新しいダルビッシュにサイヤングの目はあるのか

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04 /26 2017

セイバーメトリクスの歴史において最大の発見とも目される指標にDIPS(FIPはDIPSの一種)があります。投手の本質的な力は<K,BB,被HR>という三種類のスタッツで表現できることを統計的に明らかにした指標であり、特にKとBBは球場の大きさに左右されないだけにその投手の力量を端的に表現するものとして広く知られます。POのような短期決戦とは違い、特にシーズン序盤などはまず私が投手におけるその試合のスタッツを真っ先に眺めるのはKとBBであり、イニング数であり被HRであり、勝敗や失点などは二の次であり徐々に細かい指標を仮説に基づいて眺めてゆくといった感じです。

さて、ところで話は変わりますが1990年代のディケ―ドにおいて最高の投手と言えば誰になると思われるでしょうか。クレメンスでしょうか、ランディ・ジョンソンでしょうか。

答えははっきりしており、4年連続でサイヤング賞を受賞したグレッグ・マダックスの一択になります。以下数字で論拠を明らかにします。

K/9 6.63 BB/9 1.66 HR/9 0.52 FIP 2.77 イニング数 2394

たしかにマダックスの奪三振力は、リーグ平均以下に過ぎません。しかしながら精密機械と言われた制球力によって与四球数は極めて少なく、代名詞とも言えるバックドアのシンカーは右打者の外角へベースをかすめるようにストライクゾーンへ吸い込まれる典型的なグラウンドボールピッチャーでもあります。ゆえになかなか被本塁打を許さず、ステロイド時代においてHR/9 0.52は驚異的の一言。加えてパワー全開の力投型の投手に比べるならば、脱力型と言っても良く体や肘・肩に無理な負担がかからない理にかなった投球メカニクスによって故障知らずであり、年平均240イニングをこなすメジャーで最も健康でタフな投手であったと言っていいでしょう。10年間のイニング数2394回は他の追従を許さない。四球が少なく打たせて取るピッチングのためにイニングをそれだけ食えたということもあるでしょう。

1990年代ディケ―ド10年間。最優秀防御率、最多勝利数、最多イニング数、fWAR rWARいずれもメジャー全体1位。

これがマダックス一択の数字的な根拠です。

奪三振力がリーグ平均以下であっても、それを補って余りある投球術や変化球、コマンド・健康などの要素があれば総合評価として世界一の投手になれるということをグレッグ・マダックスは立証しました。一方でメジャーでも奪三振を奪いパワーによって試合を支配するタイプの投手に昨年・サイヤングを獲得したマックス・シャーザーはこんなことを言ったそうです。

「三振は組み立てがすべてだ。速球の他にカーブ・スライダーチェンジアップをそれをどう配球して決め球まで持っていくか。そうやって最後の球を空振りさせるんだ」と。

シャーザ―にとって三振とはあくまで空振りで奪うものというフィロソフィーがあるようです。

特に2017年に入ってからなかなかスライダーによって思うように空振り三振が取れなくなったダルビッシュは、先日の試合でも右打者へのフロントドアのスライダーで見逃し三振を2つも取り、高速シンカーもトミー・ジョン前に比べるならば鋭く小さく変化し空振りを奪えるようになり、球速差の大きなカーブもいよいよ有効であり、ファーストボールとスライダーだけの投手ではないことを証明して見せました。かつての奪三振力を前面に出したダルビッシュスタイルから、パワー系の多彩な変化球投手としてNEWダルビッシュスタイルを確立するには絶好のモデルとなるような試合だったのかもしれません。

先回の8回8K、500奪三振でメジャー史上最小の登板数で到達したダルビッシュの力量からしてはいささか物足りないような気もしますが、先日のような投球スタイルこそが新しいダルビッシュスタイルだということでしょう。

ちなみにダルビッシュが目指しているサイヤング級となると他のリーグの代表する投手も含めて、スタッツを記載しておきます。

セール(圧倒的な奪三振力)

K/9 12.74 BB/9 1.82 HR/9 0.30 FIP 1.10

シンダーガード(四球数が未だ0はアンビリバボー)

K/9 10.38 BB/9 0.00 HR/9 0.00 FIP 0.69

カーショウ(コロラドのクワーズフィールドで3HR)

K/9 10.16 BB/9 0.64 HR/9 1.27 FIP 2.67

シャーザ(今年も奪三振数リーグトップ)

K/9 10.73 BB/9 2.60 HR/9 0.65 FIP 2.43

ダルビッシュ

K/9 08.54 BB/9 3.58 HR/9 1.10 FIP 3.77

2013年開幕、ダルビッシュはHOU相手に14K0BBでスタートを切りました。この時、私は若干色めき立ちながらも、ダルビッシュを開幕以後サイヤング最有力候補の一人として一押ししていました。最終的にはダルビッシュはサイヤングポイントでも2位となり、右投手が特に地獄とされるアーリントンを本拠地にした投手で史上唯一の防御率2.00台をたたき出しました。しかしながら2017年の数字を見る限り、一目瞭然であり現時点ではとてもではないがサイヤングを現実的に競うレベルにはないのが客観的事実であり、どうしたらサイヤングという声が出るのかがよくわかりません。

ダルビッシュは8イニング 8K 1BBであるならまだしも 2HRも献上しており、一チームのエースになるのかどうかという基準でダルビッシュの昨日のピッチングを見るなら素晴らしいとも言えますが、メディアはそこまでダルビッシュに求める基準を低く設定していいのかという単純な疑問があります。

参考までにサイヤングレベルのライバル最直近のスタッツ

7回 10K 0BB シンダーガード

8回 09K 1BB シャーザー 

8回 13K 1BB セール

7回 10K 1BB カーショウ

もちろん、被HRは0であり、セイバーメトリクス的にはいずれもドミナントレベルの見本のようなスタッツだと言っていいでしょう。ダルビッシュはこういうレベルの投手たちと伍していかなくてはならないならば、さすがにメディアのダルビッシュ評は甘すぎると言わざる得ません。

最後に余談ではありますが、メディアの語源をご存知でしょうか。ミディアムです。肉の焼き方の一種にもミディアムがあるように中間にあるもの、間に取り入って媒介するものという意味です。しかし本来、ダルビッシュと消費者の中間に位置すべきメディアが歓心を買うためか明らかに偏り、贔屓の引き倒しになってはメディアとしての責務は果たせていないと言えます。

ちなみに当ブログがマスメディアに求めるレベルは、下記の記事で示しました。

殿堂入り 私ならバリー・ボンズへ投票する ジャーナリズムの精神とは何か

私自身、率直に言ってまだまだ勉強不足でありベースボールに関連する本も500冊程度しか読んでいません(将来的には1000冊程度の知識は身につける予定)。しかし可能な限り<リベラルアーツに立脚しつつマージナルを常に意識した深いバランス感覚>を大事としてこれからもスポナビというメディアを通して情報を発信してゆくつもりではあります。


ダルビッシュ有に危険シグナルあり!肉体改造の功罪をセイバーメトリクスする

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04 /22 2017
トミー・ジョン手術のリハビリ期間中におけるダルビッシュの特に上半身につけられた筋肉の発達には目を見張るものがあるが、果たして、肉体改造の試みは吉と出るのかそれとも凶と出るのかセイバーメトリクスによって分析を試みたい。

まずは誰でも映像を見ればすぐにわかるように、ファーストボールの球速がアップしたことはpitch F/Xでも明らかになっている。奪三振王を獲得した2013年が平均球速92.8マイルだったのに対して、2017年では94.0マイルへと上がっている。

ところが球速は上がったが奪三振力は低下し2013年のK/9 11.89から2017年では大きく数字を落としており、K/9 8.39とキャリアでも最悪のレベルになってしまっている。更には制球が乱れに乱れたデビューした2012年であってもBBは4.19であり、ダルビッシュは2017年の中堅からベテランの域に達しつつありながらBB/9 4.38へと低下している。

さて、ここで興味深いデータを提示したい。

スライダーのOswing率である。

2012 46.3%
2013 41.3%
2014 45.0%
2016 45.3%
2017 28.6%

スライダーのボールへ外れる球を振らせる割合が、2017年で急降下していることがわかる。それだけスライダーの変化率が落ちたために、バッターから見切られていることがデータからはっきりわかる結果となっている。

更にはスライダーのContact%を経年で調べてみた。

2012 58.8%
2013 63.7%
2014 60.2%
2016 65.5%
2017 70.6%

どうやらダルビッシュ最大の武器にして奪三振力の原動力でもあったスライダーはバッドに当てやすくなったことがデータでもはっきりした。すなわちスライダーの切れが失われてストライク・ボールの見極めがしやすくなったばかりか、キレが低下したためにボールにコンタクトしやすいボールとなってしまったということである。

2013年のダルビッシュは追い込めば左右の打者問わずスライダーを投げ込めば、クルクルバッドが回っていたが、2017のスライダーのボールゾーンへ曲がる球は見極められるばかりか、さらには追い込んでもファールで逃げられるためにK/9は低下しBB/9は増えるという状況となってしまっているのが現状のダルビッシュなのではないだろうか。

肉体改造によって球速アップと引き換えに、筋力の極端な増強が、上半身から肩周りにかけての可動域を狭めた結果、スライダーに切れがなくなったのではないかということである。

エンジェルス戦のようにツーシームとセットにしてスライダーの制球が良い日には素晴らしいパフォーマンスを発揮することもできるが、もともと精密機械のような制球をダルビッシュは持ち合わせてはいない。2013年の奪三振王を獲得した年などは、ツーシームとスライダーをセットにする必要なども特になく、追い込めば左打者の内角あたりへ、右打者の外角あたりへ適当に投げ込んでいれば三振を量産することができた。それはダルビッシュ自身が現にそう語っている。「(2013年)とりあえずスライダーを投げておけば三振が取れる状態だった」と。

現在のMLBでは投手の奪三振力は2016にはついに平均で史上初の8.00を超えるに至り、2017年でもK/9 8.22 BB/9 3.30となっている。つまり現在のダルビッシュは奪三振力はほぼリーグ平均レベルに落ちている一方、制球力はリーグ平均を大きく下回りデビューの年以下となってしまっている。

ダルビッシュ 2017年 K/9 8.39 BB/9 4.38

サンプルは少ないために早計に判断することは戒めなければならないが、ここまでK/BBが大幅に悪化している以上、総合判断として己の肉体を使ったダルビッシュの実験は2017という勝負の年において、ともすればシーズン終了後<失敗>として判定される可能性は否定できない。ただし繰り返しになるがサンプルが少ない上にダルビッシュがこれからどういう修正を加えるかによって未来は可変的であり、これからも注意深く映像及びスタッツのウォッチをしてゆく必要はあるだろう。

問題視すべきは、ダルビッシュが2017バージョンの自分のピッチングにどちらかと言えば肯定的な意見を吐いている点にある。2017年のダルビッシュはその己の高い自己評価とは裏腹に客観的なK/BBは、2017年においてキャリア最悪の数字となっている。こうした主観と客観の齟齬が問題を更にこじらせてしまう可能性はある。

結論

昔のようなスライダーのキレを取り戻すか、ツーシームとの組み合わせと精密なスライダーの制球によってNEWダルビッシュスタイルを確立するか、あるいは新たなるウィニングショットを身につけるか、はたまたシンダーガード並みの球速までに引き上げるか、いずれにしても何らかの解決策を確立できない限り、2017のダルビッシュには厳しい現実がやがて数字上に表れてくる可能性があることをセイバーメトリクスは現時点で物語っている。

2017年終えた時、果たしてマーケットはダルビッシュ有をどう評価するのだろうか。





ダルビッシュ有に危険シグナルあり!肉体改造の功罪をセイバーメトリクスする

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04 /22 2017
トミー・ジョン手術のリハビリ期間中におけるダルビッシュの特に上半身につけられた筋肉の発達には目を見張るものがあるが、果たして、肉体改造の試みは吉と出るのかそれとも凶と出るのかセイバーメトリクスによって分析を試みたい。

まずは誰でも映像を見ればすぐにわかるように、ファーストボールの球速がアップしたことはpitch F/Xでも明らかになっている。奪三振王を獲得した2013年が平均球速92.8マイルだったのに対して、2017年では94.0マイルへと上がっている。

ところが球速は上がったが奪三振力は低下し2013年のK/9 11.89から2017年では大きく数字を落としており、K/9 8.39とキャリアでも最悪のレベルになってしまっている。更には制球が乱れに乱れたデビューした2012年であってもBBは4.19であり、ダルビッシュは2017年の中堅からベテランの域に達しつつありながらBB/9 4.38へと低下している。

さて、ここで興味深いデータを提示したい。

スライダーのOswing率である。

2012 46.3%
2013 41.3%
2014 45.0%
2016 45.3%
2017 28.6%

スライダーのボールへ外れる球を振らせる割合が、2017年で急降下していることがわかる。それだけスライダーの変化率が落ちたために、バッターから見切られていることがデータからはっきりわかる結果となっている。

更にはスライダーのContact%を経年で調べてみた。

2012 58.8%
2013 63.7%
2014 60.2%
2016 65.5%
2017 70.6%

どうやらダルビッシュ最大の武器にして奪三振力の原動力でもあったスライダーはバッドに当てやすくなったことがデータでもはっきりした。すなわちスライダーの切れが失われてストライク・ボールの見極めがしやすくなったばかりか、キレが低下したためにボールにコンタクトしやすいボールとなってしまったということである。

2013年のダルビッシュは追い込めば左右の打者問わずスライダーを投げ込めば、クルクルバッドが回っていたが、2017のスライダーのボールゾーンへ曲がる球は見極められるばかりか、さらには追い込んでもファールで逃げられるためにK/9は低下しBB/9は増えるという状況となってしまっているのが現状のダルビッシュなのではないだろうか。

肉体改造によって球速アップと引き換えに、筋力の極端な増強が、上半身から肩周りにかけての可動域を狭めた結果、スライダーに切れがなくなったのではないかということである。

エンジェルス戦のようにツーシームとセットにしてスライダーの制球が良い日には素晴らしいパフォーマンスを発揮することもできるが、もともと精密機械のような制球をダルビッシュは持ち合わせてはいない。2013年の奪三振王を獲得した年などは、ツーシームとスライダーをセットにする必要なども特になく、追い込めば左打者の内角あたりへ、右打者の外角あたりへ適当に投げ込んでいれば三振を量産することができた。それはダルビッシュ自身が現にそう語っている。「(2013年)とりあえずスライダーを投げておけば三振が取れる状態だった」と。

現在のMLBでは投手の奪三振力は2016にはついに平均で史上初の8.00を超えるに至り、2017年でもK/9 8.22 BB/9 3.30となっている。つまり現在のダルビッシュは奪三振力はほぼリーグ平均レベルに落ちている一方、制球力はリーグ平均を大きく下回りデビューの年以下となってしまっている。

ダルビッシュ 2017年 K/9 8.39 BB/9 4.38

サンプルは少ないために早計に判断することは戒めなければならないが、ここまでK/BBが大幅に悪化している以上、総合判断として己の肉体を使ったダルビッシュの実験は2017という勝負の年において、ともすればシーズン終了後<失敗>として判定される可能性は否定できない。ただし繰り返しになるがサンプルが少ない上にダルビッシュがこれからどういう修正を加えるかによって未来は可変的であり、これからも注意深く映像及びスタッツのウォッチをしてゆく必要はあるだろう。

問題視すべきは、ダルビッシュが2017バージョンの自分のピッチングにどちらかと言えば肯定的な意見を吐いている点にある。2017年のダルビッシュはその己の高い自己評価とは裏腹に客観的なK/BBは、2017年においてキャリア最悪の数字となっている。こうした主観と客観の齟齬が問題を更にこじらせてしまう可能性はある。

結論

昔のようなスライダーのキレを取り戻すか、ツーシームとの組み合わせと精密なスライダーの制球によってNEWダルビッシュスタイルを確立するか、あるいは新たなるウィニングショットを身につけるか、はたまたシンダーガード並みの球速までに引き上げるか、いずれにしても何らかの解決策を確立できない限り、2017のダルビッシュには厳しい現実がやがて数字上に表れてくる可能性があることをセイバーメトリクスは現時点で物語っている。

2017年終えた時、果たしてマーケットはダルビッシュ有をどう評価するのだろうか。





大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。