NYMの反撃 ベースボールはメンタルのスポーツでもあり、応援に力はある

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10 /31 2015

ひとつ問題です。下記の4つを上位から順番に並べるとどうなるでしょうか?もしこの問題に間髪入れずに正答できる方は、なかなかの洞察力の持ち主です。

DHあり ALリーグ全体のOPS
DHなし NLリーグ全体のOPS
30チームの全体homeでのOPS
30チームの全体awayでのOPS

DHの有無がOPSに与える影響は当然無視できるものではないわけですが、そのDHの有無が与える影響に比べて、30チームのhomeとawayではそれぞれどのような数値になっているのか、ホームで戦う地の利の影響の大きさを比較しようとした試みです。結果2015は下記のようになっている。

30チーム全体homeの OPS739
DHあり ALリーグ全体の OPS730
DHなし NLリーグ全体の OPS713
30チーム全体awayの OPS704

これは過去10年調べた限り、この順位に変化はありません。つまりDHの有無よりも応援の力による戦力への影響が高い可能性があることを示唆しています。クエトも「ファンの応援が俺の力になる」と言うように、それは決してクエトだけの話でもなく、スポーツ心理学の実験でもフラットな状態と応援された状態では 選手のパワーの引き出され方に如実な変化が起きることが科学でもわかっています。もちろんこれは打者のOPSではなく、クエトの例からもわかるように投手のK/BBやERA FIP等でも当然同等のことが言えます。よってベースボールにおいてhomeとawayの勝率を比較すると基本どのチームもhomeの方が勝率は高くなります。(一年単位ではサンプルが限られているため毎年一部の例外はあります。)ある行動経済学者も言うように、審判が地元有利にふるまうとするホームタウンディシジョンの影響も間違いなくありますが、それだけでは数字を整合させようとした時、到底私は説明できないと考えています。
あるセイバーメトリシャンはサッカーのPKを題材に、いかに選手のメンタルがパフォーマンスに影響を与えているのかを立証している。まさにベースボールもまたメンタルのスポーツであり、応援は選手の力になることが今日の試合で明らかになったのではないだろうか。

ただし競技によっては声を出す応援は集中力を著しく阻害するノイズとなり、テニスやゴルフの場合がプレイ中は会場が静まりかえっています。競技の特性よっても応援スタイルは変わります。声を張り上げることだけが応援でもない。見守るというスタイルもある。ここに単純ではないスポーツの奥深さというものがある。いずれにしてもサッカーやベースボールなどはファンの声援が10番目の選手の働きをすると言っても過言はありません。(DHがあれば11番目、サッカーでは12番目の選手ということですね)NYMは地の利を生かして奇跡を起こせるのか。明日がきわめて重要な戦いとなりそうです。
結論 ベースボールはメンタルのスポーツでもあり、応援に力はある。


statcastはベースボールをどう進化させるのか?

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10 /30 2015
statcastという新しい技術が開発されてから選手への能力の客観的な把握がいよいよ進化している。例えば昨日のエスコバーの3塁打があるが、最高20mphに達し、3塁到達時間は11.79secと記録された。トラウトは3塁到達時間は11.01secということでその驚異的なスピードでもってMLB.comでもクローズアップもされてもいる。ちなみにオコエの3塁到達時間は10.77secというのが私が測ったタイムであったが、メディアで見た情報では10.88secとあったようです。いずれにしてもあの夏の日、甲子園でオコエの3塁到達時間は11.00を確実に切るタイムで走ったことは間違いのないファクトである。MLBでもオコエのように右打者で11.00secを切る選手はほぼいない。

ところで、このstatcastの数値を見るにはちょっとした工夫の必要がある。例えば下記の数値を見てもらいたい。

17mph 76cm
18mph 80cm
19mph 84cm
20mph 88cm

これは選手が0.1secで進む距離となる。昨日のエスコバーは最速20mphであるから、0.1secで88cm進んでいるということになる。statcastでは例えば野手の動き出しのsecも記録されている。0.25secの選手もいれば0.35secのケースもある。つまり、この反応速度の0.1secが違うとある野手は同じルートで走っても最終的な守備範囲が76cm変わってくる。(守備ではボールを見ながら目測を図っているため、ベースランニング程スピードは出せない。)それはギリギリキャッチできた打球がそのわずか0.1sec違うだけ外野手の場合、長打へ変わってしまうことを意味する。もしそれがワールドシリーズの重要なシーンで0.1sec野手の反応が違うだけで天国と地獄に分かれる可能性があることも示唆している。


statcastという技術が開発された以上、チームデザインを担当する者なら、こうした0.1secの世界をクローズアップし、徹底的に戦略的アプローチをかける必要があります。

ランナーが1塁へ到達する時間が0.1sec違うだけで80cmもの距離が変わるということは、内野安打かそれともアウトかによって、試合の決勝点が左右されることもある。もちろんホーム直前80cmでアウトかセーフかというシーンだって当然ある。statcastが明らかにしたひとつは「0.1sec」 という極めて微細な攻防の中でMLBは凌ぎを削り、勝者と敗者を分かつスポーツであるという点にある。

小事を疎かにするものに大事を成すことはできない

それがベースボールの真理でもある以上、「0.1sec」の攻防においてMLBは最新のテクノロジーを持ち込みながらより進化した形でスモールベースボールへ回帰するトレンドがいよいよ明らかになってくる。必ず改革者としてstatcastという技術を戦略に生かす人物が現れてくるはずです。もちろんそれは単純に昔のドジャース戦法に回帰するということでもありません。スピードに関するツールへの評価がステロイドERAに比べるまでもなく、より一層上がることも容易に想像できます

そして残念ながら同時にそれはNPBとのレベル差がstatcastの出現によってより拡がることも意味している。いつまでもおざっぱなMLBというイメージでは到底語りきれない、新たなる時代のフェーズへ突入する入口に立っているという時代認識を持っておいてもいいのではないだろうか。
なぜ 「0.1sec」のスモールな攻防を疎かにしてはいけないのか?

その大きなひとつの理由としては、ワイルドーカードが2枚に増えてからというもの、162試合目で最後のカードが決まるのが恒例となっているからです。つまり1勝の違いがPO進出の可否を分けることを意味しています。その1勝も、「0.1sec」の攻防によってオセロの白と黒のように勝敗が簡単に反転することになる。「0.1sec」の攻防を戦略的にきっちり詰めてゆくチームがその最後の1勝で笑うことになる。


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ou812 さん。statcastに対するご指摘は鋭いです。この記事はその返信です。セイバーメトリクスに対する理解も特に間違っていないと思います。LADの防御編についてはサイヤンガーが二人もいるだけに、グリンキーを引き留められるか否かが最大の課題でしょうが、もし分析するに足るものが発見できれば記事にします。



時代と逆行するKCの攻撃戦略 なぜKCにビックイニングがあるのか

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10 /29 2015


さて 今日もKCが得意の連打で逆転するといういつもの勝利のパターンで2連勝を飾りました。5回ハービー2K、6回デグロム2Kという数字からもわかるように、KCはMLB全体で断トツでK率が最も低いチームである。その数値15.9%というものであり、16%台、17%台のチームは皆無という状況からもわかるように他のチームはおおよそ20%前後のK率となっている。

リーグ1位のK率が低いということは浅いカウントからどんどん仕掛けてゆくことを意味しており、BB率においてもリーグ最低の低さの30位ともなっている。最近では100球制限のスタータを早く引き下ろすために、一打席でどれだけ球数を投げさせるのかという指標が重要視されたり、OBPが重視されているためにBBの数に脚光が浴びるというのがひとつの時代におけるトレンドではある。その点、KCは見事に時代に逆行した戦略を取っている。ではBB率を減じてもK率を低めるKCの攻撃戦略の背景にあるものとはいったい何か?
ところでリーグ全体のカウント別のAVGとOPSをまずは大雑把に示してみる。

初球      AVG 340 OPS 900
0ストライク  AVG 350 OPS 1000
1ストライク  AVG 340 OPS 880
2ストライク  AVG 180 OPS 480

という数値がおおよそ並ぶことになった。2ストライクに追い込まれると攻撃力が激減することは明らかとなっている。2ストライクアプローチを敢行し、粘り強さを発揮しBBを量産するという出口戦略を練るという手もあるが、エスコバーに象徴されるように待球せず初球ストライクを必ず打つという攻撃戦略も正しい可能性があることをこれらの数値は示している。浅いカウントで攻撃を仕掛けた結果KCはAVGにおいても279という高打率を残し、リーグ2位としている。ただしもしこの戦略を取った場合、BBの少なさを引き換えにしている以上、AVGの高さは必須となる。

6回ハービー2K、5回デグロム2Kという数値からもわかるように、WSでもKC打線の打球は基本インフィールドに飛んでいることがわかる。数多くインフィールドに飛べば、相手のエラーを誘うこともできれば、K(三振)でKC打線はなかなか途切れることがないためにうまく繋がれば連打となる。こうした時代と逆行するかのようなKCにおける攻撃戦略が、短期決戦の大舞台でも集中打を呼ぶビックイニングを作る大きな力を発揮している。度々見せてきたビックイニングは決して運だけではなく、その背景にはKC独自の攻撃戦略があると見ることもできるだろう。


追伸 LADはOPS OBPともリーグ2位でした。1位のチームは山の上にあるチームでした。訂正しておきます。


NYM守護神ファミリアの気になるデータ

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10 /28 2015
WPAによれば9回1死90%ジャストの確率でまずNYMが先勝することが予想されていた矢先に、ゴードンのバックスクリーンへの同点HRが飛び出ました。このゴードンのHRは47.2%もの勝率を引き上げる一打であり、得意のうっちゃりというスタイルでまた10%の勝利確率の状況からの逆転劇で見事にKCが先勝でした。
ホズマーの守備の乱れによって勝ち越しを許すというKC本来のスタイルが崩れたところからの逆転勝利であっただけに、この勝ちはKCにとって非常に大きな勝利となった。采配で気になったところと言えば、KCも8回無死2塁でケインについての采配はさすがに慎重に過ぎたのではないか。エスコバーならともかく3割打者でもあり3番のケインに犠打という選択はなく、あそこは信用して強打の一択ではなかったのか。

それ以外の継投などにヨーストについて隙はほとんどなかったと言っていいように感じた。マドソンについても延長から投げさせたように、ある意味の的確な降格処置をしたことも明らかとなった。守護神ファミリアのデータを見ていて少し気になったのは、2015のシーズン通しての成績は被OPS569 WHIP1.000という素晴らしい成績を残しているが、インターリーグについて8試合を投げているが被OPS867 WHIP1.696という数字が出ている。いくら試合数が少ないとは言え、ALの打者を苦手にしている可能性がある。

KCはあくまで相対強者というスタイルであり、敵を圧倒する戦力は持っていない以上、NYMが巻き返せる要素は数多く残されていると考えるのが自然だろう。ボルケズの精神的な動揺やヤングを一戦目で使ってしまったことなどKCにも不安材料もなくはない。NYMに勝つための必要とされる条件のひとつは、今後ファミリアが絶対守護神で足り得ることになる。敵はKCだけにいずれの試合も僅差での4連勝ということもなくはないが、このシリーズがまず一方的な展開になることは個人的には考えにくい。

NYMで心配なのは左肩の影響なのかいきなりの深いセンターフライを取れずにインサイドパークホームランとしたセスペデスがすっかり元気のないところである。セスペデスが逆シリーズ男になった時、NYMに勝ち目はかなり薄くなる。ちなみにエスコバルのあのHRは勝率を10.7%と引き上げたとWPAでは算出されている。同じソロHRでも勝利するという価値から見た時、ゴードンのHRはエスコバルのそれよりも遥かに貴重なものであったことがWPAでは明らかになっている。



犠打・送りバントは有効なのか?それとも 無効なのか?

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10 /27 2015


あるレギュラーシーズンの得点期待値を比較すると、下記のようになっており犠打はナンセンスという話はすっかりお馴染みです。

無死一塁の得点期待値 0.81
一死二塁の得点期待値 0.67

バントで2塁へ送った方が得点期待値が低ければ犠打はやるだけ無駄と結論されます。まして成功率100%ですらない犠打は有効どころかむしろ、完全に非効率的な戦術であり時代遅れの遺物のように捉える方も多いです。しかしこの得点期待値はあくまで平均的な投手と平均的な打者が想定された得点テーブルに過ぎません。

ERAで言えば4.00を切るレベルの投手が投げる場合と言ってもいいでしょう。ペナントでは投手は「シーズンを通してローテを維持することが大事であり、チームに勝つためのチャンスを作るのが自分の仕事であり、クオリティスタートであれば一応の及第点」と多くの投手は考えています。しかし短期決戦では強いチームの3番手までの優れた投手が、「試合に勝つために1点も与えないことが自分の使命」としてギアを一段階上げて投げ込んできます。短期決戦では想定される投手のERAは下がることは必定であり、まして終盤のクローザーが出てくるシーンともなればERAは2.00前後になります。つまり犠打を否定しているペナントの得点期待値のテーブルは、短期決戦では当然、圧縮されてきます。

あるセイバーメトリシャンが短期決戦でロースコア接戦という条件に絞り込んで調べると、送りバントの勝利に対する貢献度があることが明らかとなったとするレポートが挙がっています。 そのセイバーメトリシャンも当初は犠打バントは無効と思っていたようですが、よくよく条件を絞り込んで検証しているみると犠打を単純に否定してはならないと結論していました。実に健全なセンスです。

「古典「マネーボール」の正しい読み方」で結論していることと全く一致しています。平たく言います。レギュラーシーズンでふつうの投手が出てきた場合、無死1塁での初回の犠打は基本愚策です。敵にアウトをひとつプレゼントしている戦術に他ならない。しかしそれが短期決戦9回同点で相手がクローザーの場合、その打者が余程の強打者でない限り、犠打という戦術も選択肢のひとつとしてはありです。

犠打バント(「盗塁」という言葉を入れ替えてもいい)は有効なのか?それとも無効なのか?

有効か無効か、すべては場面によります。すなわちこの記事のタイトル自体全くの愚問であると言っていい。マドンもレギュラーシーズンでは犠牲バントを最も仕掛けない監督として有名でした。リーグ14位という数字です。強打者揃いであり、本拠地がリグリーというヒッターズパークであるという要因も大きいのでしょうが、一転、短期決戦では犠打についても積極的でした。

犠打や盗塁がスモールベースボールのひとつの象徴であるとすれば、セイバーメトリクス的にも投手優位の短期決戦において、スモールベースボールの有効性は証明されているのです。しかしこうした結論でさえ、理解しているのは少数派であるというのが現実です。


「セイバーメトリクスは単なる統計的な技術に過ぎず、時代環境や点差 試合状況などによってケースによってビックボールを肯定もし、ケースによってスモールボールも肯定する理論であるということに尽きます。

セイバーメトリクス=ビックボール

もしそう思い込んでいるとしたら それはセイバーメトリクスの理解不足以外の何物でもありません。セイバーメトリクスは盗塁も犠打も単純に否定しているわけではないのです。」


<得点の最大化を目指す確率論(ビックボール)>と<1点を奪う確率論(スモールボール)>狭間の中で絶えず、状況に応じて戦術的な正しさは揺らいでいる。



「MLB 戦いの原理を求めて」流 2015ワールドシリーズのポイント 

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10 /25 2015
KCとNYMのこれまでの戦いをレビューをしながら、ワールドシリーズのポイントについてシンプルに書いてみたいと思います

NLCSではNMYが試合中において一度もCHCにリードされるという場面すら作らせず完勝でした。相撲で言うところの横綱相撲でもあり、万全の寄り切りで勝つ。強者の戦い方と言ってもいいです。それとは実に対照的に例えばALDSではHOUが5試合すべての試合でKCを一度は必ずリードする場面があるという試合展開でした。解説武田も言っていましたが、展開としては終始HOUの勢いでKCを押し込み、KCは徳俵のところで踏みとどまり、なんとかうっちゃりをする形でALDSをKCは勝ち抜いてきたということになります。特に第4戦の8回表4点差から逆転は、シーズンでは100試合あって1試合あるかないかという劇的な試合展開でした。コレアのエラーがなければALDSで敗退であったでしょう。WPAによれば8回表で96.8%の確率でHOUが勝つと判定されているようです。そこからHOUの勝つ確率を0にまで引き下げたKCの逆転劇でした。


ここに両チームの勝ち方の特徴が実によく表現されていると感じるのです。


ALCSのTOR2戦目の7回裏の守りの乱れに乗じた連打や第6戦の9回表の1点差を守り切った守備でもそうですが、肝心な場面で自軍に有利となるような誤審や相手のエラーなどを見事に勝利に結びつけてきたKCの試合巧者ぶりは実に見事です。最後は1点でも多く得点が上回れば試合は勝ちであり、3敗してでも4勝をもぎ取ればシリーズは制することができるとする、相対的に優位な戦い方をKCは展開していると言えます。もしKCが絶対王者であり圧倒的な戦力をもっていれば最初からソフトバンクのように相手を寄せ付けずそのまま寄り切りで終了です。すなわちKCはスモールベースボールを信条とした試合巧者の相対強者と言うこともできます。自らが得意な形、7回以降接戦という場所まで相手を引き連れて、己が強者になったところでKCは相手をやっつけるという戦略を採用しています。


NYMとKCの対決はスタータを比較すればNYMが有利であり、ブルペンを比較すればKCが有利ですが、2015WS最大のポイントは強力なスターターによって前半でNYMはリードしそのまま後半戦へなだれ込み決着をつけるのか、前半をなんとかしのぎ後半戦ブルペン勝負でKCが僅差をものにするのか、そこが大きなポイントとなるに違いありません。前半と後半で力関係が変わってくるという戦いの特徴こそ2015のワールドシリーズです。前半の強者はNYM、後半の強者はKC。いずれにしてもキーポイントは前半と後半を繋ぐ継投です。敢えてNYMはコロンの使い方、KCはマドソンの使い方をシリーズの注目ポイントとして挙げておきます。


昨日はKCにしてもTORにしても8回裏から9回表の1点を争う攻防において機動力を前面に出した戦い方しました。紛れもなくスモールベースボールそのものでした。両チームとも理屈ではなく本能でそうし機動力を前面に押し出した戦いをしているのでしょうが、戦略的に見ても全く正しい戦い方です。単なる強打でじっと戦局見守っているシーンではありません。ギャンブルを効かせて、機動力で相手を揺さぶるスモールな戦い方こそ是になります。


更に言えば2015ワールドシリーズにおいて最大のピンチを守備力が救い、試合の大きな流れを変えることもあるかもしれません。ディフェンスで相手を攻めるという発想もスモールにはあります。終盤の息が詰まる攻防においてKCは相手の守備のミスでチャンスを得ることはあっても、メジャー最高の守備力を誇るKCがエラーで相手に塩を送るような展開はこれまでありませんでした。大ピンチにおいて昨年のALCSやALDSでは再三のファインプレーによって勝ち越しとなる失点を防ぎまくってきたのがKCの戦い方でしたが、それが再現されるのかどうか。 

KCを見ていると短期決戦においてはこうした鉄壁の守備力と機動力に優れた野球が機能することがよくわかります。2年連続でKCがワールドシリーズに進出できるにはそれなりの理由があるはずです。たしかに運にも恵まれているが、それを勝利に確実に結びつけるKCの緻密な野球がそこにはあります。短期決戦では投手優位の戦い方に必然的になります。スターターで圧倒するNYMか、それとも相対強者でもありスモール全開のKCか。最後は監督の勝負師としての運にも大きく左右されるものなのかもしれません。勝負をかけなければいけいない時が必ず来る。その時、勝利の女神ニケ<NIKE>は果たしてどちらに微笑むのか。例えばペナントでは誤審の運不運もある程度相殺されてきます。しかし短期決戦ではそのもっとも大事な場面の誤審があった場合、次はないというところに勝負の大きな綾があります。



短期決戦においては監督の言葉が貴重な戦力となる!

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10 /23 2015


戦略的な思考をもってすれば(ペナント・イニング序盤・大量得点差・打者の時代・ヒッターズパーク)という条件が重なれば重なる程、目先の1点に目を奪われることなく<長期的な確率論>を重視し、(短期決戦・イニング終盤・接戦・投手の時代・ヒッチャーズパーク)という条件が重なれば重なる程<目先の1点を取る確率論>を大事にすることが、一般的な戦いのあり方です。


戦略的な正しさとはTPOによって変化するということに尽きるわけですが、例えば戦いの場所がHRが乱れ飛んだヒッターズパークのリグリー・フィールドになった途端、マドンもコリンズも、あまりリスキーな戦術となる盗塁を仕掛けることはしないだろうと試合前の会見で言いました。なるほどもっともだと思って言葉を受け取った矢先、その言葉の裏をかくように、すかさずNYMは盗塁を仕掛けました。これぞ奇襲です。セオリーの裏をつくところにこそ奇襲の極意があります。ちょうどヨーストがTORへ内角を攻めると言って、外角一辺倒で初戦、ボルケズが見事なピッチングをしたように、こうした高等な言葉による駆け引きが短期決戦では度々繰り広げられることがあります。


魔術師と言われた名将三原もまた言葉の魔術を使って、好敵手でありこれまた名将でもあった水原や西本の心理をかく乱し伝説の戦いを制しました。話は逸れますが私が見る限り三原修こそプロ野球の史上最高の監督です。MLB史上においてはビルベックという存在に惹きつけられましたが、NPB史上ではこの三原修に時代を超越した巨大な力を感じます。

短期決戦ではこのように会見の言葉をも戦力にしてしまう強かさを持つ監督が最終的に勝つ可能性が高くなります。セイバーメトリクスでは言葉の力まで数値化はできません。しかし時に野村監督が日本シリーズにてインコース攻めをアピールすることによって全盛期のイチロー封じをしたように、短期決戦では監督の言葉も時に貴重な戦力となることがある。それだけ短期決戦は戦いの多様なエッセンスが凝縮される舞台でもあるということですね。



2016LADの戦略的課題をセイバーメトリクス分析する 攻撃編

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10 /23 2015
LAD HRリーグ1位 OBPリーグ2位 OPSリーグ2位。にもかからわず、なぜ得点はリーグ8位に留まっているのか?


このギャップをある程度明らかにしてゆく必要があります。いわゆる<拙攻>というキーワードによってLADの戦略的課題は括られると言ってもいいですが、これよりざっくりとしたセイバーメトリクス分析をします。LOB率が異様に高いということであり不運であったという要素もなくはないでしょうが、例えば単純にOBPは高くランナーは数多く出るがダブルプレーで再三チャンスを潰すLADの体質が容易に想像できるわけです。ダブルプレーの数リーグ3位です。ダブルプレーによって多くのチャンスを潰してきたことがわかります。3回裏1死13塁でもふつうに下位打者が強打でゲッツーで苦しんでいたデグロムを助けたシーンなど2015LADの象徴でした。

またこんな仮説も考えられます。個々の選手が点となってしまい自分勝手に打撃を行っているだけで、組織として投手を攻略しようとする意識がLADには希薄であるという仮説です。自分がテーブルセッターなのか、それともクリンナップなのか、チームとして打線が機能するにはそれぞれの個性に合わせた役割が必ずあります。組織で投手を攻略するとはそれぞれの選手のストロングポイントを生かしつつ、ある選手には自己犠牲も強いながら<チームとして如何に得点という結果をたたき出してゆくのか>という部分について、果たして意識統一が取れているのかということです。単に個々の選手が強くボールをミートすることに終始してはいないだろうか。


先日ALCSで青木が解説で無死2塁で右方向への進塁打について問われて「進塁打よりもメジャーでは強く打つことを求められる、二塁打に大きな価値を見出している」とのことでした。なるほどよく耳にする話の類ではあるのですが、短期決戦ともなれば3番のコレアでさえ何度も右方向へ進塁打を意識して打っていたように、青木の言っていることはペナント時には当てはまりますが、状況が違えば話は時に全く変わってきます。点差やイニングの状況もわきまえず、度々、自分勝手なベースランニングで青木はボウチーをがっかりさせてきましたが、青木のシーズン中のインタビューを聞いていても、ボウチーとの認識のズレは大きいものであるように感じました。ボウチーの野球には青木のようなテーブルセッターにはもちろんヒットになれば最高ですが、その愚形として進塁打を求めているものです。LADは状況判断力に劣る選手によって打線が構成されている可能性があります。

(小宮山のように教授の如き風貌をしていても、中身とギャップのある解説者もいるように、青木もイメージとしては俊足好打の選手ではあり抜け目なさそうではあるのですが、試合後の青木の言葉を聞いているとボウチーの考えについていけていないという感じが度々あります。案外ボーっとしてそうな石井の方が遥かに小宮山よりも確かな見識があったりするわけで、イメージによるレッテルは禁物です。)

例えばOBPやOPSがリーグ2位であるにもかかわらず、なぜ犠飛はリーグ最下位レベルなのだろうかという疑問もあります。それだけ塁を賑わせ、長打力もある打線で犠飛がリーグ14位であるということは、状況に合わせたバッティングができていない証拠なのではないか。
あるいはLADにはベースランニングへの意識にも問題があります。アルティメット・ベースランニングuBRという指標を見ると見事にリーグ最下位でした。アルティメット・ベースランニングuBRでは例えば1塁にいたランナーがシングルヒットで2塁にストップか3塁へ進塁したかで、そのベースランニングの能力の優劣を判定する指標です。こうした明らかなベースランニングに対する弱点もLADにはあります。
もう少し具体的にまとめると

●無死もしくは1死でランナー3塁にいた時、チームとしてアプローチの方法も含めて課題を絞り込み明確化する必要があります。ランナー3塁にいた時のデータを総ざらいするとともに、ウィークポイントを明らかにすべきです。どういう選手がランナーをなかなか帰せないのかという特定も大事になります。例えば犠飛が確率的に難しい打者ということであれば、打者のタイプによって犠飛の確率を高めるべく打つ技術を求めてゆくか、あるいは叩きつけるバッティングを身につけるか、あるいはプッシュバントの練習もしてもいいでしょうし、何らかの改善策を打ち出すべきです。
●無死もしくは1死で1塁にランナーがいた時、戦術でも単純に強打が多いためか、ゲッツーというケースが多すぎるわけですが、試合状況によってはエンドランや犠打 進塁打への意識をもう少し入れる必要があるのではないのか。もちろん強打が悪いと言っているのではありません。クリンナップには基本強打でいいわけですが、あれだけHRを連発していた強打者モラレスへエンドランを指示したKCのように工夫の仕様はあります。
●チーム全体としての判断力を中心としたベースランニングへの意識をもっと高める必要もあります。単に走力だけでなく、判断力の指針となるソフトに問題があるのかもしれません。


LADの拙攻を改善するには、個々の攻撃力ある選手を組織として機能させる工夫をしつつ、状況に応じた各人の役割分担をはっきりさせるとともに、攻撃のバリエーションを増やし、チーム全体として走塁への意識が高めてゆけば2015のような燃費の悪さも克服できるのではないでしょうか。キーワードは状況判断力、組織として機能性、細やかな戦術ということになるでしょう。ずばり黄金期の西武の野球を見習えということになります。インタビューすれば明らかになりますが、イチローが過去すべてのキャリアで接してきて最も脅威に感じたのは間違いなく黄金期の西武の野球です。その森西武が見習ったベースボールの原型はすべてドジャース戦法にあったわけです。


近年のLADは金満ゆえにいい選手を揃えているため攻撃力は高いが、反面大味なベースボールになり組織性や繊細さ・スピード感に欠けていると言ってもいいでしょう。短期決戦にこそスモールが活きるシーンはあります。あの調子の悪かったデグロムを攻略できなかった試合にこそLADの2015が集約されているのかもしれません。

参考記事

野村IDの源流には「カージナル・ウェイ(カージナルス流)」がある



単なる一ファン目線の感想レベル 小宮山の解説力

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10 /20 2015
自分が勝ち進むと予想したチームサイドに立ってのみ恣意的に解説を加える小宮山の応援感想スタイルもなかなか味があります。

第二戦、KCが7回、2点を追う無死13塁でのモラレスと1塁ランナーでのヒットエンドラン。ヨーストの采配におけるファインプレーによって勝ちを引き寄せた重要なポイントでした。田口ならモラレスにヒットエンドランをあそこでかける意義について解説を必ず加えていました。足の遅いモラレスがゲッツーになることを防ぎ、ふつうに打たせても浅い外野フライなら犠飛にすらならないが、センター方向へのゴロならば確実にサードランナーはホームに帰り、かつ1点差でホズマーをスコアリングポジションへ送れるということで、モラレス空振りのリスクを犯してでも勝負に出たヨーストの采配は素晴らしいものでした。もちろんモラレスのゴロがベースカバーに入ったセカンドの逆をつきシングルヒットになれば、1点差で無死13塁と逆転までも見据えた作戦であったわけです。

しかしゴーインズが判断ミスをしあそこでゲッツーが取れなかったのが敗因と、小宮山が応援するTORサイドに立った解説を展開。ところが実はトロウィツキーがゴロを取ってセカンドにボールをトスしても完全にタイミングはセーフでした。ホズマーがセーフになったのもKCがふだんからそうした狙いをもってペナントからスモールな野球を展開していたからであり、モラレスが懸命にコンタクトし強引に上からボールを叩き打球を転がそうしていた点や(ふつうに打てばフライになるようなボールでした)モラレスが空振りした時や強いショートゴロになってもホズマーはセーフになるようなスタートを切っていた点などKCのスモールの質にこそ田口ならフォーカスをしていたのではないのか。


あるいは昨日もCHCのファウラーが気候が寒かったから前進守備を敷いていたために、ディビット・ライトの当たりが抜けたのが敗因になったとの解説。単にNL2015サイヤング最有力投手アリエッタがマウンドに立っており、ライトの調子も悪く、右対右ということで後ろに飛ばされる確率はかなり低いと判断し、ヒットゾーンを狭めるつもりでファウラーが前進守備を敷いていたのではなかったのか。例えば投手が平均的な左投手であり、ライトも調子良ければ、ファウラーは当然守備位置を深めに変えるはずです。「寒いから前進守備」に果たしてどれだけの視聴者が納得したのだろうか。結果論で語るのは解説者は絶対にやってはいけないことです。この自覚が少なくとも田口と石井にははっきりあります。そういう意味で解説力としては田口、石井の方が間違いなく上です。

もはや解説ではなく、チームを応援している一ファンが勝ち負けに一喜一憂する感想レベルに過ぎないのではないか。一般視聴者のレベルを深津さんに小宮山は設定しているのだろうか。ちなみにこの記事全体は トーンとして笑いながら書いています。



アトリーこそがNYMをひとつにまとめた最大の功労者である

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10 /19 2015
「LADはプィーグを放出するべきである」という記事の骨子は、短期決戦におけるチームケミストリーの重要性にあります。大一番の戦いに際して如何にチームが結束できるのかという点は、ベースボールがメンタルなスポーツでもある以上、決して軽視してはならないポイントとなっています。孫子という軍事家も<人の和>の重要性を説いている。

現在のNYMの強さは強力な投手陣が揃っていることや投打のバランスなど戦力の充実もありますが、見過ごせないひとつがテハダ欠場によるチームの団結力にあります。単に勝つという目標だけでなく、テハダのためにも結果を出すという強い意気込みがチーム全体に漲っていることは想像に難くありません。そしてLADに足らざるものとはまさに、このチームの団結力にあります。大一番でイーシアと監督のもめるとは、必ずそこに至るまでの過程があるということであり、それだけチームが団結していないことの証明ともなっている。

ベースボールとは数のスポーツではあり統計学からアプローチすることも大事です。しかしセイバーメトリクスというキメの粗い網でもっては掬いきれない戦いの重要な要素は数多くあります。
メンタルの強さ 経験 団結力 組織力 運の強さ 直感に基づく洞察力 戦術としての奇襲の威力 


こうした数字にはなかなか表れない<無形の力>へも焦点を当てながら、包括的に「戦いの原理」に対してアプローチしてゆく必要がある。むしろセイバーメトリクスによって数字でさまざまなものがよりクリアで明らかになればなるほど、これからは数字では表現できないものに対しても、正しい戦略的アプローチをしているチームが今後のMLBをリードしてゆくようになります。STLなどはその代表的なチームであると言ってもいいでしょう。これは歴史の必然です。だから歴史を正しく学ぶならデジタルなセイバーについて学べば学ぶほど、数では表現できないアナログなものへより積極的な関心を寄せていかなくては本当は嘘です。

過去は偉大なる智慧の箱。 統計学は偉大なる智慧の力。

セイバーメトリクスに偏り、スモールを単純に否定してはならない。その偏った誤りについてこれからも数々の記事によって明らかにしてゆくつもりです。数では表現できないアナログなものの中には、オールドスクールが大事としてきたものがザクザクと宝の山のようにある。だからその宝物を現代においてセイバーメトリクスと整合させながら、より戦略性の高いものとして蘇らせようとすること。それが「MLB 戦いの原理を求めて」というブログを立ち上げた目的でもあります。

セイバーメトリクスについての理解が深まれば深まるほど、オールドスクールに対して一定の敬意を示すようでなければ本物ではない。そんなポリシーを個人的にはずっと持ち続けています。

参考記事

なぜOAKはプレーオフで勝てないのか?

LAD新社長フリードマンのゴードンを放出した戦略とその誤算


大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。