なぜハル・スタインブレナーこそがヤンキースの実質的GMと言えるのか

戦略
02 /18 2019


下書きの日付を見たら 1/18でした。セベリーノはその後 この記事とは違い激安コントラクトを結ぶことに。なぜそれが可能になったのかはセベリーノが徹底して人格批判に晒される調停を恐れたからとも言われている。

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なぜハル・スタインブレナーこそがヤンキースの実質的GMと言えるのか、その痕跡はいくつも残されています。

理由は明白であり、第一点目はグレゴリウスの戦線離脱にともない内野のデプスが薄い状況にあって分厚い外野は人材は余っている状況であるにもかかわらず、不良債権のエルズベリーではなく内野のバックアップとしては十分に戦力に成り得るトレイエスを切ったというこの一事をもってして、誰が判断しているかが明らかになったと言えます。

LADもクロフォードという40Mの不良債権をたたき切ったように、BOSもまたサンドバルという50Mにも達しようかという不良債権をたたき切っています。ふつうの能力のあるGMならば、エルズベリーへの投資はサンクコストを割り切って、損切りする判断力くらいは必ず身につけているはずなのです。この程度の判断ができない人物がGMにつくことはまずあり得ない。

物事の優先順位がわかることを戦略的と定義するならば、この優先順位がわからないこの判断力のなさこそハル・スタインブレナーが実質的なGMである証明でもある。私が見る限りキャッシュマンはそこまで無能ではない。この程度の判断は当然できる。

エルズベリーを塩漬けにするという判断が「コインの表」であるならば、DFAになったトロウィツキーを格安で手に入れるという判断は「コインの裏」だと言ってもいいでしょう。ここに損確定を嫌い、リスクをとにかくガチガチに管理したい人物像は透けて見えるわけです。

第二点目。ハル・スタインブレナーは2015年にKCが世界一になった成功モデルを模範として、金を出しても優勝できるわけではないと「自らのセコさ」を弱者の戦略へすり替えて正当化しようとしました。改めてKCの戦略を振り返りますと、FAになる前の若手野手を主軸として、先発はクリス・ヤングやガスリーなどベテランで2線級3線級の安いサラリーのスターターを揃えつつも、強力なブルペンを用意し、相手を僅差の終盤に誘いこみ、そこではじめて強者として立ち振る舞い逃げ切るゲームプランを持っていました。

KCに見て取れるブルペンに厚みを出すというNYYの一貫した戦略は、元を質せば、2015年のKC優勝の緊縮モデルがケチなハル・スタインブレナーの心の琴線に触れたところに端緒があります。これがNYYの実質的なGMがハル・スタインブレナーであることの第二の理由です。

例えば2016年のオフにNYYは完全に再建期に舵を切りました。にもかかわらずチャップマンだけは抑えたわけです。なぜ再建期に入るのにリーグを代表するクローザーだけは抑えたのか。言うまでもなくNYYの司令塔ハル・スタインブレナーがKCの戦略を踏襲しているからです、

このプランに沿ってチームつくりをすることは決して間違ってはいません。スモールマーケットのKCで既に勝っている以上、ビックマーケットのNYYでもふつうにやれば勝てることになります。ただ強者のNYYであるならば、KCのこの弱者の戦略の物まねに終わらせてはなりません。更にバージョンアップさせることができる。

では具体的に、バージョンアップさせるのか。

一点目は金がある以上、KCのようにブルペンのみならず、先発の層も同時に厚くすることができるという点です。例えばハーパーやマチャド獲得はともかく、コービンを抑えることくらいの財力はNYYには当然ありました。しかしリスク管理第一主義なのでFA市場でWSHとの勝負に負けた。バムガーナーの例をひくまでもなく、大事な試合で頼りになるエース級がいるかいないかは極めて重要なポイントになります。先発への投資もできる財力があっても、躊躇してしまうところで最後に勝ち切るダメ押しの余力を失ってしまうかもしれません。ハル・スタインブレナーの勝負しきれない性向が故にその代償として、勝ち切れないという危惧が懸念されます。

そして次なるポイントですが、通常スモールマーケットのKCではFAでホズマーやムスタカス、ケインなどが流出してしまいますが、そうした生え抜きの流出を抑えることがビックマーケットにはできます。ところがカノ流出に代表されるように、べタンセスにせよセベリーノにせよ、セコさ故に年俸調停に持ち込んでいます。

例えばNYYから「6年150M」という仮にセベリーノが将来、囲い込みオファーをされたとしましょう。すでにNYYがFAマーケットでも勝負はしない姿勢を知っているセベリーノからすれば、FAになった方がより大きなメガコントラクトを獲得できるに違いないと算段をすることに必ずなります。

二点目はハル・スタインブレナーの目先のコスト削減が長期的な利益を損ない、目先のセコさがセベリーノ等生え抜きの流出を招く等の可能性へとつながりかねないということです。すなわち強者であるにもかからわず、KCにはない強みを失う可能性が高くなるのではないか。NYYは生え抜きで本来抑えて置かねばならない選手の何人かが、彼らを抱え込む力を持ちながら、FAによってNYYはおそらく流出することになるでしょう。

田中将大もFAの選手側オプションにおいてオプトアウトを行使すれば、1年前に外へ出ていたわけです。こうした額面通りの仕事を遂行している選手を確実に抑えるだけの経済力はありつつも、セコさ故に外へ流出してしまう可能性を晒してしまっている。とにかくブルペン以外のメガコントラクトについては余程の条件がと問わなければNYYが動くことはまずない。そのリスクを恐れる判断が最終的な勝利を逃す一つの要因になるのではないか。

結論

KCの弱者の戦略を踏襲するハル・スタインブレナーのやり方が完全に間違っているというわけではない。しかし弱者ではない以上、強者としての余裕ある立ち振る舞いこそがNYYには求められている。キャッシュマンの仕事はトレード等極めて限定的なものであり、チームの方針及びFAに関するNYYの実質的なGMはハル・スタインブレナーである。

果たして今後NYYがどのような命運を辿ることになるのだろうか。

ジョージ・スタインブレナーのように闇雲に金を突っ込めばいいというつもりも更々ない。チームが本当の意味で強くなるには、大砲だけを並べれば強くなるというものでもない。若手とFA、攻守、スピードとパワー、投打、様々なバランスに留意しなけければ、本当に強いチームを作ることはできない。それでもトータルとしては、ジョージの時代はハル・スタインブレナーの時代よりも確かな成果を出したことになるのではないかとは考えている。その是非は、いずれ歴史が明らかにすることになる。







大失敗に終わるか!マイアミのジーター改革はどうなるのか?

戦略
01 /29 2019


昨年4月頃、私はツィッターでおおよそこう書きました。

「ルノーによるHOUやエプスタインによるCHCのタンキングとMIAが現在行っているジーター改革を混同してはならない。両者は似て非なるものである。これは創造的破壊と称するようなものでなく、ジーターによる理念なき破壊活動である。

ジーターのボーナス獲得が主眼となった極めてセルフィッシュな動きであり、基本的にこの動きは間違っている」

結果的に現在のMIAがこうなっています。

●観客動員 メジャー最低30位。10000人を切る寸前。
●プロスペクト充実度 ランキング メジャー最低30位。
●2018年 NL最低勝率。

現在の動きはジーターをスケープゴートにオーナーグループがコストカットによる徹底した利益の追求をしようとしているのはほぼ明らかである。ファームの層を厚くして再建を乗り出すという方向性そのものも完全に間違ったものではなく一見、流行にも思えるものであったが、当初から数多くの疑念の声はやむことがなかった。一方で「これは世に言うタンキングであり、将来を見据えた動きなのだ」と、たしなめるかのようなメジャー通の意見も数多く散見された。

しかしジーターというGMの無能のなせる業なのだろうか。メジャー最強の外野トリオを解散させた結果、マイアミはメジャーで最もファームの層が薄いチームへ変貌を遂げてしまっている。ジーター改革がもたらしたものとは、メジャーNLで最も弱く、最も将来に対しての展望が開けず、最も人気のないチームへMIAは転落したことを意味している。

ジーター改革について擁護するかのような立場を取り、先を見据えたメジャー通たちは、ジーター改革を今どう考えているのか。

結論

タンキングという表層的なものに目を奪われることなく、ジーターとルーノウの本質的な差異を的確に見抜いていかなくてはならないない。マイアミで起きている一連の動きはコストカットによって利益の最大化しか興味のないオーナーの投資会社ジャーマングループと素人GMジーターによるジーターのための(ボーナス獲得)単なるMIAを舞台にしたベースボールへの破壊活動である

ベースボールというものは公共財であることをオーナーが再認識するとともに、ステークホルダー全体に目を配るような経営スタイルを追求すべくMLB機構側がある程度のガイドラインを設定すべきではないか。ぜいたく税という名の金満チームへの規制だけではなく、タンキングという名の徹底したコストカットによる利益追求へ傾くスモールマーケットへの一定の規制も設けるべき時期に来ているのではないだろうか。

未来は可変的でもあり、作用があれば反作用あり、沈み込んだものもいつかは浮上する。沈み続けることもまた相応の難しさがある。しかし敢えてリスク承知で言うが、ジーターというGMがチームを指導する限り、MIAの勝利はなかなか覚束ないだろう

数年先の結果を見守るべきだという意見など、誰にでも言える。結果論で語るという的外れな揶揄も一部にあるようだが、常に未来に対しても旗幟鮮明をモットーにする当ブログとしては、もしこの予見が外れた際は、素直に謝罪をする。


2019年ドジャースの緊縮路線、その動きの裏にある戦略のキーポイントとは何か

戦略
01 /15 2019



これまでLADからアウトした主な選手の成績

グランダル 24HR OPS815 WAR3.6
マチャド  13HR OPS825 WAR2.4(LAD時代のみ)
ケンプ   21HR OPS819 WAR1.8
プイグ   23HR OPS821 WAR1.8

ウッド    9勝7敗 WAR2.6

チームWAR0.0で162試合をフィニッシュした時、52勝分に相当するとセイバーメトリクスでは設計されている。つまりWAR40.0を確保することがPO進出ということを目標にした時、GMがなすべき仕事の一つの目安となる。92勝できればギリギリでワイルドカードには引っかかると考えてもよい。

さてこれまでのLADの動きをみるとWAR12.2もの大戦力が流出した一方、INした選手はBOSから投手ジョー・ケリーWAR0.7、TORから捕手マーティンWARにしてわずか0.6にとどまっている。つまりこれらの意味するところは、LADの大幅な戦力をダウンを意味している。このままシーズンへ入って確実にPOへ歩を進めることができる計算に目処が立ってるとは到底言えない。

特に印象的なCINとのトレードは、完全なる不良債権であるベイリー28Mを引き受けつつ更に7Mを上乗せして、手に入れたのはCINチーム7位のプロスペクトに過ぎなかった。一方、ケンプ、ウッド、プィグ(3人合計の負担額は43M前後)はWARを見る限り、1WAR=8Mと計算すれば彼らの成績を見てもわかるようにふつうの優良債権であり、CINでも十分にローテや野手の主力を担う戦力であるとセイバーメトリクス的には認定される。

大型不良債権をLADに引き取ってもらい、かつ失っても惜しくないプロスペクトを差し出し、そのリターンとして経済的なリスクもほぼ皆無と言っていい大きな戦力を手に入れたCINにとっては、ほぼ一方的に勝利と言ってもいいトレードである。

LADとCINのトレード、間違いなく持ち掛けたのはLADからであり、ケンプとプィグを放出すべく譲歩に譲歩を重ねてウッドもプラスしてまでも、なんとかトレードをまとめたと見るのが自然である。

では、なぜこのような補弱のトレードをLADは実施したのだろうか。

ケンプ、ウッドについては前々から指摘しているようにチームケミストリーを重視するフリードマンの姿勢がはっきり示されたと言える。あるいは2019年にはFB革命による戦略がBOSのスモールな全員野球に木っ端みじんにWSでやられた反省から、小技や俊敏さ、状況に応じたシンキングする力も求める野球へ質の転換をする意図もあるのかもしれない。

またチームの目指すべき野球の方向性だけでなく、同時に財政的なチーム事情もある。

MLBにはデッドサービスルール(負債に関するルール)がある。LADオーナーサイドは球団を購入する際に多額の負債を抱えており、それを返済するため収入とバランスする毎年の支出(主に選手へのペイロール)をある程度抑制する必要性をMLB機構から迫られている可能性がある。MLB史上初のペイロール3億ドルを突破したLADにとって惜しみない投資によってチーム強化によるファンサービスも大事ではあるが、長期的に安定したサービスを提供するには財政の健全化を機構側から求められており、投資への回収をすべく債務を減らすことを義務付けられている。

あるいはデッドサービスルールの適用ではなく、単純に投資の回収を求めるオーナー側の意向に沿って、利益を求めて今しばらく贅沢税ラインを意識した窮屈な動きをしているのかもしれない。

いずれにしても内部の諸事情により、大胆な勝負に出ることができない緊縮の状況下にLADは置かれており、戦略上最大のアドバンテージであった分厚いデプスを薄くし補弱路線をせざる得ない現状がある。

WAR12.2の流出は単純かつ控えめに見積もっても10勝分の戦力がなくなったとセイバーメトリクス的には言えるのであり、つまり2019年のLADは7年連続の地区優勝を目標とはしつつも、同時にリスク管理としてワイルドカードを現実的に視野に入れなければならない状況にあると言える。

ではどういう動きをLADはすべきなのか。

NL2018年96勝1位MIL、2位95勝CHC、3位92勝LAD、4位91勝COL、5位90勝ATL

ALの東地区では100勝を超えるチームが2つも出たのも、裏を返せばBALが115敗などという歴史的な大敗を喫したからに他ならない。NL最下位のMIAでも97敗に過ぎない。89勝したSEAなども通常の年であればPO進出に大いにチャンスはあったものの、2018年に限ってはワールドカード枠にもほぼノーチャンスでシーズンを終盤を迎えることになった。

それをNLに置き換えるならばLADの立場からすれば中地区のMIL及びCHCの独走を阻止し、混戦になる動きをするのが戦略的にも理にかなっていると言えるのである。つまりLADが最低目標としてPO進出を設定し、ペイロールと同時に戦力をLADがダウンを余儀なくさせられる状況にあるならば、95敗も喫した最下位争いを繰り広げるCINへの主力級3人の戦力拡充することによって、結果的にCHCやMILの勝利数をダウンさせる狙いがCIN有利のトレードの裏にはある。

結論

ケンプ、プィグ、ウッドの放出は、チームケミストリー改善及び動かすことがほぼ不可能な制約条件であるペイロールの削減のみならず、ワイルドカードまでも睨んだ時、自分の戦力を低下を梃にライバルとして最終的に立ちふさがるであろうCHCやMILの勝利を削ぐための布石として行われた極めて戦略的なトレードである。

ここにLADが大幅な譲歩をしてまでも、NL中地区最下位であったCINこそがそのトレード先でなければならなかった最大の理由もある。

単にCINとのトレードだけを切り取ってみれば、LADのLoseと言っても過言ではない。しかしその1ディールの動きだけで勝った負けたと評価してもフリードマンの戦略的思惑がどこにあるかを把握することは難しいに違いない。LADのチーム事情や自他の戦力分析も勘案し、一連の動きの奥に潜み貫かれたある理念を洞察した時、フリードマンの戦略眼というものが明らかになるのである。





なぜマリナーズは今、再建期に入らなければならないのか、その理由について明らかにする

戦略
12 /09 2018


2018年マリナーズは89勝でレギュラーシーズンの幕を閉じた。NL西地区のドジャースも91勝で地区優勝を手に入れている。およそPOに出るためには20個の貯金を作れば、なんとかなると考えもいいだろう。

ということは2018年マリナーズはあと2勝積み上げれば、PO圏内に突入することを一般には意味している。であるならば、2019年に勝負を仕掛けるべきだろうという結論に至っても、決しておかしくはない。にもかかわらず、2019年にマリナーズが再建期へ入らなければならない確かな理由がいくつかあるので、これから縷々述べたいと思う。

まず、ピタゴラス勝率から導かれるマリナーズの2018年の実力は77勝85敗だったことがわかっている。クローザー・ディアスの大車輪の活躍を見てもわかるように、僅差の試合を悉くものにしてきたのが、マリナーズだった。一点差の勝敗は36勝21敗であり、ALで最高の貯金15個をを稼ぎ出している。

つまり2018年のマリナーズは運も良く、投打の歯車がかみ合い、巡り合わせにもよって89勝できたと考えるのが常道であり、裏を返せば来年も今の戦力を維持できたとしても2019年にPO圏内に入ることは難しいことをこの数値は物語っている。

更に問題は、AL西地区がメジャーで最もレベルの高い地区となっている点にも触れておかなくてはならない。同地区同士が戦っても1勝1敗であり貯金の増減はないが、その地区全体の貯金が大きいということは他の地区のチームと戦って西地区のチームが数多く勝ち越していることを意味している。

西地区全体の貯金は5チーム全体で61個も積み上げており、東地区の25個を遥かに上回っている。最強の地区にマリナーズは現在属しているのである。また西地区には現在、最強のチームであるアストロズが戦力を維持したまま、ここ数年は栄華を極める勢いであることは誰もが認めるところだろう。OAKもまた97勝と底力がある。

加えて、マリナーズのファームは目ぼしい選手がほぼ皆無であり、プロスペクトTOP100には一人も入っていない状況にあった。(もっとも数々のトレードによって現在は、入ってきたプロスペクトがちらほら100位以内入りしている)

つまりプロスペクトというトレードの駒がないということは、2019年の夏場の肝心なフラッグディールにおいて、有力な戦力を前線を供給することが難しいことを意味している。地力も弱く、最強地区に属し、ロジスティックも脆弱であるという客観的な情勢を見た時、ここはアストロズが最盛期にムキになって立ち向かうのではなく、戦力をためて期が熟するのを待つことが戦略的にも最良であると判断するのが妥当なのである。更に付け加えるならばエース、キングの力が著しく衰え、WARがマイナスを記録し全くあてにならないことも再建期に踏み出したダメ押しの要素になったに違いない。

ディアスもおそらく生涯を通じてもキャリアハイを出した今だからこそ、高く売り抜けることが可能となる。ショートのセグラについては、たしかにセイバーメトリクス的にも素晴らしい選手であり、コスパも抜群ではあるが2018年の夏、マリナーズの内紛でもわかるようにドミニカンの間に不穏の空気を作り出した張本人こそがセグラであり、とても中心選手にはなりえないとの判断から放出に踏み切ったのだろう。

結論

89勝という実績。ディアスは油に乗り切っている。セグラも数字的には頼もしい、こうした表層的な部分的な要素だけを並べて見ても正しい分析はできない。置かれている西地区の勢力図や自軍の戦力分析、ロジスティック、クラブハウス内のケミストリーの問題など総合的に勘案していかなければ、おそらく正しい結論にたどり着くことはできない。

マリナーズは今こそ、再建期に入るべきである。

ドジャースがワールドシリーズで勝利するために必要なこととは何か

戦略
12 /03 2018


フライボール革命によってホームランを量産し、チームも勝利に導くという流行の戦略。セイバーメトリクスの分析をすれば、その典型はオークランドであり、ヤンキースであり、ドジャースであったと言っていいだろう。それは下記の数字を見ても明らかである。

本塁打数 30チーム中

1位 ヤンキース
2位 ドジャース
3位 オークランド

FB率

1位 オークランド
2位 ドジャース
4位 ヤンキース

特にドジャースではスタットキャストを使い、投球のボールの回転数から軌道を分析し、同時に打者のバッドスウィングの軌道も分析しマッチするタイプの打者をセレクトしつつ、たくさんのタイプの駒を集め、その投手に応じて戦略的に先発オーダーを決めているという。

ドジャースのデータ分析に基づいた攻撃戦略の確かさは、チームの野手WARでも30チーム1位を記録していることから、一定の成果を収めていると結論するのは妥当だろう。この攻撃戦略の根底には「1対1、打者VS投手」という個人競技としての野球の側面をクローズアップし、ラインナップに名を連ねた各打者が投手から高い攻撃力を発揮すれば最終的にチームの総攻撃力もアップするという試みである。

それとは対照的なのが、ボストンである。

JD・マルティネスは言う。

我々はすべてを空中に打って、サク越えを狙ったりはしない。(フライボール革命は)最近の打者に共通するミステークだと感じる」。このボストンの特徴は、投手を攻略する際に「1対1、打者VS投手」というシーンに単純に分割して攻撃を捉えるのではなくく、打線全体であらゆる手段、あらゆる打球種類を用いつつ状況に応じて投手を包囲し、攻略していこうとするスモールな全員野球にある。

個人的にはワールドシリーズ初戦、一回裏のボストンの攻撃が、そのスモールぶりをよく象徴していたように思う。

センター前ライナーでベッツが1塁に出る。ワールドシリーズが始まったばかり。じっくり腰を据えて様子を見ながらBOSは攻撃かと思いきや、一球目まさかの奇襲のスティールを決める。2番ベニンテンディーも息つく暇もなく次のボールをライト前へシングルヒット、ライト深めに守っていたプィーグが相変わらず、ベッツの走力も顧みることなく絶対に間にあわないホームへ山なりのダイレクトバックホーム、その隙にベニンテンディーは2塁へ。事前にプィーグはホーム返球を中継のセカンドに返さないとレポート済みであり、ベニンテンディーは百も承知。そして、ラインドライブ狙いのJDがセンター前シングルできっちりと2塁ランナーベニンテンディーをホームへ返す。

たったシングル3本だけで2点を取るのが2018年版ボストンの野球。フライボールは皆無の攻撃。まさしくここにあるのはJDも言う繋ぎの意識であり、相手の隙をつく奇襲であり、スモールベースボールそのものが映し出されたシーンであったと言っていい。プィーグがふつうにセカンドの中継地点へ返球していれば、この回は1点で終了であったに違いありません。

攻撃においてワンベースの進塁をどう推し進めるか、あるいは守備においてワンベースを如何に抑止するのか。そのワンプレーが最終的な勝利へ直結するというスモールな発想の有無が、最も鮮やかに浮かび上がった象徴的なワンシーン。シリーズの勝負はすでに1回の攻防で決まったとすら、一瞬考えたほどです。

一方、同点でマチャドが勝ち越しホームランかという当たりをしたシーンでは、打球は急速にラインドライブして、フェンスダイレクトに当たりとなった。当然、2塁へ進んでいると思いきやマチャドは一塁でストップ結果0点。2塁へ進んでいたらマチャドは勝ち越しのホームを踏んでいた可能性は大きく広がっていました。完全なるボーンヘッド。

繰り返し戦えばドジャースがボストンに勝つこともあるでしょう。しかしこうした細かいワンベースへの積み重ねを大事とするスモールなボストンとそうではなかったドジャースの体質の違いが明確に表れている以上、短期決戦を繰り返せば、ボストンがシリーズを制することが多くなることは確実な状況です。 ボストンの方が勝利の生産性が高くなるのは道理である

ドジャースがすべきことは、ボストンとのギャップをまず明確に規定するところを第一歩にしなければならない。

ボストンも2000年代ではデータ主義に大きく偏っていました。それは他のチームがセイバーメトリクスを柔軟に取り入れようとせずに、アナログな強い偏見によって素人に野球の何がわかるという態度であったからであり、いち早くセイバーメトリクスに取り組んだことが大きなボストンのアドバンテージになりました。やがて時代が進み、ボストンの成功を見るにつけ、すべてのチームがセイバーメトリクスを導入するに至りました。こうなると先行利益は急速に減少をします。

ここでデータ主義をさらに先鋭化させる取り組みもしつつ、同時にボストンは古い時代に置き去りされた感のあるスモールべースボールに今一度焦点を当てて、それを見事に現代に復活させることにより、勝利を収めたというのが2018年の現時点です。巷がデータ偏重のフライボールで賑わっている現代にあるからこそ、当ブログの歴史認識では必ずこうしたスモールへ回帰するチームが登場することを予想していました。スモールの中には一部、どうしても数では表現し得ない領域が蔵されている

セベリーノの投球の癖を見抜き、ALDSでヤンキースを打ち破ったその智慧の力を果たしてセイバーメトリクスでどう数値化するというのだろうか。

物事には「定量」と「定性」という二つの観点があります。「定量」とは数で表現されるものであり、ドジャースはWAR1位を見てもわかるようにすでにワールドシリーズに勝利するための定量的な戦力の条件を兼ね備えているとセイバーメトリクス的にも結論できます。

つまりドジャースの問題は定性的な部分にある可能性がきわめて高いのです

ここでボストンとドジャース、両者の違いを表す興味深い指標clutchを挙げておきます。文字通り、勝負強さを測る指標です。ともに高い攻撃力を持ってはいましたが実は2018年のワールドシリーズはメジャーでこのclutchという指標の最も高い1位のチームと最も低い30位のチームの戦いでもあったのです

すべてのチームが導入している現在、セイバーメトリクスは大数の法則を基づいている以上、短期決戦で決定的なファクターにはなり得ません。2010年代に入っても、ボウチー率いるジャイアンツやラルーサ率いるカーディナルスが優勝したのも、決して偶然ではない。トーリしかり、そこに共通するものとは、セイバーメトリクスに偏重しないオールドスークルの智慧です。

右方向へしぶとく流すジーターや、4番バーニーのたたきつけるゴロでの内野安打、ティノの意外性のある一発など個性豊かであった面々は懐かしく、clutchぶりは言うまでもなく相当に高かったヤンキース黄金期。一方、WSでもチャンスでフライアウトを繰り返し潰してきたドジャースを見ても、レギュラーシーズンがどのような攻撃をしてきたかは想像に難くなく、それがclutchというセイバーメトリクスの指標でもはっきり表れた格好だったのではないかと推測できるのです。

いずれにしても何度注意されようがプィーグの送球に代表されるような無駄な失点を献上している限り、ドジャースのワールドシリーズ制覇はなかなか覚束ない。仮についには勝利をしたとしても、相当に勝利の生産性としては低いものとなることが予測できます。

トールズという左の俊足が9回裏同点にレフト大飛球を放ち、野手がファンブルしボールは転々とグランドに転がったことがありました。誰もが余裕でトールズは3塁に到達しているかと思いきや、打球に見とれて歩いていたため2塁打になった。1死2塁。ロバーツ監督は唖然。次の打者が深い外野飛球で3塁へ行くものの、結果0点。その試合をドジャースは落とすことになる。

2018年のシーズン中の出来事です。同じことの繰り返しであり、だから接戦にドジャースは弱いのです。

結論

虚心坦懐にドジャースはボストンや過去の歴史から今一度、短期決戦における勝者としてのベースボールを研究するところから再スタートすべきだろう。特に短期決戦において状況にかかわらずフライボール一本の攻撃で果たして勝利の生産性は高まるのかどうか。そしてこの問いはドジャースのみならず、同時になぜオークランドはPOには弱いのかという問いにも行き着くことになる。

では、オークランドとドジャースと共通する敗因はいったい何だろうか。

オークランドがPOで敗退を繰り返すのは決して偶然ではないと、戦いの原理を探求する当ブログとしては改めて指摘しておきたい。2000年以降、オークランドは9回POに出場するものの、一度たりとてワールドシリーズの舞台に立ったことはないのは事実である。

メジャー選抜は2018年に侍japanに惨敗を喫した。メジャー選抜のメンバーは、フライボールに捕らわれないスモールな日本の畳みかける攻撃が新鮮に映ったという。それは決して単なる彼らのお世辞ではあるまい。なぜボストンはWSに強く直近の4回すべて勝利をし、なぜドジャースは短期決戦に勝負弱いのか。引き続き取り扱っていかねばならないテーマであると思っている。



大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。