2017年、大谷翔平に待ち受けるインターナショナルFA・ボーナスプールの壁

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12 /30 2016

新労使協定では、インターナショナルFA・ボーナスプールの各チームに割り当てられている金額は勝率に応じて475万ドルから575万ドルに設定されている。ただしこのインターナショナルFA・ボーナスプールの金額は他球団とトレードによって金額枠も動かせる。尚上積みできる金額は最大で当初の金額の75%までである。よって最大1000万ドル前後まで契約金枠をチームは増やすことが可能となる。

しかしインターナショナルFA・ボーナスプールの限界枠を超えると翌年の最高契約金は30万ドルになる。2017年7月からこの制限されるチームが全部で11チームある。ヤンキース、レッドソックス、ドジャース、エンジェルス、レイズ、ダイヤモンドバックス、カブス、ジャイアンツ、ロイヤルズ、ブルージェイズ、パドレス。だという。よって現時点で限度額が30万ドルのチームはすでに戦線から離脱しているのであるとのご指摘を頂いた。

なるほど一理はあるが、果たしてほんとうにすでにこの11チームは大谷に獲得戦線から離脱したと考えるのが正しいのだろうか。その指摘によれば以上の理由により大谷のパドレスはないと結論されている。大谷は1年目からメジャーでのプレーは可能だが、昇格しても、年俸は取り決められている最低保証の54万5000ドル。1年目の大谷が上記の11チームと契約しても手に入れられるのは85万ドルであり、同じくマイナー契約で渡った20年前の野茂よりも低く抑えられてしまっている。

プロである以上お金がすべてという考え方は当然あってしかるべきである。しかし黒田はヤンキースから20億のオファーがあったにもかかわらず6億の広島の選択したように、松井秀喜が日本球界へ復帰していれば、5億のオファーは絶対に下らない状況下にあったが、今の松坂のように醜態を晒すことはできないと引退を決めた。もしその立場に福留であったなら5億のオファーに飛びついたであろうことは阪神復帰劇の一部始終を見ても容易に想像がつく。

通常、福留の例でもわかるように人は経済合理性によって物事を選択する存在であると信じられてきた。株式マーケットという人の欲望が渦巻くフィールドであれば猶更、合理的な判断を人は下すと考えられてきたわけである。ところが株式マーケットにあっても、人は無意識のうちに極めて非合理的な行動をしてしまうことを証明したのが行動経済学である。

メジャーリーガーが100人いれば99人は名門ヤンキースの20億を合理的に選択することになる。しかし人間は非合理性をも内包した存在であり、黒田博樹や松井秀喜のように意識的に経済合理性よりもプライスレスなものを大事にする選手がいるのもまた事実なのである。日本ハムの本塁打王を獲得したレアードにしても西武のメヒアよりも市場価値があると評されていた。しかし自らメヒアの年俸よりも格段に安い日本ハムのオファーをレアードは喜んでのんだのはご承知の通りである。メヒアの年俸5億、レアードの年俸3億。レアードが日本ハムと再契約する前に他の球団とも交渉すれば確実に総額数億円は現状よりも上乗せ可能であったことくらい理解していただろう。

合理性と非合理性の両方を具有しているのが人間の真実の姿である。こういう認識の上に立ってこそはじめて黒田や松井秀喜、レアードのような選手の行動原理も認識することが可能となる。もし大谷翔平という一人の人間の価値判断が、経済合理性の上に大きく拠っているならば、そもそも25歳になった時に2億ドルは下らないサラリーを選択をするのではないか。大谷翔平の価値判断を一般的な常識という枠の中で測ろうとするのは、極めて危険である。

栗山監督「翔平にとってお金は関係ないと思う」
大谷翔平「大事じゃないとは言わないが、金の問題じゃない」

結論

どういう選択をするかは全く予断を許さない。25歳まで待つという合理的な選択があってももちろんいい。しかしこれまでの大谷の言動や行動を見る限りパドレスの最高契約金が30万ドルになることは、大谷の選択においても負の要因になること間違いないがパドレスを絶対に排除する決定的な要因にはおそらくならないだろう。

合理性と非合理性の狭間にもまたマージナルが存在している。その境界線(マージナル)を自在に超えながら、全体を眺めつつも状況に応じて総合判断としてどちらに比重をかけ物事を捉えるべきか、そこにこそ洞察力の質が問われている。

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2017年、大谷翔平の移籍先としてパドレスが最有力な理由

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12 /26 2016

ご存知のように日本ハムはサンディエゴ・パドレスのシニアアドバイザーのランディ・スミスとGM付シニアアドバイザー兼メジャーリーグスカウトディレクターとして契約しました。インターンとしてパドレス入りした斉藤隆がサンディエゴのキャンプ地でもあるアリゾナ州ピオリアで開催した日本ハムの春季キャンプの面倒見たように、2008年から日本ハムとパドレスは業務提携している。

現在パドレスのグリーン監督も日本ハム在籍したことがあり、パドレスのアドバイザーを務める野茂英雄の長男は日本ハムの通訳。金子打撃コーチはパドレスにコーチ留学。元日本ハムの中嶋聡氏をマイナーでのコーチ留学に招待されました。この他にも日本ハムとパドレスのフロントレベルでは激しい人材交流があります。

野茂英雄がパドレスのフロント入りした理由も、つまるところパドレスが日本から優秀な人材を積極的に獲得したいということに尽きます。それは高知県でもパドレスがトライアウトを行い、SBの松田がFAになった時もパドレスが積極的に動いてきたことからも明らかです。

現役時代にはサンディエゴに縁もゆかりもなかった野茂英雄と斎藤隆ですが、両氏が最も現役時代に輝きを放ったのは、いずれも最初に入団したドジャースです。どうやらサンディエゴのフロントに、元ドジャースのオーナーであったピーター・オマリー氏が2012年に参画して以降、大きくパドレスの日本戦略も変わったと見てよさそうです。ドジャースの人脈を伝って、野茂英雄と斎藤隆もパドレス入りをしたということになります。

かつて1965年からドジャースのオマリー親子に仕え、MLBのチームにフロント入りした初の日本人にアイク生原がいます。

ピーター・オマリー氏のパドレス参画に合わせて、ドジャースではアジア担当を務めていたアイク生原の娘婿であるエーシー興梠もパドレスに移籍し、元ドジャーススカウト部長のローガン・ホワイトも、パドレスのプロ担当スカウト部長に就任しました。エーシー興梠とローガン・ホワイトこの両氏が2012年にドジャース在籍時代、最後に獲得に動いたのが花巻東の大谷だったというわけです。そのドジャース行き寸前であった大谷を口説いたのが日本ハムと栗山英樹監督であったのはご存じのとおりです。

これまで当ブログでは、日本ハムの戦略性の高さ、特に新奇探索性が日本のプロ野球の歴史において際立っていると言ってきました。一方、メジャーの歴史において常にロジスティクスにおいて数々のフロンティアを切り開いてきたドジャースを極めて特異な存在として、度々フューチャーしてきました。新奇探索性とフロンティア、言葉は違っても意味するところは同じです。

例えばドジャースはニューヨークという大都会から飛行機時代が到来した1950年後半に思い切って、ロスへ本拠地を移動させました。この時のオーナーが、ピーター・オマリーの父ウォルター・オマリーであり、最初にアイク生原が仕えたオーナーでもあるわけです。同じように日本ハムも大都市・東京を後にして、北海道というフロンティアを切り開きました。いずれも大都会という巨大なマーケットを捨て遠方の未開の土地でチャレンジをしたわけです。

新たなものへチャレンジするというカルチャーは、日本ハムとドジャースに通じるものです。なぜ日本ハムとオマリー時代のドジャース・カルチャーを受け継ぐパドレスが最近特に親密な交流をしつつあるのかもようやく得心できました。大谷獲得に対して、インターナショナル・FAの25歳未満ルールもパドレスの追い風になっています。

結論

こうした全体の流れを俯瞰すると、パドレスが大谷獲得戦線においては他の球団より一歩も二歩もリードしていることは明らかである。

大谷が2017年のオフにどこに行くはもちろん決定していません。大谷自身が最終決定することは言わずもがなです。大谷が優勝の狙えるもっと人気のあるチームに希望するのかもしれない。しかし二刀流がメジャーでスムースにテイクオフするには、ナショナルリーグでDHもなく投手であっても確実にバッターボックスに立ち、投げない日は代打やインタリーグの時にはDHで出場もできる、極めて温暖な気候のサンディエゴも選択肢としてはありではないのか。「二刀流の調整」についてもメジャーのチームが一から試行錯誤するのではなく、何かあっても業務提携しているパドレスと日本ハムなら、人材も互いの組織に食い込んでいるために、様々な情報やアドバイスも他のチームよりかなり通りやすいのは十分に想定できます。

最後にオマリー氏が親日であるのもアイク生原さんの存在抜きには語れないことも一言付け加えておきます。

ドジャースのフロンティア性についての記事

「ジャッキー・ロビンソンからビーンGMまでロジスティクスの歴史  落合中日は日本ハム流広義のマネーボールに学べ」 

日本ハムの新奇探索性についての記事

なぜパリーグのレベルの方が高いのか? 小宮山や里崎の記事で満足できなかった人のために

落合に日本ハムのGMは絶対に務まらない理由とは

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12 /22 2016
追記)なぜ 敢えて日本ハムというワードを出したのか それは物事を相対化させることによって今の中日の問題点の輪郭がよりクリアになってくるからです。チーム自体の戦略性にも相当の差があります。セリーグで最下位ということは事実上12球団で今最も弱いチームということになります。

落合GMをボロクソ言っていたのが辞めた途端、落合だけがわるいのではない、実は人情派である、選手、監督としては超一流であったという一般に見られる論調にも大きな疑問があります。オーナーに問題があるのはわかりますが、あくまで焦点をGMとしての能力へ絞り込むべきです。

====

もしあるGMがメディアの向こうにいるファンともコミュニケーションを取らなければ、フィールドに立つ現場を指揮する監督ともコミュニケーションを取らないとしたら、ふつうはどう評価されるでしょうか。セイバーメトリクスについてもほぼ知らず、大幅なコストカットしたはいいが、成績4位→5位→6位真っ逆さまへ落とし、入場者数は減りスタンドの風景年々寂しくなり、ドラフトで獲得した選手もパっとせず未来に夢もあまりない。最もFAで移籍したくないチーム、あるいは最もドラフトで入団したくないチームというアンケートがあれば、真っ先に上がるチームへ導いたGM。それが落合GMということになります。もしこのようなGMがメジャーにいたとしたら、史上最低レベルと評価されるのは避けられません。

かつて日本ハムが最下位で2013年大バッシングされた時、栗山監督を当ブログでは擁護しました。

「ジャッキー・ロビンソンからビーンGMまでロジスティクスの歴史  落合中日は日本ハム流広義のマネーボールに学べ」 

しかしこの記事でも、落合GMについてはこれまでも一貫して書いてきたのですが、基本ネガティブにしか捉えることがどうしてもできませんでした。

「マネーボール」という本を中日の落合GMはほんとうに理解しているのか?

この記事では落合がGMである限り、中日の衰退トレンドは止められないだろうとも言いました。これは大多数の誰もが予知していたことでした。

例えば大谷二刀流については、これまでも一貫して書いてきたように決して単純に否定されるべきものではないと考えていました。しかし谷繁兼任監督については結果が出る前から大反対でした。なぜならば、選手の仕事は試合中、目先の一球一球に集中し視点をフォーカスし一点に<クローズアップ>しなければ優良なパフォーマンスをたたき出すことはできないのに対して、監督とは大局観によって物事を俯瞰することが仕事です。フィールド全体、143試合全体、控えも含めてベンチ全体、大所高所から視点を<ロングショット>に保たなければ仕事はできない。

ふつうの人間がクローズアップとロングショットを同時にこなすことは果たしてできるのか。

それに対して二刀流は、野手の日と投手の日とスケジュールが完全に分かれているために能力さえあればこなすことは可能です。リアル二刀流の日であっても、甲子園球児やセリーグの投手がふだんからやっています。監督を兼任するということはクローズアップとロングショットを同時にこなすことですが、チーム全体のパフォーマンスを上げるには単純に監督と選手を分業させることが最善であり、兼任監督をさせる利益はコストカット以外にはっきり言って全く見当たりません。

こうした兼任監督というアイデアを実行するセンスが、落合GMの能力を端的に示しています

落合GMだけのせいではない。

たしかにそれはそうです。しかしその責任は極めて大きく、落合GMの功と罪を日本ハムを注意深くウォッチしてきた第三者として総合判断した場合、あまりにも罪が大きすぎる。監督としては一流でも、GMとしての能力は見るべきものはなかった。まず落合GMは俺流でありそもそもセイバーメトリクスを理解していません。現場とフロントが絶えずセイバーメトリクスを基礎にしたBOSというツールを通して情報を一元化しそれを共有しながら、ベクトルを一にしてチーム全体で戦略を推進させてゆくところに日本ハムの強さがあります。

落合GMがやってきたことはフロントと現場の分断であり、フィールドとスタンドの分断に他なりません。一つに集約しなければならないものを分断し、本来、分業しなければならないものを兼任させた。落合GMの能力がそこにはっきりと表現されています。

日本ハムのGMは戦略家でなければ絶対に務まりません。

結論

戦略の最も肝要なポイントは、全体のベクトルを一つに集約することである。組織を分断する者がトップに立つとき、チームは必ず衰退する。巷に溢れている落合同情論にくみするつもりは毛頭ありません。

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カブスのエプスタイン、K/BB歴代1位の上原を獲得する

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12 /15 2016
まず最初に修正します。

BOS時代シリングを獲得したのはエプスタインですが、ペドロを獲得したのは前BOSのGM、現BALのGMデュケットです。以前書いた記事で勢い余って間違った部分があり、ちょうどいい機会なので修正記事をアップしておきます。K/BBが史上最強レベルのスターターであったシリングを獲得したのがエプスタインであったように、K/BBが史上最強レベルのリリーバーを獲得したのもエプスタインということになりました。

上原のブルペンでのキャリア通算K/BBで8.78で史上1位。2位はデニス・エカーズリーの6.29です。(1900年以降 キャリア300イニング以上)ちなみに、上原のブルペンでの通算WHIP0.80で歴代1位となっています。34歳でMLBへ渡って、既に全盛期の力はなかった上原がセイバーメトリクス的にここまで超絶な記録を残してきたということは瞠目すべきことでもあります。

CHCが上原を獲得と聞いてすぐに頭に浮かんだのはシリングやペドロに代表されるK/BBという、セイバーメトリクスにおいても極めて重要なスタッツであり、先ほど改めて調べました。DIPSの発案者でもボラス・マクラッケンをデータアナリストとして採用したBOSから、エプスタイン率いるCHCへの上原の移籍は、実に理に適ったムーブであるとも言えそうです。

やや衰えたとは言え2016上原のK/BBも5.79、平均から比べたら確実に一流レベルにあり、この数値が5.00を上回る限り上原には2017年以降もまず需要があると考えていいでしょう。ちなみに2017プロジェクションではK/BB4.51になるとも予想されています。もっとも4.51でも相当に凄い成績であることに違いありません。

修正記事

「強い者が勝つ!それが二つの呪いを解いたエプスタイン・スタイル」

カブスのエプスタイン、K/BB歴代1位の上原を獲得する

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12 /15 2016
まず最初に修正します。

BOS時代シリングを獲得したのはエプスタインですが、ペドロを獲得したのは前BOSのGM、現BALのGMデュケットです。以前書いた記事で勢い余って間違った部分があり、ちょうどいい機会なので修正記事をアップしておきます。K/BBが史上最強レベルのスターターであったシリングを獲得したのがエプスタインであったように、K/BBが史上最強レベルのリリーバーを獲得したのもエプスタインということになりました。

上原のブルペンでのキャリア通算K/BBで8.78で史上1位。2位はデニス・エカーズリーの6.29です。(1900年以降 キャリア300イニング以上)ちなみに、上原のブルペンでの通算WHIP0.80で歴代1位となっています。34歳でMLBへ渡って、既に全盛期の力はなかった上原がセイバーメトリクス的にここまで超絶な記録を残してきたということは瞠目すべきことでもあります。

CHCが上原を獲得と聞いてすぐに頭に浮かんだのはシリングやペドロに代表されるK/BBという、セイバーメトリクスにおいても極めて重要なスタッツであり、先ほど改めて調べました。DIPSの発案者でもボラス・マクラッケンをデータアナリストとして採用したBOSから、エプスタイン率いるCHCへの上原の移籍は、実に理に適ったムーブであるとも言えそうです。

やや衰えたとは言え2016上原のK/BBも5.79、平均から比べたら確実に一流レベルにあり、この数値が5.00を上回る限り上原には2017年以降もまず需要があると考えていいでしょう。ちなみに2017プロジェクションではK/BB4.51になるとも予想されています。もっとも4.51でも相当に凄い成績であることに違いありません。

修正記事

「強い者が勝つ!それが二つの呪いを解いたエプスタイン・スタイル」

8年連続で最優秀監督賞ポイントを獲得しているジラルディは、もっと評価されるべきである

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12 /13 2016
これは2016の最優秀監督賞ポイントの順位です。

1 Terry Francona CLE
2 Jeff Banister TEX
3 Buck Showalter BAL
4 John Farrell BOS
5 Joe Girardi NYY
6 Scott Servais SEA

PO進出した地区1位もしくは2位の監督に多くのポイントが入っていることがわかります。しかしながらPO進出のTORのギボンズ監督は1ポイントも入っていません。NL2016でも世界一のマドンはリーグ2位であったように、2009の世界一に輝いたヤンキース時代にあってもジラルディのポイントはリーグ3位でした。ちなみにジラルディが最優秀監督賞を受賞した年、マーリンズは勝率500にすら届かず4位という成績でしたが、一時はPO争いにも絡む躍進を見せた年であり、そのチームの総額年俸はリーグ最下位のわずか3000万ドルに過ぎませんでした。ふつうの監督ならばマーリンズはPOにかすりもしなかった戦力だと言ってもいいでしょう。だからこそのジラルディ、2006年最優秀監督賞受賞でした。最優秀監督賞のポイントを獲得するためには単に、チームを勝ちに導けばそれで獲得できるものでもないことがわかります。2016年もNYYは地区4位。

ジラルディが唯一ポイントを逃しているのは、貯金16も獲得したがPO進出を逃した2008年のみとなっています。いずれにしても揺るがぬ事実としてここ8年連続でポイントを獲得しているのはジラルディただ1人だけであるということです。この8年連続の中にはヤンキースが衰退期に入り地区3位や4位という結果の年も入っています。地区3位や4位でポイントはふつうではまず獲得できません。

言葉が悪いですが2013年では3番ウェルズ4番オーバーベイ5番ハフナーというまるで廃品回収で寄せ集めたようなクリーンナップで勝ち越し、2014年黒田以外、「先発ローテはそして誰もいなくなった」という状態、フィリップス、カプアーノ、ヌーノ、グリーン、ウィットリー、マッカーシー等のお世辞にも一線級とは言えない脆弱な先発陣を率いても勝ち越しを決め、2016年においても鮮やかなファイアーセールを敢行しながら尚もジラルディはPO争いにも持ち込み勝ち越してみせました。戦力は他のチームから見ても明らかに劣り、すべて大きく得失点差はマイナスであった結果です。

こうした例を出せばわかりやすいでしょうか。野球は得点を争う競技と言ってもいいでしょう。ヤンキースの4番グレゴリウス・5番カストロはあの狭小なホームでようやく20本に乗せたというものでした。他のTB・BOX・BAL・TORの中心打者の平均はいずれも35~40本レベルのHRを放っています。

偶然に何度も、得失点差がマイナスであって、チームを勝ち越しに導けるとも思えません。そこには何らかの技術のようなものがきっとあるはずです。当ブログのテーマには戦略がありそれなりの視点を持っているつもりですが、ジラルディの行動原理の奥にあるものへ光を投げかけるだけの透視力がなければ、なかなかその力量を正当に評価することは難しいのです。はっきり言えば多くの批判している日本のファンよりも、ジラルディの方が遥かに戦略や戦術についての確かな目を持っているように少なくとも私には見えます。

ちなみに今年の150試合目前後のことでした。NYYとLAAの得失点差が全くイコールとなった日がありました。片や貯金を10近く稼ぎ、片や借金10を軽くオーバーするというものでした。


参考までに 最優秀監督賞のポイント 3者比較

ジラルディ

2009 AL Manager of the Year - 3rd
2010 AL Manager of the Year - 6th
2011 AL Manager of the Year - 5th
2012 AL Manager of the Year - 5th
2013 AL Manager of the Year - 4th
2014 AL Manager of the Year - 6th
2015 AL Manager of the Year - 5th
2016 AL Manager of the Year - 5th

ソーシア

2009 AL Manager of the Year - 1st
2010 ×
2011 AL Manager of the Year - 6th
2012 ×
2013 ×
2014 AL Manager of the Year - 2nd
2015 AL Manager of the Year - 7th
2016 ×

マドン

2009 ×
2010 AL Manager of the Year - 3rd
2011 AL Manager of the Year - 1st
2012 AL Manager of the Year - 4th
2013 AL Manager of the Year - 5th
2014 ×
2015 NL Manager of the Year - 1st
2016 NL Manager of the Year - 2nd

重要なポイントはジラルディは2009年のヤンキースのような典型的な強者を率いることができるだけでなく、マーリンズや衰退期に入ったヤンキースのような弱者をも率いることのできる監督だということです。8年連続ポイント獲得からもわかるように、おそらくメジャーの監督が10人いたら、その優秀さは低めに見積もっても3番手から4番手に位置すると考えるのが妥当です。間違っても平均レベルの5~6位という順位ではない。平均レベルで8年連続でポイントを獲得したり、最優秀監督賞を受賞したり、ワールドシリーズを制覇することなど絶対に不可能なことです。

無能とは一般に8~10位に位置する監督のことです。繰り返しになりますが日本で跋扈するシラルディ無能論には何らの数字的な裏付けもなければ、明快な論理性もありません。個人的にはジラルディのファンということでもないのですが、感情論に終始する無能論に大きな疑問を持っているだけのことです。

チャップマンを出して、すぐにFAで獲得したキャッシュマンの手腕も相応に評価されるべきであると考えています。ヤンキースは今こそ売り手へ転じるべきであるとも2016シーズン中に記事にもしたように、あのような器量のないオーナーに仕えているという限定条件の中では、それなりに上手く立ち回っていると考えても良さそうです。

よくも悪くもほぼ全く予想を裏切らない動きをするのが今のNYYですが、あの夏、ヤンキースは思い切って売り手へ回った点においてはある意味正しい戦略を取っているとも言えますし、一方大局的に眺めた時、決して全面的に支持などできないというのが当ブログの微妙な立場です。いずれかの機会にヤンキースの話はまたします。

それにしても随分ジラルディも日本のファンからは嫌われているものです。

参考までに当ブログでジラルディを正当に評価すべきであると最初に言ったのは5月のはじめ、今から振り返れば最も借金の多い時期のことです。

「敢えて最下位ヤンキースのジラルディ監督を擁護する」


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ヤンキースは今こそ売り手へ転じるべきである


2017年大谷翔平、メジャー移籍問題の本質を戦略的観点から紐解く

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12 /13 2016

インターナショナルFA25歳未満ルールの戦略的な思惑について3つの側面から考えることによって、この問題をきっちりと頭の中で整理してゆくことを本稿の目的とします。

まずMLB機構のインターナショナルFA25歳未満ルールを掲げた戦略の目的としては、すでにおわかりのとおりJリーグのように絶えず入れ替え戦のあるような下部リーグをもたないメジャーリーグ(マイナーリーグはあくまでファームでありメジャーリーグとの入れ替えはない)では、スポーツマーケティングの基本でもある戦いのドラマ性を演出すべく<戦力均衡化を測る>ことが第一義に挙げられます。FAと完全ウェーバー制度のリンクや贅沢税の強化などの施策の延長線上にインターナショナルFA25歳未満ルールもあり、金持ちチームが有利になり過ぎないために契約金及びサラリーに強力な規制が課せられたということになります。このインターナショナルFA25歳未満ルールで利益を得るのは、メジャーの球団というよりもより正確にはミドルマーケット以下のチームが得をします。

なぜマンフレッドこのミドルマーケット以下のチームに対して厚遇するのか。

それは単にマーケティングに沿った戦力均衡化だけでなくコミッショナーの権力の基盤が75%オーナーからの信任によって成立しているからでもあります。もしインターナショナルFA25歳未満ルールがない場合、大谷獲得が現実味を帯びるのは30チームでもせいぜい25%以上の金持ちチームに限定されるはずです。7~8チームの上位金持ち球団の争奪戦になるのは道理です。マンフレッドの権力基盤を盤石にする上では戦略的にミドルマーケット以下に相当する75%のチームへ配慮した施策を打ち出すのはある意味当然とも言えます。これがマンフレッドがインターナショナルFA25歳未満ルールを打ち出した隠された戦略的な第二の目的でもあります。

そして第三の目的こそが最も重要になります。

今回のルールはドラフトの対象となる米国 カナダ プエルトリコの三か国以外の25才以下のプロスペクトに対しては、たとえ大谷であろうが基本マイナー契約の新人扱いを一律するということであり、不当に安いサラリーが抑えられてしまうことになります。このインターナショナルFA25歳未満ルールはインターナショナルドラフトの亜種として登場した制度であり、この制度の最終的な狙いとはずばりMLBを頂点とした世界中に点在するあらゆるベースボールのリーグを配下に据えるといった世界戦略の一端にあります。日本のプロ野球にとって独立リーグは実質ファームの役割を担っているように、このインターナショナルFA25歳未満ルールの本質にはMLBの傘下にNPBも将来的には据え置くことを狙いとした制度であることを見抜かなければなりません。

もしNPBとMLBが対等な立場であるならば、10年に一人の逸材と言ってもいい松坂に対する西武保有権が50億円超であったことからもわかるように、100年に一人の逸材と言っても過言ではない大谷に対する日本ハム保有権は年齢も加味して考えた時、少なく見積もっても70~80億円程度はあるはずです。更に大谷についても8年契約をベースで240~50億円前後のオファーがあってもおかしくはありません。本来、フリーであれば合計330億円前後の価値はある大谷のディールも、MLBが決定したこのルールによって総額も1/10程度に抑え込まれてしまうということになります。

手始めにポスティングフィーを上限2000万ドルとしたその実務の担当者は他ならぬマンフレッドでした。これが第一段階だったのです。そして今、第二段階のインターナショナル・FAで25歳未満というルールを作って大谷を新人扱いするという制度を成立させました。外堀はどんどん埋められているのであり、2021年のCBAにおいてインターナショナル・ドラフトをマンフレッドは本格的に実現させる腹積もりであることは知っておいてもいいでしょう。アングロサクソンの戦略性は数十年単位で物事を眺め、一歩づつ着実に推進させてゆくところに真の怖ろしさがあります。ほんとうに大谷翔平を安売りしてもいいものなのか。日本のプロ野球がじわりじわりと危機的な状況に追い詰められつつあるような気がしてなりません。


次にこのインターナショナルFA25歳未満ルールによってもたらさられる損失について眺めていきます。まずこのインターナショナルFA25歳未満ルールによって被害を被るのは中南米でベースボールアカデミーを無料で開講し、メジャーリーガーの卵を育て、その契約金の20~30%の報酬を得ることによって成り立っているドミニカなどの中南米の国々です。この改正案によって中南米のベースボールカルチャーを破壊してしまう点が第一の損失に挙げられます。アカデミーの収入が減れば自ずからドミニカ等のレベルも下がっていきます。それも織り込み済みで、MLB機構は中南米に直接乗り込んで養成所を開講し、コストカットを戦略的に実現しようと目論んでいるとも伝え聞きます。他国の文化もMLBの繁栄があれば破壊することも厭わず、力こそが正義だと言わんばかりの姿勢もMLB機構はどうやら持っているということです。実に怖ろしい組織です。

またベースボールで稼げるチャンスが縮小する今回のルール改定は、ボラスも言うようにベースボール以外のプロスポーツへ優秀な人材が流れる可能性があるということであり、ひいてはベースボール全体の衰退を招く怖れがあります。

更に言うならばスポーツマーケティングの基本として弱者を優遇する共産主義的な手法は正しいあり方ですが、それが行き過ぎるとき強者のやる気を削ぎ、リスクを取ってでも投資へ向かう意識からコスト削減によるチームの利益拡充主義へ傾きかねず、球界全体にダイナミズムが失われる可能性が出てきます。

以上まとめます

インターナショナルFA25歳未満ルールの戦略的な3つの狙い

1)戦力均衡化によるスポーツマーケティングの強化
2)マンフレッドの権力地固め
3)世界に点在するベースボールリーグを最終的にはMLBの傘下に収める世界戦略の一貫

インターナショナルFA25歳未満ルールの弊害

1)中南米を中心としたベースボール・カルチャーの破壊
2)金銭的な魅力が薄れるため、他のプロスポーツへ若いアスリートが流出する可能性
3)弱者優遇の手法も行き過ぎれば、強者の姿勢も守りに入り全体の発展阻害要因となる

複眼的かつ巨視的な視点がこの問題を眺める際には必要になってきます。少なくとも上に挙げた6つのポイントくらいは頭で整理して、この大谷2017年問題と向き合うべきではないでしょうか。どうも大谷がメジャーへ渡るのかどうかという点に問題が矮小化されている印象が否めません。そしておそらくそう考えているのは私だけではないはずです。

マンフレッドには十分警戒した方がいいというのが、戦略をテーマにしてきた当ブログの結論です。

大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。