白鵬の猫騙しとヤンキースの伝統

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11 /25 2015

ベースボールには、公認野球規則(ルールブック)に記されているリトンルールと歴史の中より生じた暗黙の内に守らねばならない不文律・アンリトンルール が存在している。リトンルールについてもちろん、その不文律・アンリトンルール にも従うのがMLBのマナーであり文化というものである。今回の白鵬猫だましについて、リトンルールにおいて禁止というルールに書かれていない以上、何も問題がないという意見が思った以上に多かったのには率直に驚きを禁じえなかった。


相撲とは神事であり、単なる格闘技やスポーツではない。どちらが勝つかという勝負以上に、取り組みにあたって神聖なる美意識のようなものが必要であり、相撲という神事には子孫繁栄や五穀豊穣という意味合いがその根底に宿っているものである。神事であるが故に、土中の邪気を払う意味の儀礼である四股(しこ)があり、蹲踞(そんきょ)とは人が通行する際にしゃがんだ状態で礼をするさまを言い、塵手水(ちょうずり)とは手を清める水のないとき、空中の塵をひねる 動作をして、手水を使う代わりとすることである。


そうした神事の頂点に位置するのが横綱であり、横綱が絞めるその注連縄(しめなわ)には神域と現世を隔てる結界の役割を持つと言われている。つまり横綱は人間でありながら神の領域に存在している者である。もちろん横綱には現世における土俵の勝負において絶対的な力を求められてはいるが、それ以上にその精神性において神として勝敗を超越した美意識が深く求められている。


格下には変化や猫だましのような技を仕掛けることは相成らないという不文律・アンリトンルール が大相撲の世界には存在している。「ルール内であればあらゆる手段を成しても試合に勝とうとする」ことを<ゲームズマンシップ>といい、それに対して「あくまで正々堂々と対決して勝とうとする」ことを<スポーツマンシップ>という。白鵬の猫だましは言わば<ゲームズマンシップ>からすれば賞賛されることではあるが、同時にそれを手放しで賞賛することは、日本の国技でもある相撲という神事を単なるゲームへと転落せしめることにはならないだろうか。相撲が単なるゲームであるというなら、ゴングを鳴らしてすぐに取り組みをすれば良いということになる。神事でない以上、取組前の所作などすべて失くしてしまえばいい。どれだけ勝敗において優勝を重ねようと傲慢になり不文律に従うことの美しさを失えば、もはや横綱本来の仕事を十分に果たしているとは言えないだろう。場もわきまえず「一度やってみたかったからやってみた」という白鵬の考え方はあまりにも稚拙ではないだろうか。

また別の観点から見れば、格上に使うとされる変化や猫だましという<弱者の戦術>を繰り出すということは、白鵬自身がすでに弱者である自覚、力が弱まっていることを無意識下に感じ取っていることを意味しているのではないだろうか。あの猫だましが白鵬の時代における終わりを告げるひとつの分岐点になる可能性について考えないわけにはいかない。

ヤンキースのオーナーハルにしても贅沢税ラインに拘泥し、いかにも財政が逼迫しているかのようなアピールをし、戦力として計算できるガードナーやミラーをトレードに出すというようなケチな<弱者の戦術>を取ろうとしている。白鵬が弱者の戦術を繰り出すのと同様ハルのこうした己を弱者として規定した小さくこじんまりとして振る舞いは、長期的な観点に立った時、ヤンキースの王者としての資質を最終的に損なう行為となるような気がしてならない。ハルが何を最もプライオリティの高いものとして考えているのかは、カノにつづいてガードナーを放出しようとしていることからも明らかとなった。ハルにとって経済合理性の前では伝統を継承するべき生え抜きの主力級・殿堂級の選手を出すことなど取るに足らない事柄なのである。ヤンキースは世界一であり続けなければヤンキース足りえないという矜持が果たしてハルの動きから見ることができるだろうか。経営者として良かれと思い黒字をたたき出すために振舞っていることが、ハルはそうしたことについてはまるで無自覚であろうが、実はヤンキースの伝統やブランドの破壊そのものへと繋がっている。
少なくとも私はヤンキースの伝統を継ぐ者とは生え抜きの主力でなければならばならないし、ヤンキースのブランドとはどんなことをしてでも世界一であり続けるために最善を尽くすことだと考えている。ヤンキース帝国の支配者はボス然として、あくまで強者としてのプライドを持って王者としての伝統が育んできたブランドを守り抜くような、美意識なり哲学が必要なのではないだろうか。目先の勝利に目を奪われるあまり、横綱にとって勝利以上に大切な神聖なる美意識を白鵬は見失い、目先の黒字に目を奪われるあまり、プライスレスなヤンキースのブランドそのものをハルは手放そうとしている。



両者における共通のキーとなることは、強者としての本物の自覚と伝統への深い敬意である。



フリードマンという戦略家 LAD新監督 ロバーツに決める

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11 /23 2015
先日、LADの攻撃編、セイバーメトリクス分析記事を上げました。「2016LADの戦略的課題をセイバーメトリクス分析する 攻撃編」 では、LADには戦略的課題としてベースランニングへの意識も含めたKCが見せた繋ぎの全員野球が欠落しており、LADの攻撃力そのものは十分であるが、スモールな意識をもっと高める必要があると分析した結果を載せています。ロバーツを選んだ理由も上のセイバーメトリクス分析した記事読めばある程度納得できるのではないかと考えています。

戦略的課題を解決するための手段としてthe stealのロバーツ新監督の就任ということであり、他の候補者であったブラックにせよ、キャプラーにせよ、基本線はスモールベースボールにあるはずであり人選の根拠も明瞭です。ロバーツはLADの課題を十二分に理解し、それに対する処方箋を持っていることを面接ではっきりと説明できたということなのでしょうか。継投などは大丈夫なのでしょうか。詳しいことは存じませんがとりあえず期待します。

ところで久々に「LADはプィーグを放出するべきである」読んでみました。結果は外したかもしれませんが、案外良いことも書いてありました。(笑)冗談はともかく、今でもおそらくフリードマンはプィーグを放出したがっているはずです。タイミングさえあえばウインターミーティングでもトレードの情報が飛び込んでくるかもしれません。

贅沢税ラインの完全スルーといい、田中へのオファーといい、ベースランニングを重視すると思われる監督の選任といいLADの打つ手とは基本的に個人的な考え方と一致する傾向にあります。戦いの原理にかなっている一手を打ってくると感じるのがLADであり、その全く逆がNYYです。まだフリードマンが就任して1年です。ケンプ、ハンリー、そして仕上げとしておそらくは近い将来プィーグを放出しケミストリーを改善させ(もっともトレードするチームがいないことにはどうしようもありませんが)、ロバーツを監督にし機動力も重視してゆく。実に方針が明確です。一言でいうと<フリードマンは戦略家である>という感じがその動きのひとつひとつから、ものすごく伝わってくるTOPです。最後は勝負師としての運を持っているかどうかにかかっているので、必ず絶対にWS制覇できるとも限りませんが、非常に興味深い戦略家ではあります。HOUのルーノウもそうですが、こうしたはっきりとした戦略的メッセージが伝わってくる軍師が好きです。HOUも課題のひとつであるクローザーとしてチャップマンを獲得して勝負に出てほしいところですね。
来年たまたまNYYが優勝ということもあるかもしれないが、それはたまたまに過ぎず10年というスパンで見ればNYYとLADの命運は大きく分かれてゆくものと私は考えています。


最終章 ヤンキースの黄昏と強者の戦略

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11 /22 2015
カーショウ グリンキー 柳 ハレン ベケット。この豪華なメンバーが今から2年前の2013LADにおけるスターターである。

5枚揃っている時点であったにもかかわらず、LADは更に田中へポスティングを入札し巨額のオファーを出したと報道されました。「まだ補強を続行するのかLAD、これはできる!」と唸りつつ、NYYとの動きにおけるコントラストが余りに鮮やかだったので強烈な記憶が残っています。ふつうのチームであれば5本揃っていればスターターの補強は一先ず終了となるはずですが、田中へのスーパーエース級のオファーで更に畳み掛ける姿勢は紛れもなくLADの高い戦略性を示すものでした。ハルなら絶対に仕掛けなどできるはずもありません。カノ放出したからその財政的なスペースでもって田中へというNYYの戦力の逐次投入路線とはまさに一線を画するものであり、金がある以上波状攻撃を仕掛けて満々たる戦力を擁して相手を叩き潰すといったLADの強者の戦略が明らかになったシーンでした。

2年前のNYYは大補強などと喧伝されていますしそれを真に受けている方も多いようですが、その実は腰が入ってない見せ掛けだけものでありました。ほんとうの大補強であれば大幅にペイロールは増えるはずです。しかし実際は15%増に過ぎません。カノを確保した上でのものなら大補強という喧伝も大いにわかりますが、よく見ると実際のペイロールの数値に劇的なまでの大きな変化はなかったのです。それは未だにハルが贅沢税ラインを一度は切る意向を明らかにしていることからもわかります。贅沢税ラインを切るつもりなら2億ドルの周辺を上下するしかありません。大補強と言いつつ所詮いつでも切れるような範囲内の動きだったということです。繰り返しますがここ10年NYYペイロールはほぼ横ばいです。


見せ掛けの大補強でも勝てなかったことを受けて「金をかけたからといって必ずしも勝てるわけでもない」というハルのもっともらしい理屈は一見正しそうです。スモールマーケットのKCが勝ち3億ドルでもWS進出がならなかったLADがそれをよく示している。だから必ずしも金をかける必要もないという、このもっともと思える巧妙な論理にコロッとだまされる人も少なくありません。しかしハルの行動の本質を透視する限り、このハルの詭弁は、単にNYYグループの利益第一主義を正当化する実に都合のいい論理のすり替えであることを的確に見抜いていかなくてはなりません。「金をかけたから必ずしも勝てるわけでもない」ことはたしかです。それは認めます。しかし「金を的確にかけた方が間違いなくチームは強くなる」こともまた確かなことなのです。この緊縮財政を肯定するハルの論理のすり替えをきっちりと抑える程度の洞察力は身につけておきたいところです。意外とコロッと「金をかけたから必ずしも勝てるわけでもない」というハルの論理を真に受けている方が見受けられます。他のチームには余力はあまりないが、NYYには十二分に財政力はあるので全く事情が違う点を決して見落としてはなりません。


1億8900万ドルという贅沢税ラインについても、それがひとつの抵抗ラインとしてNYYに対しては機能していましたが、明らかにNYYよりも収入が低いLADは容易くそのラインを跨いでNYYのペイロールを抜き去って行きました。まるで「贅沢税のライン?そんなもので俺たちを止められはしないぜ」と言っているかのような鮮やかな贅沢税ラインのスルー。強者はこうでなくてはなりません。結果、積極投資の姿勢によってドジャースタジアムには観客動員においてもMLB1位の座をヤンキースタジアムから奪い取ると共に一躍、ペイロールMLB1位の座も獲得しました。ここにNYYの緊縮均衡とは180度違う拡大均衡を目論むLADの強者の戦略があります。

NYYよりも遥かに凌駕するペイロール3億ドル、贅沢税完全スルーのLADの方がなんとなく金満であると思い込んでいた人も多かったのではないでしょうか。他ならぬ私自身、NYYの方が金満であることは知ってはいましたが数字を調べるまで実に曖昧としていました。収入にしてもLADよりも圧倒的にNYYの方が多いという事実についても繰り返し強調しておきます。贅沢税ラインへの頑ななまでの拘りからもハルにとってはヤンキース帝国の復活などよりも経営者にとって黒字をたたき出すことが何よりの大事な仕事であるという一貫したポリシーが透けて見えます。ちなみに気づいている人もいるかもしれませんが、2014カノのWARが5.0超であり、NYYセカンドWAR0.0でした。つまりNYY2014にカノがいれば5勝分上積みできたと見なしてもいいわけですが、カノがいれば2014もPOに進出できた勝利数に届いていたことを意味しています。


かつて長嶋巨人が4番ばかりを集め世界最強打線なるものを掲げて、全く機能しなかったことがありました。強者の戦略と言えばそうですが金を無暗に使えば、それで強くなるというものではないという教訓がここにあります。ベースボールというゲームは投打の総合力が最終的にものをいう競技であり、四番の代わりに、一人でも強力なクローザーを補強したら楽にあのシーズンも勝てたとは言われています。金を使う方向性が間違えばこうなるという最たる例と言ってもいいでしょう。ジョージ・スタインブレナーのNYYが長嶋巨人と比べてまだましだったのは、ジョージ・スタインブレナーの時代のNYYは各チームの四番だけでなくエースを集めていた点にあります。(メジャーであるから3番という表現の方がいいのかもしれませんが)13年連続でPO進出という成果も出しました。

しかしジョージ・スタインブレナーの手法には問題点もありました。POにおいて強さをなかなか発揮できなかったことです。CORE4を中心にトーリが信条とするスモールベースボールが最大限機能した1990年代後半の黄金期こそ、まさに2015のKCのような繋ぎを大事とする全員野球のその方向性、色合いを一にするものであり、この両者には短期決戦において強いチームの共通する<ベースボールの質>としか表現できないものが備わっていたことは確かです。このスモールな組織性が十全に機能していた1990年台後半の黄金期NYYにジョージの「大艦巨砲主義」が入り、NYYの<ベースボールの質>が変質したことによってPOではなかなか勝ち抜けなくなったその可能性について、改めて考える余地はあるのではないかと思うのです
レギュラーズンを勝ち抜くには戦力としての総合力が必要です。WAR0.0で162試合のシーズンで勝率.320、 52勝が期待出来る。WARで言うと一つの目安として最低トータル40以上は必要であり45もあればPOには確実出れる戦力は整っていると考えていいです。ジョージの手法における最大の問題点は戦力のボリューム、quantityだけにフォーカスされていた「大艦巨砲主義」にあったのではないのか。たしかに戦力さえあればレギュラーシーズンは勝ち抜ける・・・。レギュラーシーズンで大事なのは<戦力>の絶対的な量、quantityです。しかしPOに出てくるチームは一定の戦力は持っているわけであり、短期決戦の勝負の行く末を決する可能性のあるquality<ベースボールの質>について考える必要があります。「なぜOAKはプレーオフで勝てないのか?」でも示したように、短期決戦では単純にWARが大きければそれで勝てるというものではありません。

全体とは量quantity×質qualityで表現されます。
フリードマン指揮するLADの動きを見ていると、未だほんとうの成果は出ていませんが量quantity×質qualityのふたつについてはっきりとターゲットに入れて試行錯誤を重ねていることが感じられます。同じ金を使うにしてもジョージの手法とここがLADの強者の戦略については大きく違います。ジョージの大砲ぶち込み主義も決して悪くはないですが、どうしてもベースボールの質としてはキメが粗くなります。真に強いチームとはレギュラーシーズンを勝ち抜くだけでなく、短期決戦においても無類の強さを発揮するようでなければ本物ではないとも再三にわたって言ってきました。真に強いチーム作りには戦力のボリュームだけでなく、ベースボールの質についても十分ケアするような補強戦略が大事になってくるということです。STLなどはカージナルウェイという<ベースボールの質>をマイナーの最下層まで浸透させて、生え抜きとFAの絶妙なコラボレーションによって戦力を整えつつ近年においてWS制覇を何度もし強豪の地位を占めています。単純な確率で言えば30年に一回優勝できればいいわけですから、その勝利の生産性の高さは目を見張るものがあります。短期決戦を運次第という考え方はいずれ確実に時代遅れになるでしょう。もっとベースモールの質においてキメの細かいものを追求する段階へMLBの歴史も突入するということです。それこそが進化の証です。

結論としてはハル主導によるNYYの行く末は、たしかにリーグ1位のペイロールは確保しており、暗黒の時代ということもないでしょうし絶対に優勝できないとは言いませんが、採用している戦略が間違っている以上決して明るいというわけでもありません。まさに文字通りタイトル通りのNYYは黄昏を迎えようとしている。状況は絶えず変動するのでその不確定要素を一々ここに書くことはできませんが、明らかに改善の予兆であるという事があれば随時記事でもupしていきます。 ガードナーやミラーの一件にしてもスモールマーケットの弱者ならトレードでもわかるが、ビックマーケットの強者なら彼らを戦力として確保しつつ、積極的にFAで補強するという発想を本来はするべきです。しかし現時点ではハルはArodやサバシアの契約が切れる時期を見計らって贅沢税回避に対してあくまでターゲット絞り込んでいるようなので、コストを制限し効率重視で弱者の戦略を相も変わらず採用しようとしています。戦略を研究している者からすると、ものすごいセンスの悪さを感じます。


現在MLBには強者の戦略を採用できるチームはNYYとLADしかありません。現時点において、LADが取っている強者の戦略を断然支持します。LADはこれからどれだけベースボールの質を多様でキメ細かくできるかが大きなポイントになってくるはずです。キャッシュマンもGMとしては並の能力は持っていると見ています。ましてジラルディについては監督としては優秀な部類に間違いなくカテゴライズされる人物です。批判をGMや監督に振り向ける人もいますが、向けるべき批判の矛先はちょっと違う気がするんですね。SEAはGMの能力に大きな原因があったし、WSHは監督の能力に大きな原因があったように、NYYはオーナーに大きな原因があります。各チームによって実はネックとなっている部分が違うのであり、この点については正確に見抜いてゆく努力が必要です。なんでもかんでも無茶苦茶な批判をすればいいというものでもありません。少なくともジラルディは最優秀ではないにしても間違いなく優秀な監督の一人です。いずれ彼を擁護する記事を書くとしましょう。



ヤンキースタジアム観客数の減少が止まらない 続 ヤンキース帝国の黄昏

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11 /20 2015
すっかり空席が目立つことが珍しくなくなったヤンキースタジアムの風景。かつてまだジョージの威光があった頃、ヤンキースの観客動員数は2007年420万人を頂点にして、MLB全体1位の位置をその前後5~6年にわたってその座を守り続けていました。それが現在2015年NYYの観客動員数は320万人へと経年で明らかな下降トレンドを描いています。気が付くと100万人もの観客を減らしていることになります。現在のNYYはファンからすれば魅力が年々薄れているチームにもなっているということです。

観客動員数と勝率には一定の相関関係があることはセイバーメトリクスでも明らかになっています。例えばイチローが入団した最盛期のSEAはMLB1位の観客動員でした。あるいは5年前ほどのPHIの黄金期もこれまたMLB1位の観客動員でした。しかし最下位争いをするようになればSEAやPHIはいずれも一気に大激減、観客動員も一試合あたり20000人を割るようになりました。現在SEAはカノにクルーズと勝負モードに入っていたので観客はその本気度だけははっきり感じ取ったのか再びスタジアムに戻ってきました。あるいは強くて魅力があればKCのように大きく観客動員も躍進もします。しかし今年は一応POに数年ぶりに進出したにもかからわず、NYYの観客動員数に下降トレンドに歯止めがかからず過去10年で最低です。 (もっとも人気はNLが圧倒的であり、上位3位まではNL勢。AL1位の座については守っています)

いったいなぜNYYは2015POに進出したにも関わらず観客動員がさらに減ったのか?

先回の記事でも明らかのように各球団の収入が大幅に上がっているせいか10年前と比べてペイロールを200、300%増のチームも珍しくありません。そうしたインフレの中でペイロール10%の増加すら満たせないNYYは、全体のインフレ率を勘案すれば実質的なNYYのペイロールはむしろ下がっていると見なすことも可能です。一部のファンはペイロールが実質的に下がっていることを敏感に感じ取り、7月にも全く補強に動かなかったNYYの姿勢に経営努力の本気を感じずチームへのロイヤリティを失った可能性はないか。NYYは本気でチームを世界一にしてファンを喜ばせようとしているのかということです。そうした真の顧客第一主義の精神をハルが発揮しているとは到底言い難いものがあります。

ハルの性格は几帳面で真面目なのでしょう。あれだけ財産があっても飽食に溺れることなく実にスリムな体型をハルが維持していることからも、だぶつきや無駄が基本嫌いであり、真に価値のあるものへ大金を出すこと自体はかまわないが、選手が不良化し無駄な支払いだけはどうしても許せない性格なのではないかと想像します。先代から受け継いだこのチームの経営について黒字化の拡大維持することが自分の仕事であると考えているふしがどうもある。すなわちNYYは現在、がっぽり稼ぐ一方でコスト管理を厳重にしてスタインブレナー家の利益第一主義であり、顧客満足は第二であるという雰囲気を感じるのです。そんな現在のNYYにファンを魅了する世阿弥の言う「花」があるわけもありません。魅力がなければ客足も離れていきます。ハルにはビルベックの爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいです。ショービジネスにおける<花>の大事さを歴史上、ビルベック以上に知り抜いていた人が私はいないと確信しています。

参考記事

「メジャー通必須の知識 MLB史に聳え立つ巨人ビル・ベックを知っているか」

「ボールパーク戦略の極意は<花>にあり」

NYYはもう一度経営の原点に立ち返って、顧客満足を第一に掲げてファンのためにも強者の戦略を明確に打ち出すべきではないのか。NYYが強者である以上自らの資本力が最も発揮できる戦うべき主戦場とは、フリーエージェントの市場であることは言うまでもありません。例えばここでサプライズを起こし3億ドルのペイロール構想を打ち出せば、ファンは再びヤンキースタジアムに戻ってきます。実際的かどうかは括弧に入れて、思いつくままにサプライズの一例として挙げればプライスとグリンキーの両取りです。誰もがあり得ないと考えるサプライズのことを世阿弥は「珍しきが花」と表現しました。こうしたサプライズ(=世阿弥の言う花)を演出するとファンは再びスタジアムへ足を必ず運ぶようになります。サプライズによって本気度がファンへはっきりとしたメッセージとして伝わるからです。SEAでもカノ獲得で本気を示した時、客は戻ってきました。

こうした世界一を勝ち取るといった夢を描く本気の力が今のNYYには決定的に欠けているものです。仮にサイヤンガーが二人揃えばPOにはほぼ確実に出れるでしょう。ファンも球団の本気に応えるべく一試合あたり何千人単位で観客動員が増える。一人どれだけヤンキースタジアムにお金を落とすでしょうか。ケーブルテレビも所有しでいるヤンキースグループのことですから諸々の経済効果で2015年比でもっても5000万~1億ドル近い増収は見込めるのではないのか。(結構控えめな数字を出しているつもりです)ちなみにTORは今年7000万ドルの増収があったようです。つまり投資分は回収できる算段もある程度できる。緊縮均衡から、拡大均衡への路線転換です。

実際グリンキーがNYに来るとも現実には思えませんがあくまで今のはたとえ話です。根本的な強者の発想としてサプライズな大胆な振る舞いがNYYには必要であると言っています。プライスと岩隈とアップトンの全取りでもいいです。(笑)大事なポイントはそれだけの資本力を実際にNYYは持っているということです。やはり組織の盛衰はTOPのクオリティ次第です。3億ドル軍団としてヤンキース帝国としての方針をはっきりと内外に示してゆくとこれからの歴史は全く違う展開になってくるはずです。そして実際このようなNYYの行動こそが実は最も他のチームが恐れていることです。


敵の最も嫌がることを仕掛けなくてどうして戦いに勝てるというのか。

カノを出すという大失策を犯した際、緊縮均衡路線というハルの方針は完全に間違ったものであると指摘し、続けてこうも言いました。拡大均衡路線を取っているLADが採用している強者の戦略こそ正しいと。たしかにLADは今はPOにおいて結果は出ていませんが、プロセスそのものをじっと見ていると正しい戦略をLADが採用していることがわかります。次回はジョージの手法の問題点も含めて、LADに見る強者の戦略について話を続けたいと思います。

STLやKCのような弱者の戦略についてこれまで多少お話をしてきたつもりですが、今度はLADの強者の戦略についてです。


NYYのペイロールは3億ドルへ増やすべきである 続・ヤンキース帝国の黄昏 

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11 /15 2015
10年前の2005シーズンイン直後のペイロールと2015のペイロールを掲載しました。経年でよく調べるとNYYがこの10年でほぼ年俸総額が増えていないことが明らかとなりました。過去10年を見ても2億ドル前後でずっと横ばいです。一方、1億ドルを超えるチームは2005年ではわずかに2チームであったのが2015年では20チームへと大幅に増加しています。おまけに2015シーズン終了時には3億ドルを突破したLADのようなチームが現れてきました。MLBは今インフレの強力なトレンドの最中にあります。
Team 2005 Payroll


New York Yankees $205,938,439
Boston Red Sox $121,311,945
New York Mets $104,770,139
Philadelphia Phillies $95,337,908
Los Angeles Angels $95,017,822
St. Louis Cardinals $93,319,842
San Francisco Giants $89,487,842
Chicago Cubs $87,210,933
Seattle Mariners $85,883,333
Atlanta Braves $85,148,582
Los Angeles Dodgers $81,029,500
Houston Astros $76,779,022
Chicago White Sox $75,228,000
Baltimore Orioles $74,570,539
Detroit Tigers $68,998,183
Arizona Diamondbacks $63,015,834
San Diego Padres $62,888,192
Florida Marlins $60,375,961
Cincinnati Reds $59,658,275
Minnesota Twins $56,615,000
Oakland Athletics $55,869,262
Texas Rangers $55,307,258
Washington Nationals $48,581,500
Colorado Rockies $47,789,000
Toronto Blue Jays $45,336,500
Cleveland Indians $41,830,400
Milwaukee Brewers $40,234,833
Pittsburgh Pirates $38,138,000
Kansas City Royals $36,881,000
Tampa Bay Devil Rays $29,893,567



Team 2015 Payroll
1. Los Angeles Dodgers $272,789,040
2. New York Yankees $219,282,196
3. Boston Red Sox $187,407,202
4. Detroit Tigers $173,813,750
5. San Francisco Giants $172,672,111
6. Washington Nationals $164,920,505
7. Los Angeles Angels $150,933,083
8. Texas Rangers $142,140,873
9. Philadelphia Phillies $135,827,500
10. Toronto Blue Jays $122,506,600
11. St. Louis Cardinals $120,869,458
12. Seattle Mariners $119,798,060
13. Chicago Cubs $119,006,885
14. Cincinnati Reds $117,197,072
15. Chicago White Sox $115,238,678
16. Kansas City Royals $113,618,650
17. Baltimore Orioles $110,146,097
18. Minnesota Twins $108,945,000
19. Milwaukee Brewers $105,002,536
20. Colorado Rockies $102,006,130
21. New York Mets $101,409,244
22. San Diego Padres $100,675,896
23. Atlanta Braves $97,578,565
24. Arizona Diamondbacks $91,518,833
25. Pittsburgh Pirates $88,278,500
26. Cleveland Indians $86,091,175
27. Oakland A’s $86,086,667
28. Tampa Bay Rays $76,061,707
29. Houston Astros $70,910,100
30. Miami Marlins $68,479,000


ジョージが君臨していた2005はNYYのペイロールにおける傑出度は頭抜けており<絶対強者>という表現がふさわしく、2015のハルの体制になるともはや<相対強者>へと転落していることがよくわかる数字となっているのではないでしょうか。同じ2億ドルでもインフレが進行している以上、その価値は大きく後退しています。真の戦略家であるならばNYY最大の武器である資本力を駆使しその本領を発揮されることが、他のチームにとって何よりの脅威であることを理解するはずです。しかし本質が大胆不敵な戦略家ではなくコスト管理が得意な慎重派ハルにとっては、他のチームにとってNYYがどういう動きをするのが最も嫌なのかがわからない。他からすればハルNYY組みやすしと言ったところでしょう。
経営環境がここまでインフレによって大きく変わり他のチームのペイロールは倍増しているにもかかわらず、NYYのペイロールだけほぼ横ばいであることの意味ですね。ちなみにヤンキースの2005年間収入2億7,700万ドルでしたが、現在5億ドル超です。収入が大きく増えているがペイロールは横ばいというチームはNYYの他にほぼ皆無と言っていいでしょう。


ハルがほんとうの意味でチャンピオンリングの獲得へフォーカスしているなら、他のあらゆるチームが動きを入れてきた中でNYYのように7・8月において補強の動きを入れないこともないはずです。私がここ5年ハルの動きに一貫して感じることは何よりもコストに対する厳重管理を徹底し、帳簿の黒字を増やすことへその目はロックオンされているということです。


結論としては収入から見てもNYYのペイロールはまず3億ドルに増資し、最大の武器である資本力を生かしフリーエージェントの恩恵を最大限享受すべきです。4億ドルの収入しかないLADすらペイロール3億ドルをクリアしているわけです。決して無理難題ということでもありません。超ビックマーケットのNYYがスモールマーケットであるKCの優秀なところを謙虚にいろいろ学ぶことはいいです。しかし取るべき戦略まで模倣してはなりません。強者が弱者の戦略を採用してどうするという話です。NYYは強者の戦略を取るべきです



忍び寄る衰退 ヤンキース帝国の黄昏

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11 /13 2015
みなさんは近年のヤンキースの歴史を振り返ってみた時、大きなターニングポイントは果たしていつだったとお考えでしょうか。


1990年代後半にヤンキースの黄金期ダイナスティを築いたCORE4の最後のジーターが引退した年であるという人もいるかもしれません。それも間違いではありません。しかし個人的に確信している一大ターニングポイントはジョージ・スタインブレナーの死去 2010年7月13日です。オーナーがハル・スタインブレナーという人物に切り替わってから大きくヤンキースの歴史は変わったと後世から言われるようになるだろうと、今からちょうど5年前、記事にしたことがあります。

現在MLBでチームの資産価値及び最大の利益を享受しているのはLADであると勘違いしている人も少なからずいそうですが、文句なしにNYYこそがMLB最高の金満です。フォーブスによればチームの資産価値NYY32億ドル、年間収入5億ドル。チームの資産価値LAD24億ドル、年間収入4億ドル。しかもヤンキースには年間収入5億ドルという左ポケットだけではなく右ポケットにはYESというケーブルテレビの年間収入2億ドルもあるわけです。LADはケーブルテレビを所有していません。ここに決定的な違いがあります。
ジョージ・スタインブレナーの手法には巷間言われているさまざまな問題点があったことも認めます。しかしながら「フリーエージェント制度の有効性を理解したMLBの歴史上、最初のオーナーであった」とは、マービン・ミラーのジョージ・スタインブレナーに対する人物評です。これについては実は私も全く同じ意見でした。(さすが慧眼の士マービン・ミラーであると唸らされました。)

Aロッドが出場停止になりカノを放出し、財政に余裕ができたので田中を獲得というのがハル・スタインブレナーの手法ですが、ジョージ・スタインブレナーの手法とはカノも田中もNYYで囲い込むものです。ジョージ・スタインブレナーの手法は贅沢税など眼中ありません。ペイロールにしても資金力で大きく引き離すLADの後塵を拝することはまずない。ジョージ・スタインブレナーなら2015にしても、マックス・シャーザーあたりを獲得してシーズンインしていたはずなのです。


「戦力の逐次投入は最大の愚である」とも言いますが、一進一退の<相対強者の路線>を突っ走っているのがハルに対して、波状攻撃をかけて金にものを言わせて巨大戦力で相手を倒す<絶対強者の路線>がジョージ・スタインブレナーです。近年、ファームを充実させて生え抜きを中心にしたチームモデルを確立させた強豪STLの手法も非常に高く評価されるべきものです。金がそこそこしかないのであれば優れたスカウティングや育成能力、緻密な戦略によってSTLのように強いチームにするという方針は全くありですが、すべてのチームがSTLへ右に倣えをする必要はありません。身の丈に応じた正しい戦略というものがあり、金がある以上ジョージ・スタインブレナーの手法もまたNYYにとっては正しいのです。

例えば今年の8月にNYYは2位のTORを大きく引き離していたためにハルは全く動きませんでした。結果論としてではなく、このハルの判断も完全に間違いです。WS制覇へ向けてより大胆に補強をすべきでした。相対強者でOK、何よりもコスト管理を大事とするハルの姿勢が透けて見えたシーンでした。POに出れることがゴールとなってしまっている。

これは2年前の記事の抜粋です。

「チームの収入もチーム資産も年々インフレによって右肩上がりであり、選手の年俸もインフレです。こうしたすべてがインフレ路線のトレンドの最中にあって、贅沢税回避という間違った方針を採用しているのがハルです。デフレ下においては<時間>とともに物価(人件費)は下がるのでなるべく、現金を物に変えずに現金を手元に置いておく戦略が正しいですが、インフレ下においては<時間>の経過にともなって物価(人件費)が上がってゆくので本当に価値あるものに対しては早めに投資するのが正しい戦略です。

(つまりこの当時では1WARが500万ドルですが、10年後の1WARは1000万ドルまで上昇している可能性もある。実際今年であっても800万ドルまで上昇しており、カノの年俸は、将来、今ほど負担感の強いものではない可能性が高い。昔は2000万ドルなんていうと超一流の証だったのに、今ではこんな選手でももらえると回想される可能性がかなり高いということ)


堅調なインフレという強力なトレンドの中では基本、強者は積極的な投資を行うべきであり、まるでデフレ下で行うべきハル・スタインブレナーのコストカットするという方針は戦略的には間違いであると言わざる得ません。特にハル・スタインブレナーというオーナーの力量が垣間見えたのが、カノという3000本も視野に入っている殿堂入りも可能な生え抜きの選手をSEAというローカルなミドルマーケットのチームにさらわれたシーンです。NYYの莫大な資産からすれば仮にカノが途中から不良化しようが全く問題なく財政的にも吸収できるというのが大きなポイントです。他のふつうのチームと同じようにカノの不良化を捉えていては大きな間違いです。戦略的な正しさとはあるチームにとっては非であることも、あるチームにとっては是となることもある。カノは戦力的にも将来のブランド戦略としても絶対に手放してはいけない選手でした。


もちろん今でもMLB全体で2位、ALリーグ最高のペイロールを維持している以上、相対強者ではありPOにも出るでしょうし、偶然優勝するなんてこともなくはないでしょう。それなりの強さを維持はするでしょうが、ハル・スタインブレナーの路線を見る限りかつての悪の帝国としての面影はすっかり失せ「ヤンキース帝国の黄昏」はその色彩をより一層増してゆくはずです。強豪というイメージはすっかり薄れてNYYはそれなりに強いチームというポジションが定着することになる。そしてあれだけジョージ・スタインブレナーを忌み嫌っていた一部のNYYファンも先代の偉大さを改めて後世において思い知るに違いありません。」

2013の夏頃においても贅沢税というヤンキースの身の丈からすれば、全く取るに足らない小さな障害の前に立ちすくんだハル・スタインブレナーの姿勢を評価するコラムも見たことがあります。しかしいささか大局観の欠ける記事であったという感想しか個人的には持ち得ませんでした。平たく言うとジョージ・スタインブレナーがオーナーだったなら贅沢税など軽く往なし、MLB全体ペイロール1位の地位を確保し、2015の開幕時にはカノもシャーザーも開幕スタメンに名を連ねているチームであった可能性が高いということです。そうであってこそNYY本来の姿です。しかし今のオーナーであってはオーナー自身がイノベーションしない限り、そんな力強い姿のNYYを見ることはまずありません。
時間こそ最大のコストであり、ブランドを形成することがNYYのTOPにとって何よりも大事である。こうした意識が決定的に欠如し金銭のコスト感覚を優先させているのが現オーナーです。スケールが先代と比べると小さ過ぎてどうにも未来に夢がない。現在 NYYのウィークポイントのひとつはポジション別セカンドのWARを見ても明らかです。2014 WAR0.0 2015 WAR-1.1となっています。


しかしほんとうのウィークポイントはカノが抜けたセカンドなどではなくNYYのオーナーのその姿勢、大局観、戦略的な思考力の欠如にあります。


LAD ゴードン放出は失敗だったのか?

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11 /07 2015
これからWS制覇をするためのLADの補強ポイントについて簡単に記述してみたい。

2015LADのチーム総合力はWARを見ても攻撃・防御共に非常に高いことがわかる。おそらくグリンキーとの契約さえ結べば、2016もPOへ進出できる可能性はかなり高くなる。LADの問題はPO進出ではなく如何にPOを勝ち抜くかにある以上、ターゲットをLADが短期決戦でも勝てるチーム作りという観点から、戦略的課題について眺めていこうと思う。

「なぜOAKはプレーオフで勝てないのか?」に書きましたが、奇しくもクライマックスのMVPになった内川言ったように「短期決戦というのは『どれだけ打ったか』 じゃなく『どこで打ったか』」という言葉に短期決戦の本質が凝縮されている。このようにレギュラーシーズンとポストシーズンでは選手の評価基準の違いのみならず、戦術においてもレギュラーシーズンとポストシーズン自ずから異なってくる部分がある。

まずLADがPOで勝ち抜くための補強ポイントを考える前に、2015WSを振り返って短期決戦のKC強さの秘訣についていくつかの要因について考えてみたい。短期決戦においてここ2年極めて高い勝率を誇ってきたKCとPOでどうしても勝てないLADのギャップを認識できれば、2016LADが取り組むべき戦略的課題が自ずから見えてくるはずです。


第一にはやはりここ一番での機動力がキーとして挙げられる。ALCSではホズマーのライト線へのシングルヒットで一塁からケインが決勝ホームインをしました。WS最終戦のペレスに代走を送られたダイソンが悠々と盗塁を決めて決勝点を踏んだ。僅差においてどうしても一点が欲しい時、ペナントでは重要度において後ろに後退していた機動力の価値がポストシーズンの終盤僅差の戦いになると前面にせり出してきます。その印象どおりにセイバーメトリクス的にも機動力の価値が間違いなく短期決戦の僅差ロースコアでは上がってくることがわかっている。

第二には守備力の重要さである。昨年の2014はKCの驚異的な守備力で失点を悉く防いできたわけですが、2015の事情は積極的な意味での守備力という意味よりも、むしろKCの堅実な守備力の大事さが実感させられたはずです。大事な場面で敵が次々とエラーをしてKCの勝ち越しに結びついていきました。

第三には攻撃において三振を簡単にはしないコンタクトする力、インフィールドへ打球を飛ばす力が挙げられるのではないだろうか。アウトの生産性を高めるのは状況に応じて、KCが繰り返し見せたゴロをインフィールドへ飛ばす進塁打やホズマーの犠飛によってサヨナラもしたように、前提として打球をインフィールドに飛ばさなくてはならない。三振ではアウトの生産性は全く見込めない。敵のエラーを誘うという意味でもインフィールドへ打球を飛ばす力は大事になる。逆に守備側から言うと僅差において、クローザーの奪三振力の価値が極めて大事になるとも言える。KCのブルペンの盤石な強さは今更指摘するまでもない。セーブ機会のある登板3度すべてファミリアはインフィールドに打球を飛ばされてセーブ失敗となった。守備が不安定ならKを奪う以外に道はない。

ハービィの交代時期の遅れも結果論に過ぎません。そこに至るまでハービィのピッチングは素晴らしかったし、ファミリアが盤石なら監督も交代を即断していたはずです。<ハービィの快投>+<ファミリアの過去2度の失敗>というファクターを重ね合わせて勘案した時、必ずしもワンテンポファミリアの投入が遅れたとは言い切れない。仮にケインBBで出した直後にすぐファミリアを出して、もしそこで打たれて同点にされたとしたらどうだろうか。今度は結果論のバイアスにかかっている人はこういう理屈を展開するに違いない。「なぜこれまで失敗していたファミリアを投入したのだ、コリンズは2014のWSHジマーマン交代失敗劇を教訓にしないのか。調子の良かったハービィで押してもよかったはずである」と。 (もしファミリアが過去すべてのWSセーブ機会で成功していたなら話は全く別であり、第五戦のコリンズの継投の決断は明らかに遅いと結論できる。)


2007アストロズとレッドソックスの戦いのように、一度もBOSがリードを許さずブルトーザーの如く一気に押し切るような展開であれば、緻密な野球そのものも必要とはしない。しかしNYMとKCの戦いのように僅差であり、一歩間違えば、NYMが4勝1敗でWSを制してもおかしくはなかった戦いの時、下記の3点は大事な戦いの要素となる。

◎シングルヒットの価値を何倍にも引き伸ばしてしまう機動力
◎敵に隙を与えない守備力
◎守備:インフィールドに打球を飛ばさせないブルペンの奪三振力
(攻撃:インフィールドに打球を飛ばす攻撃の力)

こうしてLADの戦力を分析するとまずポジション別ではセカンドの守備指標だけが大きく抉れてDRS-13です。LADのセカンドは大きな穴になっています。更にはLADは1点を取りたい時の攻撃オプションとして傑出したスピード・機動力が欠如している。グリンキーとさえ契約を結べれば、投手陣はブルペンの厚みを増すことに課題は絞りこまれてきます。

LADのPOを勝ち抜くための補強ポイントをざっくりまとめると

セカンドの守備改善、機動力という攻撃オプション、奪三振力の高いブルペンの整備の3点となります。

こうしてみると結果としては守備指標が飛躍的に向上しMLBを代表するスピードスターであるゴードン放出は失敗と結論される可能性が高くなってきました。しかし結果はともかくゴードンを放出した思考のプロセスそのものは決しておかしなものではない。理由については LAD新社長フリードマンのゴードンを放出した戦略とその誤算を参照ください。
結果は極めて大事ですが、結果がすべてでもない。
結果論のバイアスに嵌りこみ、そのプロセスに正しくフォーカスできなければ深い洞察力を養うことはできません。結果とプロセスのマージナル(境界線)の上を跨ぎながら、バランス良く全体像を眺めてゆくことが大事になる。どちらに偏っても広い視野を確保することできません。いずれにしてもこのミスをリカバリーしようと次にフリードマンはどんな手を打ってくるのか。次の一手が非常に楽しみになってきた。


クラッチヒッターは存在する!そのセイバーメトリクスの常識を疑え

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11 /03 2015
LADのGMであるザイディは、元OAKでビーンの右腕もあった男であり、バリバリのセイバーメトリシャンでありますがクラッチヒッターの存在を認める発言をしたようであります。「ベースボールはメンタルのスポーツでもあり、応援に力はある」にも示したように、ベースボールもまたメンタルなスポーツであることがセイバーメトリクス的にも明らかになっている以上、大舞台に強いクラッチヒッターが存在することはまた自明なこととなります。

たしかにPOはサンプルが小さいために、勝負強さとは単なるデータの偏りが出ているに過ぎないという可能性はあります。つまり偶然たまたまその期間に限ってラッキーマンとして一躍脚光を浴びる選手がいるに過ぎず、大舞台に強いクラッチヒッターなんてものは本当は存在しないとセイバーメトリクスでは一般に考えられています。しかし敢えてその常識をこそ疑えと言いたい。大舞台で活躍する選手の中には単にラッキーマンのような偶然活躍した選手がいることも当ブログでは認める立場を取ります。しかしそれによってすべてが説明できるものではなく、大舞台になり、ギアが切り変わりまるでスーパーサイヤ人と化すように実力が通常時よりも増し、本物のクラッチな選手がいることを見過ごしてはならないのではないか。


大舞台で活躍するラッキーマンの中に、本物のクラッチな選手が存在しているのではないかということです。例えばそのクラッチヒッターの代表例が長嶋茂雄である。(この記事の最後に驚愕の数字を掲載しておきます。)長嶋茂雄は大舞台のチャンスになればなるほど緊張感の中にあって「さあ、いらっしゃい!」という気持ちになると言う。大舞台の緊張感から来るプレッシャーを自らの力の源泉としていたのが長嶋茂雄という選手であった。同じようにそのプレッシャーと懸命に闘いながら通常のプレーを着実にこなせる選手もいる。逆にそのプレッシャーが選手を委縮させ足が震える選手もいれば、あるいは妙な力みとなって通常のレギュラーシーズンのような活躍ができないカーショウのようなタイプも現実にいる。一般には経験がないと、いざリーグ優勝を目の前にするとプレッシャーによって体が言うことを効かなくなるとはよく耳にする話です。


ベースボールもまたメンタルのスポーツである以上、プレッシャーをどう捉えるかは様々であるが、その中には長嶋茂雄のようにプレッシャーを自らの原動力そのものにできる特別な選手がいることは容易に想像がつきます。大舞台に単なる偶然に大活躍する選手(ラッキーマン)がいる一方で、その中には真のクラッチな選手というものが実在し、大舞台に強いという才能もまた特別な選手に備わった強力なツールなのではないか。そのことを率直にザイディGMは認めている。個人的にはセイバーメトリクスを研究しつつもクラッチな存在を認める立場を選び取っている以上、ザイディGMの見識は実に腑に落ちるのです。


これは過去の記事の抜粋を再掲です。

「松井やバムガーナーのように大舞台になればなるほどより心が静まり不動心によって、集中力が研ぎ澄まされてくるタイプと長嶋茂雄やオルティースのように大舞台になればなるほど、魂がバーニングし潜在能力を引き出してくるタイプの2種類のタイプがいる。すなわち大舞台に強い選手にも陰性と陽性タイプがある。

そして大舞台に強いタイプがいるということはその逆もいるということになる。Aロッド、カーショウ、プライスなどが大舞台に弱いタイプとして今のところ分類されることになります。」

カーショウも大舞台を何度も踏むうちに、経験という力によって無類の強さを発揮するようになる可能性はあります。経験も力になる。


いつまでも一級のセイバーメトリシャンがクラッチな存在を認めていないという固定概念を持っていてはならないだろう。やがてクラッチを認めない考え方そのものが時代遅れになるに違いない。POに強い選手だという価値もマーケットはいずれそれなりに評価するようになる。

最後に長嶋茂雄の成績を示しておく。

日本シリーズ 通算得点圏打率 .371
日本シリーズ 68試合 .343(265-91) 25本塁打
シリーズ初戦 12試合 .429(49-21) 4本塁打
1点差 .383(60-23) 6本塁打
優勝決定試合 8試合 .323(29-10) 3本塁打
皇室観覧試合 10試合 .514(35-18) 7本塁打
オールスター 43試合 .313(150-47) 7本塁打

日本シリーズという大舞台の68試合で25本ものHRをたたき出す真のクラッチこそ長嶋茂雄という選手である。130試合ベースで考えれば50本塁打ペース。相手がリーグ優勝した強豪のエース格ばかりであるにもかかわらずです。

ザイディGMの見識が正しいのか、その他諸々のセイバーメトリシャンの見識が正しいのか 後の判断は、各自に任せたい。


ホズマーのギャンブルスタート それがKCの進化した印(しるし)

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11 /02 2015


「やはりラルーサは名将である 短期決戦の箴言」でも繰り返し述べてきました。短期決戦の終盤、僅差の状況というファクターが重なれば重なる程に、勝負は運の要素が強くなるために、一か八かのギャンブルを仕掛けるのは正しいと。スモールな野球を信条とするなら、あのホズマーのギャンブルはたとえアウトになってもOKであり、思い切ってギャンブルを仕掛けろという文化がKCには醸成されていたはずです。たしかに暴走ぎみではありますが、ホームでアウトになっていても個人的にホズマーの走塁を決して批判することはなかったです。

12回のペレスに代えてのダイソンにヨーストの勝負師としての姿を見た気がします。昨年までは「KCヨースト監督に見る 真のリスク管理とは何か」にも書きましたが、ヨーストは攻撃にしろ継投にしろ慎重さ故に、後手を踏みまくっていました。しかし2014に大舞台の経験を積んだことも大きいのでしょう。昨年のWSでは全く見られなかったケインとダイソンがここ一番で盗塁を仕掛けてきた。ここだけを比較してもKCは大きく成長しています。もちろん、きっちりと3塁への進塁打するというスモールも見過ごせません。

「MLB 戦いの原理を求めて」流 2015ワールドシリーズのポイントにも書いたように、すべてWSの5試合においても一度はNYMはリードするシーンがありました。しかしKCが自らの戦うべき己が優位となる土俵へ相手を連れてきて、そこで組み合って相手を叩くという戦略がワールドシリーズにおいてもまた功を奏しました。

ヨーストの好采配を含めて、KCの隙のない野球、スモールベースボールの完全なる勝利であったと言っていいでしょう。ワールドシリーズを制するには何が必要なのか、KCは格好の材料を提供してくれた気がします。ベースランニングとかギャンブル性とか進塁打とか守備力とか、緊迫した場面になればなるほど、スモールな要素が軽視できなくなる。

最後に、敢えてもう一度だけ繰り返します。


「(NYMは)弱いから負けたのではない。ミスをした方が負けたのである。」


WSに進出してくるチームはどこも強い。2014KCも決して弱かったわけではなく、ボウチー監督との力量の差、監督のミスで負けました。それも2015ではヨーストも華麗に修正してきました。実にお見事であり、心から拍手を送ります。


とにかくKCファンの皆様、おめでとうございます。それからハービィは素晴らしいピッチングでした。

ロイヤルズ 最後には隙のない野球が勝つ

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11 /01 2015
ちょうど私がモニターを見たのは8回表、1点差KCの攻撃からであった。僅差のロースコア終盤。途中経過は知らなかったが、KCは敵を叩く絶好の場所までまたもやNYMを引き連れてきたのかと画面を見入った。そこからの展開はここで敢えて記す必要もないだろう。最後に登場するのは守護神ファミリアであったが、ファーストボールに強いKCにとってすれば96マイル前後のベロシティには何の怖さも感じることはなかったに違いない。ファミリアからも悉く、KC打線はインフィールドへ打球を飛ばしていた。やはり短期決戦において特にブルペンの奪三振力というツールは必須である。インフィールドに飛ばされたら何が起こるかわからない。2015POでもふつうのKCのセカンドゴロがトンネルとなり、ふつうのセカンドフライもヒットになった。よってクローザーのスタッツを見るときはシーズン中におけるセーブ成功率よりもK/BBの方がいざという時に遥かに頼りとなる。イチローがNYYにいた時にALDSで対戦したBALのクローザーが50セーブを上げていたジョンソンが成功率だけは異様に高く、リードして9回を迎えると98%前後の確率でBALは勝つという戦前のデータがあった。個人的にはジョンソンのFIPやK/9がかなり低いために特に恐れることもないだろうと予想しNYYを応援していたが、神懸ったイバネスの連続HRにBALは沈んだ。クローザーでBALはリードを守れず負けた。エラーはあったにせよ結果的にファミリアで二回失敗している。


ところでセカンドのメジャー平均守備率そのものは98.6%となっている。あの8回のホズマーのセカンドゴロは難易度からすれば平均よりもかなり低いものにカテゴライズされることは間違いなく、ふつうのメジャーのセカンドであれば限りなく100%に近い確率でアウトにできたと帰納的に予測できる。セスペデスの走塁についても、ライナーはバックするというベースラングの基本に忠実でありさえすれば確実に防げたアウトではあった。ふだん通りのことを大舞台でこなすことが如何に難しいのか。大舞台で普段通りプレーをこなすには<経験>も必要だろうし、普段から取り組んでいる細やかな<ベースボールの質>が問われているのかもしれない。

HOU、NMY、TOR、これまですべての敵は大事な場面で散々エラーを犯してきた。しかしKCはペレスを中心にした強力なセンターラインによるMLB最高の守備力を発揮し相手に付け入る隙を与えず、集中打を得意とする機動力溢れる攻撃陣を組織化し、スピード豊かな強力なブルペンによって試合のピリオドを打つというヨーストの言う「隙のない野球」を展開してきた。ヨーストの采配も短期決戦において大事とされる継投においても前年のミスを学習したためなのか、柔軟でありかつピンチが拡大する前に前倒しで継投を決断する要所を得た手腕も評価されるに値する。


個人的には2014の第四戦だけはSFをリードした時点でヨーストは全力で前倒しでブルペンを5回から総動員させるべきだったと今でも強烈な記憶が残っている。これだけは結果論ではない。なぜなら次の試合はバムガーナーだったからである。シールズは大舞台に弱い以上、まず第五戦は負けと計算し第四戦が終わった時点で3勝1敗にすればこのシリーズものにできるというはっきりとした道が、ラルーサなら見えたのではないのか、そんなことを忖度をしたりもした。しかし第四戦での継投がワンテンポ遅く、結果その試合をKCは落とした。2014のワールドシリーズは監督の技術の差でKCは負けたシリーズであったと総括している。そしてこのままいけば2015はベースボールの質の違いによってシリーズは決したと総括できる。

何が起こるかわからないのが短期決戦。魔術師・三原修の言うように、野球とは筋書きのないドラマである。それにしてもこう言わずにはいられない。経験を積み、一回り厚みを増した隙のないスモールなロイヤルズベースボールが頂点を極めるのはもう目前である。NYMが奇跡を起こすにはグランダーソンが言うように、もう一度マーフィーが、あるいはそれがコンフォートでもかまわないが、ベーブルースへ変身を遂げなければならない。合言葉はシンダーガードまで回せということになるだろうか。ベンチェラとのマッチアップならかなりの確率でNYMは勝つことになる。しかしそこにたどり着くまでの球数制限のあるハービィと疲れの見えるデグロムで勝ち抜けるのか。LADなら拙攻をしてくれるかもしれないが、その点、KCはシビアではある。


対KCに限っては力がない方が負けるのではない。ミスをした方が負けると言えるだろう。



大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。