2019年ドジャースの緊縮路線、その動きの裏にある戦略のキーポイントとは何か

戦略
01 /15 2019



これまでLADからアウトした主な選手の成績

グランダル 24HR OPS815 WAR3.6
マチャド  13HR OPS825 WAR2.4(LAD時代のみ)
ケンプ   21HR OPS819 WAR1.8
プイグ   23HR OPS821 WAR1.8

ウッド    9勝7敗 WAR2.6

チームWAR0.0で162試合をフィニッシュした時、52勝分に相当するとセイバーメトリクスでは設計されている。つまりWAR40.0を確保することがPO進出ということを目標にした時、GMがなすべき仕事の一つの目安となる。92勝できればギリギリでワイルドカードには引っかかると考えてもよい。

さてこれまでのLADの動きをみるとWAR12.2もの大戦力が流出した一方、INした選手はBOSから投手ジョー・ケリーWAR0.7、TORから捕手マーティンWARにしてわずか0.6にとどまっている。つまりこれらの意味するところは、LADの大幅な戦力をダウンを意味している。このままシーズンへ入って確実にPOへ歩を進めることができる計算に目処が立ってるとは到底言えない。

特に印象的なCINとのトレードは、完全なる不良債権であるベイリー28Mを引き受けつつ更に7Mを上乗せして、手に入れたのはCINチーム7位のプロスペクトに過ぎなかった。一方、ケンプ、ウッド、プィグ(3人合計の負担額は43M前後)はWARを見る限り、1WAR=8Mと計算すれば彼らの成績を見てもわかるようにふつうの優良債権であり、CINでも十分にローテや野手の主力を担う戦力であるとセイバーメトリクス的には認定される。

大型不良債権をLADに引き取ってもらい、かつ失っても惜しくないプロスペクトを差し出し、そのリターンとして経済的なリスクもほぼ皆無と言っていい大きな戦力を手に入れたCINにとっては、ほぼ一方的に勝利と言ってもいいトレードである。

LADとCINのトレード、間違いなく持ち掛けたのはLADからであり、ケンプとプィグを放出すべく譲歩に譲歩を重ねてウッドもプラスしてまでも、なんとかトレードをまとめたと見るのが自然である。

では、なぜこのような補弱のトレードをLADは実施したのだろうか。

ケンプ、ウッドについては前々から指摘しているようにチームケミストリーを重視するフリードマンの姿勢がはっきり示されたと言える。あるいは2019年にはFB革命による戦略がBOSのスモールな全員野球に木っ端みじんにWSでやられた反省から、小技や俊敏さ、状況に応じたシンキングする力も求める野球へ質の転換をする意図もあるのかもしれない。

またチームの目指すべき野球の方向性だけでなく、同時に財政的なチーム事情もある。

MLBにはデッドサービスルール(負債に関するルール)がある。LADオーナーサイドは球団を購入する際に多額の負債を抱えており、それを返済するため収入とバランスする毎年の支出(主に選手へのペイロール)をある程度抑制する必要性をMLB機構から迫られている可能性がある。MLB史上初のペイロール3億ドルを突破したLADにとって惜しみない投資によってチーム強化によるファンサービスも大事ではあるが、長期的に安定したサービスを提供するには財政の健全化を機構側から求められており、投資への回収をすべく債務を減らすことを義務付けられている。

あるいはデッドサービスルールの適用ではなく、単純に投資の回収を求めるオーナー側の意向に沿って、利益を求めて今しばらく贅沢税ラインを意識した窮屈な動きをしているのかもしれない。

いずれにしても内部の諸事情により、大胆な勝負に出ることができない緊縮の状況下にLADは置かれており、戦略上最大のアドバンテージであった分厚いデプスを薄くし補弱路線をせざる得ない現状がある。

WAR12.2の流出は単純かつ控えめに見積もっても10勝分の戦力がなくなったとセイバーメトリクス的には言えるのであり、つまり2019年のLADは7年連続の地区優勝を目標とはしつつも、同時にリスク管理としてワイルドカードを現実的に視野に入れなければならない状況にあると言える。

ではどういう動きをLADはすべきなのか。

NL2018年96勝1位MIL、2位95勝CHC、3位92勝LAD、4位91勝COL、5位90勝ATL

ALの東地区では100勝を超えるチームが2つも出たのも、裏を返せばBALが115敗などという歴史的な大敗を喫したからに他ならない。NL最下位のMIAでも97敗に過ぎない。89勝したSEAなども通常の年であればPO進出に大いにチャンスはあったものの、2018年に限ってはワールドカード枠にもほぼノーチャンスでシーズンを終盤を迎えることになった。

それをNLに置き換えるならばLADの立場からすれば中地区のMIL及びCHCの独走を阻止し、混戦になる動きをするのが戦略的にも理にかなっていると言えるのである。つまりLADが最低目標としてPO進出を設定し、ペイロールと同時に戦力をLADがダウンを余儀なくさせられる状況にあるならば、95敗も喫した最下位争いを繰り広げるCINへの主力級3人の戦力拡充することによって、結果的にCHCやMILの勝利数をダウンさせる狙いがCIN有利のトレードの裏にはある。

結論

ケンプ、プィグ、ウッドの放出は、チームケミストリー改善及び動かすことがほぼ不可能な制約条件であるペイロールの削減のみならず、ワイルドカードまでも睨んだ時、自分の戦力を低下を梃にライバルとして最終的に立ちふさがるであろうCHCやMILの勝利を削ぐための布石として行われた極めて戦略的なトレードである。

ここにLADが大幅な譲歩をしてまでも、NL中地区最下位であったCINこそがそのトレード先でなければならなかった最大の理由もある。

単にCINとのトレードだけを切り取ってみれば、LADのLoseと言っても過言ではない。しかしその1ディールの動きだけで勝った負けたと評価してもフリードマンの戦略的思惑がどこにあるかを把握することは難しいに違いない。LADのチーム事情や自他の戦力分析も勘案し、一連の動きの奥に潜み貫かれたある理念を洞察した時、フリードマンの戦略眼というものが明らかになるのである。





菊池雄星、メジャー左スターター91.5マイル以上を投げる27歳以下はわずか9人しかいないというボラスの罠

セイバーメトリクス
01 /07 2019


スコット・ボラスは「菊池雄星、メジャー左スターター、91.5マイル以上を投げる27歳以下はわずか8人しかいない希少な存在である」ことをセールスポイントとして売り込みをしていたようです。

この数字を眺めてどう思われたでしょうか。菊池はメジャーでも速い投手に属すると思われた方がいても決しておかしくはありません。しかし率直に個人的なファーストインプレッションを申し上げるならば、ここには実に狡猾な数字のトリックがあるのではないかというものでした。

そこでこれから、調べた事実だけを淡々と列挙していきます。

まず、メジャー全体でも120回を到達している27歳の投手は全部で47人です。その中で左投手の割合は30パーセントであり、14名でした。


スネル 96.5
レイ   94.1
マッツ  94.0
ロドリゲス 93.7
ニューカム  93.4
ロンドーン  93.1
スアレス  92.5
ヒーニー 92.5

菊池 91.5

菊池は14名中9番目のスピードあり、実はメジャーの中で遅い部類に属することがわかります。

実際メジャー全体の27歳以下のスターター平均球速を調べると 93.8マイル。ブルペンの平均球速に至っては 94.8マイル。91.5マイルという数字の持つ菊池の現状が客観的にも明らかになってきたのではないでしょうか。

結論

データの切り取り方次第で、商品の魅力を最大限に引き出そうとするボラスの魔術に嵌らないだけのリテラシーがなければ、その認識はマスメディア(ライター)のレベルを超えることもできない

数字に対する感覚を研ぎ澄ますことが、セイバーメトリクスの分析の第一歩でもある。

大谷レベルのファーストボールを投げるスターターはメジャーにゴロゴロいるという説を日本ハム時代に当ブログが一蹴したのも同様であり、可能な限り数字を根拠にして雰囲気でモノを語ってはならない。2018年大谷レベルの球速を持ったスターターはメジャーでも片手で足りるものであり、数人レベルであったことがデータでも明らかになっている。





 

なぜマリナーズは今、再建期に入らなければならないのか、その理由について明らかにする

戦略
12 /09 2018


2018年マリナーズは89勝でレギュラーシーズンの幕を閉じた。NL西地区のドジャースも91勝で地区優勝を手に入れている。およそPOに出るためには20個の貯金を作れば、なんとかなると考えもいいだろう。

ということは2018年マリナーズはあと2勝積み上げれば、PO圏内に突入することを一般には意味している。であるならば、2019年に勝負を仕掛けるべきだろうという結論に至っても、決しておかしくはない。にもかかわらず、2019年にマリナーズが再建期へ入らなければならない確かな理由がいくつかあるので、これから縷々述べたいと思う。

まず、ピタゴラス勝率から導かれるマリナーズの2018年の実力は77勝85敗だったことがわかっている。クローザー・ディアスの大車輪の活躍を見てもわかるように、僅差の試合を悉くものにしてきたのが、マリナーズだった。一点差の勝敗は36勝21敗であり、ALで最高の貯金15個をを稼ぎ出している。

つまり2018年のマリナーズは運も良く、投打の歯車がかみ合い、巡り合わせにもよって89勝できたと考えるのが常道であり、裏を返せば来年も今の戦力を維持できたとしても2019年にPO圏内に入ることは難しいことをこの数値は物語っている。

更に問題は、AL西地区がメジャーで最もレベルの高い地区となっている点にも触れておかなくてはならない。同地区同士が戦っても1勝1敗であり貯金の増減はないが、その地区全体の貯金が大きいということは他の地区のチームと戦って西地区のチームが数多く勝ち越していることを意味している。

西地区全体の貯金は5チーム全体で61個も積み上げており、東地区の25個を遥かに上回っている。最強の地区にマリナーズは現在属しているのである。また西地区には現在、最強のチームであるアストロズが戦力を維持したまま、ここ数年は栄華を極める勢いであることは誰もが認めるところだろう。OAKもまた97勝と底力がある。

加えて、マリナーズのファームは目ぼしい選手がほぼ皆無であり、プロスペクトTOP100には一人も入っていない状況にあった。(もっとも数々のトレードによって現在は、入ってきたプロスペクトがちらほら100位以内入りしている)

つまりプロスペクトというトレードの駒がないということは、2019年の夏場の肝心なフラッグディールにおいて、有力な戦力を前線を供給することが難しいことを意味している。地力も弱く、最強地区に属し、ロジスティックも脆弱であるという客観的な情勢を見た時、ここはアストロズが最盛期にムキになって立ち向かうのではなく、戦力をためて期が熟するのを待つことが戦略的にも最良であると判断するのが妥当なのである。更に付け加えるならばエース、キングの力が著しく衰え、WARがマイナスを記録し全くあてにならないことも再建期に踏み出したダメ押しの要素になったに違いない。

ディアスもおそらく生涯を通じてもキャリアハイを出した今だからこそ、高く売り抜けることが可能となる。ショートのセグラについては、たしかにセイバーメトリクス的にも素晴らしい選手であり、コスパも抜群ではあるが2018年の夏、マリナーズの内紛でもわかるようにドミニカンの間に不穏の空気を作り出した張本人こそがセグラであり、とても中心選手にはなりえないとの判断から放出に踏み切ったのだろう。

結論

89勝という実績。ディアスは油に乗り切っている。セグラも数字的には頼もしい、こうした表層的な部分的な要素だけを並べて見ても正しい分析はできない。置かれている西地区の勢力図や自軍の戦力分析、ロジスティック、クラブハウス内のケミストリーの問題など総合的に勘案していかなければ、おそらく正しい結論にたどり着くことはできない。

マリナーズは今こそ、再建期に入るべきである。

ドジャースがワールドシリーズで勝利するために必要なこととは何か

戦略
12 /03 2018


フライボール革命によってホームランを量産し、チームも勝利に導くという流行の戦略。セイバーメトリクスの分析をすれば、その典型はオークランドであり、ヤンキースであり、ドジャースであったと言っていいだろう。それは下記の数字を見ても明らかである。

本塁打数 30チーム中

1位 ヤンキース
2位 ドジャース
3位 オークランド

FB率

1位 オークランド
2位 ドジャース
4位 ヤンキース

特にドジャースではスタットキャストを使い、投球のボールの回転数から軌道を分析し、同時に打者のバッドスウィングの軌道も分析しマッチするタイプの打者をセレクトしつつ、たくさんのタイプの駒を集め、その投手に応じて戦略的に先発オーダーを決めているという。

ドジャースのデータ分析に基づいた攻撃戦略の確かさは、チームの野手WARでも30チーム1位を記録していることから、一定の成果を収めていると結論するのは妥当だろう。この攻撃戦略の根底には「1対1、打者VS投手」という個人競技としての野球の側面をクローズアップし、ラインナップに名を連ねた各打者が投手から高い攻撃力を発揮すれば最終的にチームの総攻撃力もアップするという試みである。

それとは対照的なのが、ボストンである。

JD・マルティネスは言う。

我々はすべてを空中に打って、サク越えを狙ったりはしない。(フライボール革命は)最近の打者に共通するミステークだと感じる」。このボストンの特徴は、投手を攻略する際に「1対1、打者VS投手」というシーンに単純に分割して攻撃を捉えるのではなくく、打線全体であらゆる手段、あらゆる打球種類を用いつつ状況に応じて投手を包囲し、攻略していこうとするスモールな全員野球にある。

個人的にはワールドシリーズ初戦、一回裏のボストンの攻撃が、そのスモールぶりをよく象徴していたように思う。

センター前ライナーでベッツが1塁に出る。ワールドシリーズが始まったばかり。じっくり腰を据えて様子を見ながらBOSは攻撃かと思いきや、一球目まさかの奇襲のスティールを決める。2番ベニンテンディーも息つく暇もなく次のボールをライト前へシングルヒット、ライト深めに守っていたプィーグが相変わらず、ベッツの走力も顧みることなく絶対に間にあわないホームへ山なりのダイレクトバックホーム、その隙にベニンテンディーは2塁へ。事前にプィーグはホーム返球を中継のセカンドに返さないとレポート済みであり、ベニンテンディーは百も承知。そして、ラインドライブ狙いのJDがセンター前シングルできっちりと2塁ランナーベニンテンディーをホームへ返す。

たったシングル3本だけで2点を取るのが2018年版ボストンの野球。フライボールは皆無の攻撃。まさしくここにあるのはJDも言う繋ぎの意識であり、相手の隙をつく奇襲であり、スモールベースボールそのものが映し出されたシーンであったと言っていい。プィーグがふつうにセカンドの中継地点へ返球していれば、この回は1点で終了であったに違いありません。

攻撃においてワンベースの進塁をどう推し進めるか、あるいは守備においてワンベースを如何に抑止するのか。そのワンプレーが最終的な勝利へ直結するというスモールな発想の有無が、最も鮮やかに浮かび上がった象徴的なワンシーン。シリーズの勝負はすでに1回の攻防で決まったとすら、一瞬考えたほどです。

一方、同点でマチャドが勝ち越しホームランかという当たりをしたシーンでは、打球は急速にラインドライブして、フェンスダイレクトに当たりとなった。当然、2塁へ進んでいると思いきやマチャドは一塁でストップ結果0点。2塁へ進んでいたらマチャドは勝ち越しのホームを踏んでいた可能性は大きく広がっていました。完全なるボーンヘッド。

繰り返し戦えばドジャースがボストンに勝つこともあるでしょう。しかしこうした細かいワンベースへの積み重ねを大事とするスモールなボストンとそうではなかったドジャースの体質の違いが明確に表れている以上、短期決戦を繰り返せば、ボストンがシリーズを制することが多くなることは確実な状況です。 ボストンの方が勝利の生産性が高くなるのは道理である

ドジャースがすべきことは、ボストンとのギャップをまず明確に規定するところを第一歩にしなければならない。

ボストンも2000年代ではデータ主義に大きく偏っていました。それは他のチームがセイバーメトリクスを柔軟に取り入れようとせずに、アナログな強い偏見によって素人に野球の何がわかるという態度であったからであり、いち早くセイバーメトリクスに取り組んだことが大きなボストンのアドバンテージになりました。やがて時代が進み、ボストンの成功を見るにつけ、すべてのチームがセイバーメトリクスを導入するに至りました。こうなると先行利益は急速に減少をします。

ここでデータ主義をさらに先鋭化させる取り組みもしつつ、同時にボストンは古い時代に置き去りされた感のあるスモールべースボールに今一度焦点を当てて、それを見事に現代に復活させることにより、勝利を収めたというのが2018年の現時点です。巷がデータ偏重のフライボールで賑わっている現代にあるからこそ、当ブログの歴史認識では必ずこうしたスモールへ回帰するチームが登場することを予想していました。スモールの中には一部、どうしても数では表現し得ない領域が蔵されている

セベリーノの投球の癖を見抜き、ALDSでヤンキースを打ち破ったその智慧の力を果たしてセイバーメトリクスでどう数値化するというのだろうか。

物事には「定量」と「定性」という二つの観点があります。「定量」とは数で表現されるものであり、ドジャースはWAR1位を見てもわかるようにすでにワールドシリーズに勝利するための定量的な戦力の条件を兼ね備えているとセイバーメトリクス的にも結論できます。

つまりドジャースの問題は定性的な部分にある可能性がきわめて高いのです

ここでボストンとドジャース、両者の違いを表す興味深い指標clutchを挙げておきます。文字通り、勝負強さを測る指標です。ともに高い攻撃力を持ってはいましたが実は2018年のワールドシリーズはメジャーでこのclutchという指標の最も高い1位のチームと最も低い30位のチームの戦いでもあったのです

すべてのチームが導入している現在、セイバーメトリクスは大数の法則を基づいている以上、短期決戦で決定的なファクターにはなり得ません。2010年代に入っても、ボウチー率いるジャイアンツやラルーサ率いるカーディナルスが優勝したのも、決して偶然ではない。トーリしかり、そこに共通するものとは、セイバーメトリクスに偏重しないオールドスークルの智慧です。

右方向へしぶとく流すジーターや、4番バーニーのたたきつけるゴロでの内野安打、ティノの意外性のある一発など個性豊かであった面々は懐かしく、clutchぶりは言うまでもなく相当に高かったヤンキース黄金期。一方、WSでもチャンスでフライアウトを繰り返し潰してきたドジャースを見ても、レギュラーシーズンがどのような攻撃をしてきたかは想像に難くなく、それがclutchというセイバーメトリクスの指標でもはっきり表れた格好だったのではないかと推測できるのです。

いずれにしても何度注意されようがプィーグの送球に代表されるような無駄な失点を献上している限り、ドジャースのワールドシリーズ制覇はなかなか覚束ない。仮についには勝利をしたとしても、相当に勝利の生産性としては低いものとなることが予測できます。

トールズという左の俊足が9回裏同点にレフト大飛球を放ち、野手がファンブルしボールは転々とグランドに転がったことがありました。誰もが余裕でトールズは3塁に到達しているかと思いきや、打球に見とれて歩いていたため2塁打になった。1死2塁。ロバーツ監督は唖然。次の打者が深い外野飛球で3塁へ行くものの、結果0点。その試合をドジャースは落とすことになる。

2018年のシーズン中の出来事です。同じことの繰り返しであり、だから接戦にドジャースは弱いのです。

結論

虚心坦懐にドジャースはボストンや過去の歴史から今一度、短期決戦における勝者としてのベースボールを研究するところから再スタートすべきだろう。特に短期決戦において状況にかかわらずフライボール一本の攻撃で果たして勝利の生産性は高まるのかどうか。そしてこの問いはドジャースのみならず、同時になぜオークランドはPOには弱いのかという問いにも行き着くことになる。

では、オークランドとドジャースと共通する敗因はいったい何だろうか。

オークランドがPOで敗退を繰り返すのは決して偶然ではないと、戦いの原理を探求する当ブログとしては改めて指摘しておきたい。2000年以降、オークランドは9回POに出場するものの、一度たりとてワールドシリーズの舞台に立ったことはないのは事実である。

メジャー選抜は2018年に侍japanに惨敗を喫した。メジャー選抜のメンバーは、フライボールに捕らわれないスモールな日本の畳みかける攻撃が新鮮に映ったという。それは決して単なる彼らのお世辞ではあるまい。なぜボストンはWSに強く直近の4回すべて勝利をし、なぜドジャースは短期決戦に勝負弱いのか。引き続き取り扱っていかねばならないテーマであると思っている。



ボストン・レッドソックスの歴史を変えた最大のキーマンとは誰か?

戦略
11 /19 2018

「忍び寄る衰退 ヤンキース帝国の黄昏」

贅沢税に拘泥しあくまで<コスト>にフォーカスするハル・スタインブレナーの方針は戦略的に間違っており、それは勝利の生産性ではっきりと示されることになると繰り返し述べてきました。事実、2010年の7月10日ジョージ・スタイブレナーの逝去を境にヤンキースはワールドシリーズの舞台にすら一度も立てないばかりか、6年連続で地区優勝すらできない状況にあります

時間に関するコスト感覚がほとんど感じられないこのヤンキースと真逆の動きをしているチームこそが今年MLBペイロールで1位の座に躍り出たボストンレッドソックスです。「MLBにおいて戦略とは勝利の生産性を高めるための時間を制する技術である。」とも定義しましたが、21世紀に入って、ルースの呪いを2004年に解いてからというものボストンがワールドシリーズ制覇すること実に4回を記録し、極めて高い勝利の生産性を発揮しています。


2004 2007 セオ・エプスタインGM(2002~2011)

2013 ベン・チェリントン (2012~2014)

2018 デーブ・ドンブロウスキー (2015~2018)

21世紀(2002年)以降これまで3人のGMが登板し、すべてのGMが世界一を制覇しています。

どの優勝においてもこの大仕事を成すには様々なピースが数多く合わさって、はじめて成就するものです。今年に限れば大型契約を成功させる能力に長けたドンブロウスキーの存在も優れた働きをしましたが、実質的な攻撃におけるディレクター役を務めたコーラ監督の仕事ぶりは出色と言っていいでしょう。フライボールの最先端をいっていたアストロズからノウハウを直輸入しつつ、更にその先を行くための一手としてスモールベースボールをチームへ浸透させたその活躍は特筆すべきものがありました。MVPベッツや3冠王に手が届く位置にしたJDマルティネスの活躍その他の様々なスタッフ等の尽力もあって世界一という目標を達成した。

名将フランコ―ナ、マニ―とオルティスの強力ディオなどそうした過去4度の優勝は、各々のケースにおいて様々なピースが組み合わさり目標を成就したわけですが、あらゆるケースにおいて絶対に欠くことのなかった唯一無二のピースがひとつあります。そのピースこそボストンの歴史を変えた最大のキーマンでもある2002年に就任したション・ヘンリーオーナーです。ここに深い焦点を当てなくてはならない。

ボストンというチームは2002年に新オーナーが就任して以降、ルースの呪いを破った年を皮切りにチームが明らかに変わりました。

「<戦略の目的>と<制約条件>を明確に区別し、戦略家とは条件によって現実の動きを規定される人ではなく、条件を動かすことによって目的を達成しようとする人のことである。」

贅沢税という<制約条件>に目を奪われて、<戦略の目的>であるワールドシリーズ制覇を果たすということを二の次に考えるようなハル・スタインブレナーとはション・ヘンリーの発想が根本的に違う。ハル・スタインブレナーにはない物事をマクロで捉える力がション・ヘンリーには備わっています。贅沢税ラインを目の前にして大多数のチームが緊縮財政路線を取った中、ヘンリーはそこにチャンスを見出しまさに他のチームとは真逆の方針を採って贅沢税ラインなどおかまいなく、JDマルティネスを獲得したわけです

もし2018年ボストン率いるヘンリーと全く同じ状況にハル・スタインブレナーが置かれたら、どう動いたか。他も緊縮路線を取っているから、ここはうちも右に倣えで緊縮しようと判断をした可能性が極めて高い。というよりもほぼ間違いなく、贅沢税ラインを超える動きなどしなかったはずです。こうした間違った判断の繰り返しが現在のヤンキースの極めて低い勝利の生産性をもたらしています。

FA市場全体がこれといった動きをみせず他のチームが緊縮財政をしている中で、ヘンリーは贅沢税ラインを突破する動きを入れように、他のチームがフライボールの中にある価値を求めて空を見上げている中で、ゴロの中にある価値を見出しスモールベースボールを実践してみせる文化がボストンには備わっている。こうした他とは一味違うボストンの戦略性こそが、勝利を手繰り寄せているように私には見えるのです。そしてその一番のボストンにあるカルチャーの根っこには、ション・ヘンリーオーナーが座している。

ハル・スタインブレナーは勝てない理由を選手や監督のせいにするのではなく、勝利から遠ざかっている最大の原因を己の中に見出すべきです。

もしヘンリーがヤンキースのオーナーであれば、ワールドシリーズにかすりもしないシーズンをおくり続けることなどまずあり得ない。あるいはもし仮に2002年からハル・スタインブレナーがボストンのオーナーであったなら、ボストンはここまで勝利を積み重ねることができただろうか

優れたリーダーがいればそのチームを勝利へ導くことができる。戦いとは実にシンプルです。

ハル・スタインブレナーにオーナーになった直後の2009年は、ジョージ・スタインブレナーがまだ存命であり傀儡と言っても言い過ぎではなく明らかにボスの目を意識したチーム運営をしていました。サバシアやバーネット、テシェイラを獲得してハル・スタインブレナーは俺に任せろアピールをし、今では考えられないような超大型契約の連発であり、ここにあったのはまさしくジョージ流です。

ところがジョージ・スタインブレナーが地上から去った2010年以降は、ハル・スタインブレナーの器の大きさが透けて見えるような方針をヤンキースは取り始め、更に面白いのはこのケチケチ緊縮路線が日本のライターやファンには大変受けがいい点にあります。繰り返しますが、そしてその考えは基本的に完全に間違っています。

もし判断が正しければボストンにように必ず勝利という結果が出てくる。出ていないということはヤンキースのリーダーの何かが間違っていることを意味しています。ではなぜボストンは結果が出て、ヤンキースは結果がないのか?この両者を分かつ原因と結果を正しく分析しなければならない。

今年のヤンキースはどういう動きにでるのか。相変わらず贅沢税の前でブレーキをかけるのか。ただラインを超えるのではなく、必要とあらば大きく踏み越えることも辞さない姿勢を持つことができるのか。FA市場で大物が大量に出回る今年、オーナーとしての器が試される最大の年であると言っても過言はありません。

結論

ヤンキースの勝利の生産性が2010年を境に一気に下がったように、ボストンの勝利の生産性は2002年を境にメジャー最高を記録している。リーダーの能力が組織の命運を分ける。

帝国の復活なるか。2018年オフにヤンキースは大きなターニングポイントを迎えている。


大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。