088
6 Miller Park (Milwaukee, Wisconsin) 1.102 1.094 1.027 1.237 0.826 1.015
7 Oakland Coliseum (Oakland, California) 1.081 1.058 0.996 1.154 1.961 1.095
8 Citizens Bank Park (Philadelphia, Pennsylvania) 1.067 1.308 1.026 0.964 1.106 0.969
9 Progressive Field (Cleveland, Ohio) 1.057 1.165 1.084 1.118 0.529 0.953
10 Great American Ball Park (Cincinnati, Ohio) 1.048 1.084 0.965 1.034 1.415 1.073
11 Wrigley Field (Chicago, Illinois) 1.025 0.978 1.017 1.078 1.648 1.061
12 Comerica Park (Detroit, Michigan) 1.018 1.085 1.032 0.989 1.041 0.940
13 Guaranteed Rate Field (Chicago, Illinois) 1.014 1.021 0.929 0.842 0.693 1.176
14 Dodger Stadium (Los Angeles, California) 1.012 1.086 0.931 0.943 0.789 0.923
15 SunTrust Park (Cumberland, GA) 1.011 0.962 1.055 1.072 0.696 0.911
16 Nationals Park (Washington, D.C.) 1.004 0.983 1.070 1.059 0.421 0.956
17 Angel Stadium of Anaheim (Anaheim, California) 0.988 1.091 1.012 0.784 1.300 0.819
18 Kauffman Stadium (Kansas City, Missouri) 0.978 0.716 1.002 1.352 1.404 0.952
19 Oriole Park at Camden Yards (Baltimore, Maryland) 0.973 1.138 0.994 0.866 0.817 1.055
20 Tropicana Field (St. Petersburg, Florida) 0.972 1.014 0.978 0.905 1.236 1.001
21 Rogers Centre (Toronto, Ontario) 0.967 1.029 1.010 1.085 0.825 0.863
22 Fenway Park (Boston, Massachusetts) 0.941 0.693 1.054 1.040 0.561 0.999
23 Safeco Field (Seattle, Washington) 0.934 0.930 0.922 0.839 1.049 1.117
24 Petco Park (San Diego, California) 0.921 0.813 0.950 0.953 1.339 0.984
25 PNC Park (Pittsburgh, Pennsylvania) 0.887 0.778 1.001 1.029 0.616 0.900
26 Busch Stadium (St. Louis, Missouri) 0.886 0.825 1.008 0.958 1.184 1.017
27 Citi Field (New York, New York) 0.877 0.713 0.904 0.903 0.723 0.988
28 Marlins Park (Miami, Florida) 0.876 0.855 0.890 0.792 0.966 1.119
29 AT&T Park (San Francisco, California) 0.814 0.589 0.953 0.919 0.822 0.942
30 Minute Maid Park (Houston, Texas) 0.766 1.001 0.855 0.761 0.551 0.942

メジャー最高の攻撃力を持つアストロズのホームは見た目も小さく見えるので、イメージに従って小宮山はミニッツメイドパークは打者有利な球場であると明言しましたが、パークファクターではミニッツメイドパークは2年連続でメジャーで最も得点のし難い球場であることが明らかになっています。ホームランも特に出やすいこともない。たしかにアストロズはホームでも打ちまくるが、それより遥かにアウェイで攻撃力を爆発させているということ。あるいは投手陣もアウェイよりもホームの方が防御率ははっきり改善されることを意味しています。

念のため調べました。アストロズ 2017年 ホームとアウェイの成績。

チーム攻撃  ホーム OPS 824 得点 244
      アウェイ OPS 889 得点 355

チーム防御  ホーム被OPS 683 失点 205
      アウェイ被OPS 734 失点 220

パークファクターが示している通りの結果となっています。

統計的な数字を論拠としてイメージによるバイアスを排除し、物事を正しく価値判断することがセイバーメトリクスの重要な働きの一つです。こうしたデータに基づかないイメージ解説が小宮山だけかと言えばそうでもなく、フライボールレボリューションがトレンドだからと早合点して小早川は2017年になってフライボールが格段に増えたと指摘しているが、データによればMLB全体のFB率を見る限りそうはなっていません。MCの沖原さんが数字を論拠にした確かな知識に基づく話題を振っても、石井がこれまたフィーリング解説であっさり否定する。もちろん沖原さんは石井の顔を立てましたが、結果、石井の間違ったイメージ解説が全国へ正しいものとして流れました。

ワールドスポーツMLBの2017年のテーマはスタットキャストを中心としたデータを取り扱うことによって、よりベースボールの魅力を深く味わうというものではなかったのか。

この番組では反省会(レビュー)というものを一切せず、仮に解説者がデータに基づかない印象解説で数々の間違った発言をしても、解説者の顔を立て全くその間違いについて指摘することもないとしたら、かなりの問題だと思う。

先回のルーノウの記事で言いたかったことを要約すればこうなります。

「これまでは分析不可能であった領域へAIによるビックデータ解析で踏み込むことによって、新たなフロンティアを開拓したチームがアドバンテージを得るのであり、人工知能こそが新たなるマネーボールの時代へ重要なキーを握っている。」

時代はすでにそうした領域まで入っているにもかかわらず、数字というファクトを軽視するイメージ解説はやはり問題があると言わざる得ない。

ついでに言うならば以前、インテリジェンスを標榜するBSのMLB番組でMCを務めたこともある眼鏡をかけたスポーツジャーナリストが4年前にパークファクターの記事をダルビッシュに絡めて書いたことがあります。雰囲気だけはあり、さらっと読むと気付かないのですが、私は一読してすぐに筆者のパークファクターに対する完全な理解不足や論理の飛躍などの致命的な欠陥を見抜いたので、「この記事についてどう思いますか?」と質問を某所で聞いたことがあります。どれくらいの人が一発でこのセイバー分析記事の欠陥を見抜けるものなのか、要はリテラシーがどの程度あるのかが知りたかったわけです。

8割の人は「言っていることはまともだ」と皆コロッと騙されて、どこがおかしいのか全く理解できていませんでした。文章は巧みであり雰囲気だけはたっぷりなので無理もないかもしれません。仮におかしいことがわかっても具体的かつ正確に致命的なミスを指摘できた人はその時は一人もいませんでした。おそらく客観的に見る限り5~10%程度の人だけがそのコラムについてかなり正確に糺すことができると帰納的には推測しました。ちなみにその全く出鱈目なセイバーメトリクスの分析について、何百もの「イイネ!」が量産されている始末であり、記事発行元のnumberも校閲機能が全く効いていないようでありました。そのコラムに<インテリジェンス>が標榜されていることに私は愕然としたのですが、完膚なきまでに粉砕可能な分析記事であったことだけはたしかです。リテラシーがないと、どこがどうおかしいのかがわからない。

下記は以前書いたものです。セイバーとは直接関係ないですがイメージ解説の一例としてわかりやすいので再掲します。

===

解説者大島がレイズのトロピカーナフィールドでTEXベルトレのHRが出た瞬間「ドームは気圧の関係で、よくボールが飛ぶんですね」と言いました。この言葉を聞いて、ある程度のリテラシーがあるとその解説の出鱈目さが瞬間的にぱっと頭に浮かぶようなります。

「まず第一にトロピカーナフィールドは気圧式のドーム型ではなく、体育館のようなかっちりした密閉式ドームである。故に大島が言うような内外の気圧差は基本ない。もし仮に大島が言う気圧式ドームであっても気圧を高めてドームは膨らませているので、ボールが気圧によって飛ぶということは物理的に有り得ない。クワーズフィールドのように気圧が低ければボールは飛ぶが、ドーム式は内側の気圧を高めて膨らませている以上、高い気圧でボールは逆に飛ばなくなる。更には、そもそもトロピカーナフィールドはここ10年で見るとメジャーでも屈指のピッチャーズパークである。だからこそ、フリードマンGMはセイバーメトリクスを駆使してスモールなチームを作った。

解説者の大島が東京ドームとトロピカーナフィールドを同一視し、気圧式ドームの典型的なヒッターズパークであると思い込んでいることが一瞬で透けて見えてくればしめたものです。トロピカーナフィールドは決して広い球場でもなければフェンスも高くもないために、大島が勘違いするのもわからなくはないのですが、トロピカーナフィールドは密閉式ドームの典型的なピッチャーズパークである。」

記事冒頭に示した パークファクターでも トロピカーナは20位。

結論

ワールドスポーツMLBは番組のクオリティを上げるべく、データの取り扱いには細心の注意を払いながらレビューをしっかりと行い、曲がりなりにも<データ>をテーマに掲げているならば、データが示すファクトとイメージ解説が食い違う時、優先すべきは解説者の<印象>ではなくデータに基づく<ファクト>である。小宮山の印象とは全く違い、ミニッツメイドはファクトとして紛れもなく2016年、2017年、連続でメジャー最高のピッチャーズパークである。

ここからは余談です。以前こんなことを言われたことがあります。「貴方は解説者やライターの言っていることを基本信じていないですよね?」と。正しいとジャッジしたものだけは取り入れて、そうでないものはすべてシャットアウトする。ちなみにそれをリテラシーと言います。

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守備シフトのイメージとは裏腹に、現在も攻撃BABIPは下がる傾向を全く見せていません。印象ではなくあくまでファクトに基づくべきです。


アストロズ・ルーノウGMにみる戦略的思考力 あるひとつの仮説

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07 /26 2017
通常、セイバーメトリクス分析というと攻撃と防御を分類して、それぞれについて詳細に分析を試みるものですが、このアストロズの分析だけは攻撃と防御を単純に分けられないところに極めて大きな特徴があります。2015年では攻撃におけるFB率と防御におけるGB率が、ひとつの強力な理念によって釘差しになっていることを見てきました。

<攻撃についての分析>と<防御についての分析>。

通常この両者の狭間には、マージナル(境界線)が存在しています。このマージナル(境界線)を超え、攻撃と防御をより大きな理念によって捉えている「メタ認知」の力にこそ、ルーノウGMの戦略性を端的に示していると言えます。

例えば先回の記事で2017年の攻撃において、三振数が最も少ないチームがアストロズであると指摘しました。念のためにアストロズの投手の奪三振数を調べるとある意味、予想通りの数字が出てきました。投手の奪三振率10.16、つまりはメジャー全体で投手の最も奪三振数の多いチームこそがアストロズでした。

2017年 攻撃において三振数が30位。防御において奪三振数が1位。

攻撃において如何に三振を喫しないか、防御において如何に三振を奪うか。攻撃と防御を分けず、アストロズのルーノウはある明確な理念によって課題を大胆に絞り込んでゆく。

アストロズの平均奪三振率10.16(7/23現在)はダルビッシュのK/9 9.65を軽々と超えているわけですが、ダルビッシュと言えば奪三振こそが代名詞、なぜ史上チーム最高の奪三振率更新をアストロズが成し遂げようとしているのでしょうか。

その重要なキーを握っているものこそ、最新鋭のAIによるビックデータの統計解析であると考えるものです。

気の利いたGMであるならば、ビッグデータと人工知能の領域へ必ず足を踏み入れているはずです。ましてセイバーメトリクスでMLB最先端をいくアストロズのことです。もう少し具体的かつ大胆な仮説をお話しします。例えばこれまで配球の良し悪しにについて、ふつうのコンピューター解析では不明であり、セイバーメトリクスの世界において配球はアンタッチャブルな領域であったわけです。しかしAIを使ってこの配球の領域へ大きく踏み込むことによって、三振の世界で目覚ましい進歩を見せているのがアストロズなのではないか。他のチームが全く気づいていない三振に対する配球の有効ないくつかシグナルを捉えている可能性がある。もちろん、これらの情報はトップシークレットであり表へは出てきませんが、だからこそ大胆な仮説を自由に立てる意義もあります。

点差やカウント、球場やピッチャーや打者の特性によって配球の明らかな癖をAIによるビッグデータ解析することは可能です。それは投打ともに活用することができます。もちろん、最終的には各選手にカスタマイズされたものが提供されている。

今お話をした仮説はひょっとしたら間違っているかもしれません。大事なのはAIとビックデータというキーワードを獲得するとともに、これらを武器にこれまでは分析不可能であったと考えられてきた領域へ踏み込むことによって、新たなフロンティアを開拓したチームが時代を一歩先んじるという認識です。こうした認識のもとにいくつかの仮説を予め立てておくと、時代に振り回されにくくなります。すなわち人工知能とビックデータを使った新たなるマネーボールの時代へ本格的に突入しつつあるのではないか。

時代を相対化する歴史的な目を意識するとき、現代の様相がそのように見えてくるのです。

フライボールレボリューションが最新理論であるという話も、より詳細が明らかにされてきた部分はあるにせよ、個人的には概して2年以上前に記事にしていた内容に過ぎないという認識です。いずれにしてもルーノウGMが戦略的な思考力の高い人物であることは、アストロズのセイバー分析をしているこちら側に「メタ認知」を要求してくることからも容易にわかります。

メタ認知。

マージナルを跨いで物事を俯瞰するには必須。物事を良い意味で抽象化させ、その本質を掴み取る力の源泉。戦略的な思考力には欠くべからずものでもある。こればかりはベースボールの知識とは全く別個のものであり、ましてセイバーメトリクスの知識とも全く違う。

ちなみに下記の記事を書いた当時

アストロズの強さの秘密 その戦略をセイバーメトリクス分析する 防御編

アストロズの強さの秘密 その戦略をセイバーメトリクス分析する 攻撃編

ライターによるアストロズのセイバー分析記事を見かけた記憶あります。「ピタゴラス勝率に比べて実際の勝率が高いのも、2015アストロズは運が良くかつ若手が多いので一時の勢いがチームにあるのかもしれない」という数字の表面をなぞっている程度のものでした。これではルーノウの高度な戦略性には全く近づくことはできません。




さて、ところでその人物が戦略的な発想ができるかどうかのチェックポイントとしてみなさんはどこへ置いているでしょうか?

私が考えるチェックポイントのひとつは<失敗>した時に、それははっきりとわかるというものです。

<失敗>という言葉を<リスク>や<コスト>に置き換えてもいいです。<失敗・リスク・コスト>この3つはできれば誰もが避けたいと思うものです。これに対して即物的(メタの反対語)な反応しかできない人は、すべからく戦略的な思考のできないと考えていいでしょう。

戦略の目的を達成するためには<失敗・リスク・コスト>をも許容し、それらをむしろコントロールすることこそが大事である。

例えばサンドバルが巨大な不良債権と化しDFAとなったことについて、「これだから大型契約は怖い。やはり新人から育てるのが最良」という即物的な反応をする人がいますが、戦略的な思考のできない人の典型であると断言できます。サンドバルやクロフォードのように不良債権化する失敗例もあるが、ジャンセン、カーショウ、シャーザ、マーフィのように大型契約をして大成功している例も数多くある。複雑系を敷衍させれば仮に神であってもすべての大型FAを成功させることなど絶対にできない。まして人間がGMをやっている以上、絶対にFA失敗はある。失敗はあったとしても石橋を叩いてばかりでは駄目であり、どこかで大胆に勝負に出ない限り、最終的な勝利を収めることは難しい。

こうした状況を客観的に眺めた時、大型契約のリスクばかりを強調するのは完全に間違っています。誰もが大型契約で大失敗することは避けたいものです。しかしできもしない「失敗を完全に避けようとする」幼稚な反応を戦略家は決してしないものです。

結論

戦略の目的を達成するためには<失敗・リスク・コスト>を避けるのではなく、戦略家はむしろ前向きにそれらを許容つつも積極的にダメージコントロールしようとする。失敗しないことが必ずしも戦略的な正しさを意味するわけではない。

<失敗・リスク・コスト>をメタな視点で捉えることが戦略にとってはとても重要になります。

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ダルビッシュ 移籍へのカウントダウンはじまる

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07 /24 2017
7月21日のレイズ戦に登板したダルビッシュ。8イニングを投げて、3HRは献上したものの12K1BBという素晴らしい投球内容でありフラッグディールにおけるショーケースとしては大成功でであったと言えます。特にファーストボールを中心に空振り率が抜群であったことはダルビッシュの株を更に上げたはずであり、ダニエルズにんまりというところかもしれません。

TEXもワイルドカード圏内ではあるものの、それなりに良いピッチングをしているエースが負け越しているようなチームで、PO進出して勝てるというイメージはなかなかし難いものがある以上、現時点でレンジャーズはダルビッシュを出すという方向性で動いていると考えるのが自然です。

2017年 6勝8敗 133イニング

ERA 3.44 FIP 3.83 xFIP 3.75  K9.65 BB 2.90

2016年までの通算スタッツ

ERA 3.29 FIP 3.15 xFIP 3.12  K11.32 BB 3.47

今シーズン、手術をして肉体改造をした成果は如何にというところですが、ダルビッシュが世界一の投手を目標としているため、サイヤング圏内かつ進化した姿を描くならば、ライブボールへ変更されたことを加味しても2016年までの通算スタッツのレベルは最低限求めたいところです。しかし実際は2016年までの通算スタッツのレベルには達していないと言えます。

2017年、ダルビッシュへの客観的な評価はサイヤングレベルの超一流ではないが、オールスター級のトップスターターという位置づけが妥当でしょう。

基準をリーグ平均レベルの投手にすれば、今年のダルビッシュも間違いなく素晴らしいという評価になりますし、基準をサイヤンガーにすれば評価は厳しいものとならざる得ない。当ブログ的にはダルビッシュにはサイヤンガーレベルを基準にしていたために厳しいシーズンになるだろうという言い方をしました。ダルビッシュが世界一の投手を本気で目指しているならば、少なくとも現状の成績で満足をしているかと問われたら、本心では決して満足していないと信ずるものです。

話は変わりますが、クリス・セールのなで肩のほっそりした体つきを見る限り、肉体改造もやり過ぎるのはトータルとしてどうなのかという疑問は依然つきまといます。現時点でセイバー的に言えるのは、パワーアップしたダルビッシュの4シームは確実に進化した一方、可動域が狭まったせいなのかスライダーがやや劣化しているということです。

移籍先はレンジャーズのリクエストに最もよく応えてくれるチームということに基本なるでしょうが、単純にダルビッシュ自身からすれば、強力な打線の援護がもらえて、かつピッチャーズパークを本拠地とするドジャースなどは好都合なのかもしれません。ちなみに、アストロズはメジャー最高の攻撃力を持つチームですが、この2年、メジャー最高のピッチャーズパークこそが意外にもミニッツメイドパークでありました。つまりアストロズの本拠地こそが最も投手有利な球場であるとセイバーメトリクスでは判定されています。結構知らなかった人も多いのではないでしょうか。単にダルビッシュサイドからの好条件だけ見れば、<強力な打線の援護>+<ピッチャーズパークを本拠地>を有するアストロズは最高のチームであるとは言えます。

ちなみにパークファクターの式を見ても明らかなように、そのチームの攻撃力とパークファクターは基本無関係です。つまりアストロズがメジャー最高の攻撃力を有しながら、チームの本拠地であるミニッツメイドパークが、メジャー最高のピッチャーズパークであることは十分にあり得る話です。

正直どこへ行くのかはよくわかりませんが、環境を変えれば、劇的にパフォーマンスが変わる投手もいるだけに、ダルビッシュは最終的にどこへ行き、パフォーマンスはどう変化するのか。期待をもって成り行きを見守っていきたいと思います。レンジャーズというチームでのダルビッシュの行き詰まり感は、相当なストレスになっていることだけは想像に難くありません。


フライボールレボリューション、超攻撃革命を起こすアストロズの戦略を読み解け! その1

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07 /17 2017

この記事を書くまで2週間ずっと考え続けて、ようやくある結論に達しました。「フライボールレボリューション、超攻撃革命を起こすアストロズの戦略を読み解け! その2」において、驚くべき超攻撃革命がアストロズの現場で起きていることについて触れていきます。

===

フライボールレボリューションの概要

4シーム(別称ライジングファーストボール)を含むすべての投球はマウンドからホームベースへ向かって落下するボールであり、ホームランを打つにはその各々の球筋に向かって打者はレベルスィングをするのが正しい。例えばスピンの効いた4シームに対しては、4シームも小高いマウンドからボールが落下してくるため傾斜前後の10度程度上向きアッパースィングが求められる。同様にカーブに対してはその落ちてくる球筋にバッドを入れなくてはならず、必然バッドは下から上への典型的なアッパースィングがホームランを打つためには求められることになる。

よく打球にバックスピンをかけろというが、それはホームランを打つコツとしては必ずしも正しくない。たしかに打球にバックスピンをかければ揚力は発生するが、同時に卓球でいうボールをバッドで下面をこすり上げカットし過ぎると、力がボールへ上手に伝わらず卓球でもカットされたボールは減速することになる。あくまで球筋に向かって平行にレベルスィングをし、4シームの場合はボールの中心から1.6cm下を叩き、打球角度26°でバックスピン1800rpmの打球が放たれた時、飛距離が最大化することがスタットキャストによっても明らかにされた。

すなわち4シームの場合、ボールの真芯とバッドの真芯が完全に一致しても打球にラインドライブがかかり遠くへ飛ぶことはないが、バックスピンを意識する余り、ボールを下面を叩き過ぎても打球も力が伝わらず高いフライになってしまう。ホームランを打つ最適の衝突ポイントとなるボールの真芯よりやや下に対して単純にダイレクトに(球筋に対してレベルスィング)力強くバッドを衝突させ、結果バックスピンがかかることが大事になる。

ちなみにご存知のようにボールがすでにライブボール(飛ぶボール)へ変更されていることも、スタットキャストの分析で確認されています。打球の角度と速度の二つの条件を揃えて、どこまでボールが飛ぶか各年度の飛距離を平均を比較すれば、一目瞭然2017年の打球は遠くまで飛ぶことが数字上でも、明らかになっている。

2017 打球タイプ別

ゴロ       AVG 245 SLG 267 OPS 513 BABIP 245
フライ      AVG 211 SLG 676 OPS 887 BABIP 090

OPSを比較しても明らかなようにゴロよりもフライの方が高い攻撃力を有している。「ゴロを転がせば何かが起きる」という旧態依然とした考え方はセイバーメトリクス的には極めて非合理的であり、ゴロを打つくらいなら打者は積極的にOPSの高いフライを打ち上げろというデータの裏付けの元に、新たな理論フライボールレボリューションが表舞台へと登場してきました。数年前よりもセイバーメトリクスで最先端をいくチームは当たり前のようにチームの攻撃戦略として取り入れていた理論であったわけですが、それはともかくこれからフライボールレボリューションを相対化して眺めるための3つのポイントを話したいと思います。

第一に、ゴロを打つくらいならフライを打ち上げろという革命がMLBに起きたにもかかわらず2017年リーグ全体の平均FB率は35.5%。解説者小早川は今年からフライは増えていると連呼しているが実際は違っており、フライの比率は増えていない。過去の11年で見ても2017年はど真ん中の6位であり、格別に高い数値を誇っているのではないことを歴史的に確認しておく必要があります。では、なぜフライボールレボリューションが騒がれる中、2017年のFB率は特段高いものとなっていないのでしょうか。

おそらくその一つの理由としてパイレーツやアストロズの防御戦略においても、明らかにされているように、多くのゴロを打たせてそれを守備シフトの包囲網でアウトとしてどれだけ捕捉できるのかというグラウンドボールレボリューションなるものがフライボールレボリューションの裏側で静かに潜航しているからです。コインの裏と表のように攻撃におけるフライと防御におけるゴロは両義性を成しているのであり、攻撃側が如何にフライを打ち上げることができるかを考えているならば、守備側は如何にゴロを転がせることができるかに腐心しているのは極めて合理的な動きと言ってもいい。物事の一面だけを眺めても駄目でありMLB全体の動きを俯瞰すれば当然のこととも言えます。

第二に、フライボールレボリューションによって大ブレイクしたOAKのヨンダー・アロンソ、J.D.マルティネス、ジョシュ・ドナルドソンらの成功例に出して語られることが多いわけですが一方で、フライボールレボリューションによってOPSが一時期は400台という大不振に陥ってしまったKCのエルコバルのような選手もいる点も見過ごしてはなりません。エスコバルのパワーや打撃スタイルからして、フライボール狙いの打撃は逆効果であった。フライボールレボリューションはもちろんあらゆる打者に効く万能薬などではなく、フライを打ち上げろという打撃スタイルはパワーのない打者には適さないということです。

メジャーの芝の深い球場であるという特性を利用して多くの内野安打を狙って獲得してきたイチローのようなリードオフに、フライボールレボリューションは基本的には必要はありません。なぜならスプリンガーのように特別なパワーがない場合、リードオフは高い出塁率が求められる攻撃ポジションであり、フライのBABIPが90に過ぎないのに対して ゴロの場合は245である以上、イチローのような得点能力の高いリードオフはBABIPの圧倒的に高いゴロを求めるのは当然のことです。もっともイチローの場合は、狙えばHRも放つフライボールを打つ技術があったにもかかわらず、ヒットの数を欲しがるあまり、長打がどうしても必要な場面まで状況を省みずセーフティバントを狙いそれがアウトになり、セルフィッシュであると批判されていました。

フライボールレボリューション、超攻撃革命を起こすアストロズの戦略を読み解け! その2へつづきます。


フライボールレボリューション、超攻撃革命を起こすアストロズの戦略を読み解け! その2

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07 /17 2017

フライボールレボリューション、超攻撃革命を起こすアストロズの戦略を読み解け! その1の つづきになります。

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第三は、exit velocity(打球速度)という視点です。ゴロでもなくフライでもないものはラインドライブとしてカテゴライズされます。

ラインドライブ  AVG 628 SLG 955 OPS 1583 BABIP 615 HR 595
フライ      AVG 211 SLG 676 OPS 887 BABIP 090 HR 2748
ゴロ       AVG 245 SLG 267 OPS 513 BABIP 245 HR 0

これを見ても明らかなように、HRはフライが断トツ1位ではあるが打撃において最も攻撃力の高い打球は、ラインドライブとなっています。exit velocity、打球速度が153km/h(95マイル)を超えると急激に本塁打を含む長打が増えるという報告がスタットキャストの分析でもあるように、当然、力のないフライはポテンヒット以外攻撃力としてはあまり価値はない。

正しくはまずフライありきではなく、大前提としてボールを強く叩き如何にexit velocity、打球速度を上げることができるかが最優先課題となっている。「打球角度25度のプラスマイナス10度がホームランゾーンであり故にフライを打ち上げろ」というフライボール理論も、バレルゾーンに包括されていることがわかります。バレルゾーン、打球速度が116マイルあれば打球角度が8度(ラインドライブ)~50度(高い放物線を描くフライ)までOKされている。バレルゾーンを意識する時、ライナーや高いフライであってもexit velocity、打球速度が確保されていれば問題ないことがわかります。

アストロズの強さの秘密 その戦略をセイバーメトリクス分析する 防御編

アストロズの強さの秘密 その戦略をセイバーメトリクス分析する 攻撃編

これは2年前の大方の予想を裏切って、スタートダッシュに成功したアストロズのについてセイバーメトリクス分析し考察したものです。

2017年最大の攻撃力を有するアストロズが、2015年の段階でフライボール革命をチームの攻撃戦略として、グラウンドボール革命を防御戦略として他よりもいち早く取り組んでいたチームであることを分析したものです。そんなアストロズのFB率が2015年においてはリーグ1位であったのに対して、2017年にはFB率もミドルレンジ(10位~20位)となっており、この他にもセイバーメトリクスで最先端を行っているレイズやドジャース、ボストンなどもすべて36.0%前後に密集しています。

ちなみにアストロズは防御において2015年同様ALリーグゴロ率1位を相も変わらずキープしています。グラウンドボールピッチャーを選び抜く眼や育てるコツのようなものをアストロズはスタットキャスト分析等を通して会得していると言えます。ちなみにパイレーツと基本同じ防御戦略をアストロズは採っているために、パイレーツ出身のモートンを2017年に獲得したのも極めて合点のいく話ではあります。

ところで先日もBSの番組でフライボール革命がフューチャーされておりましたがHOUのルーノウGMが余裕綽々でインタビューを答えているの見て、番組を見たみなさんはどう思われたでしょうか。その表情からすぐに私はピンときました。「フライボールレボリューションが最新トレンドだって?何を今更。そんなものは何年も前に我々は既に気づいていたことじゃないか。更なる分析が進み我々は次のステージへ入っているのである。」インタビューにも適当にあしらうかの様なルーノウの姿がはっきりと見て取れました。何かを隠し持っている雰囲気。すでに何年も前に当ブログでも分析した段階のままでアストロズのバッティング理論の進化がそこで止まっているとは到底考えられない。そこで更に私は考え続けることになります。

例えば全盛期のイチローをバレルゾーンでもって、打者としての力量を適正に測ることはできません。他の打者にとっては単なる非バレルゾーンにしか過ぎなくても、イチローにとってはヒットを量産できる金脈がバレルゾーンの他にこそ拡がっていたわけです。それがイチローのMLBで打者として生き残るための戦略そのものでもあった。アストロズが青木のような小柄なコンタクトヒッターに対してもKCのエスコバルで失敗したようなとにかくフライを打ち上げろという○○の一つ覚えのような打撃のアドバイスを送るような間抜けなチームであるとは到底思えない。

ハーパーの打撃アプローチは、得意な投手やカウントの浅い時はポイントを前に出してフライボールのフルスィングでホームラン狙いをするが、苦手な投手やカウントが悪くなるとポイントをやや後ろにしてミート中心に切り替えてなるべく粘り強く四球を狙ったり、あるいはシフトの逆をついて野手のいないところへ軽打しシングルを狙ったりします。こうでなければAVG・OBP・SLGを揃えることもできません。ハーパーのように賢く状況に応じて最善の攻撃アプローチをする。必ずしもフライありきではない。どうやら概ねこうした攻撃アプローチをチーム全体で取っているのが2017年アストロズだと言ってもいいでしょう。それは数字からもある程度明らかになっています。

「数多くフライを打ち上げ 30チーム中FB率1位 ・三振を恐れず 30チーム中三振数2位 ・ホームランを狙え 30チーム中HR数230本は2位 」という2015年のきめの粗い攻撃戦略を採用していたアストロズでしたが、明らかに攻撃アプローチを進化させており、2017年では30チーム中で最も本塁打の多い一方で、驚くべきことに三振が最も少ないチームこそが他ならぬルーノウ率いるアストロズなのです。

2017年アストロズ、ホームラン数30チーム第1位。三振数30チーム第30位。攻撃WAR30チーム第1位。

ちなみにブルワーズというチームはがアストロズについで2位の本塁打数を記録していますが、このブルワーズが三振数でメジャー全体1位を記録しています。ふつうはブルワーズのように本塁打が多ければ三振も多いものです。三振とホームランは一般に高い相関関係にある中で、もし三振の最も少ない打者がホームランを最も打っているとしたら、それこそまさしく打撃の革命だと言って過言はありません。それをチームレベルで実践しているのがアストロズであり、これまでの野球界の常識を完全にひっくり返してしまう超攻撃革命がルーノウ率いる2017年のアストロズというチームで静かに起きていると言ってもいい。

どうやらアストロズは投手の奪三振率が高い時代にあって、打者が三振をしないことにひとつの大きな価値であることを見出していることもわかります。だからこそメジャーでも2016年において3番目に三振しない打者であった青木を獲得したわけです。アストロズが2年も前に仕掛けていたフライボールレボリューションが最新トレンドって、ほんとうにそうなのでしょうか。

時代は常に動いているのであり、目新しさに飛びついてフライレボリューションにフォーカスし過ぎてはならず、いずれはフライレボリューションも過去の知性となる。歴史の中で現代に新たに登場したものを相対化して捉える複眼的な深い目を持たなければ、守備シフト同様にマスメディアやライターの垂れ流す情報に翻弄されることに必ずなります。

では、現代を相対化するだけの歴史的な深い目を持つとはどういうことか。

具体的に一例を挙げてみます。10年以上も前、スモールベースボールというと、時代遅れの日本の高校野球だろう的に高をくくられていた時代のことです。「打者の時代」でありビックボールを肯定する「マネーボール」いう枠を通しベースボールを眺めることをもって、時代の先端に躍り出たかのような錯覚をしている人たちが数多く存在していた時代でした。

そうした今から10年前以上も前、ほぼ誰も指摘しなかった二つのことを私は強調して話をしました。第一に歴史の法則を学ぶ限りそう遠くない将来、必ず「投手の時代」が訪れることになる。(そして2010年以降、一般にも「投手の時代」と言われるようになる。)もう一つは、セイバーメトリクスを内包したスタイルで「スモールベースボールが必ず復権する」ことになるとも言いました。旋風を巻き起こしたヨースト率いるKCの野球などはスモールベースボールを全面に押し出した野球そのものであり、2010年以降成功を収めたSFを率いるボウチーにしてもSTL率いたラルーサにしても、典型的なオールドスクールの監督です。

当時の空気感は今とは全く違っていて、そういうことを言っている人は私が知る限りほぼナッシングでした。ちなみに結果が出てから「そんなことは誰でもわかっていたこと」と高を括ることを後知恵バイアスといい、張本の十八番でもあります。張本に限らず野球の解説で極めて繰り返されることの多い、典型的なバイアスこそ後知恵バイアスです。

 野村IDの源流には「カージナル・ウェイ(カージナルス流)」がある

この記事を2010年頃わざわざ書いたのも、セイバーメトリクスかぶれの人に限って歴史に疎いと感じたからに他なりません。スモールに対する認識の軽薄な人が実に多かった。そして「投手の時代」「スモールベースボールの復権」といった状況も、ラビットボールの出現及び新たなフライボールレボリューションによって今また新展開を迎えています。

戦いにも原理原則があるように、歴史には運動法則があります。常に新しいものが現れた時、多くの人は真っ先に飛びつきがちですが、関心は払いつつも同時に歴史の中でどう位置付けるべきなのか、全体を俯瞰する眼が必要になります。

すなわちクローズアップとロングショットの二つの眼が必要になる。

結論 

フライボールレボリューションの考え方そのものは数年前から分析していたようにすでにあったものであり、決して最新理論などではない。なぜアストロズが三振が最も少ないにもかかわらずホームランを最も打てる最強の攻撃力を持つチームとなったのか。超攻撃革命を起こしているアストロズにこそフォーカスを当て、真の最新トレンドを読み解くべきである。

当ブログとしては引き続きアストロズの超攻撃革命について、仮説を出しては検証を重ねていくつもりです。何かが隠されていることだけは間違いない。

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大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

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