ダルビッシュ大乱調、その要因をセイバーメトリクスする!復活の鍵はピッチングデータデザイン革命にあり

セイバーメトリクス
04 /01 2019

復活が期待された2019年最初のマウンドで四球連発による大乱調によってキャリア最短でのKOされたダルビッシュ。その要因はどこにあるかをセイバーメトリクスによって検証いきます。

まず3つの試合のスライダーの切れについて、数値化したものを示します。

2013/4/1 のスライダー 対HOU戦
ダルビッシュが完全未遂をした試合、キャリアハイを記録した最もサイヤングに近づいた年
平均84.3マイル 水平方向の変化 8.53 垂直方向の変化 -0.83

2017/10/17のスライダー 対CHC戦
NLCSで支配的な投球を繰り広げ、CHCがダルビッシュ獲得に乗り出す大きな契機となった試合
平均83.6マイル 水平方向の変化 9.06 垂直方向の変化 1.64

2019/3/30のスライダー 対TEX戦
キャリア最悪の試合
平均83.8マイル 水平方向の変化 5.69 垂直方向の変化 2.11

2013年のスライダーは横の変化も大きいですが際立っているのが縦に鋭く落ちるのが大きな特徴になっていました。スライダーの多くの空振りはイメージとしてはバットの下をボールが通過していた感じになります。対して2017年のスライダーは横に大きく鋭角に曲がる特徴があり、ボールがバッドの先端を通過するイメージで空振りを奪っていました。

平均の球速は誤差の範囲であり、マウンドからベースまでの距離は一定である以上、2019年のスライダーの切れが数段落ちていることがセイバーメトリクスのpitch F/Xによって明らかになっているわけです。いわゆる曲がりも落ちもしないスライダー。

ダルビッシュは試合後、そこまでボールにばらつきがあったわけではないと語っていたように、2012年のデビューした試合のようにボールがどこへ行くのかわからないという状況ではありませんでした。しかしなぜ四球を連発したのか。その一つの要因として、ウィニングショットで使った「切れないスライダー」をバッターはギリギリ見切ることが可能であったために、結果、これまでのスライダーならば三振だったものが四球になってしまったケースがいくつかあったのではないかということなのです。

初回の3番アンドラスへの追い込んでからのアウトコースギリギリのスライダーを見てください。なぜあそこまで際どいスライダーが見送られているのでしょうか。手が出なかったのではなく、アンドラスは見切っていました。

ここで スライダーのOswing率を眺めてみます。どれくらいスライダーのボールゾーンにバッターが手を出したのかという率です。

2012 42.8
2013 42.4
2014 48.7
2016 48.9
2017 37.6
2018 36.2
2019 21.1

明らかにボールの切れが悪くなるにつれて、ボールゾーンのスライダーには手を出さなくなっていることがわかります。

実際にスライダーのピッチバリューの数値を経年で比較しても

2012 11.8
2013 27.5
2014 8.5
2016 7.4
2017 12.8
2018 -1.0
2019 -0.9

2013年の27.5という数値はメジャー全体でスライダーではぶっちぎりの1位。メジャー全球種でもカーショウの4シーム、ハメルズのチェンジアップについで3位の数値であり、このスライダーの切れこそがダルビッシュという投手の生命線であると言ってもセイバーメトリクス的には過言ではありません。

結論

ダルビッシュの復活はスライダーの切れを取り戻す以外に道はない。これがすべての鍵であると言ってもいい。スライダーこそがダルビッシュをメジャーにおいても一流足らしめていた最大の武器であったことをセイバーメトリクスは雄弁に語っている。

優れたフィジカルに対して研究を費やすのも悪くはありません。良いボールを投げるにはまずフィジカルをしっかりさせる。更にはメカニクスを整えて、最終的に確かなアウトプットをたたき出すという順序に従って素晴らしいスライダーに辿り着くというこれまでのスタイルがあります。しかしもう一つの示唆に富んだ一つの方向性としては投手にデータ革命の先鞭をつけたCLEのバウアーのように如何に優れたスライダーを再現できるかという目的ありきの出口戦略も一考に値するのではないでしょうか。

アウトプットである良いスライダーを投げることだけにタスクをフォーカスし、まず一番最初に取り組むべきはボールのスピン量や回転軸の角度に至るまでデータの観点からあるべきアウトプットを徹底して追求する、そのアウトプットを生み出すにはどういう投球のメカニクスが必要なのか。そしてそのメカニクスを実現するにはどういうフィジカルな必要になるのか、という逆転の発想、スタイルです。

入口から出口へというアプローチだけでなく、出口から入口へのアプローチも同時並行して行うことがこれからのトレンドになるはずです。

アナログな時代においては優れたコーチはいい時のフォームを覚えていて、調子が悪くなったとき的確にアドバイスできるとも言います。しかしデータ革命が起きた今では動作解析からボールのスピン量や回転軸の角度に至るまで、調子の良かった時と悪しき現状の差をデータが明らかにする。コーチングも本格的にアナログからデジタルへ時代は移り変わっていきます。

良いフィジカル(筋肉)こそが良いパフォーマンスを生むというプロダクトアウト的なこれまでの考えを一度白紙に戻し、まずは打者を圧倒する良いスライダーをデータ革命によって徹底追求する。そのために的確なメカニクスはどうあるべきかをデータ解析から求めると同時に必要な最良のフィジカルを作るというマーケットイン的な斬新な発想の転換がダルビッシュには求められているのかもしれません。

かつてデータについても否定的であったバーランダーが今ではデータ革命についても肯定的であり、なぜHOUに移籍して復活をしたのでしょうか。ほんとうに松脂を使ったから4シームの切れが上がったのでしょうか。4シームも回転軸がより水平になるだけでも、強烈なバックスピンがかかるようになります。その詳細を明らかにするのがバーランダーをも唸らせたデータ革命でもあります。

昨年HOUのコールの4シームを見たファーストインプレッション、当ブログでは劇的に質が向上しているとツィートしました。その後、コールの4シームはPIT時代に比べて200回転多くなっていることが明らかになったそうです。5ちゃんで言われるようなコールもまた松脂によって4シームの質が向上したのかどうか、今一度冷静になって考えるべきだと当ブログでは考えています。

復活の鍵はピッチングデータデザイン革命にあり






 

菊池雄星、メジャー左スターター91.5マイル以上を投げる27歳以下はわずか9人しかいないというボラスの罠

セイバーメトリクス
01 /07 2019


スコット・ボラスは「菊池雄星、メジャー左スターター、91.5マイル以上を投げる27歳以下はわずか8人しかいない希少な存在である」ことをセールスポイントとして売り込みをしていたようです。

この数字を眺めてどう思われたでしょうか。菊池はメジャーでも速い投手に属すると思われた方がいても決しておかしくはありません。しかし率直に個人的なファーストインプレッションを申し上げるならば、ここには実に狡猾な数字のトリックがあるのではないかというものでした。

そこでこれから、調べた事実だけを淡々と列挙していきます。

まず、メジャー全体でも120回を到達している27歳の投手は全部で47人です。その中で左投手の割合は30パーセントであり、14名でした。


スネル 96.5
レイ   94.1
マッツ  94.0
ロドリゲス 93.7
ニューカム  93.4
ロンドーン  93.1
スアレス  92.5
ヒーニー 92.5

菊池 91.5

菊池は14名中9番目のスピードあり、実はメジャーの中で遅い部類に属することがわかります。

実際メジャー全体の27歳以下のスターター平均球速を調べると 93.8マイル。ブルペンの平均球速に至っては 94.8マイル。91.5マイルという数字の持つ菊池の現状が客観的にも明らかになってきたのではないでしょうか。

結論

データの切り取り方次第で、商品の魅力を最大限に引き出そうとするボラスの魔術に嵌らないだけのリテラシーがなければ、その認識はマスメディア(ライター)のレベルを超えることもできない

数字に対する感覚を研ぎ澄ますことが、セイバーメトリクスの分析の第一歩でもある。

大谷レベルのファーストボールを投げるスターターはメジャーにゴロゴロいるという説を日本ハム時代に当ブログが一蹴したのも同様であり、可能な限り数字を根拠にして雰囲気でモノを語ってはならない。2018年大谷レベルの球速を持ったスターターはメジャーでも片手で足りるものであり、数人レベルであったことがデータでも明らかになっている。





 

セイバーメトリクス講座  アンドゥハーの貢献度について  WAR       

セイバーメトリクス
11 /15 2018


代替可能レベルの選手でチームを構成した場合には162試合のシーズンで勝率.320、52勝が期待出来る。つまり投打共にチームの総合WARがちょうど0.0だった時、そのチームは理論上52勝をする設計になっている。

例えば今年のBALなどは歴史的な大敗北を喫したわけですが、チーム全体の野手WARがわずか2.6であり大谷一個人よりも低い数値となっている。さてヤンキースは今年100勝しているわけですが、すなわちチームの総合WARは50.0前後を記録することが想定される。調べると チームの野手WARが29であり、 チームの投手のWARが26、合計55WAR。

参考までに1WARで1勝なので、代替選手だけで構成されたチームでもWAR0.0でも52勝ということは40WARの戦力のあるチームはシーズンでだいたい92勝できる。つまりPO進出圏内に入るということ。戦略的にはWAR40を超えるような戦力をGMは取りあえずそろえることが一つの仕事であると言ってもいい。

さてジェームズ氏はアンドゥハーのWAR2.2を100勝のうちわずか2勝分しか貢献していないと言っているが、これは過小評価というものであり誤解を与えかねない。セイバーメトリクス的には100-52=48勝、つまりざっくり言うと50勝分(実際は48勝)の内、2勝を貢献したと捉えるのが正しい。


セイバーメトリクスの出鱈目な記事も至るところにゴロゴロしているので、たまに気が向いたら修正記事を書くことにします。

代替選手とは、3Aの平均レベルの選手のことで、ずらっと3Aだけの選手だけでメジャーで戦ってもセイバー的には取りあえず52勝はできるだろうと想定している。

大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。