なぜマリナーズは今、再建期に入らなければならないのか、その理由について明らかにする

戦略
12 /09 2018


2018年マリナーズは89勝でレギュラーシーズンの幕を閉じた。NL西地区のドジャースも91勝で地区優勝を手に入れている。およそPOに出るためには20個の貯金を作れば、なんとかなると考えもいいだろう。

ということは2018年マリナーズはあと2勝積み上げれば、PO圏内に突入することを一般には意味している。であるならば、2019年に勝負を仕掛けるべきだろうという結論に至っても、決しておかしくはない。にもかかわらず、2019年にマリナーズが再建期へ入らなければならない確かな理由がいくつかあるので、これから縷々述べたいと思う。

まず、ピタゴラス勝率から導かれるマリナーズの2018年の実力は77勝85敗だったことがわかっている。クローザー・ディアスの大車輪の活躍を見てもわかるように、僅差の試合を悉くものにしてきたのが、マリナーズだった。一点差の勝敗は36勝21敗であり、ALで最高の貯金15個をを稼ぎ出している。

つまり2018年のマリナーズは運も良く、投打の歯車がかみ合い、巡り合わせにもよって89勝できたと考えるのが常道であり、裏を返せば来年も今の戦力を維持できたとしても2019年にPO圏内に入ることは難しいことをこの数値は物語っている。

更に問題は、AL西地区がメジャーで最もレベルの高い地区となっている点にも触れておかなくてはならない。同地区同士が戦っても1勝1敗であり貯金の増減はないが、その地区全体の貯金が大きいということは他の地区のチームと戦って西地区のチームが数多く勝ち越していることを意味している。

西地区全体の貯金は5チーム全体で61個も積み上げており、東地区の25個を遥かに上回っている。最強の地区にマリナーズは現在属しているのである。また西地区には現在、最強のチームであるアストロズが戦力を維持したまま、ここ数年は栄華を極める勢いであることは誰もが認めるところだろう。OAKもまた97勝と底力がある。

加えて、マリナーズのファームは目ぼしい選手がほぼ皆無であり、プロスペクトTOP100には一人も入っていない状況にあった。(もっとも数々のトレードによって現在は、入ってきたプロスペクトがちらほら100位以内入りしている)

つまりプロスペクトというトレードの駒がないということは、2019年の夏場の肝心なフラッグディールにおいて、有力な戦力を前線を供給することが難しいことを意味している。地力も弱く、最強地区に属し、ロジスティックも脆弱であるという客観的な情勢を見た時、ここはアストロズが最盛期にムキになって立ち向かうのではなく、戦力をためて期が熟するのを待つことが戦略的にも最良であると判断するのが妥当なのである。更に付け加えるならばエース、キングの力が著しく衰え、WARがマイナスを記録し全くあてにならないことも再建期に踏み出したダメ押しの要素になったに違いない。

ディアスもおそらく生涯を通じてもキャリアハイを出した今だからこそ、高く売り抜けることが可能となる。ショートのセグラについては、たしかにセイバーメトリクス的にも素晴らしい選手であり、コスパも抜群ではあるが2018年の夏、マリナーズの内紛でもわかるようにドミニカンの間に不穏の空気を作り出した張本人こそがセグラであり、とても中心選手にはなりえないとの判断から放出に踏み切ったのだろう。

結論

89勝という実績。ディアスは油に乗り切っている。セグラも数字的には頼もしい、こうした表層的な部分的な要素だけを並べて見ても正しい分析はできない。置かれている西地区の勢力図や自軍の戦力分析、ロジスティック、クラブハウス内のケミストリーの問題など総合的に勘案していかなければ、おそらく正しい結論にたどり着くことはできない。

マリナーズは今こそ、再建期に入るべきである。

ドジャースがワールドシリーズで勝利するために必要なこととは何か

戦略
12 /03 2018


フライボール革命によってホームランを量産し、チームも勝利に導くという流行の戦略。セイバーメトリクスの分析をすれば、その典型はオークランドであり、ヤンキースであり、ドジャースであったと言っていいだろう。それは下記の数字を見ても明らかである。

本塁打数 30チーム中

1位 ヤンキース
2位 ドジャース
3位 オークランド

FB率

1位 オークランド
2位 ドジャース
4位 ヤンキース

特にドジャースではスタットキャストを使い、投球のボールの回転数から軌道を分析し、同時に打者のバッドスウィングの軌道も分析しマッチするタイプの打者をセレクトしつつ、たくさんのタイプの駒を集め、その投手に応じて戦略的に先発オーダーを決めているという。

ドジャースのデータ分析に基づいた攻撃戦略の確かさは、チームの野手WARでも30チーム1位を記録していることから、一定の成果を収めていると結論するのは妥当だろう。この攻撃戦略の根底には「1対1、打者VS投手」という個人競技としての野球の側面をクローズアップし、ラインナップに名を連ねた各打者が投手から高い攻撃力を発揮すれば最終的にチームの総攻撃力もアップするという試みである。

それとは対照的なのが、ボストンである。

JD・マルティネスは言う。

我々はすべてを空中に打って、サク越えを狙ったりはしない。(フライボール革命は)最近の打者に共通するミステークだと感じる」。このボストンの特徴は、投手を攻略する際に「1対1、打者VS投手」というシーンに単純に分割して攻撃を捉えるのではなくく、打線全体であらゆる手段、あらゆる打球種類を用いつつ状況に応じて投手を包囲し、攻略していこうとするスモールな全員野球にある。

個人的にはワールドシリーズ初戦、一回裏のボストンの攻撃が、そのスモールぶりをよく象徴していたように思う。

センター前ライナーでベッツが1塁に出る。ワールドシリーズが始まったばかり。じっくり腰を据えて様子を見ながらBOSは攻撃かと思いきや、一球目まさかの奇襲のスティールを決める。2番ベニンテンディーも息つく暇もなく次のボールをライト前へシングルヒット、ライト深めに守っていたプィーグが相変わらず、ベッツの走力も顧みることなく絶対に間にあわないホームへ山なりのダイレクトバックホーム、その隙にベニンテンディーは2塁へ。事前にプィーグはホーム返球を中継のセカンドに返さないとレポート済みであり、ベニンテンディーは百も承知。そして、ラインドライブ狙いのJDがセンター前シングルできっちりと2塁ランナーベニンテンディーをホームへ返す。

たったシングル3本だけで2点を取るのが2018年版ボストンの野球。フライボールは皆無の攻撃。まさしくここにあるのはJDも言う繋ぎの意識であり、相手の隙をつく奇襲であり、スモールベースボールそのものが映し出されたシーンであったと言っていい。プィーグがふつうにセカンドの中継地点へ返球していれば、この回は1点で終了であったに違いありません。

攻撃においてワンベースの進塁をどう推し進めるか、あるいは守備においてワンベースを如何に抑止するのか。そのワンプレーが最終的な勝利へ直結するというスモールな発想の有無が、最も鮮やかに浮かび上がった象徴的なワンシーン。シリーズの勝負はすでに1回の攻防で決まったとすら、一瞬考えたほどです。

一方、同点でマチャドが勝ち越しホームランかという当たりをしたシーンでは、打球は急速にラインドライブして、フェンスダイレクトに当たりとなった。当然、2塁へ進んでいると思いきやマチャドは一塁でストップ結果0点。2塁へ進んでいたらマチャドは勝ち越しのホームを踏んでいた可能性は大きく広がっていました。完全なるボーンヘッド。

繰り返し戦えばドジャースがボストンに勝つこともあるでしょう。しかしこうした細かいワンベースへの積み重ねを大事とするスモールなボストンとそうではなかったドジャースの体質の違いが明確に表れている以上、短期決戦を繰り返せば、ボストンがシリーズを制することが多くなることは確実な状況です。 ボストンの方が勝利の生産性が高くなるのは道理である

ドジャースがすべきことは、ボストンとのギャップをまず明確に規定するところを第一歩にしなければならない。

ボストンも2000年代ではデータ主義に大きく偏っていました。それは他のチームがセイバーメトリクスを柔軟に取り入れようとせずに、アナログな強い偏見によって素人に野球の何がわかるという態度であったからであり、いち早くセイバーメトリクスに取り組んだことが大きなボストンのアドバンテージになりました。やがて時代が進み、ボストンの成功を見るにつけ、すべてのチームがセイバーメトリクスを導入するに至りました。こうなると先行利益は急速に減少をします。

ここでデータ主義をさらに先鋭化させる取り組みもしつつ、同時にボストンは古い時代に置き去りされた感のあるスモールべースボールに今一度焦点を当てて、それを見事に現代に復活させることにより、勝利を収めたというのが2018年の現時点です。巷がデータ偏重のフライボールで賑わっている現代にあるからこそ、当ブログの歴史認識では必ずこうしたスモールへ回帰するチームが登場することを予想していました。スモールの中には一部、どうしても数では表現し得ない領域が蔵されている

セベリーノの投球の癖を見抜き、ALDSでヤンキースを打ち破ったその智慧の力を果たしてセイバーメトリクスでどう数値化するというのだろうか。

物事には「定量」と「定性」という二つの観点があります。「定量」とは数で表現されるものであり、ドジャースはWAR1位を見てもわかるようにすでにワールドシリーズに勝利するための定量的な戦力の条件を兼ね備えているとセイバーメトリクス的にも結論できます。

つまりドジャースの問題は定性的な部分にある可能性がきわめて高いのです

ここでボストンとドジャース、両者の違いを表す興味深い指標clutchを挙げておきます。文字通り、勝負強さを測る指標です。ともに高い攻撃力を持ってはいましたが実は2018年のワールドシリーズはメジャーでこのclutchという指標の最も高い1位のチームと最も低い30位のチームの戦いでもあったのです

すべてのチームが導入している現在、セイバーメトリクスは大数の法則を基づいている以上、短期決戦で決定的なファクターにはなり得ません。2010年代に入っても、ボウチー率いるジャイアンツやラルーサ率いるカーディナルスが優勝したのも、決して偶然ではない。トーリしかり、そこに共通するものとは、セイバーメトリクスに偏重しないオールドスークルの智慧です。

右方向へしぶとく流すジーターや、4番バーニーのたたきつけるゴロでの内野安打、ティノの意外性のある一発など個性豊かであった面々は懐かしく、clutchぶりは言うまでもなく相当に高かったヤンキース黄金期。一方、WSでもチャンスでフライアウトを繰り返し潰してきたドジャースを見ても、レギュラーシーズンがどのような攻撃をしてきたかは想像に難くなく、それがclutchというセイバーメトリクスの指標でもはっきり表れた格好だったのではないかと推測できるのです。

いずれにしても何度注意されようがプィーグの送球に代表されるような無駄な失点を献上している限り、ドジャースのワールドシリーズ制覇はなかなか覚束ない。仮についには勝利をしたとしても、相当に勝利の生産性としては低いものとなることが予測できます。

トールズという左の俊足が9回裏同点にレフト大飛球を放ち、野手がファンブルしボールは転々とグランドに転がったことがありました。誰もが余裕でトールズは3塁に到達しているかと思いきや、打球に見とれて歩いていたため2塁打になった。1死2塁。ロバーツ監督は唖然。次の打者が深い外野飛球で3塁へ行くものの、結果0点。その試合をドジャースは落とすことになる。

2018年のシーズン中の出来事です。同じことの繰り返しであり、だから接戦にドジャースは弱いのです。

結論

虚心坦懐にドジャースはボストンや過去の歴史から今一度、短期決戦における勝者としてのベースボールを研究するところから再スタートすべきだろう。特に短期決戦において状況にかかわらずフライボール一本の攻撃で果たして勝利の生産性は高まるのかどうか。そしてこの問いはドジャースのみならず、同時になぜオークランドはPOには弱いのかという問いにも行き着くことになる。

では、オークランドとドジャースと共通する敗因はいったい何だろうか。

オークランドがPOで敗退を繰り返すのは決して偶然ではないと、戦いの原理を探求する当ブログとしては改めて指摘しておきたい。2000年以降、オークランドは9回POに出場するものの、一度たりとてワールドシリーズの舞台に立ったことはないのは事実である。

メジャー選抜は2018年に侍japanに惨敗を喫した。メジャー選抜のメンバーは、フライボールに捕らわれないスモールな日本の畳みかける攻撃が新鮮に映ったという。それは決して単なる彼らのお世辞ではあるまい。なぜボストンはWSに強く直近の4回すべて勝利をし、なぜドジャースは短期決戦に勝負弱いのか。引き続き取り扱っていかねばならないテーマであると思っている。



ボストン・レッドソックスの歴史を変えた最大のキーマンとは誰か?

戦略
11 /19 2018

「忍び寄る衰退 ヤンキース帝国の黄昏」

贅沢税に拘泥しあくまで<コスト>にフォーカスするハル・スタインブレナーの方針は戦略的に間違っており、それは勝利の生産性ではっきりと示されることになると繰り返し述べてきました。事実、2010年の7月10日ジョージ・スタイブレナーの逝去を境にヤンキースはワールドシリーズの舞台にすら一度も立てないばかりか、6年連続で地区優勝すらできない状況にあります

時間に関するコスト感覚がほとんど感じられないこのヤンキースと真逆の動きをしているチームこそが今年MLBペイロールで1位の座に躍り出たボストンレッドソックスです。「MLBにおいて戦略とは勝利の生産性を高めるための時間を制する技術である。」とも定義しましたが、21世紀に入って、ルースの呪いを2004年に解いてからというものボストンがワールドシリーズ制覇すること実に4回を記録し、極めて高い勝利の生産性を発揮しています。


2004 2007 セオ・エプスタインGM(2002~2011)

2013 ベン・チェリントン (2012~2014)

2018 デーブ・ドンブロウスキー (2015~2018)

21世紀(2002年)以降これまで3人のGMが登板し、すべてのGMが世界一を制覇しています。

どの優勝においてもこの大仕事を成すには様々なピースが数多く合わさって、はじめて成就するものです。今年に限れば大型契約を成功させる能力に長けたドンブロウスキーの存在も優れた働きをしましたが、実質的な攻撃におけるディレクター役を務めたコーラ監督の仕事ぶりは出色と言っていいでしょう。フライボールの最先端をいっていたアストロズからノウハウを直輸入しつつ、更にその先を行くための一手としてスモールベースボールをチームへ浸透させたその活躍は特筆すべきものがありました。MVPベッツや3冠王に手が届く位置にしたJDマルティネスの活躍その他の様々なスタッフ等の尽力もあって世界一という目標を達成した。

名将フランコ―ナ、マニ―とオルティスの強力ディオなどそうした過去4度の優勝は、各々のケースにおいて様々なピースが組み合わさり目標を成就したわけですが、あらゆるケースにおいて絶対に欠くことのなかった唯一無二のピースがひとつあります。そのピースこそボストンの歴史を変えた最大のキーマンでもある2002年に就任したション・ヘンリーオーナーです。ここに深い焦点を当てなくてはならない。

ボストンというチームは2002年に新オーナーが就任して以降、ルースの呪いを破った年を皮切りにチームが明らかに変わりました。

「<戦略の目的>と<制約条件>を明確に区別し、戦略家とは条件によって現実の動きを規定される人ではなく、条件を動かすことによって目的を達成しようとする人のことである。」

贅沢税という<制約条件>に目を奪われて、<戦略の目的>であるワールドシリーズ制覇を果たすということを二の次に考えるようなハル・スタインブレナーとはション・ヘンリーの発想が根本的に違う。ハル・スタインブレナーにはない物事をマクロで捉える力がション・ヘンリーには備わっています。贅沢税ラインを目の前にして大多数のチームが緊縮財政路線を取った中、ヘンリーはそこにチャンスを見出しまさに他のチームとは真逆の方針を採って贅沢税ラインなどおかまいなく、JDマルティネスを獲得したわけです

もし2018年ボストン率いるヘンリーと全く同じ状況にハル・スタインブレナーが置かれたら、どう動いたか。他も緊縮路線を取っているから、ここはうちも右に倣えで緊縮しようと判断をした可能性が極めて高い。というよりもほぼ間違いなく、贅沢税ラインを超える動きなどしなかったはずです。こうした間違った判断の繰り返しが現在のヤンキースの極めて低い勝利の生産性をもたらしています。

FA市場全体がこれといった動きをみせず他のチームが緊縮財政をしている中で、ヘンリーは贅沢税ラインを突破する動きを入れように、他のチームがフライボールの中にある価値を求めて空を見上げている中で、ゴロの中にある価値を見出しスモールベースボールを実践してみせる文化がボストンには備わっている。こうした他とは一味違うボストンの戦略性こそが、勝利を手繰り寄せているように私には見えるのです。そしてその一番のボストンにあるカルチャーの根っこには、ション・ヘンリーオーナーが座している。

ハル・スタインブレナーは勝てない理由を選手や監督のせいにするのではなく、勝利から遠ざかっている最大の原因を己の中に見出すべきです。

もしヘンリーがヤンキースのオーナーであれば、ワールドシリーズにかすりもしないシーズンをおくり続けることなどまずあり得ない。あるいはもし仮に2002年からハル・スタインブレナーがボストンのオーナーであったなら、ボストンはここまで勝利を積み重ねることができただろうか

優れたリーダーがいればそのチームを勝利へ導くことができる。戦いとは実にシンプルです。

ハル・スタインブレナーにオーナーになった直後の2009年は、ジョージ・スタインブレナーがまだ存命であり傀儡と言っても言い過ぎではなく明らかにボスの目を意識したチーム運営をしていました。サバシアやバーネット、テシェイラを獲得してハル・スタインブレナーは俺に任せろアピールをし、今では考えられないような超大型契約の連発であり、ここにあったのはまさしくジョージ流です。

ところがジョージ・スタインブレナーが地上から去った2010年以降は、ハル・スタインブレナーの器の大きさが透けて見えるような方針をヤンキースは取り始め、更に面白いのはこのケチケチ緊縮路線が日本のライターやファンには大変受けがいい点にあります。繰り返しますが、そしてその考えは基本的に完全に間違っています。

もし判断が正しければボストンにように必ず勝利という結果が出てくる。出ていないということはヤンキースのリーダーの何かが間違っていることを意味しています。ではなぜボストンは結果が出て、ヤンキースは結果がないのか?この両者を分かつ原因と結果を正しく分析しなければならない。

今年のヤンキースはどういう動きにでるのか。相変わらず贅沢税の前でブレーキをかけるのか。ただラインを超えるのではなく、必要とあらば大きく踏み越えることも辞さない姿勢を持つことができるのか。FA市場で大物が大量に出回る今年、オーナーとしての器が試される最大の年であると言っても過言はありません。

結論

ヤンキースの勝利の生産性が2010年を境に一気に下がったように、ボストンの勝利の生産性は2002年を境にメジャー最高を記録している。リーダーの能力が組織の命運を分ける。

帝国の復活なるか。2018年オフにヤンキースは大きなターニングポイントを迎えている。


セイバーメトリクス講座  アンドゥハーの貢献度について  WAR       

セイバーメトリクス
11 /15 2018


代替可能レベルの選手でチームを構成した場合には162試合のシーズンで勝率.320、52勝が期待出来る。つまり投打共にチームの総合WARがちょうど0.0だった時、そのチームは理論上52勝をする設計になっている。

例えば今年のBALなどは歴史的な大敗北を喫したわけですが、チーム全体の野手WARがわずか2.6であり大谷一個人よりも低い数値となっている。さてヤンキースは今年100勝しているわけですが、すなわちチームの総合WARは50.0前後を記録することが想定される。調べると チームの野手WARが29であり、 チームの投手のWARが26、合計55WAR。

参考までに1WARで1勝なので、代替選手だけで構成されたチームでもWAR0.0でも52勝ということは40WARの戦力のあるチームはシーズンでだいたい92勝できる。つまりPO進出圏内に入るということ。戦略的にはWAR40を超えるような戦力をGMは取りあえずそろえることが一つの仕事であると言ってもいい。

さてジェームズ氏はアンドゥハーのWAR2.2を100勝のうちわずか2勝分しか貢献していないと言っているが、これは誤解を与えかねない。セイバーメトリクス的には100-52=48勝、つまりざっくり言うと50勝分(実際は48勝)の内、2勝を貢献したと捉えるのが正しい。


セイバーメトリクスの出鱈目な記事も至るところにゴロゴロしているので、たまに気が向いたら修正記事を書くことにします。

代替選手とは、3Aの平均レベルの選手のことで、ずらっと3Aだけの選手だけでメジャーで戦ってもセイバー的には取りあえず52勝はできるだろうと想定している。

「三振かフライボール(ホームラン)か」という時代を超えて ポストフライボール革命 レッドソックスの戦略

フライボール
10 /16 2018


これまでの常識を打ち壊してフライボールを打ち上げろ、そにに打撃の革命的な大きな活路がある」とするライターたちによる論旨のコラムを目にして、2018年の4月、当ブログではあまりに内容が浅はかであると断じてきました。すっかり手垢のついた内容でもあり、メジャーにおける最先端にある考えではないことを「JDマルティネスの進化の過程の中に、フライボールの未来が見える」という記事で詳細に示しました。

何が駄目かというと、フライボールを全面的に肯定する実にペラペラな内容であり、そこにはフライボールを相対化し眺めるといった視点がまるで皆無であったからです。(もっともヤフコメ民やJ民などはフライボールの記事にすっかり色めき立っており、当ブログとは全く正反対の反応でした)

その記事のポイントを挙げるとすれば二つあります。

①フライボール率ではなく、打球速度こそが攻撃において重要なスタッツである。
②ライターが言うように無暗にフライボールを上げても必ずしも攻撃力が高まるものではない、フライボールに頼らない攻撃スタイルにも、深い焦点を当てるべきである。

打球速度の速い打球、ボールをハードヒットすることが何より大事であり、同時にホームランに頼らない攻撃スタイル、もっと簡潔に言えば、「スモールベースボールに新たな光を投じるべきである」と。グラウンドボールの中にもまたフライボールやラインドライブにもない見過ごされがちな長所は隠れており、さまざまな種類の打球に対しての細やかな目配りをし状況に適応することによって、より厚みのある攻撃が可能になる。フライボールにのみ目を奪われている限り、最先端のトレンドを読むことはできない。

そしてボストンの攻撃スタイルの根幹を成すのが、この2点であることはJDマルティネスの言葉や、コーラ監督の多彩な攻撃スタイルを見てもはっきりわかるはずです。己の誠実さというものに照らして偽りなく率直に話せば、シーズン開幕当初に行った個人的な分析結果に対する確かな手ごたえを与えてくれた唯一のチームこそが、ボストンでした。

ALDSでもヒットエンドラン、奇襲の単独スティール、積極的なダブルスティール、右方向への進塁打、意表をついた送りバント兼セーフティバント、外野飛球やボテボテの内野ゴロでの得点など、フライボールありきではないボストンの攻撃はヤンキースに比べて実にバリエーションが豊富であったと言えます。一方、ヤンキースは個々の打者が来たボールをフライボールで打ち返すといったものであり、ホームランが打てれば勝つが、打てなければ負けるというベースボールを実に単純なゲームへと変質させていました。

2014年当時、フライボールについてすでにオークランドが実践していたことを当ブログは分析しはっきり掴んでいました。快進撃を続けていた2014年8月まで遡ってオークランドの攻撃セイバー分析をしてみてください。数字がはっきり物語っています。かれこれ4年も前から出現したフライボールが今更、時代の最先端などということはあり得ないことなのです。

そして時代は必ず繰り返します。かつて流行し、古びてしまったものが装いを新たに現代に蘇ることは野球に限ったことでもありません。短期決戦になればなるほど、キャッチャーの捕球能力や隙のない走塁など細やかなプレーが、投手力や打撃力と並んで、勝負を分ける重要なポイントとなることが明らかになってきます。

ワイルドカード制が出来てからというもの連覇は少なくなった中、直近で3連覇したのはトーリ率いるヤンキースでした。オールドスクールのトーリの野球こそはまさしくスモールベースボールでした。そして短期決戦において何連覇もするチームが日本にもあります。それが隙のない野球の代名詞でもあったのが西武黄金期です。日米問わず、連覇をするにはするだけの運だけでも力だけでもない重要なキーとなるものがある。

リーグ優勝のみならず、短期決戦にも強く連覇するチームの特徴とは一体何なのか?

ワイルドカード制の時代において、安定して何度も世界一になろうと思うならば、セイバーメトリクス的に戦力を整えることはもちろん大事です。しかしそれだけでは絶対に何かが足りない。同じような戦力をもった強豪同士が戦う短期決戦において、相対的に相手を上回るにはどうすべきかを徹底して考え抜いていかなければならない

短期決戦を運次第などと言い、そこで思考停止している限り道が開かれるということはありえません。当ブログの一つの結論としてはフライボールが流行した今だからこそ、更に一歩前に出るには隙のないスモールベースボールが組織全体にまで行き渡っているチームへと戦略的に作り変えていく必要が出てくるというものです

メジャー全体のスタッツを見る限り、大きなトレンドとして「三振かフライボール(ホームラン)か」という時代にメジャーは突入しています。野球の質感としては実に大味でありその典型は2018年のヤンキースであり、数年前のアストロズの攻撃スタイルなどまさしく「三振かフライボール(ホームラン)か」でした。しかしこれでは攻撃のボラリティ(変動性)が高くなってしまうという弱点が出てくるわけです。エースに対しては沈黙するが、ワンクラス落ちると大爆発するような上下動の激しい打線。あるいは出る確率が限られるホームランが出なくなった途端、不調の波に飲み込まれてしまうような打線。こうした攻撃のボラリティ(変動性)を排除し、攻撃力の安定性を確保するには、ボストンのように三振を減らすと同時に、フライボールのみならず同時にスモールな攻撃スタイルをいくつも持っていることが大きな強みとなってきます。アストロズもかなり近いを路線を取ってはいますが、スタイルを見る限りスモールベースボールに対する研究がボストンほどではありません。

出る確率が限られるホームランに頼るよりも、出る確率は遥かに高いシングルや四球を攻撃のベースにすること。それらをエンドランやスティール、チームバッティングと絡めながらスモールを駆使して攻撃に厚みを持たせながら細かく点数を刻んでゆくオプションを持っているチームの方が、攻撃のボラリティは当然低く抑えることができます。

どれだけ多くの得点を取れるかも大事ではあるが、必要な時に如何に高い確率で得点を刻めるかこそが特に、プレーオフに大事になるのであり、そのためにはフライボールだけでは余りにキメが粗過ぎる。

すなわちフライボール革命についてのエッセンスについて十分吸収しながらも「三振かフライボール(ホームラン)か」という時代にあって「K率を減らすべくボールにコンタクトし、インフィールドへハードな打球を数多く飛ばしながら、ホームランが出なくても得点できるスタイルを追求する」。

スモールの最も象徴的なシーンはワールドシリーズ第一戦、ボストン初回の攻撃だったと言えます。この初回を見た時、シリーズはほぼ決まったとその時点では私自身は考えていました。(その後、第四戦にピンチにもなってやばいと思うことも・・・笑)

(10/17 追記 
例えば、ALCS第三戦でHOUカイケル攻略に対してBOSはシンカー対策として、フライボールで引っ張り一発で仕留めるのではなく、全員がセンターから逆方向へ強い打球をライナー狙いに徹したチームバッティングをした。この繋ぎの意識、全体攻撃のスタイルにあるものとは、フライボールに拘らないハードコンタクトと同時にチーム全体で投手を攻略しようとする、まさしくスモールな姿勢です。)

(10/26 追記
1点差でボストンが追いかけたWS第二戦の6回2死ランナーなし。そこからBOSはどういう攻撃を展開したのか。逆方向右へのシングル、センター前シングル、四球、四球、JDマルティネス、逆方向ライト前シングルで3点を獲得してドジャースを逆転。ここからわかるのは一発で決めるのではなく、徹底したボストンの繋ぎの意識です。とにかくフライボールを打ちまくれと2017年にフライボールブレークを果たした申し子JD・マルティネスが一転、現在では無暗にフライボールは狙わないとしFB率をリーグ平均以下へ急降下させており、繋ぐ意識が大事とする発言をしたことからもわかるように、意識が2017年から大きく変容をして2018年のJDがあります。)

(10/30 追記
しかして最終戦のWS第五戦では一発攻勢で相手を寄り切る。フライボールもオプションのひとつに過ぎないという位置づけ。これこそがこれからのメジャーにおける攻撃トレンドとして徐々に出てくるでしょう。状況に関わりなく1点が欲しい場面でポンポンとフライアウトを打ち上げてチャンスを潰した典型的なフライボールによるLADの攻撃スタイルではボストンには野球の質において到底勝てない。)

三振全盛の時代にあって、2018年K率が最も低くかつ最も攻撃力(+wRC)が高かったチームは全30チームでどこか?調べてみました。

アストロズであり、ボストンである。共に同率2位と3位。昨年、アストロズの超攻撃革命・ポストフライボールを示す重要なスタッツとしてK率を当ブログでは挙げました。このK率をリーグ屈指のレベルまで戦略的にボストンとアストロズは引き下げています。3年前まではK率の最も高く、かつホームランを最も放っていたのがアストロズでした。まさしく「三振かフライボールか」を戦略の根幹に据えていたわけです。しかしそこに時代の最先端はない。ちなみに最も攻撃力の高いチームはホームラン記録を作ったヤンキースですが、K率の高さは平均を遥かに上回るものでした。フライボールの典型。

2018年の5月時点、ライターたちはスラッガーという雑誌を見ても、2017年版のJD・マルティネスよろしくフライボールの記事を得々と書いている。これが本当の意味での時代の最先端ではないことを、「JDマルティネスの進化の過程の中に、フライボールの未来が見える」では訴えたかったわけです。

例えばボストンの盗塁数はメジャー30チーム中全体で3位であり、勝負を決めるここぞという場面で、局面を変えるために足もからめた攻撃にも積極的であることがわかります。あるいは野村IDというスモールベースボールを深化させた考えがありますが、野村の得意技の一つに投球の癖から球種を読むという実にアナログなノウハウがある。アストロズなどは単にデータにおいて先進的なだけでなく、投手の癖を盗む専門のスタッフが在中し、その癖を見抜く無形の力によってワールドシリーズ第七戦、ダルビッシュは見事に粉砕されました。(ビデオによるサイン盗みとは一線を画するべき。投手の癖を見抜くはルール上問題ない)

デジタル(セイバーメトリクス)が進化していく程に、アナログ(スモールベースボール)なものは廃れるのではありません。

むしろその古さの中に埋もれているものへ光を投げかけ、現代に蘇らせることが戦略的には極めて重要になる。ただしソーシアのようなオールドスクール型はいささか時代遅れであると繰り返しツィートでも指摘したように、ソーシアのあり方を是とするのでもない。単に古ければ素晴らしいというものでもありません。あくまで、デジタルを土台としてとアナログなものを掘り起こし、新しい時代にマッチさせ戦略的にそれらを融合することが大事になる。それがコーラ率いるボストンにははっきり表現されています。

GM目線で考えるとは戦略的にベースボールを見つめるということではあり、端的に言えば上から目線で物事を思考するということになります。そうしたGM目線でライターたちの記事を読む時、最前線にあるGMたちの思考力とライターたちの差は歴然たるものがあると言わざる得ないのです。もし興味があればライターによる単純なフライボール記事とは一線を画した内容の「JDマルティネスの進化の過程の中に、フライボールの未来が見える」という記事を一度読んで頂ければ幸いです。

フォローしてくれた皆さんに必ず書くと約束した記事こそが、「JDマルティネスの進化の過程の中に、フライボールの未来が見える」です。

結論

戦略的であるためには、未来を透視する力をその根底に据えなければならない

流行のフライボール革命と伝統としてのスモールベースボール。こうした二律背反したものをセイバーメトリクスという技術を通して戦略的に統合する時代に突入することにおそらくなる。「一発を秘めた豪華さ」(数年前のアストロズ)に「キメの細かい野球」(黄金期西武や野村IDの如きスモールな要素)が付加されるボストンの攻撃スタイルがこれからのメジャーのトレンドになると予見してこの記事を終えたいと思う。

ドジャースやヤンキース、アスレテックスと同じように、もし2018年のボストンの個々の選手がフライボール攻撃を単純に打ち上げるスタイルのチームであったとしたら、ボストンは今よりも強く優れたチームとして機能しただろうか。

おそらくNOであろう。

セイバーメトリクスの重要な役割のひとつはチーム競技にあって、個々の選手の能力を統計的にフェアーに刳り取ってくるところにある。この個々がバラバラのままにフライボールを打ち上げているだけでは戦略的には駄目であり、「この個々の力を活かしつつもチームとして機能させ、状況に合わせつつ点を線にし、力を集約するにはスモールなベースボールへの原点回帰こそが肝であることをコーラははっきりとした認識していた」。そう私には思えてならない。

セイバーメトリクスを活用しつつも、スモールベースボールについてボストンはおそらく我々が想像する以上に、研究し尽くしている。ただし巨人のように馬鹿のひとつ覚えの送りバント多用は決してしないスタイルではある。送りバント=スモールではない。細やかさや奇襲性、確実性を攻撃力に付加していくところにスモールの本質がある。

大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。