ヤンキース・キャッシュマンGMをもっと評価すべきである 戦略とは何か?

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06 /26 2017

キャッチャー・ゲーリー・サンチェス、ショート・ディディ・グレゴリアス、セカンド・スターリン・カストロ、センター・アーロン・ヒックス。ヤンキースのセンターラインを司る4人を抑えたのもキャッシュマンGMであるならば、現在MLB全体のWAR1位であり三冠王でもあるアーロン・ジャッジをドラフト1位で獲得したのもキャッシュマンGMです。

これまでジラルディ監督もそれなりの堅実で優れた働きをしていると言えますが、2017年は勝ちにはいかないシーズンとも言われていた中で、ここまでのヤンキース躍進、影のMVPは客観的にはキャッシュマンGMだと言ってもいいでしょう。

ハル・スタインブレナーという人物と唯一意見が一致するところがあるとすれば、監督及びGMへの評価となると以前にも書きました。しかし同時にこのチームの勝利するチャンスを逃すとしたら、それはリーダーであるオーナーの判断力のエラーになるだろうとも一貫して指摘し続けてきました。

例えばハル・スタインブレナーという人物の大局的な判断力のなさは、クリス・セール以外の判断でもこんなところに表れています。

2017の春先、ヤンキースのベタンセスが年俸調停で「ベタンセス500万ドルVSヤンキース300万ドルの闘い」は、公聴会まで持ち込まれヤンキース勝利という結果となりました。ところがたった200万ドルをケチったために、ベタンセスとの確執を生み出し、問題の焦点はベタンセスがピンストライプのユニフォームがいつまで着続けることになるのかへ、完全に移っています。

最終的にベタンセスがどこへ落ち着くのかその結果はわかりません。しかしベタンセスは3年連続でオールスター出場もし、2016年終了時、セイバーメトリクス的にも抜群の優秀さを示しとりわけK/9はキャリア通算14.28と出色であり、メジャーを代表するセットアッパーであります。生え抜き主義と言いながら、原理原則がコストカット第一主義であるために殿堂入りほぼ確実視されるカノ放出という大失策につづき、ベタンセスというリーグを代表するセットアッパーまで手放すことになるかもしれないという事態を招いてしまっています。

「コストパーマンス至上主義」と「若手・生え抜き重視」。
この両者のベクトルは矛盾なく基本一致することは間違いありません。

そうした若手の中でも殿堂入り級やオールスター級の特に優れた選手が育った時、その生え抜きにもそれなりのサラリーを当然支払わなければなりません。問題なのはヤンキースは超金満であるにもかかわらず「コストパーマンス至上主義」と「若手・生え抜き重視」の両者が食い違うシーンとなった時、ハル・スタインブレナーという人物の優先順位は、相も変わらず常にコストパフォーマンスであるという点にあります。

日本の有名なベンチャーキャピタルの社長がある時、こう問われたそうです。「今までベンチャーに投資してきた中で、失敗したのはどれくらいありますか?」。それに対して「これまで数十件ほどのベンチャーに投資をして失敗したのは1件だけだ」と答えたそうです。すると「それは素晴らしいリスク管理だ」とある素人は絶賛したそうです。ところがアメリカのベンチャーキャピタルCEOはこう答えたと言います。「失敗が少なすぎる。リスクをそこまでガチガチに管理しているということは、君はこれまでいくつももの大きなチャンスを逃していることを意味している。真に戦略的であるならば、リスクを取らな過ぎても駄目だということをもう少し知る必要がある」そうプロの戦略家は答えたそうです。かつて戦の神と表した孫正義と全く同じことを言っています。

失敗しないことは必ずしも戦略的正しさを意味しない。

ここがわかるかどうかが大きな分水嶺です。

「20件中1件の失敗よりも40件で5件の失敗ならば、後者の方がトータルの利益としては上がるという正しい選択をできるのが真に戦略的なのである。」そう日本の有名なベンチャーキャピタルの社長は回想していました。素人とプロが考える「真のリスク管理、真の戦略性とは何か」という理解に大きな差異があることを端的にこの話は示しています。そしてこの視点こそがハル・スタインブレナーに欠けているものです。

同様に、真の戦略家は「負けるが勝ち」という諺の真意を知っています。

誰かと争う場合、視野狭窄に陥らず何か一つのこと(例えば コストパーフォーマンス)にのみ焦点を絞り過ぎてはいけない。物事にいろいろな多面性があるのであり、部分的には負けても全体としてはこちらのほうが有利となる場合がある。自分の長所を最大限利用して、負けるところはきっぱり負けて、相手に一歩ゆずりつつも、最終的な勝利を収める。それが真の戦略家というものです。

たとえ年俸調停との戦いでベタンセスと勝っても、それでベタンセスのモチベーションやチームへのロイヤリティを下げることがあってはチームとしての大局的な利益を損なうことになる。たかだか200万ドル如きの戦術的な勝利よりもリーダーたる者は戦略的な利益を優先させなければならない。それが小さな勝利に拘泥するあまり、どうしてもハル・スタインブレナーにはわからない。

「戦略とは何か?」

みなさんならどう答えるでしょうか。いろんな切り口がありますが、一つの答えとしては戦略とは文字通り「戦いを略すこと」になります。

「戦いを略する。」

すなわち無駄な戦いを排除し、目的を達成するために実施すべき手段を可能な限りシンプルに煮詰めてゆくこと。戦略とは目的達成のためにやらなければならない課題を如何に絞り込めるかにかかっていると言ってもいいでしょう。裏を返せば、何をすべきでないかということを明確にすることでもある。何が大で何が小か、それがわかるのが戦略家というものです。失敗するリスクも織り込み済みで物事の優先順位が瞬時わかる、それが戦略家というものです。

なぜ、ハル・スタインブレナーはたかだか200万ドル程度の金を気前よくベタンセスへ出すという大局的な判断ができないのでしょうか。ちなみに現在チームのバジェット管理をガチガチにしているのは、キャッシュマンではなく、間違いなくハル・スタインブレナーです。なぜならば戦略的な部分ではなく、管理こそが几帳面で慎重なハル・スタインブレナーが最大の得意分野でもあるからです。おそらくそれをハル自身が最もよく知っているはずです。そういう意味では戦略的な発想のできるドジャースの優秀な人材をブレーンとして招くことがヤンキースの大きな補強になる可能性があることを意味しています。

ところで昨年まではキャッシュマンを叩くときは徹底して叩く一方で、ジャッジやサンチェスを選択してきたキャッシュマンを評価する人はほとんどいません。その態度は極めてアンフェアーでありそれは実に恣意的な物の見方しかできないことを意味しています。恣意的という言葉が難しければ、自分が見たいように物事を見るご都合主義と言ってもいい。

それはかつて最下位で大バッシングを受けた栗山監督が二刀流を成功させて11.5ゲーム差からの歴史に残る日本一を達成した途端、手のひら返しと全く変わらないものです。だからこそそれを他山の石としなければならない。

今年の春先一か月、ドジャースが全く調子の上がらない勝率500から借金2までのあたりをうろうろしていた時期に、当ブログで敢えてドジャースを支持する記事を書いたのもそのためです。あの時期に言わなければ意味がなかった。なぜなら今の調子のいいドジャースを支持することなど誰でもできるからです。

記事「サプライズと表現された快進撃のヤンキース」

上の記事はヤンキースが絶好調であり、ドジャースがダッシュに躓いた時に書いたものです。(おそらく、当ブログの主張していたところとは真逆の結果がその時点では出ていたために、完全なる逆風。スルーを決め込むと思われた方もいたかもしれませんが、内実は全く逆であり、その時だからこそ一貫した主張をすべき最大のチャンスであると考えていました。)

ではどうして多くの人はキャッシュマンや栗山監督批判に見られるこうしたご都合主義に走るのでしょうか。

社会学ではそれを「認知的不協和の解消」と言います。

認知的不協和。

「自分の考え」と「自分がとった行動」との間に矛盾が生じたり、「自分の考え」と「新たな知識」が矛盾しているといった時、人は認知における不協和を感じる。 そしてそのとき、自分の考えを変化させることで(無視したり逃避したりすることも含む)認知的不協和を解消しようとする。

叩きまくっていたキャッシュマンへの評価を一転スルーする態度こそ、認知的不協和の際たる例です。これを評して自己正当化バイアスという言葉を造語してもいいかもしれません。もし当ブログにひとつの特徴があるとすれば、それは認知バイアスの種類を徹底して調べ上げるところから言葉を立ち上げている点にあります。

なぜ、低迷していた時にも敢えてヤンキースの監督やGMを擁護し、結果が結びつつある今も尚、当ブログでは一貫してハル・スタインブレナーを批判しているのか?

それは監督やGMの仕事を超えた領域の判断においてハル・スタインブレナーの判断力が相変わらずお粗末であるからです。戦略的な思考に拠って立つならば、拘泥する必要のない贅沢税回避というコスト削減に囚われている点(ドジャースを見ていただきたい。贅沢税とも実に正しい向き合い方をしています。)、あるいは獲得チャンスはありながらも、取れるかどうかはともかく地区の勢力図を大きく塗り替える可能性のあるクリス・セール獲得に全く動かなかった件、あるいはカノやベタンセスへの生え抜きに対する対応などいろいろあります。これらの案件はすべてキャッシュマンではなくオーナー判断の案件です。(もしこれらがすべてGM案件であるならば、調子の悪い時期にわざわざキャッシュマンの擁護などしない。)

昨年のカーショウなき大ピンチのドジャースを敢えて支持してきたのも含めて、当ブログが一貫してドジャースを積極的に支持し続けているのは、最も肝心であるオーナーサイドの判断力が、ヤンキースとは決定的に違うからです。例えば状況に応じてFAでBOSから選手をごっそり引き抜く強引な手法から徐々に生え抜き重視へシフトしている方針の緩やかな転換などは、実に見事であり、ドジャースの戦略的な深いバランス感覚にはヤンキースは見習うべきものがあります。

ジャッジにサンチェス。ヤンキースはここ10年、黄金期を形成すべくコアとなるセンターラインがかなりはっきりと見えてきました。この大チャンスの10年でどれだけ勝利の生産性を高めることができるか、監督及びGMの能力がそれなりに優秀である以上、最大のキーマンはやはりハル・スタインブレナー次第であると言えます。

あくまで焦点は繰り返し述べているようにヤンキースが勝てるかどうかではなく、勝利の生産性にあります。必ずしもボスの考え方に全面的に賛同するものではないですが、ジョージ・スタインブレナーの偉大さが時代を経つにつれて、より明らかになるという考えにブレは一切ありません。

ちなみにNPB巨人の衰退についてもFAと育成の問題について一方的な浅い意見が予想通り飛び交っています。一面正しさはあるものの、そうしたステレオタイプな極浅な意見に必ずしも全面的には当ブログは与するものではありません。

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田中そしてダルビッシュ、長いキャリアの中で運不運は必ず相殺される

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06 /09 2017

ダルビッシュ の2012年と2017年の成績です。

2012年 ERA 3.90 FIP 3.29 LOB率 70.5
2017年 ERA 3.18 FIP 4.11 LOB率 84.8

2012年のダルビッシュが如何に運に恵まれていなかったかを裏付ける数字となっているように、2017年ではその逆であり運に恵まれていることを示しています。すべての人がセイバーメトリクスに対する理解をしているわけでもないという前提にして、これから初心者向けの記事を書きます。

例えばコイントスをして表面の出たのが10回中7回であり、裏面が出たのが3回だったとします。さて、このコインの表面の出る実力は何%であることを意味しているのでしょうか。

もしコインの表面の出る実力が80%であればサンプルを増やせば増やすほど、80%の確率へ収束してゆくはずです。しかしもしも全くシンメトリーなコインならば、何百、何千と試行回数を繰り返せばやがて限りなく50%へ収束していくことになります。シンメトリーなコインの表面の出る実力は50%であることは小学生でも理解しています。しかし実力が50%であってもサンプルが小さく10回にしか過ぎないと、7回も表面が出ることもあれば2回しか表面が出ないこともある。

短期的なここ一か月のサンプルでもって導き出されたERAを重視するということは、たまたま10回中、7回表面が出たらシンメトリーなコインの表面の出る本質的な実力を70%と見なすことと同じです。しかしFIPを重視するということは、目先のERAに囚われずシンメトリーなコインの表面の出る確率を50%であると洞察することに相当します。

昨年前田がERA0.47のダッシュをかけた際、セイバーメトリクスについて詳しくない一部の日本人ファンがはサイヤングだともて囃しました。その際に、セイバーメトリクスのふつうの理解がある人の間ではxFIPが3.60前後であり前田のERAも最終的には3.00台半ばへ向かってゆくことになるだろうと結論していました。前田に限らず。DETへ大型契約で移籍したジマーマンなどは4月を5試合でERA0.55・5勝0敗という圧倒的なピッチングを展開。しかし徐々に調子を落とし始め最終的には19試合の登板で、ERA4.87・9勝7敗という成績に終わりました。これなどもFIPへ注視していれば問題なくある程度、予測可能だったと言ってもいいでしょう。

特にシーズン全体を占うに短期的なERAで評価することは間違いの元になることは前田やジマーマンの例からも明らかです。

前田健太はクワーズフィールドをやり過ごせるのか

シーズン序盤ではペナント全体を見据えた時には、ERAよりもFIPやxFIPの方が大事だというのは、コイントスの例でも示した統計学的な根拠に基づいて言っています。

さて、そこでダルビッシュの727イニングというサンプルですが終身のERAとFIPの数字を比較してみます。

ダルビッシュ終身  ERA 3.28 FIP 3.26 727イニング

どうでしょうか。ボラスマクラッケンの知見の偉大さを改めて証明することになっています。単年度では大きくばらついても見事なまでにダルビッシュの終身ERA-FIPも限りなく0へ近似しています。今年の運の良さもこれまでのダルビッシュのキャリアにおける不運の調整が効いていると見なすことは可能です。

ちなみに一昨年末の記事です。

被弾率の高い NYYエース田中の行く末

より抜粋です。

「結論として基本的にあらゆる投手のERAはFIPへ向かってサンプルが多くなればなるほど近似していきます。2015年現在の田中、年通算でERA3.16FIP3.55です。今年に限っては田中のERA3.51FIP3.99。このままいけばの話ですが、短期的な話はともかく、田中のERAが単年度において4.00台に突入し、近い将来マスメディアから叩かれまくる日が来ることを示しています。それはセイバーメトリクスが示している厳然たるルールであり、(一部の例外を除き)この法則から逃れることのできる投手は基本的にいません。」

ある意味の運不運の調整が田中の場合も2017年になって効いていると見なすことも可能です。

田中将大  終身  ERA 3.53 FIP 3.78 556イニング 

かなり調整が効いてきていますが、1000イニングにも到達する内にERAはFIPへ更に向かって、より近似してゆくことはまず間違いありません。

繰り返しますが、基本的にもしあらゆる投手のERAはFIPへ向かってサンプルが多くなればなるほど近似してゆく統計的な傾向が認められないならば、FIPという指標を重視しERAと比較する意義は全くないと言っていいです。たしかにERAとFIPが近似しない例外の投手がいることもたしかなことです。しかしその一部の例外に対してのみフォーカスし、よってFIPという指標の持つ価値を過小評価するのは余りに愚かなことです。基本的には下記の記事通りで間違いありません。

被弾率の高い NYYエース田中の行く末

MLBとは長いキャリアの中で運不運は必ず相殺され、実力がむき出しになる世界であることをセイバーメトリクスは物語っている。

黒田博樹  終身  ERA 3.45 FIP 3.61 1319イニング

黒田もまたE-Fは0.16に過ぎません。ただし黒田の場合は勝ち運には恵まれなかった。ERA3.45はリーグ平均ERAよりも0.5は少ないはずですが、リーグ平均ERAで勝率500相当であるにも関わららず、なぜか黒田は79勝79敗という通算成績であり、如何にランサポートを黒田が受けてこなかったかという証明にもなっています。打線からふつうの援護を受けて勝ち運を持っていれば、100勝は軽くオーバーしている黒田の通算ERAだと言えます。+ERAは実に117。優秀です。

野茂英雄  終身  ERA 4.23 FIP 4.24 1976イニング 

しかし+ERAという指標でも97に過ぎません。平均以下の防御率であったということ。123勝109敗野茂は勝ち運には恵まれていたという結論でいいでしょう。逆に言うと、勝敗と言うスタッツが如何に古典的であり、その投手の能力そのものを反映したものではないという証明ともなっている。

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際立つロバーツ監督の決断力

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06 /09 2017

2016年度の最優秀監督賞を受賞したロバーツは類まれなる決断力の持ち主であり、昨年も心を鬼にしてリッチ・ヒルを7回完全試合ペースも降板させたように、「チャンスの女神に後ろ髪はない 」と言わんばかりに昨年のPOでも勝負所で絶対エース・カーショウをリリーフさせNLDSでも勝ち抜きました。

今回の前田の件も、前言を翻すことも厭わず手遅れになる前に早めの決断を下しました。1勝が命取りになることをロバーツは理屈抜きに知っている。PO進出をかけて最近のMLBでは162試合目まで戦うケースがほとんどです。

決断の遅れがペナントそのものを左右する可能性があることを知っての上で、隙を作らず最善の選択を指揮官は下さなくてならない。完全試合ペース、ヒル降板など、並みの監督ではそうそうできそうでできる決断ではありません。情に流されず透徹したフィロソフィーをロバーツは持っているのであり、おそらくはフロントと話し合いの上で、最終的には監督が決断したものと個人的には考えています。

中継ぎに降格した柳があっさり先発の座を奪還したように、前田にも必ずチャンスは与えられるはずです。前田の奮起を期待します。

しかしこうしてみると黒田博樹という投手の優れた働きぶりをまざまざと思い知らされます。メジャー通算7年ですべてERA3.00台で通し平均ERAは3.45。もちろん健康でありイニングも稼げるために、fWARは実働期で23.7でありメジャー全体でも17位。メジャー全体でも30チームしかないために、チームによっては十分エース格の働きをしていたということになります。

指摘されるまでもなくダルビッシュ、田中、前田健太らこそが我々以上に黒田の凄さを最もよく知るところなのだと思う。

ドジャース前田、ローテ生き残りをかけた次回登板は原点回帰を

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06 /08 2017

さすがに4回で92球はあまりに球数が多すぎるため擁護しようがありません。

投手に課せられた第一の仕事は試合を作りイニングを稼ぎ、中継ぎへ負担をかけ過ぎないということであり、更に言うならチームを勝利に導くべく自軍が得点を取るまでは相手に先取点だけは与えないということであるならば、DL明け以降の前田のピッチングに対する印象、総合評価は前回の試合をもって非常に厳しいものとなりました。(客観的には調子が最もいい時に、DL入りさせたフロントの判断にも問題があったと言えなくもありませんが、そういう意味ではウッドのDL明け以降の成績にも注目です。)

特にメンタルとして大胆に攻める姿勢がすっかり影に潜めて、慎重さが前面に出ている前田のピッチングは闘将ロバーツにとって歯がゆいというのはあるはずです。

前田に言い分があるとすれば、アバウトに攻めてボールが真ん中に寄ると、シーズン前半のようにERAが8.00を超えるような事態を招くトラウマがあるために、怖さを知っている分、どうしても慎重にならざる得ない。たしかにピッチングには大胆さと慎重さが必要です。しかし投手は大胆さと慎重さを等価なものとして取り扱うのは基本的に明らかに間違っています。なぜならサッカーもバレーもラグビーもテニスもバスケも、すべて攻撃側がボールを持っているように、野球の起源を振り返った時、実はベースボールもまた球を持って投手こそが最大の攻撃的ポジションであったからです。

ピッチャーとは元来、超攻撃的なポジションであったならば、大胆さと慎重さのバランスを取る際にも、比重はあくまで「大胆さ」へより重きを置かなければならない。哲学者プラトンも説いた中庸(深いバランス感覚)という考え方は、決して大胆さと慎重さを同等に取り扱うということではありません。ほんとうの深いバランス感覚を持つならば、投手は大胆さへ比重を置くべきなのです。

前田は大胆に勝負をし攻めた結果、炎上するかもしれない。しかしスペランカー揃いの柳賢振、マッカーシー、ヒルがローテをいるだけに、これからもチャンスは十分にある。

次回の前田ローテ生き残りをかけた登板は、投手というポジションの本質に宿っている攻撃性へ原点回帰し、攻める姿勢を是非見せて欲しい。黒田のツーシームのようにある程度ストライクゾーンへアバウトに投げても、高い確率で痛打されないボールがあるといいのですが、メジャーという厳しい環境でサバイブするためには何が前田にとって必要となってくるのでしょうか。

切れ、コントロール、緩急のすべてをフルに生かして、頑張ってもらいたい。

追記)ダルビッシュの決まった時のボールは明らかに手術前よりも凄いにもかかわらず、それを平均的に出力できず一試合の中でもコントロールや切れという意味でのボールの質にばらつきがあり過ぎて、トータルとして結果手術前よりもFIPも悪化しています。進化したとも言えるし、総合判断としては後退したとも言え、誠によくわかりません。

スタットキャストは旧来のスタッツの奥にあるものへ光を投げかける

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06 /03 2017
LADにベリンジャーという超プロスペクトがメジャーデビューを果たしました。惚れ惚れとするスィングスピードは頭抜けており、デビュー戦金田正一から四打席連続四三振を喫した長嶋茂雄ではないですが空振り三振ですら様(サマ)になっている。一方2017年のイチロー三振のシーンを見ると、ファーストボールには振り遅れ、変化球の時などは体が無様なほどに前に出されています。

自分のタイミングでフルスィングしているカッコいい三振とタイミングの取れていない無様な三振がある。ベリンジャーの三振にはホームラン可能性が内包されていると言ってもいいでしょう。

同様に同じショートフライでも、弱いバッドスウィングから生み出される小フライと、ヤンキースのジャッジによるフルスィングによって放たれた滞空時間の極めて長いショートフライでは、記録上はたとえ同じでもその意味は全く違います。後者のジャッジのケースは自分のタイミングでバッドが出ているということであり、バッドとボールの当たる位置が少しずれていたらホームランとなる可能性を大いに秘めたショートフライということになります。

記録上の凡打も旧来のスタッツでは三振は三振、内野フライは内野フライと全く等価に過ぎないわけですが、その意味するところは違うのであってスタットキャストの普及によって同じ凡打でもその質までも見極めて選手の価値を測ろうという時代にMLBも突入したと言えます。

例えば先日の前田についても手厳しい評価が下されていましたが、セイバーメトリクスの最先端をいくドジャースのことです。ちょっと一般とは違った見方をしていた可能性があります。というのも前田の先日の試合のでは2K3BBと、単純に眺めると旧来のスタッツから導き出される数値はセイバーメトリクス的にも非常に悪いわけですが、現在ではpitch F/Xがあります。前田の4シームは十分に制球されており、四球という結果であってもボールが先行し最後も完全外れた四球なのではなく、少なくとも2つのBBについてはカウント3-2からいずれも前田が狙ったところへボールはミットに収まっており、ptich F/Xからも完全にストライク判定されていました。審判のエラーさえなければ4K1BBであったのであり、味方のエラーもなければまず3失点という結果ではなかったであろうと客観的に考えられます。目先の結果ももちろん大事なのですが、ペナント全体を視野に入れているプロの眼はおそらく一般のファンとは違い、四球の質までも踏み込んで分析を試みているはずなのです。

アストロズがマクヒューのカーブの回転数に着目し、才能が一気に開花したというエピソードは余りにも有名です。マクヒューのコロラド時代のスタッツはERA10.02 未勝利の投手に過ぎませんでしたが、それでもって単純に駄目だとアストロズのルーノウは判断しなかった。スタットキャストによる細かいデータを読み取ることによって適正な評価を下すことに成功し、結果的にマクヒューは3年間で43勝もの勝利を収めることになりました。

もっともスタットキャスト以前に日本の今のMLBの解説者で初歩的なセイバーメトリクスの知識さえ持っている人はほとんどいないのが現状です。先日もLADのウリアスERA3.43であり被打率も220であり、ウリアスは勝てないだけでピッチング内容が素晴らしいとした解説者に仁志がいました。すでに予備知識として試合直前のスタッツでK/9=4.71、BB/9=5.14、xFIP=5.53という余りにも酷過ぎるデータを私自身は確認していたので、仁志もまたセイバーメトリクスの全く初歩さえ理解していないのだと思いながら話を聞いていたのですが、結果、その試合ウリアスは大炎上して、マイナーへ降格しました。この降格については、肘や肩への負担を軽減するという意味以上に、単純にウリアスがメジャーのスターターレベルに達していない意味合いが強かったと当ブログ的には結論しています。今までMLBの解説を聞いてきて、初歩的なセイバーメトリクスの知識さえ理解している日本人解説者は小宮山も含めて限りなくゼロに等しいです。なぜ勉強しないのかさっぱり理解できないのですが、アナログなフィーリング解説が未だ全盛です。

旧来のスタッツ、その数字のもっと奥にあるものへスタットキャストという最新鋭の技術は光を投げかけることによって、新たな世界観を提示していると言えます。

最後に余話としてダルビッシュの話になります。

ダルビッシュ ERA 2.97 FIP 4.01 xFIP 3.93

これまで客観的なデータに基づいていろいろ話をしてきましたが、2017年の好不調の波が激しくダルビッシュのピッチングは安定感がないために、細かい指標を拾っても試合ごとに変動するため些末なものに囚われても仕方がないと結論しました。結局 FIPとERAがこれだけの差があるということが如何に2017年のダルビッシュが運に恵まれているのかということであり、結論としては最初に戻って、厳しい数字が出る可能性の方が高いとしておきます。

仮にデータをすべて括弧に入れて、単純にダルビッシュのピッチングフォームを眺めた印象なのですが、上半身の柔軟性が失われてフォームも突っ張っており、ダルビッシュの現在のピッチングフォームはしなやかさやタメがないように見受けられます。2013年頃のダルビッシュのフォームの方がしなやかでタメもあり、単純にかっこよかった。今のダルビッシュがERAが2点台であろうが、技術的に大きな変化が見られない限り、こんなかっこ悪いピッチッグフォームで最終的に優れたパフォーマンスがたたき出せるのか、やはり個人的には疑問があります。

松坂(2008) ERA 2.90 FIP 4.03 xFIP 4.64 18勝3敗

もっとも松坂のように超強運でもってシーズンを乗り切ることもあります。ダルビッシュの場合は果たしてどうなるでしょうか。ダルビッシュがキャリア初の4.00台へ転落するのかも注目です。とにかく、結果はともかく今年のダルビッシュは調子の波があり過ぎて把握不可能というのが本音であり、調子が悪くても炎上しないのが2017年のダルビッシュということなのかもしれません。ただし冷静に分析すると炎上する危険性は常に孕んでいると言えます。

逆にこれまでの運を梃にして、突然、技術的に何かを掴み取り、ダルビッシュのレベルが一段階上がりサイヤング争いに絡んで来たら、喜んで謝罪記事をアップさせていただきたいと考えています。

ダルビッシュ有に危険シグナルあり!肉体改造の功罪をセイバーメトリクスする

大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。