進化の印 ダルビッシュが投げたのはシンカーなのか 2シームなのか

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05 /31 2016

解説者の武田がしきりにダルビッシュが投げた94マイル前後のシュートしながら高速で沈むボールをシンカーかどうかと気にしていました。球場のボードにはツーシームと表示されていました。

シンクとは沈むという意味であり、ダルビッシュの投げていたのは単純に「高速シンカー」であり、これを1980年台頃メジャーでは、「シンキングファストボール」と呼んでいました。それが現代にあって「ツーシーム」と呼称が時代によって変化したに過ぎません。このツーシームを日本ではカミソリシュートでも有名であった大洋のエース平松投げていたと告白しています。腕を捻ることもなく、ただツーシームの握りで思いっきり投げるだけ面白いようにボールはシュートしたと言っています。

参考までにwikiより、吉井理人もメジャー時代に投げていた「ツーシーム」はシュートを名前を変えて呼んでいただけと述べている。

<ツーシーム>なのか<シンカー>なのかよくわからないと武田は解説していましたが、正しくは「シンキングファストボール」と呼んでもいいし「高速シンカー」「ツーシーム」あるいは「シュート」いずれもOKだということです。1980年台頃、メジャーでは同じく<フォーシーム>のことを「ライジングファーストボール」と呼んでいました。日本で言う「ストレート」です。

どうも解説者の頭が整理されていないために、混乱する方も多いかもしれないと思い、一応記事として挙げておきます。

ところでダルビッシュがリハビリモードで軽く投げていたにもかかわらず、以前よりも球速がアップ。進化したダルビッシュがそこにはいた可能性が出てきました。力をセーブしているので制球も前より良くなった可能性すらあります。

ダルビッシュ進化の印は平均球速および「K/BB」に着目でまずはOKです。

スライダーの曲がりもえげつないものもあり、今後も要注目ですね。

ダルビッシュが何球か力を込めて投げていましたが98マイルが最速。このボールの迫力、そう言えばシンダーガード並みの迫力だなと感じて調べてみると、シンダーガードの平均が98マイル。メジャー全体1位。2位はイオバルディ。シンダーガードのFIP1.69、K/BBも8.78。将来カーショウをなぎ倒す大本命となりそうです。

ちなみに大谷の最速100マイル超えも珍しくなくなりました。平均球速も昨年並みの平均95マイルはまず出ていると見てもいいでしょう。メジャー全体では5位前後相当。大谷並みの球速を持つスターターはメジャーにゴロゴロいないことが改めて数字ではっきりしました。


NYY 勝率500へ戻す ジラルディこそ今後のカギを握る

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05 /26 2016
なぜジラルディはピタゴラス勝率を上回ることができるのか、について今回は論じていきます。

2013年2014年が顕著であり失点差が大きくマイナス-20とか-30であり、戦力において明らかに平均以下であったチームを2年連続で勝ち越しに導いたのがジラルディでしたが、現在NYYの得失点差は-13ですが見事に勝率500へ復活しました。繰り返しジラルディは実際の勝率がピタゴラス勝率を上回っています。すなわちそこには再現性があり、監督としての技術が存在している可能性が極めて高いということになるわけですが今回もジラルディ無能論に対して反駁を試みます。前回は打順の組み方について述べましたが、今回は継投について話をしていきます。

要はジラルディは接戦時に強い指揮官であるからこそ、実際の勝率がピタゴラス勝率を上回るということになります。

参考までに1点差ゲームです。

2013年 30勝16敗 2014年 28勝24敗

では接戦に強いための条件とはいったい何か?

セイバーメトリクスのWPAという指標でも明らかなように、勝利に対する1点の価値は、終盤になればなるほど、接戦になればなるほど、投手戦になればなるほど、こうしたファクターが複合的に組み合わされる程に大きくなってきます。勝負を分けるこの1点を巡る攻防にあって、1点を攻撃によって奪うよりも1点を防ぐという方がベースボールという競技は確率的にもしやすいという大きな特徴があります。

NYYには最高のクローザーであったリベラがいました。リベラ引退後もロバートソンやベタンセス・ミラーと優秀なクローザーを配置することにジラルディは接戦をものにすることに成功してきました。KCの成功例に見習うまでもなく、セイバーメトリクスを戦術や戦略に生かす新思考派のジラルディはブルペンの重要性にとっくに気付いていますが、接戦時の勝敗は当然、ブルペンのクオリティ及び、監督の的確な継投に大きく左右されることになります。継投はヘボだが接戦に強い監督などこの地上には存在しない以上、シーズン全体を考えて一部の投手が過負担にならず、数多くの接戦をものにしてきたジラルディの技量には一定のフェアーな評価がなされるべきです。

例えばジラルディは左右病と揶揄されることがあります。ジラルディはマシーンのようにひたすら左打者には左投手を充てます。短期的には結果はどうなるかはともかく、サンプルが大きくなると左打者には左投手が抑え込むという統計的な結論が出ています。つまり目先の結果はともかくペナント全体の利益を見据えて、繰り返し左対左というスタイルへ持ち込むことは最終的にはチームの勝利を増やすことへ必ずつながる。

左右病と揶揄されようが決めたら梃でも動かない。こうした戦略的な動かざる部分にこそジラルディ最大の長所がある。マドンのような魔術師と言われるような派手さはジラルディにはありません。しかしその表層のもっと奥にあるものへ深く目を向けてゆく時、このジラルディという監督が決して無能などではないことがはっきりわかってくるのです。

このように継投といい打順の組み方といいジラルディの動きの奥には統計的な知見が存在しています。

あるいは継投についてもう一言付け加えておくならば、勝ちゲームでみせるジラルディの慎重なあり方をじっと観察していると、ジラルディが勝負の怖ろしさを良く知っている監督であることがわかってきます。隙をつくらないように5点差あっても8回無死12塁となったところでスパっと交代するようないい意味での慎重さを持っています。

例えば今ミスターXという監督がいて、下記3つの条件を満たしているとします。

●確固たる戦いのセオリーに基づいて、ピタゴラス勝率よりも高い勝率たたき出す再現性のある用兵ができる
●最優秀監督賞の受賞歴がある
(イメージとして恣意的に選出されていそうでありながら、トーリ・ソーシア・マドン・ラルーサ・ボウチー・ショーウォルターなどが過去の受賞者の名前を見ても明らかなように、伊達でこの賞は受賞できない)
●2009ワールドシリーズ制覇した実績

以上3つの条件を満たした監督を白紙の上にフェアーな観点から眺めた時、どうしたらミスターXは無能であるという結論が出てくるのか。ジラルディ無能論に決定的に欠けているものとは、フェアーな批判精神であり、客観的な論理性です。要は結果から眺めて自分の意に沿うかどうかで判断し、ジラルディの一部を切り取って欠点のみを拡大し自分が批判したいように批判しているということです。

満塁で歩かせるといったような表立った策士という監督ではジラルディはありません。監督の采配で今日は勝ったというような派手さもない。しかし着実にして目立たぬ采配の中にきらりと光るジラルディの個性がある。田口のバッシング記事をはじめ、短期的な結果から表面をなぞるものばかりでジラルディ批判において深い見識を示したものを私は見たことがない。

動かざる力。長期の利益を睨んだ構想力。こうした目立たないところにも当ブログでは光を当ててゆくつもりです。

「2016NYYお前はすでに死んでいる。」と言いつつ、直後に唯一の救いはジラルディが指揮官であることだと当ブログでは指摘しました。忍び寄る衰退NYYシリーズの中でも折に触れて、ジラルディは決して無能などではないと言い続けてきました。あのオーナーなら、大した補強をシーズン途中にするわけもない以上、チャップマンを手に入れたNYYの反抗がどこまでつづくのか、大きなキーマンとなるのが監督のジラルディです。


イチローの調子はいつまで続くのか セイバーメトリクスする

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05 /24 2016


「前田健太はクワーズフィールドをやり過ごせるのか」

この記事では当時ERA0.47前田健太についてセイバーメトリクスから眺めてどう捉えるのかという内容でした。極めて運に恵まれた投球をしており、近い将来ERAは3.00台へ向かってゆくことになると結論しているのですが、今回イチローのサンプルが極めて限定的であるという欠陥については括弧に入れておくとして、かなりざっくりとしたイチローのセイバーメトリクス分析をしてみます。

画面を通してまず最初に気づくのは空振りの極端な少なさです。K率4.4%とメジャーでも屈指の数字となっています。ちなみに規定打席に達しているプラドがMLBで最も三振しない打者ですが、その数値よりも更に低いのが現在のイチローということになります。つまり空振りを最もし難い打者にイチローはなっている。実際ボールへのコンタクト率でもMLB1位である同じくプラドを超えて94.2%。

●現在、MLBで最もボールへコンタクトできる打者である
→K率、コンタクト率が規定未満でありながら1位相当

同時にBB率が実際にキャリアハイの10.3%と二桁に乗せています。投手においてK/BBがその本質的な能力を端的に示すとセイバーメトリクスでは考えられていますが、打者においてもBB/Kは投手のK/BBほどではないにしても打者の何がしかを本質を表現していると思われます。毎年MLB全体ではBB/Kが1.00を超える打者は10人前後ですが、この数字が2.00をイチローは超えています。ちなみにBB/K現在1位はゾブリストであり1.80弱。最終的に1.00を超えていたらそれだけでも快挙。

●イチローの打撃に対するアプローチが明らかに変化している
→BB/Kが規定未満でありながら1位相当

昨年のBABIPが257であり不運であったという側面もあり、その反動なのか現在BABIPは400を越えておりその反動が来ているとも言えますが、何よりも最も注目すべきは対イチローで全投球の中で65%を投じる球種ファーストボールへの対応力です。2010年ころを境にイチローが衰退してきた最大の要因はファーストボールへ対応力の欠如でした。動体視力の衰えのためなのか速球をインフィールドへ強く弾き返せないというシーズンがここ5年ほど続いてきたわけです。ちょうど200安打を切るのがシグナルとして、イチローはその頃を境にセイバーメトリクス的にはMLB平均以下の打者となったのが現実です。イチローが2011から+wRCが100を完全に切る打者と成り果ててしまった。(100で平均的な打者と。)しかしこの数値が5年ぶりに100を超えている。

●全投球の中で65%を占めるファーストボールへの対応が全盛期並みに大きく改善。
→ファーストボールへきっちりコンタクトできる限り大崩はしない

昨年も打率300を越えた調子のいい時期もありました。しかしその好調時においてセイバーメトリクスの分析をするとおそらく240前後へ収束するのではないかという帰納的予測を個人的にしました。田口壮が「試合にもっと出れば打つようになる」という解説も、セイバー的に見れば、試合に出れば出るほど2015イチローの打率は確実に下がってゆくデータが出揃っていました。それは前田のERAが0.00台から3.00台へ向かうことは誰でも予測できたのと全く同様です。

そして今年のイチローですが、さまざまな指標を総合的に勘案して予測するに久しぶりに打率300超えをする可能性があると結論できます。今の数字は決して単に運に恵まれたでは片付けることのできない、技術的な裏づけがある。

結論

2016イチローは全盛期の感覚の中で、バッターボックスに立っている可能性が極めて高い。

セイバーメトリクスの分析は絶対に恣意的に数字を取り扱ってはなりませんが、当ブログが第三者の眼でざっと見た限りそんな結論です。つまりここ5年には絶対になかった感覚をイチローは手にしていることがセイバー的にも明らかになっています。ただし3000という記録迫って、昔のようにどんな球にも食らいつくダボハゼアプローチへ切り替わった時、打率は確実に落ちてゆくことになります。

また違ったシグナルが出てきたら 記事にすることにします。


心配ご無用!BOSプライス、FIPはキャリアハイ2.77

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05 /20 2016

2016序盤戦ERA6.50前後を記録していたプライスもその頃から、FIPは2.95レベルの数字を残しており、E-Fの超絶な乖離を示していたわけですが、2016現在ではFIP2.77と過去最高の値を記録しています。これだけのスタッツの乖離もBABIP357、LOB率59.7という数字でほぼ説明がつくはずです。実にわかりやすい不運ぶりを2016プライスはこれまでセイバーメトリクスでは示しています。

この不運もある意味の運不運の調整とみなすこともできるかもしれません。というのもようやく現在のプライスの通算FIPと通算ERAがピタッと一致して3.18を示しています。今までは十分に力もあったがやや運にも恵まれてきたのがプライスであったということです。

以前こういう記事を書いたことがあります。下記は2000イニング以上投げているMLBの投手の終身ERAと終身FIP。

野茂    4.24 4.23
ハラディ  3.38 3.39
サバシア  3.69 3.62
ペドロ   2.93 2.91
マダックス 3.16 3.26
ランディ  3.29 3.19

どの投手もERAとFIPは一年毎では大きな差異になるもののある程度のサンプルが確保された投手に限って言えば終身になると、多くの投手はE-Fは0.1~0.2前後に収束してゆく。そう指摘しました。これは当ブログだけが指摘しているのではなく、FanGraphsの記事にも2013年にリポートされていることです。

例えばトム・グラビンというFIP3.95とERA3.54が終身でも近似しない投手がいます。当然そんなことも知りながら、私はトム・グラビンの例を書く必要がなかったのでわざと取り上げませんでした。こうした例外的なトム・グラビンという投手を取り上げて、だからERAとFIPの振る舞いには何らの関係性もないのだとする方が、むしろ逆に恣意的であるからです。

そもそもERAとFIPはサンプルが大きくなる時、一般的には近似するという統計的な傾向がないというなら、短期的なERAとFIPの数値を比較する意味が全くなくなります。「なぜ2016プライスがERA(6.00台中盤)>FIP(2.00台後半)だと不運であると分析し、ERA(1.00を切る)<FIP(3.00台中盤)だと2016前田のように運が強く、いずれERAは確実に上がってゆくことになると予測できるのか。」それはサンプルが大きくなるにしたがって終身FIPへ向かって終身ERAが近似するという統計的な知見に基づいているからです。つまり多くの投手は一般にBABIPは300へ近似してゆく。自分が見た限り2000イニング以上になるとERAとFIPの差異は一般にはかなり近似する傾向があります。これは一部の例外を除いてほぼ逃れることができないベースボールの法則です。これが法則でないなら、ここまでFIPが普及することなどありませんでした。

ちなみにカーショウのERA1.67ですが、かつてはERA1.00台を切っていた前田とは投球内容がまるで違います。カーショウのFIP1.35であり、今後もERA1.00台を維持することが極めて高いことが予測されます。ちなみにカーショウの終身ERA2.40終身2.57であり、これまでも指摘したようにカーショウもまた終身E-Fが0.1~0.2前後に収束してゆくことにおそらくなるでしょう。

結論

セイバーメトリクス的には、BOSファンの方はERAを見てプライス獲得は失敗だったかと心配する必要も今のところはほぼありません。現在プライスはキャリアハイのFIPを記録している。ただし球速の衰えはやや心配の種でもある。つまり年齢的にもピークから衰退トレンドに入った可能性が高いことも確かであり、これからプライスがどのように衰退してゆくのかが一つの焦点になる。そのトレンドが一気にがくっと下がるのか、それともじりじり下がるのかについては神のみぞ、知るところと言える。

最後に繰り返し強調しておきたい。一部の投手を除きERAとFIPはサンプルのイニング数が大きくなる時、一般的には近似する。これは統計的な知見である。だからこそボラス・マクラッケンのDIPSは世紀の大発見であったわけです。FIPの式そのものはトム・タンゴが導き出したとはいえFIPもDIPSの一種簡易式に過ぎません。

大谷二刀流のルーツを知っているか?

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05 /10 2016

大谷二刀流のルーツを知ることは、イチローの振り子や野茂のトルネードのルーツを知ることであり、文字通り日本のプロ野球のルーツを辿ることになります。こうした大谷やイチロー、野茂のような型破りの個性の塊のような選手たちが日本のプロ野球に出現するにはするだけの文化的土壌を築いた人物がいたということですね。その人物は日本プロ野球の歴史に残る数々の奇跡を起こしており、ミラクルつながりということなのか元ドジャースの大砲でもありミラクルメッツを指揮したギル・ホッジス監督の本まで翻訳することもまでやっています。

ちなみに栗山監督の背番号80は大谷二刀流のツールを生み出した人物が監督時代に背負っていた番号であり、その人物は日本ハムの初代社長でもあります。栗山監督は大変その人物に心服しており、監督室には遺訓としてその人物の言葉が飾られています。常識破りの大谷の二刀流は栗山監督以外にできる奇跡ではありませんでした。MLBにしか興味のない人でも気が向いたら、読んでみてください。MLBのカテゴリーに掲載していなかったのでまとめてupしておきます。計4回シリーズです。入団当初、大多数のファンや専門家は大谷二刀流に対して否定的でした。しかしなぜ私は大谷二刀流について否定的でなかったのかという理由も下記には書かれています。

「大谷二刀流のルーツは「強者の戦略」にあり」

「大谷の二刀流 ルーツを求めて プロ野球歴史編 その1」

「大谷の二刀流 ルーツを求めて プロ野球歴史編 その2」

「野村克也 弱者の戦略の限界 大谷の二刀流 ルーツを求めて プロ野球歴史編 その3」

大谷二刀流のルーツとイチローの振り子、野茂のトルネードにはその背後にキーマンが存在しています。


敢えて最下位ヤンキースのジラルディ監督を擁護する

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05 /02 2016
後世からヤンキースの歴史を眺めた時、大きな分水嶺と位置づけられる日とは、ジョージ・スタインブレナーの命日である2010年7月13日と言われるようになるという記事「忍び寄る衰退 ヤンキース帝国の黄昏」を半年前に書きました。リーダーがミスリードする時、組織はどういう末路を辿るのか、注目してその推移を数年前よりずっと眺めています。

今の見るも無残な状況を作り出している最大の責任者は、NYYに限っては間違いなくオーナーであるハル・スタインブレナーですが、負けが込むNYYにおいてジラルディ批判も見受けられます。今回、当ブログではジラルディについて敢えて擁護する記事を書きたいと思います。

まずこれはジラルディが指揮した2012年のエピソードです。当時2番にスウィッシャーが座っていました。たまたまスウィッシャーが5タコなど調子が悪かった時期に調子のいいイチローを前に上げろという声が日本ファンから上がりました。この時、ジラルディはスタメンで一切動こうとしませんでした。イチローは7・8番でありずっと固定。

なるほど、如何にも新思考派らしい監督の判断だと感心したものです。というのもスウィッシャーまさに全盛期であり直近3年も含めて OPSは安定して850を記録。かたやイチローは一年を通せばOPS700を切る打者となっていました。一時的にイチローの打順を上げようが、最終的にイチローの実力値と言ってもいいOPS700以下へと回帰していきます。一方、スウィッシャーは850平均にほぼ必ず盛り返すことがセイバー的に判断できるため、ペナント全体の生産性を考えた時「動かざること山の如し」こそ正着であり、ここは2番スウィッシャー固定こそが正しい判断である。そう言ったことがあります。

では、ペナントにおいてはどんな状況でも打順は固定させるのが正しいのか。

例えば毎試合スタメンをいじくりまわしていたTBのマドンの戦術が間違っているのかと言ったらそうでもない。マドンが採用しているツープラトンの方式は、NYYの黄金期を形成したKCステンゲルが最も得意とした戦術であると言われていますが、野戦病院化した当時のヤンキースやTBのように3番ロンゴリア以外、一年間を通して成績を残せるような実力選手が少ない場合は、むしろ選手のその時々の調子や相手のスターターとの相性をデータできっちりあたりツープラトン方式を採用することが正しくなります。それが戦いのセオリーというものです。

V9や西武黄金期、ビッグレッドマシンあるいは1998年前後のダイナスティを形成したNYYでもいいですが、レギュラーが年間を通してきっちり実力を持っている強力なメンバーが揃っている場合、打順も固定化させることがペナントを戦う意味では非常に大きな意味を持ってくる。しかし野戦病院化していたり、メンバーの力がペナントで計算できない弱者のケースでは、TBマドンのように打順を変えることが正しくなるということです。打順を固定化することが正しいか間違っているかではなく、すべてはTPOにおいて戦術的な正しさというものも表現される。

ちなみにその翌年2013年の5/21のNYYのラインナップを適当にクリックして開いてみると、3番ウェルズ・4番オーバーベイ・5番ハフナーという布陣でした。2013よく見たメンツですが3人とも他のチームではレギュラーを張れない、いずれも引退直前の打者たちによってクリーンナップは固められていました。2013のNYYはジーター・タシェアラ・グランダーソン・ARODと主力がすべて戦線を離脱し、メンバーの名前における貧弱さで言えば2016を上回るものであり、この時、ジラルディは前年と全くポリシーを変えて100通りの打順を組んでなんとか耐えしのぎました。なるほど、この人は論理によって用兵も繰り出すことが2012と2013の打順の組み方ひとつでよくわかりました。2014年もサバシア・ノバ・田中・ピネダ のスターターがシーズン途中で戦線離脱し、スターターは完全崩壊、黒田だけが孤軍奮闘。

NYYペイロールは高いが主力がごぞって戦線離脱した以上、戦力そのものは平均以下でした。実際に得失点差で全体のNYY戦力を大雑把に把握するならば

2013年 -31 84勝78敗
2014年 -21 85勝77敗

印象通り2年連続で得失点差はマイナスです。かかわらず、いずれもNYYは勝ち越しを決めました。運が強いだけなら必ずその反動はくるはずです。統計的には勝率=ピタゴラス勝率へと近似すると言われています。そこで更にジラルディの実際の勝率と得失点差に基づく勝率をキャリア全体で調べました。

   実際の勝率 ピタゴラス勝率

2015 537    541     -4
2014 519    478     +41
2013 525    485     +40
2012 586    584     +2
2011 599    624     -25
2010 586    597     -8
2009 636    588     +48
2008 549    537     +12

ジラルディは総じてピタゴラス勝率に比べて実際の勝率が明らかに高い値を示しています。つまり単なる運ではなくそこには勝率を引き上げている監督としての技術が介在しているという仮説が立ち上がってくるわけです。そもそも能力のない監督が一度でも最優秀監督賞を受賞できるのか?あるいはワールドシリーズを制することができるのか?その辺はフェアーに眺める必要があります。

田口荘という解説者がいました。田口本も私は好意を持っている解説者故にすべて読んできました。セイバーメトリクスが明らかに苦手でありラルーサの申し子でもあり典型的なオールドスクールの田口は、セイバーメトリクスに基づいて小技をあまり使いたがらず強打を選択し、メンバーも少々のことでは入れ代えないジラルディが有能ではないと見えたようであり、強烈なジラルディ・バッシング記事を書きました。

日本の解説者ということでありポジショントーク、つまりいい意味でのイチローびいきという側面があったことは十分に理解していますが、それにしても、解説者田口によるジラルディ・バッシング記事は余りにお粗末な内容でした。なぜこうした記事が書かれたのかその背景のひとつには、田口がオールドスクールでありDHのないスモールなNLを主戦場にしていたのに対して、新思考派であるジラルディが指揮するのはDHのあるビックなALであったという点にあります。

「なぜOAKはプレーオフで勝てないのか?」

この記事ではオールドスクールの立場からOAKの限界を示したように、今回はセイバーメトリクスの立場からオールドスクールの知性の限界について述べていきます。

ご存じのようにスモールベースボールの本義は、ひとつひとつ塁を確実に進めて一点を大事としつつ強力な防御力によって接戦を制し確実に勝ちを拾ってゆくという面があります。時にこのスモールの堅実さを全面に出しつつもそれを梃子にして 相手の隙を見つけてはスピードをベースとした<奇襲>を仕掛けることによって相手を揺さぶり倒すというもうひとつの側面がスモールにはあります。スモールにおいて<動き>を入れることは極めて大事な戦術上のスパイスです。<堅実性>と<奇襲性>の絶妙なミックスこそがスモールベースボールにおける要諦でもあります。言わば、いつ動くのか?というのがスモールのひとつの肝にもなってくるわけで、もちろん上手に動けば 勝ちを掴むことも可能ですが・・・一方で

戦いにおいては <動いたら負けということがある。>

動くことと動かないこと。風林火山の言葉を待つまでもなく価値としては等価です。動きに監督としてのひらめきやセンスのようなものを見出すオールドスクールの田口に、レギュラーシーズン全体の利益を見据え、敢えて動かざるジラルディの良さはおそらく正しく理解はできていない。だからこそあんな無茶苦茶な暴論も吐けるわけです。実際、スモール的なセンスにジラルディはおそらくやや欠けているのも間違いないところです。スモールには心理学者のように敵味方の心理を知り尽くしたひらめきが大事になります。しかし2012イチローをレギュラーとして使わなかった理由も含めて、動かないには動かないだけの論理的な根拠がジラルディにはあります。オールドスクールの田口には新思考派のジラルディを理解できていません。しかし理解できないから=ジラルディは能力がないという方程式は成り立ちません。

優秀な田口監督が2013と2014のNYYの監督をしたとして、果たして連続で勝ち越すという結果をたたき出せたのでしょうか。あのボロボロのNYYのメンバーを率いて勝ち越せたのか、私には大いに疑問です。MLBの半分の監督はピタゴラス勝率に比べて実際の勝率が下回ることは事実です。監督を変えればそれで2016NYYは好転するような性質の課題なのでしょうか。私が第三者の立場で見る限りジラルディは最優秀ではないかもしれないがたしかに有能な監督であります。

本質的に2016NYYの課題は監督の能力などではありません。GMに新人を育てる能力がないという意味では問題ありですが、基本オーナーからGMのFAでの動きを止められている以上、GMへすべて責任転嫁するのもお門違いです。これからNYYはまた世論に負けてオーナーが日和るのかどうか、そこが大きなひとつのポイントです。しかし根本的な戦略が間違っているので、日和るのかどうかなども実は然したる問題ではありません。


大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。