「三振かフライボール(ホームラン)か」という時代を超えて ポストフライボール革命 レッドソックスの戦略

フライボール
10 /16 2018


これまでの常識を打ち壊してフライボールを打ち上げろ、そにに打撃の革命的な大きな活路がある」とするライターたちによる論旨のコラムを目にして、2018年の5月、当ブログではあまりに内容が浅はかであると断じてきました。すっかり手垢のついた内容でもあり、メジャーにおける最先端にある考えではないことを「JDマルティネスの進化の過程の中に、フライボールの未来が見える」という記事で詳細に示しました。

何が駄目かというと、フライボールを全面的に肯定する実にペラペラな内容であり、そこにはフライボールを相対化し眺めるといった視点がまるで皆無であったからです。(もっともヤフコメ民やJ民などはフライボールの記事にすっかり色めき立っており、当ブログとは全く正反対の反応でした)

その記事のポイントを挙げるとすれば二つあります。

①フライボール率ではなく、打球速度こそが攻撃において重要なスタッツである。
②ライターが言うように無暗にフライボールを上げても必ずしも攻撃力が高まるものではない、フライボールに頼らない攻撃スタイルにも、深い焦点を当てるべきである。

打球速度の速い打球、ボールをハードヒットすることが何より大事であり、同時にホームランに頼らない攻撃スタイル、もっと簡潔に言えば、「スモールベースボールに新たな光を投じるべきである」と。グラウンドボールの中にもまたフライボールやラインドライブにもない見過ごされがちな長所は隠れており、さまざまな種類の打球に対しての細やかな目配りをし状況に適応することによって、より厚みのある攻撃が可能になる。フライボールにのみ目を奪われている限り、最先端のトレンドを読むことはできない。

そしてボストンの攻撃スタイルの根幹を成すのが、この2点であることはJDマルティネスの言葉や、コーラ監督の多彩な攻撃スタイルを見てもはっきりわかるはずです。己の誠実さというものに照らして偽りなく率直に話せば、シーズン開幕当初に行った個人的な分析結果に対する確かな手ごたえを与えてくれた唯一のチームこそが、ボストンでした。

ALDSでもヒットエンドラン、奇襲の単独スティール、積極的なダブルスティール、右方向への進塁打、意表をついた送りバント兼セーフティバント、外野飛球やボテボテの内野ゴロでの得点など、フライボールありきではないボストンの攻撃はヤンキースに比べて実にバリエーションが豊富であったと言えます。一方、ヤンキースは個々の打者が来たボールをフライボールで打ち返すといったものであり、ホームランが打てれば勝つが、打てなければ負けるというベースボールを実に単純なゲームへと変質させていました。

2014年当時、フライボールについてすでにオークランドが実践していたことを当ブログは分析しはっきり掴んでいました。快進撃を続けていた2014年8月まで遡ってオークランドの攻撃セイバー分析をしてみてください。数字がはっきり物語っています。かれこれ4年も前から出現したフライボールが今更、時代の最先端などということはあり得ないことなのです。

そして時代は必ず繰り返します。かつて流行し、古びてしまったものが装いを新たに現代に蘇ることは野球に限ったことでもありません。短期決戦になればなるほど、キャッチャーの捕球能力や隙のない走塁など細やかなプレーが、投手力や打撃力と並んで、勝負を分ける重要なポイントとなることが明らかになってきます。

ワイルドカード制が出来てからというもの連覇は少なくなった中、直近で3連覇したのはトーリ率いるヤンキースでした。オールドスクールのトーリの野球こそはまさしくスモールベースボールでした。そして短期決戦において何連覇もするチームが日本にもあります。それが隙のない野球の代名詞でもあったのが西武黄金期です。日米問わず、連覇をするにはするだけの運だけでも力だけでもない重要なキーとなるものがある。

リーグ優勝のみならず、短期決戦にも強く連覇するチームの特徴とは一体何なのか?

ワイルドカード制の時代において、安定して何度も世界一になろうと思うならば、セイバーメトリクス的に戦力を整えることはもちろん大事です。しかしそれだけでは絶対に何かが足りない。同じような戦力をもった強豪同士が戦う短期決戦において、相対的に相手を上回るにはどうすべきかを徹底して考え抜いていかなければならない

短期決戦を運次第などと言い、そこで思考停止している限り道が開かれるということはありえません。当ブログの一つの結論としてはフライボールが流行した今だからこそ、更に一歩前に出るには隙のないスモールベースボールが組織全体にまで行き渡っているチームへと戦略的に作り変えていく必要が出てくるというものです

メジャー全体のスタッツを見る限り、大きなトレンドとして「三振かフライボール(ホームラン)か」という時代にメジャーは突入しています。野球の質感としては実に大味でありその典型は2018年のヤンキースであり、数年前のアストロズの攻撃スタイルなどまさしく「三振かフライボール(ホームラン)か」でした。しかしこれでは攻撃のボラリティ(変動性)が高くなってしまうという弱点が出てくるわけです。エースに対しては沈黙するが、ワンクラス落ちると大爆発するような上下動の激しい打線。あるいは出る確率が限られるホームランが出なくなった途端、不調の波に飲み込まれてしまうような打線。こうした攻撃のボラリティ(変動性)を排除し、攻撃力の安定性を確保するには、ボストンのように三振を減らすと同時に、フライボールのみならず同時にスモールな攻撃スタイルをいくつも持っていることが大きな強みとなってきます。アストロズもかなり近いを路線を取ってはいますが、スタイルを見る限りスモールベースボールに対する研究がボストンほどではありません。

出る確率が限られるホームランに頼るよりも、出る確率は遥かに高いシングルや四球を攻撃のベースにすること。それらをエンドランやスティール、チームバッティングと絡めながらスモールを駆使して攻撃に厚みを持たせながら細かく点数を刻んでゆくオプションを持っているチームの方が、攻撃のボラリティは当然低く抑えることができます。

どれだけ多くの得点を取れるかも大事ではあるが、必要な時に如何に高い確率で得点を刻めるかこそが特に、プレーオフに大事になるのであり、そのためにはフライボールだけでは余りにキメが粗過ぎる。

すなわちフライボール革命についてのエッセンスについて十分吸収しながらも「三振かフライボール(ホームラン)か」という時代にあって「K率を減らすべくボールにコンタクトし、インフィールドへハードな打球を数多く飛ばしながら、ホームランが出なくても得点できるスタイルを追求する」。

スモールの最も象徴的なシーンはワールドシリーズ第一戦、ボストン初回の攻撃だったと言えます。この初回を見た時、シリーズはほぼ決まったとその時点では私自身は考えていました。(その後、第四戦にピンチにもなってやばいと思うことも・・・笑)

(10/17 追記 
例えば、ALCS第三戦でHOUカイケル攻略に対してBOSはシンカー対策として、フライボールで引っ張り一発で仕留めるのではなく、全員がセンターから逆方向へ強い打球をライナー狙いに徹したチームバッティングをした。この繋ぎの意識、全体攻撃のスタイルにあるものとは、フライボールに拘らないハードコンタクトと同時にチーム全体で投手を攻略しようとする、まさしくスモールな姿勢です。)

(10/26 追記
1点差でボストンが追いかけたWS第二戦の6回2死ランナーなし。そこからBOSはどういう攻撃を展開したのか。逆方向右へのシングル、センター前シングル、四球、四球、JDマルティネス、逆方向ライト前シングルで3点を獲得してドジャースを逆転。ここからわかるのは一発で決めるのではなく、徹底したボストンの繋ぎの意識です。とにかくフライボールを打ちまくれと2017年にフライボールブレークを果たした申し子JD・マルティネスが一転、現在では無暗にフライボールは狙わないとしFB率をリーグ平均以下へ急降下させており、繋ぐ意識が大事とする発言をしたことからもわかるように、意識が2017年から大きく変容をして2018年のJDがあります。)

(10/30 追記
しかして最終戦のWS第五戦では一発攻勢で相手を寄り切る。フライボールもオプションのひとつに過ぎないという位置づけ。これこそがこれからのメジャーにおける攻撃トレンドとして徐々に出てくるでしょう。状況に関わりなく1点が欲しい場面でポンポンとフライアウトを打ち上げてチャンスを潰した典型的なフライボールによるLADの攻撃スタイルではボストンには野球の質において到底勝てない。)

三振全盛の時代にあって、2018年K率が最も低くかつ最も攻撃力(+wRC)が高かったチームは全30チームでどこか?調べてみました。

アストロズであり、ボストンである。共に同率2位と3位。昨年、アストロズの超攻撃革命・ポストフライボールを示す重要なスタッツとしてK率を当ブログでは挙げました。このK率をリーグ屈指のレベルまで戦略的にボストンとアストロズは引き下げています。3年前まではK率の最も高く、かつホームランを最も放っていたのがアストロズでした。まさしく「三振かフライボールか」を戦略の根幹に据えていたわけです。しかしそこに時代の最先端はない。ちなみに最も攻撃力の高いチームはホームラン記録を作ったヤンキースですが、K率の高さは平均を遥かに上回るものでした。フライボールの典型。

2018年の5月時点、ライターたちはスラッガーという雑誌を見ても、2017年版のJD・マルティネスよろしくフライボールの記事を得々と書いている。これが本当の意味での時代の最先端ではないことを、「JDマルティネスの進化の過程の中に、フライボールの未来が見える」では訴えたかったわけです。

例えばボストンの盗塁数はメジャー30チーム中全体で3位であり、勝負を決めるここぞという場面で、局面を変えるために足もからめた攻撃にも積極的であることがわかります。あるいは野村IDというスモールベースボールを深化させた考えがありますが、野村の得意技の一つに投球の癖から球種を読むという実にアナログなノウハウがある。アストロズなどは単にデータにおいて先進的なだけでなく、投手の癖を盗む専門のスタッフが在中し、その癖を見抜く無形の力によってワールドシリーズ第七戦、ダルビッシュは見事に粉砕されました。(ビデオによるサイン盗みとは一線を画するべき。投手の癖を見抜くはルール上問題ない)

デジタル(セイバーメトリクス)が進化していく程に、アナログ(スモールベースボール)なものは廃れるのではありません。

むしろその古さの中に埋もれているものへ光を投げかけ、現代に蘇らせることが戦略的には極めて重要になる。ただしソーシアのようなオールドスクール型はいささか時代遅れであると繰り返しツィートでも指摘したように、ソーシアのあり方を是とするのでもない。単に古ければ素晴らしいというものでもありません。あくまで、デジタルを土台としてとアナログなものを掘り起こし、新しい時代にマッチさせ戦略的にそれらを融合することが大事になる。それがコーラ率いるボストンにははっきり表現されています。

GM目線で考えるとは戦略的にベースボールを見つめるということではあり、端的に言えば上から目線で物事を思考するということになります。そうしたGM目線でライターたちの記事を読む時、最前線にあるGMたちの思考力とライターたちの差は歴然たるものがあると言わざる得ないのです。もし興味があればライターによる単純なフライボール記事とは一線を画した内容の「JDマルティネスの進化の過程の中に、フライボールの未来が見える」という記事を一度読んで頂ければ幸いです。

フォローしてくれた皆さんに必ず書くと約束した記事こそが、「JDマルティネスの進化の過程の中に、フライボールの未来が見える」です。

結論

戦略的であるためには、未来を透視する力をその根底に据えなければならない

流行のフライボール革命と伝統としてのスモールベースボール。こうした二律背反したものをセイバーメトリクスという技術を通して戦略的に統合する時代に突入することにおそらくなる。「一発を秘めた豪華さ」(数年前のアストロズ)に「キメの細かい野球」(黄金期西武や野村IDの如きスモールな要素)が付加されるボストンの攻撃スタイルがこれからのメジャーのトレンドになると予見してこの記事を終えたいと思う。

ドジャースやヤンキース、アスレテックスと同じように、もし2018年のボストンの個々の選手がフライボール攻撃を単純に打ち上げるスタイルのチームであったとしたら、ボストンは今よりも強く優れたチームとして機能しただろうか。

おそらくNOであろう。

セイバーメトリクスの重要な役割のひとつはチーム競技にあって、個々の選手の能力を統計的にフェアーに刳り取ってくるところにある。この個々がバラバラのままにフライボールを打ち上げているだけでは戦略的には駄目であり、「この個々の力を活かしつつもチームとして機能させ、状況に合わせつつ点を線にし、力を集約するにはスモールなベースボールへの原点回帰こそが肝であることをコーラははっきりとした認識していた」。そう私には思えてならない。

セイバーメトリクスを活用しつつも、スモールベースボールについてボストンはおそらく我々が想像する以上に、研究し尽くしている。ただし巨人のように馬鹿のひとつ覚えの送りバント多用は決してしないスタイルではある。送りバント=スモールではない。細やかさや奇襲性、確実性を攻撃力に付加していくところにスモールの本質がある。

セイバーメトリクス的には新人王は文句なしに大谷翔平がふさわしい理由を明らかにする

大谷翔平
09 /10 2018

大谷と新人王候補であるアンドゥハーを比較する際に、フェアーを気取って出場試合数が少ない、打率が300に達していない、規定打席に達してしない、本塁打の数が20本にあと一本足りず負けている、と大谷劣勢を分析するメジャーファンが多いが、セイバーメトリクスを理解していない人達によるフェアー気取りの分析よりも、彼らが主張することをすべて網羅しつつ限りなくフェアーな指標こそがセイバーメトリクスにはある。

それがWARという指標である。

特にこのWARという指標は健康というツールを過大でも過小でもなく適正に評価できるところに最大の特徴がある。つまり本来的にWARはアンドゥハー有利の設計となっている。。WARという指標の存在自体は誰でも知っているが、よく理解していない人が想像以上に多いために(コメント見れば一発でその理解度はわかる)fWARについて細かい部分は若干違うことは知りつつも、大筋においては正しく、わかりやすさを最優先させてこの記事は書くことにする。

大前提としてWARが無欠な指標ということはあり得ないが、その設計理念なりを正しく理解しかつ否定するのと、よく理解もせずに否定するのは全く違うことを最初に指摘しておく。

まずはざっと二人の数値を挙げる。

大谷      
OPS 964 打席数 289 DHポジション補正 -17.5 守備力 0

アンドゥハー 
OPS 853 打席数 497 3rdポジション補正 +2.5 守備力 UZR -13

まずポジション補正を見るとデフォルトでもし全162試合出場すると 大谷はDHであるために-17.5得点をくらうことになり、アンドゥハー+2.5得点加算されることになる。両者の差はこのポジションの難易度によってフル出場したならば、すでにデフォルトで20.0のアドバンテージがアンドゥハーに与えられることになる。

ちなみにこの20.0というアドバンテージの差はWARに換算すると2.0の差がつくことを意味している。2.0という数字をわかりやすく言うと、青木が全盛期に一年間フルで働いてようやくたたき出す数値である。青木メジャー通算5年で9.7WAR。これほどに大谷はDHとしてのハンデをセイバーメトリクス的には負っていることを知らなければならない。

実際大谷は162試合に出場しないためにポジション補正は-10.0得点前後を食らうことが予想される。(162試合DHなら-17.5のマイナスを食らう)。一方全試合を出場するアンドゥハーにはほぼ+2.5が与えられることになる。

よってふたりのポジション補正の差はちょうど13.0前後となる。この13.0という数値こそ、壊滅的な守備力で度々チームをピンチに陥れてきたアンドゥハーの守備力UZR-13.0とほぼ一致する。つまりいくらDHとサードというポジションの難易度に差があってもアンドゥハーの守備力の酷さがその差を完全にカバーしてしまっていることになる。それほどにアンドゥハーの守備力は酷いことがわかる。だから最近ではヤンキース、ゲーム終盤にはサードに守備固めを入れられる始末である。

では、次に攻撃力の比較をしたい。

たしかに打席数を見ると大きな差がある。OPSもアンドゥハーはしっかりした数字を残している。しかしヤンキーススタジアムという典型的なヒッターズパークをホームにしている打撃成績であるために、WARでは平均的なスタジアムをホームにした場合の補正がかかることになる。AL東地区はトロピカーナフィールドを除いてヒッターズパークが多数である一方、西地区のPFを見るとTEXのアーリントンを除いて典型的なピッチャーズパークが多数を占めている。

過去三年のホームPF平均を参考までに出してみる

ヤンキーススタジアム 1.080
アナハイムスタジアム 0.970

今回はこの数字を採用して先に話を進める。つまりよりフェアーに両者のOPSも平均的なボールパークを基準に補正するとアンドゥハーOPSは8%ほど減じる必要があり800以下の扱いになるのに対して大谷のOPSは3%ほど上げる必要があり900後半の大谷はOPS1.000扱いにすることをセイバーメトリクス的にフェアーであると考えられるわけである。最終的にはOPS800の打者が489打席と立つのとOPS1000の打者が289打席立つのをリーグ平均の打者に比べて得失点差換算して、どれだけの攻撃力を有しているのか、セイバーメトリクスではオフェンスWARとして算出している。

(今年、アナハイムスタジアムは改修はされており、PFの数値は0.970よりやや上方修正を迫られるかもしれないが、いずれにしてもヤンキースタジアムよりも打者有利ということは絶対にあり得ない。またここではお馴染みのOPSを使っているが本来はwOBAを使用する。便宜上わかりやすさを優先、)

リーグ平均OPSは730である。

アンドゥハー 800 (PF修正後のOPS)-730 (リーグ平均OPS)=70
大谷     1000 (PF修正後のOPS)-730 (リーグ平均OPS)=270

アンドゥハー 打席数 497
大谷      打席数 289

質(OPS) × 量(打席数) = 全体(攻撃WAR)

大谷     oWAR 21.2
アンドゥハー oWAR 17.3

打席数を加味すると大谷は平均的な打者に比べて21.2得点多く攻撃力で稼いでいるが、アンドゥハーは17.3得点、平均的なメジャーリーガーよりも攻撃力があると計算される。

たとえ打席数が少なくても大谷の打席の質・攻撃力が高ければオフェンスWARではアンドゥハーの上をいっているのがセイバー的には揺るぎない事実である。総合fWARはざっくり言えばディフェンスWAR(守備力を得点換算)とオフェンスWAR(攻撃力を得点換算)にベースラニングを得点化したものを足し、最終的にポジション補正をし平均レベルからリプレイスメントレベルに転換することによって求められる。毎試合出場するアンドゥハーはこのリプレイスメントレベルへ転換する際に、大きなアドバンテージを得る。
かくして

大谷     fWAR 2.4
アンドゥハー fWAR 2.3

となる。更に大谷は投手のfWAR1.0があり、トータルWARは3.4であり大谷に軍配が上がることになる。セイバーメトリクスのWARがどのような設計になっているのか、理解していればごく一部を除くヤフコメ民のような頓珍漢なコメントが増産されることは絶対にない。

もしアンドゥハーがリーグ平均レベルの守備力を持っていたら、UZR-13失点分がWARに加算されることになり単純に2.3に1.3を足せばWAR3.6となり、大谷の3.4を上回ることになる。よって新人王は文句なしにアンドゥハーで決まりだろう。しかし実際、大谷のWARはアンドゥハーよりも1.1も上回っている以上、セイバーメトリクス的には文句なしに新人王は大谷で決まりである。もっとも投票するのは記者であり、セイバーメトリクスへの理解度もピンキリである。ヤフコメ民の認識と大差はない勉強不足の記者もかなりの数いる。ちなみにTV解説者でWARについて説明できる人は皆無。小早川にしても残念ながらセイバーメトリクスのWARについては全然理解していない。結論としてはWARという指標の持つフェアネスの感覚からすれば、私ならば大谷へ一票を投じる。ただ繰り返すが、もしアンドゥハーの守備力がリーグ平均レベルにあれば、投票はアンドゥハーにする。」

1WARとは10得点、選手が稼ぐことによって生じるのであり、UZRの数値を単純に1/10にすればその数値がWARに直接反映されることになる。言われてハッと気づく人もいるに違いない。それほどにセイバーメトリクスの理解というものが日本にはまだ根付いていない。

今話をしたのはfWARではあるがrWARでは 守備指標がDRSを使われており-24というもはや救いがたい数値でありアンドゥハーのWARを守備だけで-2.4も食らうことになり、推して知るべしということになる。

守るポジションも過小評価すべきでないように守備力もまた過小評価してはならないことがアンドゥハーの例は明示する。ヤフコメを見る限り、攻撃力を過大評価し守備力を過小評価するというバイアスは今でも相も変わらず生きていることを痛感する。

ちなみに「WARがなぜ平均レベルの選手を基準にせずに、リプレイスメントレベルの選手を基準して設計されているのか?」この深い問いかけに真っ向から回答できる人がどれだけいるだろうか。WARがリーグ平均レベルとの比較でも良さそうだが、リプレイスメントレベルでなければ絶対に駄目な本当の理由をきっちり答えられる人はおそらく極めて少ない。

いずれ機会があればこの話もしていきたい。














JDマルティネスの進化の過程の中に、フライボールの未来が見える        

フライボール
08 /27 2018


この記事自体はほぼ2018年4月には確実に頭の中にあったものです。一部 現時点8月より加筆修正。今年になってOAKのフライボールも再び脚光を浴びていますが、過去のブログにも書いたように2014年の頃からOAKがフライボール革命を実践していたことを私自身ははっきり掴んでいました。

よって周囲がフライボールに熱中する2017年の終盤においては、アストロズの最新戦略を分析するにあたり「フライボールありきという考え方はガチで古い」という警鐘もいち早く鳴らしてきたのです。そしてそのアストロズのベンチコーチだったコーラがボストンへ就任して、早くもアストロズ流儀の新たな戦略を打ち出して成功しているようです。

今年の5月ツィッターでライターたちのフライボール礼讃記事について、その薄っぺらな記事の内容に批判をしました。今回はライターによるフライボール記事のいったい何が薄っぺらなのかを明らかにするとともに、フライボールというだけですぐに色めき立ったヤフコメ民やJ民と言われる人たちがなぜ時代遅れになってしまうのかその理由も明らかにしていきたい。

===

スポーツライターT氏による「フライボールこそ攻撃力をドライブさせる重要なキーである」とする礼讃記事やS氏監修によるGetスポーツという番組における、「プロであればどのような打者でもフライボールによってホームランを量産し攻撃力をアップすることは理論的に可能である」とした論旨の番組を観るに、少なくない方々がフライボールについてミスリードされている可能性が高いと結論するに至り、ブログ「MLB 戦いの原理を求めて」を再開するにあたって、フライボールについて改めて考察を加えていきたい。

なぜこうした極めて筋の悪いフライボールを扱った記事や番組が巷に堂々と出回るかというと、その根本には<フライボール革命によってホームランという最大の攻撃イベントをはじめとする長打を増やすことが攻撃力を真にアップさせることに直結する>という単純な勘違いを彼らがしているからである。

ブログ第一弾目はフライボールの光と影をバランスよく見つめながら攻撃力の全体像をより重層的かつ立体的に捉える試みをする。

さて、ところでFIPを発案したことで有名なトム・タンゴというセイバーメトリシャンをご存知だろうか。トム・タンゴはこのフライボールと攻撃力の関係性について極めて重要なレポートを報告している。

そのトム・タンゴによるフライボール分析報告の第一のポイントとは、FB率増によって攻撃力が上がった選手でいる一方で、ほぼ同数の選手は攻撃力が下がっているという点にある。つまりフライボール革命がジャストフィットして攻撃力を大きく上げる選手とほぼ同じ割合で、フライボールによって攻撃力を下げてしまう打者が現実に存在しているということをトム・タンゴは報告しているのである。

ところが日本のセイバーメトリクスをリードしているアナリストの神事努が監修したGetスポーツや丹羽政善というジャーナリストが書いたフライボールの記事を読んだ限り、彼らは前者の攻撃力が大きく上がった選手だけを恣意的に取り上げ、あたかもフライボールはほぼ全打者に適応可能であり、かつフライボールこそが攻撃力を大きくアップさせる最大のキーとなる技術であるかのよう錯覚を読者に与えている。率直に言って、そうした極めて浅い分析に接したことが、ブログ再開の最大の原動力にもなったことを明言しておきたい。

三振を恐れず、2017年のようにボールがより高反発なライブボールへと変更され、フライボールが流行すれば、MLB全体でも歴史的なホームラン数をたたき出すことは道理には違いない。しかしホームラン数がアップすることは攻撃力がアップすることに必ずしも直結しない、そうした重要な事実をトム・タンゴはレポートしているのだ

より具体的に話をしたい。例えば典型的なラインドライブヒッターであったテシィエラというバッターはFAで満を持してヤンキースに超大型契約で鳴り物入りで入団した。FA直近2年は打率も300を超えながら本塁打も30本前後を打つような惚れ惚れとするような素晴らしいバッターであった。しかし狭いヤンキースタジアムを本拠地にした途端、テシィエラは戦略的にバッティングスタイルを一新し典型的なフライボールヒッターへと変貌させた。結果、テシィエラは本塁打王にも輝いたものの同時に打率は300を常に切るようになった。

そしてここが極めて重要なポイントなのだが最終的に本塁打を増やしタイトルも獲得したテシィエラのOPSはフライボールヒッターになって以降、明らかに落ちたのである。

フライボールによるホームラン数がアップすることは攻撃力のアップすること必ずしも直結しないことをテシィエラの例は教えてくれる。投手からすれば率を下げてまでホームランを狙うよりもラインドライブヒッターのままに30本塁打を放っていたテシィエラの方が数段嫌な打者だったはずであり、それはOPSの数字からもうかがい知ることができる。

更にトム・タンゴのリポートでは重要な観点を提出している。攻撃力と強い相関関係にあるのはFB率などではなく、打球速度であると結論されている。FB率などよりも攻撃力においてハードコンタクトの重要性をタンゴはセイバーメトリクス分析報告をしていた。このような重要な報告をアストロズやボストンが知らないわけがない。大谷翔平がゴロアウト製造機と化し4月開幕前にマイナーへ落とせ、メジャーで通用しないの大合唱の中で、多くのバッシングをしていた彼らと異質の見解を私はツィートで示した。

その概要はおよそ下記のとおり。

「多数の人がそうであるようにスプリングトレーニングの悲惨な大谷の打撃成績にのみ目を奪われてはならない。アウトの質に目を向けるべきである。大谷のゴロアウトの打球速度にこそフォーカスすべきであり、その速度はチームで1位2位を争うものである。メジャーの異質な環境に慣れてボールが上がり出せば問題なく、大谷翔平はメジャーという舞台でもそのパワーを遺憾なく発揮することをこのデータは意味している。慣れるためには数多くのチャンスを大谷へソーシアが与えるべきだが、問題は堪え性の無いソーシアがすぐに大谷を見切りをつけてしまうかどうかにかかっている。」と。

幸い大谷がすぐに結果を出したためにマイナー送りにはならなかったが、LAAのブルペン登板過多を見てもわかるように、ソーシアという人は堪え性がなく目先の一点、目先の一勝に目を奪われがちなスモールな傾向も明らかに持っている。尚、大谷の打球速度は現在においてもメジャー全体の上位3~5%以内に入るほどであり、打者としてのエリート性を存分に示すものとなっている。開幕直後の3連発が最大の分岐点だったように思う。

結果が出てから大谷は打者として成功すると思っていたと言うことは誰にでもできる。開幕直前、大谷二刀流がバッシングの最中に何と言っていたかこそが重要である。

さて、ところで打球種類はグランドボール(ゴロ)フライボール、ラインドライブと3種類にカテゴライズされるが、トム・タンゴのレポートにもあるように打球速度が攻撃力に一定の相関関係があることが結論されていることからも直感的にもわかるようにラインドライブが他の打球を圧倒して高い攻撃力を有している。

言うまでもなくゴロやフライには打球速度の遅いものから速いものまで速度に幅広いレンジがあるが、打球速度の遅いラインドライブは基本存在しない。

以下、比較優位という考え方を基に打球の3種に当てはめて少し掘り下げて考えてみたい。

データ元はBaseball-Reference.com

ラインドライブ  AVG 628 SLG 955 OPS 1583 BABIP 615 HR 595
フライ      AVG 211 SLG 676 OPS 887 BABIP 090 HR 2748
ゴロ       AVG 245 SLG 267 OPS 513 BABIP 245 HR 0

例えばフライボールはラインドライブに対して攻撃力における総合価値では負けても、ホームランという観点から眺めるならばゴロはもちろんラインドライブと比較しても最高の打球種であることがデータからも明らかになっている。

では、総合的攻撃力において3者の中で明らかに劣るゴロが、フライボールに比較優位から勝るべき点はあるだろうか。

BABIPという観点からすればゴロ245に対してフライボール90であり明らかにゴロが勝っている。イチローの打撃戦略の根幹をも成しているゴロのBABIPがフライに比べて明らかに高いという視点は持ってしかるべきだろう。少なくともイチローがフライボールやホームランなどにうつつを抜かしていたならば、本塁打も多少は増えていただろうが様々なヒット数にまつわる史上記録も生まれなかったし、殿堂入り確実なプレイヤーなどには絶対になれなかった。

無暗にフライボールに飛びつき「ゴロを転がせば何かが起きる」という考えを古めかしいと単純に切って捨ててはならず、この考え方にも一理はあるという点を見過ごしてはならない。

例えばシングルヒット1本あれば十分という状況はベースボールにある。そうした場面に限ればセイバーメトリクス的にも確率の低いフライを敢えて狙う必要などない。打者のタイプによってはラインドライブからゴロを意識したバッティングをすることが大事になるシーンは現実にあるだろう。言うまでもなくベースボールにはフライボールを狙うべきシーンとグラウンドボールを狙うべきシーンが当然あり、状況において最適な打球の種類は変わっていくものである。特に短期決戦で目先の一点を争うシーンでは選択すべき打球を的確にチョイスすべきである。

では、圧倒的に攻撃力において劣るゴロがラインドライブに比較優位から優る点はあるだろうか。

ふつうに考えればありそうもない。しかしある視点から眺めた時、ゴロがラインドライブに勝る点が一点ある。それがアウトの生産性というスモールな観点である。

LAAホーム9回裏同点、先頭打者が2塁打で出たケースをたまたま中継で観ていたことがある。次の打者はトランボであった。1点あればいいシーンであり、メジャーでもこういう場面ならばしばしば送りバントもあるが打者が打者であるだけにソーシアは打たせた。(正しい判断だと思う)結果は強烈な打球がライト真正面に放たれ、結果1死2塁となり、次の打者が深いセンターフライを放つものの、結局LAAは得点はできず、延長に入ってその試合をLAAは落としてしまった。

もしトランボがランナーをセカンドゴロアウトで3塁へ進めていれば、次の深い外野フライで試合に勝利という形で決着がついていたかもしれない。そしてこの1敗が1勝へひっくり返るだけで、プレーオフに出ることができるかどうかのレギュラーシーズンの大きな分岐点となるケースは、現実にある。2つのワイルドカードが制定されたメジャーでは162試合目まで争うことはもはや毎年の通例となっている。

(10/31 追記
WSシリーズ第三戦、延長同点無死、2塁でヌネスはどうしたか。セカンドゴロを狙って打ち、ランナーを進めて逆転に繋げた。あれこそがまさにスモールな発想であり、ゴロの持つ価値を知り抜いたボストンの打撃であったと言える。この意識の徹底ぶりは相当なものであり、ボストンがスモールについて相当研究し尽くしてきたことがいずれ明らかにされる時が来るだろう。)

アウトの生産性という観点からすれば、セカンドライナーよりもセカンドゴロアウトの方が攻撃力において優位となるケースがあるという点にこそ、当ブログはベースボールの奥深さを再認識する。日本にはフライボールをやたらに礼讃するライターやアナリストがいるが、彼らはフライボールに焦点を絞り視野が狭すぎる余り、攻撃力そのものの全体を見渡す視点が欠如していると言わざる得ない。

ゴロにもまたフライボールやラインドライブよりも比較優位な点が現実に存在するという重層的かつ複眼的な視点を失ってはならないことは改めて強調しておきたい。

フライボール革命そのものを否定するつもりも更々ない。フライボールによって成功するチームもあれば、躍進を遂げる打者も数多くいる。ただ光と影は不可分にして一体であり、現時点においてはフライボール率を上げることによって成績が上がる選手に比べて落ちる選手もほぼ同等の数だけいるという現実の全体像を正しく伝えることこそが、スポーツジャーナリズムというものではないだろうか。例えばSEAのゴードンがフライボールに目覚めて、攻撃力は大きくアップするだろうか。

勝利するためにチームとしての攻撃力を最大化するという文脈の中で、フライボール革命もまた的確に位置づけることが大事となる。様々な特徴を持つ選手を生かし、攻撃力を最大化すべくチームが勝利をするために必要な考え方を手に入れるためには、イニングや得点差も含めた状況に応じてゴロ、フライ、ライナーという3種類の打球の全体像を広い視野によって見渡すことによってそれぞれの長所と短所を把握することが欠かせない。スモールへの確固たる視座である。

雑誌やテレビでもっともらしくフライボールの内容が数字とともに取り上げられると、リテラシーなき多くの読者は過大にフライボール革命を表現するライターたちの記事をすっかり鵜呑みにしてしまっている。



ここからは、数か月前より現在までジャンプアップします。 

2018年8月26日。昨年までフライボール革命についてあれだけ熱弁を揮っていたDJマルティネスについてワールドスポーツに登場しているアナリスト・アンドリュー氏が分析を試みました。全く当ブログと同じ結論に至っており、以下アンドリュー氏が言いたかったことをまとめてみたい。

「(多くの日本のライターが主張するような)FB革命とはフライボールをどんどん打ち上げれば攻撃力が増すというような単純な理論ではない。現在2018年三冠王も射程に入っているJDマルティネスは昨年ブレークを果たした2017年に比べて打球角度が平均で5度落ちて、FB率43.1%→31.4%フライボール率を激減させているがwRC+は 166 → 181 へアップしている。

JDマルティネスは昨年のフライボールありきから更に進化し状況に応じてバッティングしているのである。


結論

テシェイラの例でも明らかなようにフライボールによってホームランや長打を数多く打つことは、必ずしも攻撃力アップを保証はしない

「フライボール率を大きく下げて更に躍進を果たしたフライボールの申し子JDマルティネス」。そして「フライボール率を上げて本塁打王まで取ったが、攻撃力そのものは下げてしまったテシェイラ」。こうした事象一切をライターたちによる単純な「フライボールによってホームランを量産し攻撃力をアップせよ」とする記事ではとても説明し切ることができない。だからライターによるフライボール記事の薄っぺらさについて、私自身は瞬間的にツィートでも反応したのです。もちろんゴロという打球の中にある貴重な価値に対しても細やかな目線というものはライターには一切ない。

「NYY時代のテシェイラはJDマルティンス同様、フライボールを減らし、ラインドライブヒッターへ戻るべきだった」

そう8年前にスタッツを眺めていた頃から、一貫して私自身は考えていました。

一方でフライボールを増やして更にスタッツを引き上げたムッキー・ベッツがいる。ベッツだけでなくマルティネスもすべてを網羅するような論理的にあらゆるタイプの打者を説明し切るだけの最先端のバッティング理論がフライボール革命を包括しながらトラッキングシステムというツールを通して完成へ向かって進化することになるはずです。成功例であるベッツだけを恣意的に取り上げてはならない。物事をもっと立体的に捉える力が必要となるということです。フライボールを如何に多く打つかではななく、おそらく各打者にとって攻撃力を最大化するフライボールの最適値を今後求められる時代に入っていくことなるでしょう。

ではそうした時代に突入するならば、次なる課題にはいったい何が立ち上がってくるのか。こうした問いを自ら打ち立てる力こそが、大事になる。

フライボールにフォーカスする余り、視野を狭ばめ全体像を俯瞰することができないライターたちが時代に遅れになってしまう最大の理由とは何か。それはおそらく彼らが歴史がどのように動いていくのか運動法則を知らないからであり、戦略家の目線で物事を捉える力に乏しいからである。ある一つのトレンドが出てきた時に、その流れに一緒に乗ろうとすることは大事ではあるが、真の戦略家は一歩先先んじるために皆と同じ方向を向くことやめて、他へ向かって歩き出すことになる。この視点が決定的に欠けている。フライボールを相対化する眼を持たなければ、次なるトレンドを読み切ることはできない。

時代の最先端を捉えようとする際の私的流儀、それは歴史の運動法則を学び、それを基礎に据えつつも「アストロズの戦略家ルーノウの如き目線でトレンドを捉え、更にその一歩先を予測せよ」ということになる。すでに昨年末において、フライボールはガチで古いと言ってきたのもその延長線上にあります。

ヤフコメ民やJ民などを見ている限り、ライターの記事で十二分に満足しており、それでは単に時代の流れに乗っているにすぎずアストロズの戦略家ルーノウ目線で未来を見つめている人はコメントを見る限りほぼいない。だから彼らもまた時代の最先端をキャッチしているつもりが、常に半歩、時代に遅れてゆくことになる。

「JDマルティネスの進化の過程の中にこそ、フライボールの未来が見える。」

歴史の運動法則を掴み、戦略家のGM目線で全体を俯瞰する力こそが、分析力の源泉になければならない。この力こそ、未来を深く透視するためには必須のツールである。






アストロズ革命!なぜ当ブログは戦略をテーマとしてきたのか。          

戦略
01 /23 2018

大谷二刀流からヤンキースとドジャースの贅沢税ラインを切る意味の戦略的な違いについて、最後にアストロズへと内容を進めていきます。

ベースボールの知識と戦略の知識は全く違うと繰り返し言ってきました。例えば今から3か月前になります、どれだけ巷において中四日だから大谷二刀流は不可能であるという言説がまかり通っていたか、みなさんは覚えているでしょうか。

中四日という固定概念に囚われた人は、張本的な固定概念と五十歩百歩であり、すべからく戦略的な思考とはどういうものなのか、全く理解をしていないと結論できます。

当ブログでは後出しすることなく8/31にこういう記事を書きました。9月に入る直前です。

「<戦略の目的>と中四日という<制約条件>を比較した際に、戦略家とは<制約条件>に縛られず目的を選択できる人のことである。

では具体的にはどうしたらいいのか。

中四日でローテは回すものというこれまでの既成概念を白紙に戻して、目的のために<制約条件>を解除する柔軟な発想をすることになる。戦略性の高いGMならば中四日という<制約条件>を動かすアイデアを必ず出してくる。

結論

<戦略の目的>と<制約条件>を明確に区別し、戦略家とは条件によって現実の動きを規定される人ではなく、条件を動かすことによって目的を達成しようとする人のことである。」

そして一か月後、9月になってパドレスが6人ローテを実践したことをおそらくこのブログを通じてはじめて知った人も少なくなかったものと考えています。エンジェルスは大谷獲得のために準備した期間も極めて短く、全く大谷から選んでもらえるとは思っていなかったようですが、とりあえず条件だけでもパドレスの打ち出している条件を包括してしまえば、DH制がある分だけパドレスよりも上に立てる可能性が出てくるとエンジェルスのGMも定石通り考えた。

戦略的思考の基礎知識があれば、大谷を獲得するためにそのチームは必ず6人ローテを導入することなるという予測は、論理的には当然の帰結であったと言えます。

何が言いたいのか。

戦略的思考においては、目的ありきであり、制約条件は解除すべきものに過ぎないということ。これは戦略において初歩の知識です。

ドナルド・トランプという大統領がいます。マスメディアによって完全包囲された者が、大統領選において奇跡的に勝利するという結果をたたき出したドナルド・トランプは建築業でブルックリン地区で成功した父フレッド・トランプに影響を受けたと言われます。

しかしドナルドが父フレッドとの決定的な違和感を感じたのは、新しい事業を起こす際に、堅実派のフレッド・トランプがまずコストカットありきの思考であった点にあると自伝にはあります。このコストカットありきの父フレッドの考え方ではブルックリン地区の地域開発では成功しても、隣のニューヨークで大成功を収めるような世界一の不動産王にはなれないとして、どうしても馴染めなかったのだとドナルドは言います。

ドナルド・トランプの口癖は「think big」。

<最高><世界一><最大>という言葉がトランプの口癖でもある。目的を世界一に定めてそのために何をすべきかと考え、実行してきた結果、トランプはメディアを最大限活用して不動産でも大成功を収め、ついにはアメリカの大統領まで上り詰めることができました。

このトランプと非常によく似ていたのがヤンキースのボスこと、ジョージ・スタインブレナーでした。最大・最強・最高が口癖だったドナルド・トランプと世界一以外勝利と認めないジョージ・スタインブレナー。この二人は政治的な信条はともかく、ジョージが生前においてとても馬が合ったと言われています。

このトランプとジョージの二人と全く正反対の発想をするのが、フレッド・トランプでありハル・スタインブレナーであるということになります。フレッド・トランプとハル・スタインブレナーの共通する特徴は、ドナルドやジョージのような目的思考ではなく、真っ先にまず目に入るのがコスト削減でありコスト・パフォーマンスであり、そこから物事を演繹的に目的アプローチするという特徴があります。

制約条件から演繹的に目的にアプローチする人物のどこが、いったい戦略家であるのか。このようなに制約条件から思考することを是として説いている戦略の本は皆無であると断言しておきます。

この記事も書きました。

ヨギ・ベラの再来なるか ゲーリー・サンチェスがヤンキースの未来を担う

ペイロール3億ドル突破という拡大均衡から縮小均衡というドジャースの方針は戦略的に正しいが、ハル・スタインブレナーが打ち出している縮小均衡からの拡大均衡は戦略的に間違っていると繰り返し私は述べてきました。ドジャースが贅沢税ラインを一度切ろうとしている動きとヤンキースの贅沢税ラインを切ろうとする動きは似て非なるものであるのです。もしこの極めて重要なポイントを指摘できなければ、戦略について全くわかっていないということになる。戦略的なコスト削減と単なるケチは同じように振る舞っていても似て非なるものである。

ではその方針の是非はどこで測られるべきか。勝利の生産性と観客動員でそれははっきり数字として表れることになるとも結論してきました。

キャッシュマンというGMが極めて優れた動きをしているために、ハルの戦略ミスは気取られないように体裁は整っていますが、仮に両チームが2018年に贅沢税ラインを一度リセットするにしても、事実として、5年連続地区優勝しメジャー最大の観客動員を誇っているのはドジャースであり、そして5年連続で地区優勝を逃し、観客動員も2017年には戻してきたもの、トレンドとしては下がり続けてきたのがヤンキースである点を見過ごしてはなりません。

勝利の生産性と観客動員でドジャースとヤンキースの戦略性の優劣ははっきり示されています。しかもドジャースが贅沢税ラインを一度切ることによって、より積極的に2018年オフに動きを入れようとしているのに対して、やはりというべきでしょう。ハルはどうやら2018年以降も贅沢税ラインという制約条件に縛られた動きになることを今から示唆する発言をしています。もし超えるとしても本来が発揮すべき大胆さはほとんど見ることができない。ヤンキースが本領を発揮すればこんなものではない。

(この記事は1/10にはすでに書き上げていたのですが、そこへダルビッシュの7年大型契約の報道が昨夜なされました。第一報を聞いた時、ヤフコメを見た限りおそらくそれを真に受けコメントしていた人80~90%、そしてガセだとすぐに直感した人10~20%。当然のことながらガセの可能性が高いと踏んだ私はふだんツィッターは見ることはないですが、確認のためにすかさずダルビッシュのツィッターを確認すると、やはりガセ判明。)

ゴンザレス、ベケット、クロフォードを引き取ったブロックバスターに代表される豪快なディールを放漫経営と決めつけ、今の育成重視の方針がさも正しいとする主張をするありがちなステレオタイプな記事も見受けられます。

拡大均衡をすべき時期に強烈なブロックバスターをかまして一定の成果である地区優勝を果たし、フェーズが切り替わったところを見計らって、プロスペクトに重点を移動させて縮小均衡へと移行する。このドジャースの一連の動きの中に極めて戦略的な思考を見出すことが可能です。今のプロスペクト重視、コスト削減の動きが正しくて、一昔前の金にものを言わせてのFAによる選手の強奪を放漫経営というレッテルをはりつけるトーンで記事を書いているライターたちは、戦略のことについてよくわかっていないと言っていい。

拡大均衡が戦略的に正しく、縮小均衡が戦略的に間違っているとか、コスパの良し悪しと戦略的な正しさとは基本的に関係ありません。FA重視が戦略的に間違っており、育成重視が戦略的に正しいというわけでもありません。戦略的に正しいかどうかは、環境に如何に柔軟に応じて目的に向かって正しい判断を下せるかにかかっています。ドジャースが2012年にコンテンダーでありつづけることをファンに示すため、直近の3年はPO進出すらままままならなかったチームを最低限の目標ではあった地区優勝を達成した点において、コストパフォーマンスを軽視した豪快なブロックバスターも評価されるべきだということです。

オーナーが切り替わった途端、豪快なブロックバスターで地区優勝するのと、マーリンズのようにコストカット連発でファンや選手のやる気をなくさせるのではどちらが正しい判断でしょうかということです。戦略的に見てあのドジャースのブロックバスターは正しい判断であったと当ブログでは結論する。

日本のプロ野球ファンにありがちですが、育成重視のコストパフォーマンスに優れたスモールマーケットが勝ち上がることを過大に評価し、FAや外人を積極的に獲った結果、ビックマーケットのチームが優勝するのを過小に評価するという明らかなバイアスが存在しています。逆に言えば、育成に失敗して弱小でありつづけるスモールマーケットのチームを激しく叩くことはほぼないが、不味いFAで失敗し続ける巨人になると目の色を変えてそら見たことかと徹底的にたたきまくるという明らかな傾向が認められる。

結論

メジャーでは中四日でなければならないという先入観、固定概念。金満を殊更に批判し育成コスパ重視を優れたものと見なす明らかな偏向、バイアス。

戦略的な思考において最もそれを邪魔するものとは、固定概念でありバイアスである。目的に焦点を合わせ、固定概念やバイアスを丁寧に駆除し、リスクを許容しつつも物事の優先順位を的確に定めることを戦略的であると言う。また戦略的正しさとは、状況に応じて変化するものである。あるフェーズでは拡大均衡が正しいように、またあるフェーズでは縮小均衡が正しということがある。

「MLB 戦いの原理を求めて」がなぜ戦略をテーマとしてきたのか。

当ブログが見た限り、日本ハムやドジャース、あるいはアストロズのルーノウなど極めて戦略的であり、いわゆる彼らは戦略のプロである。

例えば経営コンサルタントからGMへ転身することなどもある一方で、経営コンサルタントがライターへ転身することは果たしてあるか。おそらくほぼない。ではライターたちが戦略について学ぶ機会はいったいあるか?そうした機会は基本ほとんどないわけです。戦略という観点から見ると、戦略のプロがフロントランナーとしてベースボールの世界をリードしているとすれば、それをフォローする記者たちにはそれを的確に捉えるだけの素養がないために、大きなスペースがぽっかりと空いているように少なくとも私には見えた。

先日「アストロズ革命」BSの放送がありました。戦いを略すると書いて「戦略」という。略することができる戦いの本質的な部分は重要なキーワードに集約されるものです。2015年、当ブログではアストロズが攻撃において如何にフライボールを打ち上げるか、同時に防御においては如何にフライボールを打たせないかという課題を絞り込んだ戦略を打ち出しているとするセイバーメトリクスに基づく分析しました。

アストロズの戦略がフライボールというキーワードを元に形成されていることを指摘した最も早い段階で分析した記事であったろうと考えています。

アストロズの強さの秘密 その戦略をセイバーメトリクス分析する 防御編

アストロズの強さの秘密 その戦略をセイバーメトリクス分析する 攻撃編

あの番組を通して、当ブログの戦略的なモノのへの捉える分析力は、そう侮られるものではなかったことが証明されたと個人的には考えています。ちなみに2015年のアストロズの快進撃についてスカスカのセイバー分析をしたあるライターは、ヤンキースが贅沢税ラインを切ることを戦略的に正しいと言っていました。

最後に

メジャー通必須の知識 MLB史に聳え立つ巨人ビル・ベックを知っているか

尚、このブログはこの歴史の記事を周知するために、立ち上げたものでもあります。時間軸の中で可能な限り自在に思考の翼を広げて、過去に眠った歴史を現代に蘇らせると共に、未来へのトレンドへ焦点を当てるようなブログでありたいと私はずっと考えていたような気がします。

これまで、巨人福田を永久追放してはならない。ボンズは必ず殿堂入りする。総合判断としてジラルディは有能な監督である。フライボールはガチでもう古い、など他にも数多くの少数派の意見をアップしてきました。必ずしも多数派にその身を置いてきたわけではありません。しかし理解を示してくれた方々も少なからずいました。この最後の記事を読んでくれた人へ、感謝の意を述べてこのブログを終えたいと思います。ヤンキースがダルビッシュへ7年1億6千万ドルオファーという情報をガセではないかとする健全なリテラシーをもって私はこれからもメジャーを見続けていくことになるでしょう。

ちなみに アストロズ革命という番組を見て、時代はここまで進んでいるのかと感心して見ているだけでは駄目なのであり、すでに一般に公開されているということは番組で紹介されたそれらの知識は過去の知識となっている。

未来への予兆は現在のただ中にこそ眠っている。

過去に目を閉ざす者は未来に対して盲目でもある。だからこそ歴史を深く学んでゆくことが未来への透視力を担保することになる。

 by Field of Dreams

なぜエンジェルスを大谷翔平は選んだのか?ソーシアと栗山監督の違いを明らかにする

大谷翔平
12 /18 2017
日本ハムとエンジェルスがどれだけ違うチームかまず分析する。

日本ハムはセイバーメトリクスに基づいた「ベースボール・オペレーション・システム」(通称BOS)を運用し、それを土台として1軍2軍も含めた現場とフロントの全体に対してオープンとなった情報を共有し、互いの意識に齟齬がないように民主的に話し合い、戦略的に一体となってチームの理想的な未来像に向かって力を合わせるカルチャーを持っている。

一方、エンジェルスはオーナー・モレノの直下にソーシア監督がおり、チーム最大の権限を握っている。新思考派のGMとオールドスークルの監督で意見が違えるとき、パイレーツなどは互いの立場に理解を示し、フィールドに立つ現場の知恵とフィールド外においてコンピューターによる数理解析を担当する新思考派の知恵がアウフヘーベンされて、より高次なものへ昇華する理想的な姿が現出することがあるが、エンジェルスの場合は監督とフロントが歩み寄るというよりもこれまではしばしば監督がGMの首を切るという形で問題を解決してきた歴史がある。

つまり、日本ハムのカルチャーが民主的かつボトムアップ式で組織の運営を戦略的に推進させてきたのに対して、エンジェルスは独裁という言い方がふさわしいかはともかく、オールドスクールのソーシアによるトップダウン式によって組織を運営してきたという特徴がある。新思考派の意見を上手に取り入れて、思考をアウフヘーベンさせずソーシアのオールドスクールの意見がまかり通る時、だんだん時代に適応できず古くなり、エンジェルスの最近の停滞の一つの要因となっている可能性はあるかもしれない。

このようにチームのカルチャーが大きく違うのが日本ハムとエンジェルスである。

またマーケットにしても、日本ハムはスモールマーケット故にオークランドやレイズのようにFAやポスティングで次々と育成した選手を国内外問わず放出してきたのに対して、エンジェルスは2000年代ディケ―ド最高のプレイヤーでもあるプホルスやサイヤンガーであったグリンキーも獲得したように、大きなマーケットを持っている。事実、おそらく2018年のペイロールは贅沢税のラインを優先課題としているヤンキースとほぼ変わらない金額になることが予想される。35歳キンズラーも獲得し、完全に勝負モードに入ったエンジェルスではあるが、終盤においてチームの勝利を優先する状況が来たとき、果たして大谷を育成することは最優先事項になるのだろうか。現実的に考えて、大谷が上手にメジャーの環境に適応できず、シーズン終盤でPO争いをしている時、育成の話がいったん保留状態になる可能性がある。

ビックマーケットとスモールマーケットという違いが、日本ハムとエンジェルスの育成も含めた根本的な戦略において明らかな違いを生み出している。

更には監督自体もソーシアと栗山もタイプが全く違う。奇策を好んで使うマジック系統の栗山とセオリーとデータを重視するオールドスークル系統のソーシアと分類することも可能である。(ただしここで言う奇策とは、ヒットエンドランやスクイズの類のスモールにおける奇襲の事を言っているのではない。奇襲ならソーシアは好む。成果の出た二刀流を運用するならともかく。成功するかどうかなど全くわからない二刀流をフロンティアととしてやってみるという発想はソーシアに基本的にない。)

このマジック系統の監督は二刀流に代表されるように奇策を用いるのを信条とするの同時に、ドラマを演出したがるという大きな特徴がある。一方、オールドスークルはデータを重視セオリーし、とことん拘り手堅く勝つこを好む傾向にある。

例えば、オールスターで投手イチローを采配したのは、仰木監督であり、それに乗らなかったのは野村監督である。水と油と言ってもいいこの両者が、なぜここまで違うのかというとその出自に答えはある。野村監督が大変尊敬していた監督は川上監督であり、はじめてドジャース戦法を日本に輸入した監督こそ川上であり、無死でランナーが出れば型通り送りバントをする手堅いスタイルが川上野球であった。このV9の頭脳でもあった森監督と野村監督は昵懇であり、現役時代から日本シリーズの始まる直前になると森が敵の情報を収集すべく夜を徹して森と野村は野球論議に花を咲かせ、この森との会話の中で、野村は川上野球のエッセンスを盗んだとも言われている。

この巨人の型にはまり鉄壁の強さを誇った野球を面白くないと一蹴し、プロとはファンをワクワクさせてナンボであると打倒巨人を掲げて数多くのドラマを演出したのが三原脩であった。「野球とは筋書きのないドラマである」という言葉を遺した三原脩に終生慕い、仰木彬は心服していたと言われている。仰木の采配ぶりは極めて三原に似通っていると言われ、三原マジックならぬ、仰木マジックと言われた。仰木彬の墓は三原脩の対面に立てられているからも仰木の三原脩に対する念いの深さは窺い知れよう。

三原脩同様に仰木の監督人生は極めてドラマティックなシーンに彩られていた。近鉄時代の10・19最終決戦やラルフ・ブライアントの4連発など球史にそのドラマは刻まれている。またイチローという名で世に出した仰木のプロデュース力も、三原脩譲りと言ってもいい。

同様に三原脩を師とする栗山英樹もまた、栗山マジックと言われ数多くの奇策を用いてファンをアッと言わせると共に、昨年の奇跡の大逆転優勝を「2016 ドラマ 北の国から」と命名したように。よくもわるくもドラマ仕立てにすることを信条とする監督である。奇策とドラマがこの魔術師系の監督の大きな特徴である。

一方ドジャース出身のソーシアは現役時代よりドジャース戦法を信条とし、データ好きであり、歴史的にもドジャース戦法をルーツに持つ野村克也と同じく分類することができる。野村とソーシア、キャッチャー出身のづんぐりむっくりとしたデータ好き、知将とも称されどこか似ていると感じるのは決して私だけではあるまい。野村克也と栗山英樹とそりが合わないのも、監督として巨人の野球のアンチテーゼとして出現した三原脩を支持する栗山と川上の野球に傾倒する野村との違いとも言えるかもしれない。

以上まとめると歴史的な日米の野球の歴史から眺めても、栗山監督は仰木マジック、三原マジックという三原脩をルーツに持つ魔術師系統に類するのに対して、ソーシアは野村IDや西武森監督の典型的なオールドスクール系統に属すると言える。つまりメジャーで言うと、栗山監督はフロンティア精神旺盛な守備シフトを最初に大々的に取り入れたマドンのマジック系統になると言ってもいいだろう。マドンも現役時代のめぐり合わせ上、出身はオールドスクールでありソーシアの弟子筋ではあるが、徐々に魂の奥底に眠っていた魔術的なものが目覚めて本領が発揮されるようになったと言える。

青は藍より出でて藍より青し。

師のソーシアを弟子のマドンが超えていった様を表す言葉である。メジャーにおける大谷の活躍如何によってはソーシアを野村、マドンを栗山と入れ替えても後世の歴史家は何の違和感も抱かない可能性がある。新思考派の考えを「現場を知らぬ戯言」と一蹴せずに、セイバーメトリクスに対しても心をオープンにして貪欲に新しいものを取り入れる姿勢がマドンにはある。

このように日本ハムとエンジェルスはきちんと分析すれば似ているどころか、対極にあるチームであると言ってもいい。

以上まとめる。

●ボトムアップ型の民主的な日本ハムとトップダウン型の監督の独裁的なエンジェルス。
●マーケットが小さい故に育成重視の日本ハムとプホルスやグリンキーも獲得したようにFAに積極的なエンジェルス。
●魔術師系の栗山監督とデータとセオリー重視するオールドスクール系のソーシア監督。

分析をした限り、なぜ大谷がエンジェルスを選択したのか今一腑に落ちなかった。ではなぜこうした大きな違いがあるにもかかわらず、大谷翔平はエンジェルスを選択したのか。

その最大の理由はモレノ―オーナーにある。直々に、交渉の場で大谷と話した結果、二刀流でもって育成することをオーナーが確約したとされる。

通常オーナーがフィールド上のことに対してあれこれ口を挟むことはない。しかしながらこの大谷二刀流については、オーナー直々のお達しであり、ソーシアと言えどもその方針に逆らうことはできない。

以上 大谷翔平がエンジェルスを選択した最大の理由である。ソーシアへの警戒は杞憂のものとなる可能性があると言えるかもしれない。 ただソーシアをあまり信用することはしない方がいいとは思っている。

大谷翔平についてのスタンス

日本ハムOB・野球評論家・プロ野球ファン・日ハムファンから二刀流・大バッシングのまさしく四面楚歌だった新人時代から一貫して栗山監督及び大谷二刀流の擁護する立場を貫く。

メジャーに大谷レベルの選手いくらでもいるとした二刀流否定派・メジャー通による「ゴロゴロ大谷説」も日本ハム時代から一蹴。

当ブログのポリシー

「これは現代に繰り広げられる壮麗なサーガであり、神話という文脈の中で大谷翔平という選手を捉えなければ、その実相は決してわからない。」

写真は古代ギリシャの神殿。