アストロズの強さの秘密 その戦略をセイバーメトリクス分析する 防御編

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05 /17 2015



アストロズの15日 現在得失点差+21、一点差ゲーム 10勝2敗、延長戦 3勝0敗

セイバーメトリクスの分析をするにあたってまずは定石どおり得失点差を見ると、投打のバランスが非常にいいことがわかります。しかしながら圧倒的な戦力があるというわけでもなくピタゴラス勝率21勝16敗が本来想定される勝敗に対して、HOUの現在24勝13敗という成績になっています。強力なブルペンを背景に試合巧者であると見なすことも可能ですし、運にも恵まれていると見ることも可能です。おそらくはそのどちらの要素も含んだ結果になっているものと思われます。


では 早速、防御編ということでHOUの投手力からセイバーメトリクス分析をします。

まず最初に私が目についたのはBB/9がリーグ1位であるという点です。無駄な四球出さないという方針なのでしょうが、ふっと瞬間的に気になったのでチームの平均球速を調べてみました。するとメジャーで唯一90マイルを切るHOUは最低の球速でした。パワーに頼ることなく、制球を重視し無駄なBBを出さない・・・つまりストライクゾーンへボールを集めて勝負を仕掛け 打たせて取るという意図がそこから読み取れます。


さらに インフィールドに飛ばされた相手の打球の質を分析すると、この打球の質には大きな特徴があり既にBSでも放送していたようにGB率がリーグ1位の50パーセントを超えるというものでした。このGBの量産ぶりは凄まじいものがあります。打球がグラウンドボールGBであればHRの心配がなく長打をくらう確率がぐっと減ってくることは容易に想像がつくわけですが、もしもこのGBについてHOUが優れた守備力を有するか あるいは セイバーメトリクスに基づく<守備シフト>が真に機能すれば、アウトを量産できるわけです。


そこでHOUの守備力を調べると、リーグ1位は想像通り圧倒的な守備力を誇るKCであり+37ですが、HOUも+13リーグ4位という成績であり優れた守備力を持っていることがわかります。参考までに投手BABIPについて見ても272という低さであり、リーグ平均のBABIP296を大きく下回る結果となっています。


つまり、守備についたHOUに対して敵がグラウンドへ打球を飛ばしても、なかなかヒットにならないことをこれらのデータは示しています


もちろん巷間散々言われているように リーグ屈指のブルペン陣の活躍は言うに及びません。ブルペンの力が試合の後半を壊さずに、1点差で逃げ切る、あるいは延長戦を制するという好循環をつくり上げていることは今更 ここで指摘するまでもないことです


投手の時代が到来して以降、ブルペンの重要性が10年前よりも、より大きな価値を持つようになっています。


ひとつ明らかになっていることは、HOUにはリーグ1位というスタッツが数多く散見されるということであり、どうやらこの数字の裏にはチーム全体としての方針、戦略が隠されていると見る方が妥当であろうということです。偶然にリーグ1位やリーグ最下位のスタッツがゴロゴロ並ぶとは考えにくい。


HOUのGMがあの戦略家ルーノウであればこそ、そう考えるのが自然です。


もしHOUは意図的に球速を抑え制球を重視しつつBBを低く抑えるとともに、ストライクゾーンで勝負をし掛けつつもGBをシンカー等で数多く打たせ、インフィールドに飛んだ打球をセイバーメトリクスに基づく<守備シフト>及び優れた<守備力>で数多くアウトを生産するという戦略を描いているとしたら・・・


次回は 攻撃力の分析を行います。実は防御において用いている戦略と全く180度ひっくり返したようなHOUの攻撃戦略がそこにはあることがわかってきました。まさに防御と攻撃はコインの表と裏であり、攻撃と防御を合わせてひとつといったHOUの巧妙な戦略がそこにはあります。


ちなみに、なぜHOUのセイバー分析をすると言いつつも、カージナルウェイ、スモールベースボールの話を伏線として前出したのかというと、実はこのHOUの戦略を取り仕切っているルーノウGMこそが、まさに強力なマイナー組織を基礎にして、現代の強豪として確固たる地位を築いたSTLの元辣腕GMであったからです。話はやがてSTLまで及ぶことになるかもしれません。


もう少しだけ話はつづきます。


野村IDの源流には「カージナル・ウェイ(カージナルス流)」がある 

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05 /16 2015

スモールベースボールというと、どうせ時代遅れの日本の高校野球だろう的に高をくくられていた時代、5年前にこの記事の大本は書いたものです。(一部加筆修正)実際、「マネーボール」いう枠を通しベースボールを眺めることを持って、時代の先端に躍り出たかのような錯覚をしている人たちが数多く存在していた時代でした。


その時スモールベースボールの歴史を俯瞰できるようにコンパクトにまとめた記事です。


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古くは1900年以前のジョン・マグローに起源を持つスモールベースボールですが、それらが成熟し、1950年から1960年ころドジャースがスモールベースボールを駆使し強いチームを作り優勝したのが歴史的なひとつの大きな節目となっています。いわゆる<ドジャース戦法>と言われるもので、このドジャース戦法を輸入しV9を達成したのが日本のプロ野球史上最高の監督とも言われる川上哲治でした。


近代プロ野球の父とも言える野村克也は当時、最先端をいっていた川上野球を大変リスペクトしその強さの秘密を研究していたわけですが、こうした中、野村に決定的に大きな影響を与えたのが1960年代後半に南海に入団したドン・ブレイザーでした。


この野村にカルチャーショックを与えたドン・ブレイザーこそはオールスターにも選出されたこともある元セントルイス・カージナルスの名二塁手であったのです。現代においてセイバーメトリクスが時代の先端であるように、1950年代の後半のNLでは「ドジャース戦法」こそがまさに時代の最先端であり、ブルックリン・ドジャースと凌ぎを削って戦っていた、セントルイス・カーディナルスも当然のように、このシンキングベースボールを取り入れて戦っていました。


歴史を俯瞰すれば、現在の「カージナル・ウェイ(カージナルス流)」の始まりも、大きな意味においてドン・ブレイザーがバリバリの現役であった1950年代後半において隆盛を極めた「ドジャース戦法」スモール・ベースボールに求められると言ってもいいです。


「チームを勝つために時には自己犠牲の精神も求め、個々の選手を攻守にわたって己の役割を全うし組織的な動きをもって良しとし同時に、シンキングすることによって状況判断力を高め、勝負強さを発揮する、いわゆるチームとしての意識が統一された緻密な全員野球」


こうしたシンキングベースボールの<レシピ>は、セントルイス・カージナルスの長い歴史と伝統の中で、味わい深いワインのように熟成され、過去の栄光と挫折の中より汲み上げられたその洗練されたノウハウは、今やSTLのメジャーからマイナーの最下層に至るまで隅々まで行き渡り、現代のSTLを強豪まで押し上げることになる「カージナル・ウェイ(カージナルス流)」として確立されていきます。


結局、野村克也という人の野球観に大きな影響を与えたものをさまざまな文献を読む限り、そのルーツを辿るならばドジャース戦法(スモールベースボール)ドンブレイザー(シンキングベースボール)、そして投手の癖を見抜いて球種を洞察するテッドウィリアムズの打撃理論、以上3点です。


野村IDの原点はすべてメジャーリーグにそのルーツがあります。


さて、この知将とも言われる野村克也とどこか似通ったものを感じさせる、抜け目のない野球を志向するメジャーリーグの監督にエンジェルスのマイク・ソーシアがいます。このマイク・ソーシアこそは、元ドジャースの名キャッチであり、スモール・ベースボールにおける歴史的継承者でもあります。彼こそは現役の時に徹底的にドジャース戦法を叩き込まれていた選手だったわけです。そのスモール・ベースボールのエッセンスがソーシアが指揮する現在のエンジェルスの野球の原点にあります。


更にこのマイク・ソーシアには門下生が現在3人います。


最も有名なのは元レイズのジョー・マドン監督です。レイズというチームもセイバーメトリクスとスモールボールを自在に組み合わせて、メジャー最難関のアリーグ東を何度も制覇しています。

あるいはソーシア門下生の元パドレスのバド・ブラック監督もスモール・ベースボールを駆使しています。ペトコという最大のピッチャーズパークを本拠地にしており 守備力と機動力を前面に出した戦いをしています。最優秀監督賞を受賞しました。

更にもう一人ソーシアの薫陶を受けたのがプレーオフにも進出した元ブルワーズの ロン・ローニック監督です。青木とブラウンのダブルスティールをノーアウトからしかけるなど、スモールなベースボールを得意とする監督です。

以上この3人の監督はソーシア門下生としても有名です。


他にもライアン社長自らがスモール・ベースボールへの原点回帰をスローガンとして掲げたようにテキサス・レンジャーズが挙げられます。チーム全体として極めてベースランニングの能力が高くスモールベースボールが骨の髄まで行き渡っているロン・ワシントン監督は奇襲も随所にみせてきます。このチームを派手な攻撃力に目を奪われて単なるビックボールと勘違いしているとしたら大きな間違いであって、スピードとパワーのコンボで、打者対投手という1対1の構図から投手を組織によって攻略しにかかってくるところにTEX打線の本質的な凄みがあります。

無論、セントルイス・カーディナルスを長年率いたトニー・ラルーサもスモール・ベースボールを駆使することで有名な監督です。もちろんデトロイトのような守備や機動力を多少目を瞑っても、派手な攻撃力によって勝ち抜こうというビックボールを採用しているチームもあります。 他にも元ドジャースの英雄カーク・ギブソン監督が指揮するダイヤモンド・バックスなどもスモールな要素は入っているチームであると言えるます。

他数えれば、想像する以上にメジャーでもパワーと同時にスモールなキメの細かい野球を志向しているチームは数多くあります。もしもメジャー=ビックボールという思い込みがあるとすれば、それは完全な固定概念でありビックとスモールをチーム事情によって適宜組み合わせながら、それぞれのチームカラーとして打ち出しているというのが実情です。

このように時代の影響を受けながら、スモール・ベースボールはMLBの歴史の中を連綿と生きながらえて今日に至っています。


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当時においてはまともにスモールベースボールの歴史も知らず、無暗にセイバーメトリクスを礼讃していた人たちというのがそこそこの比率でいました。そういう意味ではスモールへの知識や理解度はひとつのリトマス試験紙のような役割を果たしてくれました。

メジャーの歴史を俯瞰すると打者の時代が来た後は必ず投手の時代が来るように、ビックボールの時代の次には必ずスモールな時代が訪れます。これはひとつの歴史の法則です。

わずか数年前のことです。 今流行しているものだけを追いかけても、いずれそれもまた「過去の知性」となります。

過去に対して目を閉じる者は、未来に対して盲目である。



LAD新社長フリードマンのゴードンを放出した戦略とその誤算  

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05 /14 2015
昨年の年末に「LAD フリードマンの真の狙いとは?」という記事を他で書いたことがあります。まずはフリードマンが昨年末に大胆なチーム改革を断行したその思惑から迫りたいと思います。


そして半年経った現在について、最後にレビューをします。

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2014ウィンターミーティングの主人公であったLAD新社長のフリードマンの真の目的がPO進出にあるのではなく

POを如何に勝ち抜くのか?

ここに焦点が合っているのは間違いありません。まずそのために 特に短期決戦において大事とされる<チームケミストリー>を改善するために ハンリーとケンプを外したわけです。

では ゴードンを外した理由とは何か?

短期決戦では マラソンではなく短距離走でもあり、先発の3番手までが基本 MAXに近いモードでギアを一段上げて戦うわけであり、シークレットソースなどを紐解くまでもなく ペナントに比べて得点攻撃力と失点防御力を比較した際、より大事なファクターは<防御力>です。

ピタゴラス勝率というものがあり例えば得失点差+150以上もあればおそらくPOには進出できます。現有戦力でもLADはおそらくクリアできますが、仮に得失点差が+150であっても

チームA 得点+800 失点-650
チームB 得点+750 失点-600

であればどちらもPOには出る可能性が極めて高いが、POに出たとき強さを発揮する可能性が高いのはチームBであることが統計的にも明らかになっている。そうシークレットソースでは言っています。

短期決戦では 運の影響が大きい・・・たしかにそうです。短期決戦の鍵ともなる<防御力>において投手BABIPの影響を相応に受ける。ここで実力によって 投手BABIPの悪影響を戦う前において如何に排除するのかという課題が立ち上がってきます。 戦略家とは戦う前にある意味 勝負にけりをつけている人のことであるとすれば、可能な限りBABIPの悪影響を排除するには

●投手の奪三振力を高めて そもそもインフィールドに打球を飛ばさないか
●守備力を高めて 完全なヒット性の当たりもアウトにしてしまう陣容を揃えるか



この2点に尽きます。それはセイバーメトリクスを報じる 戦略家なら間違いなく考えることです。そう考えると夏に行ったビーンのブロックバスターの動きもある程度わかります。奪三振率の高いサマージャとレスターを獲得し、肩は強いが守備範囲は狭かったセスペデスを放出し、守備範囲の広い フルドを外野へ補強しました。ビーンが<防御力>重視へシフトしていったことがここからも明らかです。短期決戦に備えて 戦略的な動きをしていたということです。

そして 今回LADが放出した 2014 ゴードン -4 ハンリー -9 ケンプ -23 DRS

この3人に共通しているのは キャリアを通じて安定して 守備指標がマイナスであるということです。この3年間すべてマイナスです。たとえ 打撃がダウングレードしても ペナントではなくPOを勝ち抜くために 守備力の劣るチームワーストの3人をフリードマンは外したかった


INした選手

セカンド ケンドリック +7
ショート ロリンズ +4

もう狙いは明らかであり、すべてはPOを勝ち抜くためです。

<ケミストリー改善及び守備力の強化>

ここにフリードマンの戦略眼はフォーカスされていたことがわかります。


(この記事を書いてから数ヶ月後、実際 スラッガーという雑誌のLADデプスチャートでは気持ちのいいくらい、ほぼ全ポジションのDRSの値が+で埋め尽くされていました。)

2014のWSを見ていても KCの驚異的な守備力が如何に短期決戦で大事か それをフリードマンは確信したはずです。

ゴードンの放出劇を単に一選手だけを見てもよくはわかりません。TOPのチーム戦略、その全体の構想の中でそのトレードがどういう意味を持つのかを捉えてゆくことが大事になるはずです。

短期決戦で大事とされる 3大要素

シークレットソース

奪三振力の優れた投手を揃えている
守備力がいい
ブルペンが強固である

POで強さを誇ったKCは見事この3大要素 揃えていました。


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ここまでが半年前に書いた記事です。


ところで、先日ゴードンの守備をNHKの映像で実際に見て非常に守備範囲が広いということに驚き、気になって2BのDRSを調べてみると・・・、2015MLB全体で最高の値を示していたセカンドこそが、他ならぬゴードンでありました。

現在打撃でブレークしているゴードンですが、いずれこの大当たりについては収束してゆくでしょうし、セイバーメトリクス的にも大げさに捉えるべきでもないでしょう。(BABIPは400中盤とは言え、そうは言ってもそれなりの本物感がゴードンの細かい各指標を見ると漂っており単に運だけでもありません)しかしこの守備力の指標を見たフリードマンが今頃どう思っているのか?一度聞いてみたいところです。



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大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。